その他

英国,オーストラリア及びドイツ

英国競争・市場庁,オーストラリア競争・消費者委員会及びドイツ連邦カルテル庁が企業結合規制の執行に関する共同声明を公表

2021年4月20日 オーストラリア競争・消費者委員会 公表
原文(公表文) 原文(共同声明本文)

【概要】
 新型コロナウイルス感染症(以下「感染症」という。)の拡大から各国が立ち直ろうとしている中,英国競争・市場庁(以下「CMA」という。),オーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)及びドイツ連邦カルテル庁(以下「連邦カルテル庁」)は企業結合規制の執行に関する共同声明を署名し,公表した。
同共同声明の概要は,以下のとおり。
 
本共同声明の目的
 CMA,ACCC及び連邦カルテル庁は,厳格かつ効果的な企業結合規制の執行の必要性について競争当局間で共通の理解があることを,産業界,代理人,裁判所及び政府に対して強く印象付けるため,この共同声明を公表する。本共同声明は,英国,豪州及びドイツの様々な市場における高い集中度と,ダイナミックでペースの速い市場等における企業結合審査件数の著しい増加に直面したことを踏まえて策定されたものである。感染症の拡大を含め,経済が弱体化している中,効果的な企業結合規制の必要性が依然として重要である。
 事前規制である企業結合規制がもたらす特有の不確実性と,審査中の企業結合事案の性質や複雑性の変化が相まって,反競争的な企業結合による更なる集中を長期的に阻止することが課題となっている。消費者及び経済に良好な結果をもたらすためには,競争当局,裁判所及び審判所による決定が,企業結合規制の根底にある競争の重要性及び経済原則に十分な裏付けを与えることが重要である。
 
企業結合規制の目的
 企業結合規制の目的は,反競争的な企業結合が阻止されることによって,消費者が,効果的な競争がもたらす低価格,高品質の商品及びサービス,幅広い選択肢並びにイノベーションから恩恵を受けられるようにすることである。競争は,市場に対する消費者の信頼を高め,市場経済の機能と経済的繁栄を促進する。
 強力な企業結合規制が存在しない場合,競争圧力を弱め,時には市場支配的地位を強化することによって,市場における競争の水準を低下させるような企業結合が実行されるリスクがある。効果的な企業結合規制は,企業が買収を通じて市場支配力を獲得しないようにするものである。企業は,一般的に,消費者利益を犠牲にして市場支配力によって得た利益を,株主の利益を増やすために利用しようとする。
 企業結合による長期的な構造的影響を考慮すると,企業結合を適切に審査しない非効果的な企業結合規制は,取引先企業や最終消費者に対して長期的な負の影響をもたらす可能性がある。そのような企業結合が実行された後で対抗策を講じたとしても,失われた競争を回復させることは,非常に困難であり,場合によっては不可能である。同様に,企業結合によって失われた競争を回復するために,市場が調整されるには相応の時間を要することがある。
 
感染症の拡大の影響
 感染症の拡大の結果,企業は困難な状況に直面しており,その結果,企業結合が増加する可能性がある。しかし,こうした経済状況の悪化や企業が直面する困難は,消費者が,反競争的な企業結合によって生じる競争の喪失による損失を負担しなければならないことを意味するものではない。
 感染症の拡大は,企業結合が最終的に評価される基準を緩和する理由として利用されるべきではない。企業結合審査は,企業結合の長期的な結果に焦点を当て続けることとする一方で,短期的な市場の特徴に過度に焦点を当てないことが重要である。例えば,感染症によって,妥当な破綻企業の抗弁の使用頻度が増すことは考えられるかもしれないが,感染症の拡大はそのような抗弁を採択するために立証基準を低くする理由にはならない。場合によっては,感染症の拡大による短期的な影響を企業結合審査に織り込む必要があるかもしれないが,その際は市場の全ての事業者に与える影響を考慮する必要があり,競争当局の評価は厳格かつ証拠に基づいたものであり続けなければならない。特に,競争当局は,感染症の拡大の影響に関する憶測や根拠のない主張に基づいて,評価を行うことはできない。
 
