その他
シンガポールシンガポール競争消費者委員会及び個人データ保護委員会は,事業革新,市場競争及び消費者にとってのデータポータビリティを確保することのメリットとその影響についてのディスカッションペーパーを公表【概要部分の要約】
2019年2月25日 シンガポール個人データ保護委員会 公表
【概要】
シンガポール政府は,データポータビリティを請求できる権利(以下「データポータビリティ請求権」)の導入を検討している。
データポータビリティ請求権によって,個人は,自己のデータを保有する管理者に対し,そのコピーを,系統的で共用化され,機械的に判読できる様式で提供するよう,また,当該管理者から他の管理者に自己のデータを移転するよう請求することが可能となる。
データポータビリティの問題は,競争法制とデータ保護法制の間で重複する。データポータビリティ請求権を実行し,それによって得られる利益を最大化し,管理費用やその影響をコントロールするための最適な手法を確定する際にも,競争法制及びデータ保護法制の双方の観点から考慮する必要がある。
競争の観点からは,データポータビリティによって,データの管理者はより多様な一連のデータに容易にアクセスできるようになり,データ管理者自体の効率化につながる。その結果,拡大化した一連のデータをより良く把握することが可能となり,顧客基盤に的を絞った製品を開発・改善できるようになる。また,データポータビリティにより,顧客は当該データを再入力することなく自己のデータを競合他社に移転するように請求できることから,データ移転費用の削減にもつながる。これにより,顧客が最も魅力的なオファーを行うデータ管理者に切り替えることができ,競争が促進される。
データ保護の観点からは,データポータビリティが保障されることにより,自己の個人データを管理する権限が強化され,個人は自己のデータを他のデータ管理者に利用させ易くなる。そして,消費者自らの判断で,自己のデータのコピーを今まで管理していたデータ管理者から他のデータ管理者に提供させることが可能になるため,アクセス権が強化される。また,データポータビリティにより経済のデータフローが促進される。より多くのデータ及び多様な一連のデータにアクセスすることで,データ管理者は顧客のニーズをこれまで以上に把握し,それに適した製品・サービスを開発することが可能になる。したがって,データポータビリティ請求権の実効性を確保することが重要となる。こうした実効性の確保には,従前の個人データの定義よりも広いデータポータビリティの範囲の確立,消費者保護,データを受領する者によるデータの保護及び管理の確保並びにセキュリティ及び相互運用性の確保によるデータ移転に伴う軋轢の調整等が含まれる。
データポータビリティ及びデータフローの問題はデータ保護法制及び競争法制双方の領域をまたぐ特殊なものであり,どちらか一方の観点だけで検討されるべきではない。データポータビリティの要請に対応し,かつ費用を抑えつつ利益の最大化を図るには,データ保護法制及び競争法制の双方の観点から考慮されることが必要である。
ドイツ
ドイツ連邦カルテル庁は,ドイツオリンピックスポーツ連盟(DOSB)及び国際オリンピック委員会(IOC)が広告活動の制限を緩和することを確約した旨公表
2019年2月27日 ドイツ連邦カルテル庁 公表
【概要】
ドイツオリンピックスポーツ連盟(DOSB)及び国際オリンピック委員会(IOC)は,連邦カルテル庁に対して,オリンピック憲章第40条第3項に基づく広告活動の制限を緩和することを確約した。
2017年,連邦カルテル庁は,支配的地位の濫用の疑いがあるとして,DOSB及びIOCに対する行政手続を開始した。
オリンピック競技の代表選手は,競技に出場するために,DOSB及びIOCに対してオリンピック憲章を遵守する義務を負う。オリンピック憲章第40条第3項により,オリンピック競技の参加選手は,オリンピック競技の開催期間及びその前後数日間,選手の容姿,名前,写真及び競技上のパフォーマンスを広告活動の目的に利用することが禁止されている。こうした広告活動の制限は全ての広告活動及びソーシャルメディア活動を対象としており,いわゆる凍結期間(オリンピック開会式の9日前から始まり,閉会式3日後まで継続する)中に適用される。オリンピック憲章第40条に関する現在のDOSBのガイドラインでは,例外を設ける場合には3ヶ月前に申請されなければならず,広告活動に関するキャンペーンは,既に行っていたものでなければならず,また,オリンピックやオリンピック関連の用語を含んではならないとされていた。
本件行政手続は,いわゆる確約決定によって終結している。新しいDOSBのガイドラインでは,ドイツ人選手とそのスポンサーが,今後広告活動を行うことができるようにするための変更点と条件を明示している。また,IOCは,ドイツに関しては,新しいDOSBのガイドラインがIOCのルールに優先することに合意している。これらの合意には以下の改善点が含まれる。
・手続:今後は,オリンピック期間中の広告活動に関して, DOSBに事前に申請し承認を得る必要は無くなる。
・広告活動:今後は,現在進行中のものだけでなく,新しい広告活動も許容される。
・用語:「メダル」「金」「銀」「銅」「冬季大会」「夏季大会」等,これまで禁止されていた多くの用語を利用することが可能となった。
・選手の写真:特定の競技中の写真及び競技外の写真は,オリンピック競技開催期間中に撮影されたものであっても,利用することが可能となる。
・ソーシャルメディア:選手はオリンピック開催期間中に,ソーシャルメディアをより自由に利用することが許容される。
・制裁及び裁判:広告活動が許容されるか否かが問題となっている場合でも,競技上の制裁を課してはならない。また,スポーツ仲裁裁判所はそのような問題に関する決定は行わず,その代わりに,通常の民事裁判所で取り扱うことを可能とする。