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オーストラリア

オーストラリア連邦議会における,ニュースメディア・デジタルプラットフォーム義務的行動規約の本案審議開始から可決までの経緯

2021年2月12日,16日,23日及び25日 オーストラリア財務省及び通信省 公表
原文(12日) 原文(16日) 原文(23日) 原文(25日)

【概要】訳注:オーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)は,財務省の所轄に属する機関である。
 
1 2021年2月12日公表

 オーストラリア政府は,ニュースメディア・デジタル・プラットフォーム義務的行動規約(以下「本規約」という。)の制定に係る法案を変更しないよう提言する内容の連邦議会上院経済立法委員会の報告書を歓迎する。世界の先駆けとなる本規約は, ACCCの広範な調査の結果,策定されたものである。
 本規約の目的は,オーストラリアの公共放送局を含むオーストラリアのニュースメディア産業の多様性及び持続可能性を支援し,ACCCが確認したデジタル・プラットフォーム事業者及びニュースメディア事業者間の交渉力の不均衡に対処することにある。
 本規約は,デジタル・プラットフォーム事業者とニュースメディア事業者が契約を締結するための枠組みを構築し,そして,ニュースメディア事業者が作成したコンテンツを利用してデジタル・プラットフォームが上げた収益に応じて,コンテンツを作成したニュースメディア事業者が公正な対価を得られるようにするものである。
 政府は,デジタル・プラットフォーム事業者及びニュースメディア事業者が,本規約が奨励する協力と善意の精神に基づいて,契約の締結に向けて建設的に協議することを期待している。

 
2 2021年2月16日公表

 政府は,本規約の運用を改善し,かつ,オーストラリアにおける持続可能な公共の利益に資するジャーナリズムを育成する能力を強化するための技術的な修正を行う。
 2020年12月9日,本規約が連邦議会に上程され,同上院経済立法委員会の支持を得たことを背景に,ニュースメディア事業者とデジタル・プラットフォーム事業者との間で,契約が締結されつつあるとする最近の状況は歓迎される。
 政府は,本規約の全般的な効果を維持しつつ,その機能性を改善するために,以下のとおり,多岐にわたる記載の明確化と技術的な修正を行う。
・デジタル・プラットフォーム事業者によるアルゴリズムの変更に係る事前通知の要件を適正化し,実行しやすくする。
・デジタル・プラットフォーム事業者及びニュースメディア事業者双方の合理的なコストを考慮するものとして,仲裁基準を明確化する。併せて,仲裁に基づくコンテンツの対価が一括払いでなければならないとする疑念を排除するために法案の文言を修正する。
・本規約において,仲裁人を支援するため,ACCCが事実に係る情報の提供を中心とした役割を果たすことを明確化する。
・本規約の施行に伴い効力を発する適用回避防止規定を整備する。また,本規約施行以前の既存の契約上の権利を妨げないとする政府の立法趣旨を明確化する。

 
3 2021年2月23日公表

訳注:同月18日,Facebookは,オーストラリアのユーザーに対するニュースコンテンツ提供を停止した。また,報道によれば,同停止後,Frydenberg財務大臣は,FacebookのZuckerberg CEOと連日電話会談をしたとされる。
 政府は,本日,本規約の再修正を行う。
 本修正は,デジタル・プラットフォーム事業者及びニュースメディア事業者に対して,本規約の意図に沿って,以下のとおり運用方法を明確化し,ニュースメディア事業者に対する公正な対価を保証するための枠組みを強化するものである。
・政府が本規約の対象となるプラットフォーム事業者を指定するに当たり,デジタル・プラットフォーム事業者がニュースメディア事業者との契約の締結に至る際に,オーストラリアのニュース産業の持続可能性に大いに貢献するものであるかどうかを考慮しなければならない。
・デジタル・プラットフォーム事業者は,政府が本規約に基づき指定する前に,政府から事前通知を受ける。また,最終的な決定は,前記通知の日から少なくとも1か月を経てから行われる。
・非差別条項は,ニュースメディア事業者とデジタル・プラットフォーム事業者との間で締結された契約が通常の商習慣による交渉の結果,異なる対価の総額や条件が生じた場合には,発動されない。
・仲裁は,仲裁申立ての前に誠実な交渉を2か月間行い,契約が成立しない場合の最終的な解決手段である。
 
