その他

オーストラリア

オーストラリア競争・消費者委員会は,GoogleによるFitbitの買収計画について予備的懸念を表明

2020年6月18日 オーストラリア競争・消費者委員会 公表
原文

【概要】

 オーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)は,本日,GoogleによるFitbitの買収計画について,Googleが消費者のヘルスデータにアクセスすることによって参入障壁が高まり,支配的地位を固定化し,複数のデジタル広告及びヘルス市場において競争に悪影響を及ぼす可能性があるとして,予備的懸念を表明した。
 Fitbitは,ウェアラブル端末を製造する企業であり,10年以上にわたって,ユーザーから毎日の歩数,心拍数及び睡眠データを含むヘルス情報を収集してきた。
 ACCCのSims委員長は,以下のように述べた。
 「当方の懸念は,GoogleによるFitbitの買収によって,Googleがより包括的なユーザーデータを構築することが可能となり,ひいては自らの地位を強化し,潜在的な競争者に対する参入障壁を高めることである。」
 「ACCCによるデジタルプラットフォーム調査で判明したことは,Googleの実質的な市場支配力は,自社の検索及び位置情報の集中並びにサードパーティのウェブサイト及びアプリ経由で収集されたデータに基づいて形成されているということである。」
 「Googleは,今日に至るまで,スタートアップ企業やFitbitのような成熟した企業の買収によって,自らの地位を確固たるものにしてきた。Googleは,ユーザーのデータへアクセスできることにより,広告主にとって非常に価値の高いものとなり,その結果,Googleは,限られた競争に直面するにとどまる。」
 「ACCCの調査は,特定のオンライン広告サービス及び新興のデータ利用型のヘルス市場に重点を置いている。我々は,FitbitのデータがGoogle並びに前記広告及びヘルス市場における競争者にもたらす独自性及び潜在的価値について調査する予定である。」
 ACCCが今回懸念を表明した他の主要な論点は,GoogleがWearOS,Googleマップ,Google Play Store又はAndroidスマートフォンの相互互換性といった重要な関連サービスを供給する際に,自社のウェアラブル端末を,競争者の端末よりも優遇するおそれがあるかどうかである。
 ACCCが今回懸念を表明した問題点については,2020年7月10日まで意見を募集しており,同年8月13日に最終的な決定を公表する予定である。
 (訳注:その後,最終決定の公表予定は2020年12月9日まで延期する旨が公表された。)
 

韓国

韓国公正取引委員会は,Apple Koreaに対する同意議決手続を開始

2020年6月18日 韓国公正取引委員会 公表
原文

【概要】

1.同意議決手続の申請の背景
 2019年6月4日,Apple Koreaは,韓国公正取引委員会(以下「KFTC」という。)に対し,優越的地位を濫用した疑いに係る調査について,同意議決手続の開始を申請した。
 KFTCは,Apple Koreaの取引相手である現地携帯電話会社に対する利益還元の強制を含む,支配的地位の濫用の疑いについて調査してきた。Apple Koreaは,携帯電話会社に対し,携帯電話端末の広告及び無償の修理サービスの提供に係る費用を支払うことを強制した疑いがある。また,Apple Koreaは,携帯電話会社に対し,特許権や契約解除に関して一方的な条件を設定し,販売助成金の支給や広告に干渉することにより,不当に不利益を強制し,それらの事業活動を妨げていた疑いがある。
 Apple Koreaは,KFTCに対し,法的に争うことを避け,同意議決を申請することによって,携帯電話会社との関係を改善し,消費者や中小企業と相互の利益を共有しようとしている。
 Apple Koreaは,是正策として携帯電話会社の費用負担を軽減し,負担を共有するための協議を実施することを提案した。また,当該是正策には,Apple Koreaが,携帯電話会社にとって一方的に不利な条件を改善し,その事業活動への干渉を減らし,中小企業,プログラム開発者及び消費者と相互の成長を促進するため,一定の支援資金を配分することが含まれている。

2.同意議決手続の開始
 2020年6月17日,KFTCは,以下の状況を考慮して,同意議決手続の開始を決定した。

  •  携帯電話端末及び電気通信市場は,ICTを利用し,ダイナミックかつ急速な変化を特徴とする基幹産業であること。また,消費者の日常生活に密接に関係するため,当該市場における不公正な取引に迅速に取り組むことが重要であること。
  •  本件は,優越的地位の濫用に関するものであり,事業者の自発的な是正を通じて取引相手との関係を改善することが期待されること。
  •  是正策に含まれる相互成長に向けた計画は,中小企業,プログラム開発者及び消費者に明白な利益を提供することが予想されること。

