韓国

韓国公正取引員委員会は,日本郵船,商船三井,川崎汽船,日産専用船,イースタン・カーライナー等が,自動車の海上輸送サービスにおいて市場分割又は価格カルテルを行っていたとして,是正命令を行い,総額430億ウォンの課徴金を賦課するとともに,刑事告発することを決定

2017年8月21日 韓国公正取引委員会 公表(英文公表:2017年9月11日)
原文

【概要】

 韓国公正取引委員会は,価格カルテル又は市場分割を行っていたとして,自動車海上輸送事業者10社に対して是正命令を行い,9社に対して総額430億ウォンの課徴金を賦課するとともに,8社を刑事告発することを決定した。

1.違反事実
(1)海上輸送事業者9社間における航路の市場分割
(概要)
 日本郵船等,自動車の海上輸送事業者である下記9社は,2002年8月26日から2012年9月5日までの間,GM等の自動車製造業者が発注する海上輸送サービスの大規模入札において,お互いに競争しないようにすることで,各社の現行契約を継続できるよう共謀していた。

社  名
日本 日本郵船株式会社(NYK)
商船三井株式会社(MOL)
川崎汽船株式会社(KL)
日産専用船株式会社(NMCC)
イースタン・カーライナー株式会社(ECL)
ノルウェー Wallenius Wilhelmsen Logistics (WWL)
Hoegh Autoliners(HOEGH)
チリ Compania Sudamericana de Vapores S.A(CSAV)
韓国 Eukor Car Carriers(EUKOR)

 9社は,入札に参加しない又は高値で入札することにより,お互いに競争をせずに,各社の現行契約を継続できるようにしていた。
(背景)
 海上輸送事業者のアライアンスは長い間存在してきており,海上輸送市場の参加事業者は,船上のスペースの共有に見られるように,お互いに緊密な接触を持ってきていた。
 こうした状況において,少なくとも2000年代以降,海上輸送サービスを行う事業者間において,お互いを尊重し,熾烈な競争をしないという共通認識があった。
 2002年8月26日に開催されたトップ会合において,各社の幹部は,各社の現行契約を維持するために,お互いを尊重し,お互いの市場を侵害し合わないことを合意していた。
(共謀の実行)
 航路ごとに自動車製造業者による大規模入札が行われる際に,共謀は実行されていた。自社が他社の現行契約を尊重する一方で,自社の現行契約を尊重するよう他社に要求することによって,複数の航路に跨って,世界的に同時に,同様の合意が実行されていた。

(2)海上輸送事業者2社による価格カルテル
(概要)
 日本郵船及びZIM Integrated Shipping Services LTD.(以下「ZIM」という。)の2社は,2008年3月3日から2011年10月31日までの間,韓国からイスラエルまでのHyundai Motor Companyの自動車の海上輸送について価格カルテルを行っていた。
(背景)
 アラブ諸国においては,イスラエルを出発地とする船舶は,いかなる種類のものであれ,入港が拒否されるという,いわゆる「Arab League boycott of Israel」が長年にわたり行われてきた。その結果として,日本郵船及びZIMの2社のみが,韓国及びイスラエル間の航路を運航してきたが,そうした背景から,2社は比較的容易に共謀を実行することができていた。
 Arab League boycottがあるために,一度でもイスラエル航路に入った船舶は中東又は地中海航路に変更することができない。つまり,イスラエル航路は他の航路と独立して運航されることになる。
 1990年代初期までは,イスラエルの貨物海上輸送事業者であるZIMは韓国及びイスラエル航路における,唯一の海上輸送サービスを行う事業者であった。1993年頃,日本郵船がイスラエルで事業を開始して以降は,日本郵船及びZIMが韓国及びイスラエル航路を運航するようになっていた。
(共謀の実行)
 Hyundai Motor Companyの委託を受け,韓国及びイスラエル航路の自動車を輸送するEUKORが日本郵船及びZIMと契約をした際に,合意は実行された。
 2008年,日本郵船及びZIMは自動車1台あたりの輸送価格を100ドル値上げすることに合意し,それを実行した。
 また,日本郵船及びZIMは,Hyundai Motor Companyが2009年に販売開始したYF Sonata,2011年に販売開始したGrandeur HGに関する料金についても合意をしていた。

2.措置
  本件に関する是正命令,課徴金及び刑事告発の内容は以下のとおり。
  是正命令:10社に対して違反行為の取りやめ及び情報交換の禁止を命令
  課徴金:9社に対して総額430億ウォンの課徴金を賦課
   ※1 韓国公正取引委員会のプレスリリースによれば,HOEGHは市場分割に関与していたが,共謀による利益が確認されなかったため,課徴金を免除し,是正命令のみを行った
   ※2 商船三井(MOL)のプレスリリースによれば,同社及び同社子会社の日産専用船(NMCC)はリニエンシーにより課徴金が全額免除されている。韓国公正取引委員会のプレスリリースの課徴金額総額は,前記2社の課徴金額を含めたものである。
  刑事告発:8社を刑事告発                                          

                                         (単位:100万ウォン)
企業名 NYK EUKOR MOL KL WWL NMCC CSAV ECL ZIM HOEGH 総額



市場分割 4090 2031 16863 12824 4122 1209 685 266 - 0 42090
価格カルテル 793 -

-

-

-

-

-

-

122

-

915
総 額 4883 2031 16863 12824 4122 1209 685 266 122 0 43005




市場分割

-

×  
価格カルテル × - - - - - - - × -  

ページトップへ