 重要な点は,本修正により,地方や小規模の出版社が,デジタル・プラットフォーム事業者によるコンテンツの使用に係る適正な対価を得るための手立てが強化されることである。
 また,法案概説資料(Explanatory Memorandum)において,本規約は,デジタル・プラットフォーム事業者が自社のサービスを通じてニュースコンテンツを提供している場合に限り適用される。
 なお,政府は,Facebookから,数日中にオーストラリアのニュースページを復帰させる意向を伝えられている。

 
4 2021年2月25日公表

 本日,議会で本規約が可決された。
 本規約は,当事者間の誠実な交渉と,未解決の紛争を解決するための公正で均衡のとれた調停手続の枠組みを提供するものである。
 本規約では,デジタル・プラットフォーム事業者とニュースメディア事業者が,規約に規定された形でない交渉(訳注:調停に基づかない任意の交渉)を奨励している点が重要であり,この点について,政府はGoogle及びFacebookによるオーストラリアのニュースメディア企業との契約締結に向けた直近の取組を歓迎する。
 本規約は,重要なミクロ経済改革の一つであり,世界中からオーストラリア連邦議会に注目が集まっている。本規約の法制化という我々の責任は,オーストラリアにおける民主主義と国民にとって,多様で十分なリソースを持つニュースメディア産業が重要であることを反映したものである。
 政府は,本日までのプロセスに貢献した関係者全てに感謝する。特に,ACCCは,本規約の起草につながる画期的な調査を行った。
 本規約については,政府の立法趣旨に合致する結果をもたらしたかどうかを確認するため,施行から1年以内に,財務省が研修をすることとしている。

 

カナダ

カナダ競争局は,デジタルヘルスケア分野におけるイノベーション,アクセス及び選択肢についてパブリックコメント結果を公表

2021年2月24日 カナダ競争局 公表
原文 原文(国民からのパブリックコメント) 原文(関係事業者等からのパブリックコメント)

【概要】
 ヘルスケアは,カナダ国民にとって最重要課題の一つであり,デジタル技術は,カナダ国民のヘルスケアのニーズを満たすために利用され得る。本日,カナダ競争局(以下「競争局」という。)は,カナダ国民,関係事業者等から,調査及びパブリックコメントを通じて受け取ったコメントの要点を公表した。
パブリックコメントの結果は,競争局によるデジタルヘルスケア分野(訳注:デジタル技術を用いた医療提供を中心とする,幅広い健康管理・保健サービス分野)の継続中の調査に反映される。本調査は,競争促進政策を通じて,カナダにおけるデジタルヘルスケアを支援する方法の模索することを調査の目的とする。競争促進政策は,イノベーション並びに国内のデジタルヘルスケアに対する選択肢及びアクセスを提供することができる。
競争局は,次の段階において,調査範囲を詳細に設定した市場調査告示を公表し,今後の工程表を示すこととなる。
 
1 カナダ国民からのパブリックコメント結果を取りまとめた報告書の要点
○ 回答者 425名
○ 回答者の72%が,かかりつけ医を通じてデジタルヘルスサービスを受けている。
○ 回答者がデジタルヘルスサービスで利用する手段のトップ3

電話による医療上の助言 72%
オンライン予約 58%
健康状態を監視するためのウェブサイト,スマホアプリ又は相互オンラインツール・サービス 42%

○ 回答者がデジタルヘルスサービスを利用する際に重要視する点

ケアの質 86%
データセキュリティ 77%
容易なアクセス 74%
容易な操作方法 73%
データプライバシー 72%
迅速性 70%
利便性 68%
費用 52%

○ 回答者が挙げたデジタルヘルスサービスの障壁トップ3

デジタルヘルスサービスを利用するための情報が不十分 23%
理学療法士,歯科医,眼科医,カイロプラティック療法士等の専門家がデジタルヘルスサービスを提供しない 21%
かかりつけ医がデジタルヘルスサービスを提供しない 20%

