その他

英国

英国競争・市場庁は,Amazonによる宅配プラットフォームDeliverooへの出資を暫定的に承認

2020年4月17日 英国競争・市場庁 公表
原文

【概要】

 簡易審査(1次審査)の終了後,競争・市場庁(以下「CMA」という。)は,本件出資によって,Amazonが英国でのオンライン外食宅配市場に再参入する意欲や,オンライン食料品宅配市場内で事業展開を行う意欲を失わせることになり,その結果,競争を阻害するおそれがあるとして懸念を示していた。
 CMAは,詳細審査(2次審査)期間中,前記の懸念について調査を続けたが,直近数週間のうちに,新型コロナウイルス感染症の蔓延がDeliverooの事業に重大な悪影響を与えていることが明らかになった。
 CMAの審査によれば,Deliverooは多くの面で非常に成功した企業であり,着実に成長し,現在,英国におけるオンライン外食プラットフォーム市場において相当のシェアを占めている。しかし,発展途上の事業であることから,Deliverooは事業運営を下支えするため,継続的な出資に多くを依存している。
 英国において継続中のロックダウンによって,Deliverooで宅配可能な多数の主要レストランが休業し,Deliverlooの売上高が激減した。Deliverooは新型コロナウイルス感染症の蔓延の間,食料品の配達事業の拡大を模索したが,売上高は限定的であり,レストラン事業の損失を穴埋めできなかった。その結果,DeliverooはCMAに対し,新型コロナウイルス感染症の蔓延がもたらす同社の事業への影響によって,Amazonから出資がない場合,財務上破産し,市場から退出することとなると通知した。Deliverooの通知は,同社の財務アドバイザーから提出された証拠によって支持された。
 CMAはこの新たな証拠を緊急事態として考慮した。CMAは,甚大な追加出資を受けられなければ,Deliverooの市場からの退場は不可避であり,そして,Amazonが唯一現時点で出資する意思があり,また,可能であると考えるとする条件付きの結論を下した。新型コロナウイルス感染症の蔓延以前であればAmazon以外からの追加出資を確保することができた可能性はあるが,蔓延によって,Deliverooのような初期段階の事業向け金融支援は非常に限られることになった。CMAは,現在,Deliverooの市場からの即時退出は,Amazonからの出資の認容よりも競争を悪化させることから,当該出資を承認すべきであると判断した。

(注)本件については,上記の暫定的な承認を行った後も,CMAは証拠の収集及び分析を継続していた。CMAは,Deliverooの財務内容を詳細に検討した結果,新型コロナウイルス感染症の感染拡大の初期段階では予見できなかった状況の変化等により,同社の財務状態は大幅に改善することが判明し,Amazonの出資が実現しなかったとしても,Deliverooが市場から退出するものではないと暫定的に認定した。そのような事情を前提として証拠を検討した上で,CMAは,6月24日,Amazonの出資がオンライン外食宅配市場及びオンライン食料品宅配市場における競争を害するものではないと暫定的に認定した(https://www.gov.uk/government/news/cma-revises-provisional-findings-in-amazon-deliveroo-case)。
 