 今回の手続は,同意議決手続を開始するか否かを決定したにとどまり,是正策の詳細を明確に決定したものではない。したがって,是正策の詳細は,利害関係者からの意見を集約した後,KFTCによる検討及び議決が行われ,最終決定される。

3.今後の予定
 KFTCは,可能な限り早期にApple Koreaと協議した後,是正策を補完・明確化した暫定的な同意議決案を提案する予定である。
 その後,KFTCは,利害関係者から30日から60日の期間を設定して,意見を受け付けることとしている。
 

韓国公正取引委員会は,Medtronic Koreaに対し,優越的地位を濫用したとして是正措置を命令

2020年6月29日 韓国公正取引委員会 公表
原文

【概要】

 韓国公正取引委員会(以下「KFTC」という。)は,Medtronic Koreaが,国内ディーラーに対し,指定した病院及び地域にのみ医療機器を販売することを強制し,また,病院や代理店への販売価格について情報開示を強制したとして,Medtronic Koreaに対し,是正措置を命ずることを決定した。当該是正措置には,是正命令及び2億7000万ウォンの課徴金が含まれる。Medtronic Koreaは,金額ベースで韓国における医療機器の最大の輸入業者であり,米国の親会社から外科用機器を輸入し,病院に直接又は国内ディーラーを通じて供給している。
 
○ディーラーの営業地域及び取引相手の指定及び制限に関する行為
 2009年10月から2017年4月までの間,Medtronic Koreaは,計145のディーラーに病院を割り当てた。これらのディーラーは,低侵襲治療及び循環器再建治療に関連する63の医療機器を供給していた。Medtronic Koreaは,これらのディーラーと契約を締結する際の契約条項及び条件において,ディーラーが他のディーラーに割り当てられた病院や指定した営業地域外で営業活動を行った場合,契約を終了でき,又はアフターセールスサービスを拒絶できることとした。その結果,ディーラーは割り当てられた病院及び地域にのみにMedtronic Koreaの医療機器を供給しており,競合する供給業者を選択する機会を病院から排除することにより,競争が制限されていた。
 Medtronic Koreaが供給する低侵襲治療に関連する19の機器のうち,8機器の市場シェアは50%を超えている。したがって,ディーラー間の競争が制限された場合,ユーザーは低価格で医療機器を購入する機会も制限される。
 Medtronic Koreaの行為は,公正取引法第23条第1項第5号(拘束条件付取引)及び施行令第7項第b号別表1-2(取引地域又は取引先の制限)に違反するため,KFTCは,是正命令及び2億7000万ウォンの課徴金を課した。
 
○ディーラーに対する価格情報の提供の強制に関する行為
 2016年12月から2017年10月までの間,Medtronic Koreaは,計72のディーラーに対し,病院や代理店への販売価格に関する情報を提供することを要求した。これらのディーラーは,低侵襲治療に関連する24の医療機器を供給していた。Medtronic Koreaは,ディーラーに価格情報を提供させるために,以下の手段を採っていた。

  •  Medtronic Koreaは,ディーラーに価格情報を提供することを義務付けた。
  •  契約には,ディーラーが情報を提供しない場合,又は情報の正確性が3か月連続で85%を下回った場合,Medtronic Koreaは書面の通知によって即座に契約を終了できるとする条項が含まれていた。
  •  契約には,Medtronic Koreaが要求した際,ディーラーが適時に価格情報を提供したか否かはディーラーの業績評価に反映されるとする条項も含まれていた。

 Medtronic Koreaは,医療機器市場における大手事業者である。Medtronic Koreaは取引先を容易に変更できる地位にあるのに対し,Medtronic Koreaがディーラーとの取引を終了した場合,ディーラーは他の供給業者を見出すことはできない。そのため,Medtronic Koreaは,ディーラーに対し優越的地位にある。また,価格情報がMedtronic Koreaに開示された場合,ディーラーの利益率も明らかになり,ディーラーはMedtronic Koreaとの価格交渉において一層弱い立場に置かれることとなる。したがって,価格情報は営業秘密として保護するに値する。そして,医療機器法(Medical Devices Act)を含む関連法に照らしても,Medtronic Koreaによる価格情報の要求には何ら法的根拠がなく,当該情報はアフターセールスサービス及び市場活動と何ら関係がないにもかかわらず,Medtronic Koreaはディーラーに対し価格情報を提供することを強制していたものである。こうした行為は,ディーラーの事業活動の自立性を不当に制限するものである。
 KFTCの決定は,支配的地位にある企業がディーラーの取引先や営業地域を制限することが法に違反することを明確にし,反競争的行為を事業上の慣習であるとして正当化することに対し警告を発したものである。また,本決定は,価格情報を含む営業秘密を開示するようディーラーに要請・強制することが「代理店取引の公正化に関する法律」に違反することを明らかにした(訳注)。
 (訳注:代理店取引の公正化に関する法律は,供給業者(代理店に商品・役務を供給する事業者)と代理店が対等の地位で相互補完的に均衡ある発展をすることを目指す(第1条)ものであり,代理店取引に広く見られる不公正取引行為の禁止を中心に規定されており(第6条ないし第12条),公正取引法第23条第1項第4号(取引上の地位濫用)に優先して適用される(第4条)。)

