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英国

英国競争・市場庁,Amazonによる宅配プラットフォームDeliverooの株式取得を最終承認

2020年8月4日 英国競争・市場庁 公表
原文

【概要】

 英国競争・市場庁(以下「CMA」という。)は,詳細審査(二次審査)の結果を踏まえ,AmazonによるDeliverooの株式の16%の取得について,競争を実質的に減殺することはないと判断し,本日承認した。
 CMAは,詳細審査の前に行われる一次審査を昨年12月に終了した。その際,CMAは,本件株式取得計画が,例えば,Amazonのオンライン外食宅配市場に再参入する意欲や,英国におけるオンライン食料品宅配市場における地位を更に発展させる意欲を失わせることにより,競争を阻害する「現実的な懸念」があると結論付けた。そのため,CMAは,詳細審査に移行し,将来の競争上の問題について更に審査することとした。
 詳細審査において,CMAは,「蓋然性の均衡」(balance of probabilities)に基づき,本件株式取得計画が競争を実質的に減じることになるか否かを決定しなければならなかった。しかしながら,本件において,Deliverooは,新型コロナウイルス感染症の蔓延の影響によって,Amazonからの出資がなければ財務上破綻し市場から退出することとなると主張した。CMAは,Deliverooの財務状況の深刻性と緊急性に鑑み,Deliverooが「破綻企業」の基準を満たしており,市場からDeliverooが退出することになれば,本件株式取得計画を承認した場合よりも,競争や消費者にとって悪影響が生じると結論付けた。以上を踏まえ,本件株式取得計画は暫定的に承認された。
 その後,CMAは引き続き状況を監視した。2020年4月以降のDeliverooの財務状況を評価した結果,外食宅配市場は予想以上に急激に回復しており,また,同社の取引先のレストランの構成は,閉店したり又は宅配を取りやめたりした例もある大規模ファストフードチェーンから,比較的小規模な独立系のレストランに移行したことが明らかになった。そして,これら双方の要因を通じて,Deliverooの財務状況は急速かつ著しく好転することとなった。このような状況の変化を踏まえると,Deliverooはもはや破綻企業とは考えられず,本件株式取得計画が競争を実質的に減じることになるか否かについて,CMAが実質的な評価を行うことが必要かつ適切とCMAは結論付けた。
 競争の観点を根拠として本件株式取得計画を承認するCMAの最終決定は,Amazon及びDeliverooから提出された内部文書の広範な分析,3000名以上の消費者への調査並びに利害関係を有する第三者から提出された広範な書面から導き出された結果である。CMAによる評価においては,Amazonによる16%の株式取得が,今後数年間,外食宅配及びオンライン食料品宅配の分野において,AmazonがDeliverooと独立して競争するインセンティブにどのような影響があるかという点に重点が置かれた。CMAは,今回の16%という株式取得のレベルでは,どちらの市場においても実質的に競争を減殺することはないと最終的に判断した。ただし,Amazonが,Deliverooに対する支配権を得るなど,支配を一層強める場合には,CMAは改めて調査を実施することとなる。

 

英国競争・市場庁,審査手続ガイダンス改訂案を公表

2020年8月5日 英国競争・市場庁 公表
原文(発表文)  原文(協議文書)  

【概要】

 英国競争・市場庁(以下「CMA」という。)は,1998年競争法に基づくCMAの審査手続に関する現行のガイダンスの改訂案について意見を募集している。今回の改訂は,現行のガイダンス(訳注:2014年4月に発効後,2019年1月に改訂。)の公表以降の経験や進展を踏まえたものであり,CMAが可能な限り迅速に1998年競争法に基づき審査を進め,結論を得ることに資するものである。
 主な改訂箇所は以下のとおり。

  • 正式審査開始時に原則として審査対象事業者名を公表することによる透明性の向上
  • 異議告知書を受領した審査対象者がCMAの有する資料に容易にアクセスすることを可能とするための手続の明確化
  • 異議告知書とともに制裁金の算定根拠等を記載した制裁金案を送付
  • 異議告知書に対する各名宛人の意見について,例外的に他の名宛人に開示できる場合の明確化
  • 1986年企業役員資格剥奪法(Company Directors Disqualification Act 1986)の審査対象である異議告知書の名宛人の役員又は元役員が,同告知書に意見を提出することを可能とすることなどの明確化
  • CMAの和解手続の運用の明確化(名宛人が異議告知書の発出後に和解を申し出た場合,CMAは当該名宛人から提出された異議告知書に対する意見について撤回を求めるなど)
  • 行政手続官(Procedural Officer,訳注)の役割の範囲の明確化

  (訳注)行政手続官は,審査対象者がCMAの審査手続上の問題を提起した場合等に対応し,CMAの審査等からの独立性が確保されている。

 本ガイダンスは,以下の内容を除き,上記以外の現行のガイダンスの変更を提案するものではない。

  • 軽微な字句の修正
  • 出頭命令に基づく事情聴取をリモートで実施することを可能とする文言の追加
  • 「英国安全衛生庁の事情聴取において従業員に同席する事務弁護士に関する事務弁護士規制当局(Solicitors Regulation Authority)のガイダンス」を引用する注意書きの削除
  • 異議告知書等に対する意見の提出期限の延長を考慮するCMAの運用の明確化
  • 口頭審理の出席者に関するCMAの要望の明確化(弁護士の同席は可能だが,名宛人の代表者の出席を要望するなど)
  • 1998年競争法違反に係る審査中の事業者の役員に対する役員資格剥奪命令に関するCMAの手続の明確化(CMAが1998年競争法に基づく審査中の事業者と和解し,当該事業者の役員等に対し役員資格剥奪命令を求めないことを決定した場合,事業者との和解の時点で,その旨を当該役員等に通知するなど)
  • 英国のEU離脱を踏まえ,EU法の引用の削除
 

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