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オーストラリア
オーストラリア競争・消費者委員会は,デジタル・プラットフォームサービスに係る調査の中間報告書を公表
2020年10月23日 オーストラリア競争・消費者委員会 公表
原文 原文【報告書本体】
【概要】
オーストラリアにおいては,お互いの連絡手段として,オンラインのメッセージサービスの利用がますます増加しており,特にFacebookやAppleの提供するサービスが選択されている。
本日,オーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)が公表したデジタル・プラットフォームサービスに係る調査の中間報告書によると,新型コロナウイルス感染症の感染拡大の期間において,職場や学校がリモート対応となり,人々が対面コミュニケーションの代替手段を求めたため,オンラインのメッセージサービスの利用が大幅に拡大した。
中間報告書は,オーストラリアにおけるオンラインのメッセージサービスの利用について調査した結果であり,ソーシャルメディアや検索サービスに関するACCCの過去の調査結果(訳注:2019年7月にACCCが公表)を更新し,デジタル・プラットフォームにおける競争と消費者に関する課題を洗い出した。
Facebook Messenger(訳注:Facebookが提供するメッセージサービス)については,2020年6月,オーストラリアにおける月間アクティブユーザー数が推計1470万人であり,FacebookのWhatsAppについては,同アクティブユーザー数が推計800万人であった。
Appleは,FaceTime(訳注:iPhoneなどにおいてビデオ通話や音声通話ができる機能)に加え,iPhoneにプリインストールされたメッセージアプリを通じて,デフォルトとしてiMessageサービス(訳注:Appleが提供するメッセージサービス)を使用できるようにしており,同メッセージアプリは他のApple端末においても使用される。オーストラリアにおいて使用されているモバイルOSの約半分は,AppleのiOSである。
ACCCのSims委員長は,以下のとおり述べた。
「多くのオーストラリア人は,特に新型コロナウイルス感染症の感染拡大の期間において,オンラインのメッセージサービスを利用するようになった。そして,多くのオーストラリアの消費者は,今日,様々なメッセージサービスを利用している。」
「消費者は,一般に最も利用されているメッセージサービスの利用を選択する。なぜなら,友達や家族,同僚や知人も同じメッセージサービスを利用している可能性が高く,また大部分のメッセージサービスは,異なるサービスの利用者にメッセージを送受信することを認めていないからである。」
「このことは,大規模な事業者が小規模な新規参入者に比べ,相当の競争上の優位性を有していることを意味する。」
ACCCによって実施された本調査の結果,オンラインのメッセージサービスプロバイダーや広告サービス供給事業者などの多くのデジタル・プラットフォームは,クッキー,ソフトウェアの開発キット等を通じて,ユーザーのオンラインやモバイルアプリ上での活動を広範に追跡することが可能であることが明らかになった。
また,大手プラットフォーム及び広告サービス供給事業者は,Androidアプリから広範なユーザー情報を受け取ることが可能であることが明らかになった。
さらに,ACCCは,オンラインのメッセージサービスに係る利用条件や規約について調査したところ,そのほとんどにおいて,広範なユーザー情報の収集を認める内容が含まれている一方で,ユーザーのデータの収集,利用,又は共有方法については,ほとんど明確にされていないことが判明した。
ACCCは,音声認識端末や拡張現実・仮想現実サービスなどの新興技術が,プラットフォームによる消費者データの収集能力を一層拡大させる可能性があると考えている。
Sims委員長は,以下のとおり述べた。
「大手プラットフォームが膨大な消費者データを収集し続け,新規分野に進出し,そのエコシステムを拡張させ,それに伴ってその市場支配力や消費者を引き込み,ロックインする能力を増強している。」
「このようなサービスの拡大は消費者に利益をもたらすが,競争と消費者の選択に与える影響について,十分に監視され,検討される必要がある。」