○ 回答者が挙げたデジタルヘルスサービスをさらに活用する方法トップ3

かかりつけ医によるデジタルヘルスサービスの提供 47%
デジタルヘルスサービスの選択肢の増加 47%
専門家によるデジタルヘルスサービスの提供 40%

 
2 関係事業者等からのパブリックコメントの大要
  回答した35の関係事業者等(デジタルヘルス事業者11社,カナダ全体の健康団体5者,規制監督機関4者,保険事業者3社等)から寄せられた回答は,大要以下のとおり。
(1) 相互互換性の欠如
ア 健康情報
・半数以上の回答者から,相互互換性の欠如がデジタルヘルスケアの障壁となっているとの意見
・健康情報へのアクセス及び共有を可能にすることで,国内でのデジタルヘルスケアの発展の基盤になるとの多数の意見
・カナダ全体における健康情報のフレームワークの設定がデジタルヘルスケアの発展に寄与するとの多数の意見
・英国,オーストラリア及びデンマークにおける取組を挙げ,相互互換性の障壁に対処するための方法を提案する一部の意見あり。
イ 個人情報
・個人情報の保護を講じつつ,相互互換性を要求するのであれば,デジタルヘルスソリューションの参入障壁を低減し得るとの意見
(2) 医療従事者への報酬
・半数以上の回答者から健康保険,支払条件,医療従事者への報酬率,支払モデル等について言及があり,報酬は,医療提供者が医療を提供する,また,カナダ国民が治療を求めるインセンティブとして機能するとの意見
(3) 調達及び商業化
・現行の医療技術の承認及び公共調達のプロセスは長期にわたり,複雑で,透明性に欠けているとの意見
・現行プロセスは,技術革新へのインセンティブを低下させ,中小企業がカナダ内外における競争力の発揮を制限されることになることから,ヘルスケア分野におけるイノベーションと選択肢の増加を促進するためには,調達と商業化のプロセスを改革する必要があるとの意見
(4) デジタル商品・サービス
・カナダ国内でも地域によって基準が異なることで,医療従事者による治療が,地域によっては制限されたり,企業や革新的なヘルスケアソリューションの参入・拡大が阻害されたりする可能性があるとする意見
・看護師や薬剤師などの医療従事者の業務範囲が限定されているため,特定の業務を行うことができず,結果的にデジタルヘルスケアが制限されてしまうという意見
・デジタルで提供可能な製品やサービスの範囲を限定する政策は,企業の参入や拡大の障壁となり,イノベーションを抑制し,選択肢を減少させ,コストを増加させる可能性があるとの意見
(5) デジタル技術へのアクセス格差
・アクセス可能で手頃な価格のデジタルインフラとテクノロジーの必要性を述べる意見
・デジタル技術の利用を支援し,デジタルリテラシーを向上させるための教育・訓練が重要であるとの意見
・社会的,経済的及び環境的要因が,国内におけるデジタルヘルスケアへのアクセスの容易性とアクセスの公平性に影響を与えているとの意見
(6) 患者の保護
・デジタルヘルスケアには,患者中心の視点が不可欠であるとの意見
・継続的なケアの重要性や,既存の患者・医療従事者間の関係を支援できるような方法でデジタルソリューションを設計・導入すべきとの意見
・セルフケアの重要性や,どこでどのように医療を受けるかをバーチャル又は対面から選択できるなどの選択肢の必要性を述べる意見
・前記(1)の互換性と重複するが,患者とその個人情報の安全性を重視する意見
・デジタルヘルスケアからの利益が,カナダ人のプライバシーや個人の健康情報の保護を犠牲によって得られてはならないことを強調する意見

 

フランス

フランス競争委員会は,電力小売事業者からの申立てを受け,フランス電力会社(EDF)に対する調査を開始

2021年2月18日 フランス競争委員会 公表
原文 原文(決定文)

【概要】
 フランスにおける電力小売事業者で地方公共団体も新規顧客とするPlüm Energie(以下「プラム」という。)は,Électricité de France(以下「EDF」という。)による価格設定方法について,フランス競争委員会に申立てを行った。
 
地方公共団体による電力小売事業者を選定する入札の実施までの背景
(訳注:フランス競争当局決定文の内容を補足して作成。)
 フランスの電力小売市場においては,1999年以降,まず,事業者向けの供給を対象として,次に,全ての顧客向けの供給を対象として,それぞれ段階的に電力自由化が進められている。しかしながら,地方公共団体は,自由化と並行して,法規制に基づく電気料率(以下「TRV」という。)によりEDFから電力供給を受け続ける選択肢も残存していたため,TRVを支払いEDFから電気供給を受けてきたが,法律によりTRVの対象となる顧客数は段階的に少なくなり,地方公共団体も自由化の対象となった。
 具体的には,法改正により,2021年1月1日以降,電力小売市場における顧客である事業者のうち,10名以上の労働者を雇用する事業者又は売上高が200万ユーロを超える事業者に対しては,TRVが適用されないこととなり,地方公共団体も,TRVの対象外の顧客となったため,新たに電力小売事業者を選択する入札を実施する必要が生じた。
 
