英国
ファイザー及びフリン・ファーマによる医薬品の高価格設定について,競争審判所が英国競争・市場庁の決定を取り消し,差し戻す審決
2018年6月7日 英国競争・市場庁 公表
原文
【概要】
2016年12月,英国競争・市場庁(以下「CMA」という。)は,医薬品メーカーのファイザー及び医薬品卸売業者のフリン・ファーマが,抗てんかん薬のフェニトインナトリウムカプセルの価格を不当に高価に設定する行為が競争法に違反するとの決定を下した。本件は,2012年9月に抗てんかん薬の価格が,生産費用に実質的な変化は無いにもかかわらず,大幅に引上げられたことに対して,NHS(National Health Service:国民医療制度)並びにそれを利用する患者及びそれを支える納税者を保護する観点からCMAが介入したものである。
本日,競争審判所は,本件が公益の観点から重要な事件であることを強調した。CMAは,競争審判所が「CMAの決定には同意する点が多くある。」と述べ,市場画定及び市場支配的地位についてのCMAの認定が支持されたことは喜ばしいとしている。
しかし,競争審判所は濫用行為に関するCMAの認定を棄却し,更なる検討のため事件をCMAに差し戻すこととした。競争審判所は,価格の引上げ幅によっては濫用の認定も可能としつつ,濫用行為の認定を認めておらず,CMAはこれを遺憾とする。
CMAは,2016年12月,ファイザーとフリン・ファーマによる行為は特に重大な法違反であるとして,総額約9000万ポンドの制裁金を課す決定を下していた。例えば,100mgカプセルのパックでの薬価は2.83ポンドから67.50ポンドに上昇し,これは欧州各国の薬価よりも数倍高いものであった。また,これによって,フェニトインナトリウムカプセルに関するNHSの支出は,2012年に約200万ポンドから2013年に約5000万ポンドに増加していた。
CMAは,本件のフェニトインナトリウム及び他の幾つかのジェネリック医薬品について,価格が不当に高価に設定され,NHSに数千万ポンドのコストをもたらしていることを深刻に受け止めている。今回の審決は,現在,CMAが行っている複数の事件審査に深刻な遅れをもたらすおそれがあり,また,NHSが幾つかの医薬品について必要以上の支払を続けるとともに,これら医薬品に費やされた過剰な支払を回収できないリスクを負うことを意味する。
CMAは,本日の審決に失望するとともに,これを精査している。今後,NHSの重要性と同様の事例への潜在的影響を踏まえ,控訴することを検討している。