また,ACCCの本調査では,携帯端末上においてGoogle Searchを利用する消費者は,商品検索のためにデスクトップやノートパソコン上でGoogle Searchを利用する場合より,商品の検索結果の画面に多くの広告が表示されることが判明した。Google Searchの利用の約半数が携帯端末からであることを踏まえると,この表示の違いは重要であり,消費者が自身のニーズに最も合致する情報を見付ける能力や小規模事業者がオンラインで顧客を獲得する選択肢に影響を与える。
さらに,ACCCは,プラットフォームと事業者との間の標準的な契約におけるプラットフォーム上に広告を掲載する利用条項が,小規模事業者に非常に不利な内容であり,不公平なものとなっている可能性があることを確認した。例えば,いくつかの条項は,プラットフォームに対して,コンテンツを削除し,アカウントを一時凍結又は停止し,通知なしに利用条件を変更することができる広範な裁量を与えていた。
Sims委員長は,以下のとおり述べた。
「我々は,プラットフォームと事業者との間の不満や紛争に対処するための効果的な紛争解決メカニズムの設置を主張し続けている。これは,ソーシャルメディアやメッセージサービスを利用した詐欺の犠牲になる可能性のある消費者にとって有益であろう。」
「また,我々は,不公平な契約条件の禁止(当該条件が使用された場合の罰則の適用)や特定の不公平な取引慣行の禁止を主張し続けている。」
ACCCは,引き続き,プラットフォームや,5か年(訳注:2020年から2025年)のデジタル・プラットフォームサービスに係る調査によって見出された課題を監視するともに,デジタル・プラットフォームに関する競争及び消費者の懸念に対処するため,海外の競争当局及び消費者保護当局と連携していく。
韓国
韓国公正取引委員会は,不動産情報検索,ショッピングサービス及び動画サービスにおいて自社を優遇したとして,ネイバーに対し,是正措置を命令
2020年10月7日 韓国公正取引委員会 公表
原文
【概要】
韓国公正取引委員会(以下「KFTC」という。)は,ネイバーが契約先の不動産情報提供業者に対して,不動産販売情報を第三者に提供することを禁止したとして,是正命令及び課徴金13億2000万ウォンの課徴金を賦課することを決定した。
ネイバーは,不動産情報提供業者がネイバー以外のプラットフォームに対して不動産販売情報を提供することを禁ずる契約条項を設けることにより,不動産情報提供業者がネイバーの競合事業者であるカカオと契約を締結すること妨げていた。これにより,カカオは,オンラインの不動産市場に参入することが事実上不可能となった。本件は,KFTCの情報通信技術タスクフォースによって審査が進められた初めての事案である。
また,KFTCは,ネイバーがショッピングサイト及び動画サービスの検索アルゴリズムを操作し,自社の商品やサービスを検索結果の上位に掲載されるようにし,競合事業者が販売する商品等の検索結果を下位に掲載していたとして,同社に対して是正措置を命じた。KFTCは,ショッピングサービスに関して265億ウォンの課徴金を,動画サービスに関して2億ウォンの課徴金を,それぞれ課した。ネイバーは,検索結果及びランキングを操作することにより,検索結果を信用する消費者を欺き,オンライン市場及び動画プラットフォームにおける競争を妨害した。本件は,プラットフォーム上の仲介者と競争者という2つの役割を果たすプラットフォーム事業者が検索アルゴリズムを自社に有利に働くように操作・調整していたとして,KFTCが是正措置を命じた初めての事案である。
KFTCの今回の決定は,検索エンジンに関して,①検索結果のランキングの決定に当たり自社の商品・サービスを有利にすること,②検索アルゴリズムを変更したにもかかわらず,当該変更について競合事業者に通知しないことといった行為については,市場の競争に影響を及ぼす場合には公正取引法違反になるという明確なメッセージを伝えるものである。
違反事実及び措置
分野 | 違反事実 | 措置 |
不動産 | 不動産情報提供業者による競合事業者への情報提供を妨害する独占契約の締結 | ・是正命令 ・課徴金10億ウォン |
ショッピング | 検索結果のトップに自社の商品を表示するため,検索アルゴリズムを操作 | ・是正命令 ・課徴金265億ウォン |
動画 | 自社コンテンツに追加的なポイントを付与し又はアルゴリズムを変更したにもかかわらず当該変更を競合事業者に通知しないことにより,検索結果を歪曲 | ・是正命令 ・課徴金2億ウォン |