 

インドネシア

インドネシア事業競争監視委員会は,配車アプリサービス大手GRAB及び提携先のレンタカー会社TPIに対し,総額490億ルピアの制裁金を賦課

2020年7月2日 インドネシア事業競争監視委員会 公表
原文

【概要】

 インドネシア事業競争監視委員会(以下「KPPU」という。)は,7月2日,配車アプリサービス大手グラブ・インドネシア(以下「GRAB」という。)及びその提携先であるレンタカー会社テクノロギ・プンガンクタン・インドネシア(以下「TPI」という。)に対し,独占的行為及び不公正な事業競争の禁止に関するインドネシア共和国法1999年第5号(以下「競争法」という。)第14条及び第19条(d)の規定に違反したとして,GRABについて300億ルピア,TPIについて190億ルピアの制裁金の支払を命じた。本件は,インドネシアの中心地都市圏であるグレーター・ジャカルタ地域(ジャカルタ,ボゴール,デポック,タンゲラン及びブカシ),マカッサル,メダン及びスラバヤにおける,GRABの配車サービスアプリ「Grab app」に関連したサービスに係る事案である。
 本件は,KPPUにより調査が開始され,垂直的統合(競争法第14条),抱き合わせ(競争法第15条第2項)及び差別的行為(競争法第19条(d))(注)について,調査が行われた。当初KPPUは,TPIに登録し同社のレンタカーを利用するドライバーに対し,GRABが配車オーダーを優先的に与えていた行為について,競争法の複数の規定に違反し得るとしていた。
 審問手続を踏まえ,KPPUは,GRABとTPIによるサービス供給の協力に係る合意は,インドネシアにおける配車サービスを支配することが目的であり,TPIに登録していないドライバーの割合や当該ドライバーの配車オーダー数の減少をもたらしたと判断した。
 KPPUは,TPIが提供するレンタカーサービスに関して,GRABによって抱き合わせが行われようとした事実は確認できないとしたものの,GRAB及びTPIが,TPIに登録しているドライバーに対し,オーダーの付与,配車停止期間及びその他の面で優遇措置を講じるなど,TPIに登録していないドライバーに対し,差別的行為を行っていたと評価した。当該行為により,GRAB及びTPIによる独占的行為が可能となり,TPIに登録していないドライバーに対して不公平な競争環境を生み出した。
 KPPUは,審問手続における事実認定を踏まえ,GRAB及びTPIの上記行為について,競争法第14条及び第19条(d)違反は立証されたが,競争法第15条第2項違反は立証されないと判断した。そして,当該違反認定に基づき,KPPUはGRABに対し,競争法第14条違反について75億ルピア,競争法第19条(d)違反について225億ルピアの制裁金の支払を命じた。また,TPIに対し,競争法第14条の違反について40億ルピア,第19条(d)違反について150億ルピアの制裁金の支払を命じた。KPPUは,両者に対し,同決定の効力発生後30日以内に制裁金を支払うよう命じた。

(注)
第14条(垂直的統合)「事業者が,他の事業者との間で,特定の商品又はサービスの,直接又は間接の生産工程に含まれている複数の製品の生産を支配することを目的として,不公正な事業競争又は社会に損失を引き起こすこととなるおそれがある協定を締結することは禁止される。」
第15条(2)(抱き合わせ)「事業者が,他の者との間で,特定の商品又はサービスの受領者が,それを供給する事業者から,当該商品又はサービス以外の商品又はサービスについても購入しなければならないものとする協定を締結することは禁止される。」
同法第19条(d)(差別的行為)「事業者が,単独で又は他の事業者と共同して,独占的行為又は不公正な事業競争を引き起こすこととなる,下記のうちいずれか又は複数の行為を行うことは禁止される。」「(d)特定の事業者に対して差別的行為をすること」

 

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