プラムのEDFに対する申立て
 プラムがフランス競争委員会に提出した申立書によれば,地方公共団体が実施した電気小売事業者を選定する入札の際に,EDFは,原価を下回る電気料率で応札したとして略奪的な価格であったため,市場支配的地位の濫用に該当することから,プラムは,フランス競争委員会に対して,以下を内容とする暫定措置を採るように求めた。
・入札の募集に当たり,EDFの費用を上回る応札をすること。
・EDFの入札内容を事前に確認する第三者を任命すること。
・EDFは,価格設定及び事業方針に関し競争法を遵守していることについて,フランス競争委員会及びエネルギー規制委員会(CRE)に対し,毎月,報告書を提出すること。
 
暫定措置を採る緊急の必要の欠如
 フランス競争委員会は,申立てにおいて主張された価格設定方法が競争法に違反するおそれがあり,かつ,経済全体,当該業界又は消費者若しくは申立人の利益に重大かつ即刻の被害が生じるのであれば,緊急の暫定措置を命じることができる。
 本件では,まず,現段階の情報に基づけば,重大な違反が行われていたと立証できていない。実際のところ,EDFの入札料率による直接かつ明確な結果として,プラムが実際に失注することは立証できていない。また,プラムが市場での事業継続が困難になるほど,危機的状況にあるとする証拠もない。そして,EDFの競合他社が短期間で市場から排除されるおそれがあるとする証拠も乏しい(訳注:フランス競争当局はその決定文において,プラムが,本件申立以降もEDFの既存顧客を入札で獲得し続け,2019年と比較してその成功率は安定しているか,わずかに上昇していることに留意すべき旨述べている。)。
 フランス競争委員会は,以上の事実を詳細に考慮した結果,暫定措置の申立てを却下したものの,本件の実態については,引き続き調査すると決定した。

 

韓国


韓国公正取引委員会は,Uber及びT Map Mobilityによる合弁会社の設立を承認

2021年2月9日 韓国公正取引委員会 公表
原文

【概要】
 韓国公正取引委員会(以下「KFTC」という。)は,Uber Technologies及び T Map Mobilityによって,2020年10月22日に提出された両者による,タクシー呼出しサービス(自動車運転手と利用者をモバイルアプリ等で結びつけるオンラインプラットフォームサービス)の合弁会社の設立届について,2021年1月28日,これを承認した。出資比率については,Uber Technologiesが51%,T Map Mobilityが49%となっている。
 Uber Technologiesは,ライドシェアサービスの世界的なプラットフォームプロバイダーであり,韓国では「Uber Taxi」,「Uber Black」と称するサービスを提供している。一方,T Map Mobilityは,SKテレコムが,既存のモビリティ事業部門(T Map Taxi,T Map for Car,T Map Parking,T Map Public Transportation,T Map等のサービスを提供。)を2020年12月30日に分社化した際に設立した事業者である。
 新たな合弁会社は,Uber Technologies及びT Map Mobilityのタクシー呼出しサービスを引き継いで事業を展開するとともに,T Map Mobilityは,当該合弁会社にGPSサービスを提供する。
 KFTCは,本件企業結合計画が韓国国内のタクシー呼出しサービス市場における競争を制限するかどうか検討した結果,競争を制限するおそれはないと判断し,その旨を2021年1月28日,Uber Technologiesに通知した。
 KFTCは,本計画により,国内のタクシー呼出しサービス市場における競争の市場集中度にそれほどの変化はない一方,本計画は同市場の最大手であるのKakao Tに競争圧力をもたらすと判断した。また,KFTCはタクシー呼出しサービス市場及びGPSサービス市場の垂直的統合の観点からも審査したところ,本件結合により,市場閉鎖が生じるおそれは小さいと判断した。
 KFTCの今回の判断は,タクシー呼出しサービスのような新業態において技術革新競争を促進する観点から意義深いものである。
 KFTCは,引き続き,反競争的な企業結合には厳正に対処していく一方,競争制限効果がなく,技術革新を促進する案件は承認することにより,事業者の競争力の強化及び関連市場の活性化のための基盤を整備する。

 

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