ドイツ

ドイツ連邦カルテル庁は,中国企業の中車株洲電力機車によるVossloh Locomotivesの入換機関車部門の取得を承認

2020年4月27日 ドイツ連邦カルテル庁 公表
原文

【概要】

 ドイツ連邦カルテル庁は,本日,CRRC Zhuzhou Locomotives Co., Ltd.(以下「中車株洲電力機車」という。)によるVossloh Locomotives GmbH(以下「Vossloh Locomotive」という。)の買収を承認した。
 同庁のAndreas Mundt長官は,「今回の中車株洲電力機車とVossloh Locomotivesによる合併の届出について,中国の国有企業によるヨーロッパ企業の買収という特徴のあらゆる面について徹底的に調査した。中車株洲電力機車は,Vossloh Locomotivesを買収することで,ヨーロッパにおける入換機関車の主要メーカーを譲り受けることとなる。本件による競争への影響を評価する際には,中国政府による国家補助の可能性,技術面及び資金面での支援の可能性並びに他の株式保有における戦略的優位性を考慮した。また,多くの市場における中車株洲電力機車に対する国家補助による価格の下落及びダンピング戦略の脅威並びに費用での優位性についても調査した。中車株洲電力機車は中国政府の産業戦略において重要な役割を果たしている。さらに,入換機関車はその認可手続が複雑であり,中車株洲電力機車は,既存メーカーであるVossloh Locomotivesの専門的知見から恩恵を受ける可能性がある。しかし,こうした懸念はあっても,当該合併計画の禁止を正当化するには不十分であった。Vossloh Locomotivesの競争力はここ数年で大幅に低下し,また,革新的な牽引技術を提供する新規競争業者が当該市場に参入した。Vossloh Locomotivesには複数の有力な競争業者がいる。他方で,中車株洲電力機車は,これまでのところ欧州市場で小規模な事業者でしかない。」と述べた。
 Vossloh Locomotivesは,欧州経済領域及びスイスにおいて最大の入換ディーゼル機関車の製造業者である。同社はVossloh AGの子会社で,従業員は約500人,売上高は2019年に1億ユーロを超えている。
 中車株洲電力機車は,China Railway Rolling Stock Corporation,Ltd.(中国中車)の子会社で,世界最大の鉄道車両メーカーである。中車株洲電力機車の事業活動はこれまで中国を中心としていた。中国中車グループの従業員は15万人を超え,中国その他の国で多くの製造工場を操業している。売上高は2018年に275億ユーロである。
 両社の合併計画を審査する際には,特殊な点を考慮する必要があった。合併の一方の当事者のVossloh Locomotivesは欧州市場において有力な地位にあるものの,他方の中車株洲電力機車は同市場において弱い地位であることから,合併審査という観点で中国の国有企業の参入を評価することは困難であった。中車株洲電力機車が広範な技術的資産を有していることも審査で考慮された。ドイツ連邦カルテル庁による調査によれば,欧州の競争業者は,両社が合併すれば競争が歪められると考えている。
 本件買収計画は,最終的に認めざるを得なかった。Vossloh Locomotivesの市場競争力は,直近数年の間に相当低下している。親会社であるVossloh AGは,既に2014年には同社の売却を決定していた。その時期から,Alstom,Stadler,東芝といった定評のある鉄道技術メーカーが革新的牽引技術によって欧州の入換機関車市場に参入し,現在でも入換機関車を供給している。車両技術市場においては,ディーゼルエンジンと架線からの電力の両方で駆動するハイブリッド牽引システム及びデュアルモード機関車へと移行している。Vossloh Locomotivesは,現在は前記機関車を供給していないことから,結果として競争力を失っている。
 中車株洲電力機車は,これまでも欧州鉄道車両市場に参入しようとしていた。しかし,これまでのところ同市場における成功は限られており,Deutsche Bahn(ドイツ鉄道)が運営するハンブルク及びベルリンの郊外鉄道やオーストリア鉄道会社ÖBBのハンガリーの子会社であるRail Cargo Hungariaに対して入換機関車を供給するにとどまっている。したがって,中車株洲電力機車は欧州においてVossloh Locomotivesと直接に競合しているわけではない。
 Mundt長官は,「我々は,調査の結果,今回の合併が欧州の入換機関車市場における競争を減殺することへの懸念を相当払拭できた。中車株洲電力機車は,「中国製造2025」及び「一路一帯」戦略において中核的な役割を担うため,中国政府によって,強固に保護されている。しかし,本件合併計画によれば,巨大な経済力を有する中国の国有企業が市場に参入するからといって,必ずしも有効な競争の脅威になるものではない。」と述べた。

 

オーストラリア

オーストラリア競争・消費者委員会は,ニュースメディア及びデジタルプラットフォーム向け行動規約案の策定に向けた論点を公表

2020年5月19日 オーストラリア競争・消費者委員会 公表
原文

【概要】

 オーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)は,オーストラリアのニュースメディア事業者と,GoogleあるいはFacebookとの間にある交渉力の不均衡に対処するための新規の義務的な行動規約案の策定に向けたACCCの取組について,意見を募集する。
 本日公表されたコンセプトペーパーは,一連の論点を記載しており,ACCCは行動規約案に包含されるべき内容,特定の課題への対処方法及び規約の運用方法を含む意見及び情報を収集している。
 ACCCのRod Sims委員長は,「ACCCのデジタルプラットフォーム調査は,ニュースメディアと特定のデジタルプラットフォームとの間にある交渉の立場の不均衡を早急に対処する必要性,すなわち,行動規約が取り組む内容を明らかにした。」と述べた。
 コンセプトペーパーへの意見提出は,2020年6月5日を締切りとしている。
 オーストラリア政府は,ACCCに対し,オーストラリアのニュースメディア事業者とデジタルプラットフォーム間の交渉力の不均衡に対処するための義務的な行動規約を策定するよう,2020年4月に命じていた。
 
背景
 ACCCのデジタルプラットフォーム調査は,デジタル検索エンジン,ソーシャルメディアプラットフォーム及び他のデジタルコンテンツ集積プラットフォームがメディア及び広告サービス市場における競争に与える影響を調査した。
 ACCCは2018年12月に調査の中間報告書を,また,2019年7月26日に最終報告書を公表した。

(注)コンセプトペーパー原文掲載のURL:https://www.accc.gov.au/focus-areas/news-media-bargaining-code/concepts-paper

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