企業結合規制の課題
 競争当局は,将来の市場の状況や企業行動について審査をする際に,困難な課題に直面する。また,企業結合審査が事前規制であるということは,意思決定を行う際に,常に競争当局が不確実性に直面することを意味する。しかし,将来に関する不確実性は,潜在的に反競争的な企業結合が,その不確実性のために必ず認められることを意味するものではない。それは,一見小さな取引であっても,競争的な市場が反競争的な方向に傾く可能性があるからである。例えば,小規模なスタートアップ企業の買収が,実際には,買収者にとっては,長期的には大きな競争上の脅威となっていたはずの相手に対する買収であったという事態があり得る。
 したがって,不確実性に直面した場合,競争当局は,企業結合の当事会社とその代理人が主張する,企業結合は一般的に効率性を高めるものであり,明らかに重大な損害が生じる場合にのみ禁止されるべきであるという前提に,積極的に異議を唱えることが重要である。
 競争当局は,ダイナミックでペースの速い市場での企業結合を審査する機会が増加している。これらの企業結合には,まだ研究・発達段階の商品やサービスを含め,関連市場における何百もの商品やサービスが含まれる可能性がある。加えて,過去10年間には,様々な市場で積極的に買収を行う大手ハイテク企業が台頭してきている。これらの市場における反競争的な企業結合は,これらの商品やサービスの重要性が増し,様々なサービスを跨いだ長期にわたるデータの集積が進んでいることを踏まえると,重大な損害をもたらすおそれがある。また,技術市場は,ネットワーク効果による参入障壁の高さなどを特徴とした高度に集中した市場の例となり得る。その結果,高度に市場シェアが集中することになり,市場支配力は容易に創出され,定着し,長期間存続するおそれが高い。
 既存の事業者が,小規模な事業者や隣接市場からの潜在的参入者という形の潜在的な競争事業者を買収することによって,市場での地位を守ろうとする場合には,消費者に損害が生じる可能性がある。これは,企業結合がなければ,いずれか又は両方の企業結合の当事会社による新規参入又は拡張が,両者間の競争を創出又は拡大させていた可能性がある場合に当てはまる。たとえ参入の可能性が高いとしても,新規参入の脅威が存在することにより,既存の事業者を制約することはあり得る。このことは,新規参入が起こった場合に,既存の事業者の利益に大きな影響を与える可能性が高い場合には特に当てはまる。
 企業結合の当事会社とその代理人は,しばしば,自社による企業結合が競争を活性化させると主張する。これは,一般的には,企業結合が相乗効果(シナジー),その他の効率性を生み出すという主張に基づいている。我々の経験によれば,企業結合の当事会社は,効率性のメリットとその結果,市場にとってより競争的な結果がもたらされることを過剰に主張する。長期的な構造変化と,企業結合によってもたらされる明らかな競合関係の喪失を踏まえると,競争を保護するためには,検証や予測が困難な競争促進的利益に関連する主張を受け入れるよりも,問題のある企業結合を防止する必要がある。
 事業者はしばしば,市場についての自らの見解を強く擁護する法律事務所やエコノミストによって助言され,代理される。競争当局(及び場合によっては,裁判所や審判所)は,そのような擁護を検証しつつ,証拠,特に文書及びデータを調査し,彼らの主張が根拠のあるものであるかどうかを判断する任務を負う。
 企業結合審査のプロセスは,当事会社の主張を裏付ける,又は反論する証拠を得る際に,競争事業者と顧客(多くの場合,誰も彼らの立場を代弁する者がいないか,審査にあまり関与していない。)に依存している。しかし,一部の企業(供給者,競争事業者又は顧客のいずれであるかを問わない。)が,結合後の企業との取引関係を危うくするような情報を競争当局に提供することに消極的であることは珍しくない。特に,結合後企業が主要な顧客や供給者である場合には尚更である。また,個々の消費者は,利害を代表するための調整が容易でないことが多い,異質で細分化されたグループにいることも重要である。このため,競争当局,裁判所及び審判所は,単に当事会社が企業結合審査のプロセスにより関与しているという理由で,競争事業者や顧客,消費者の見解よりも当該当事会社の見解を受け入れてしまうというリスクを認識する必要がある。
 
問題解消措置
 競争当局は,効果的な企業結合審査を確保する観点から,関連市場の将来の発展に係る不確実性が企業結合計画を当然に承認する決定へとつながることのないように,自らのアプローチを再評価する機会を待つべきである。実際のところ,つまり,競争を維持させる問題解消措置を求めるために企業結合に介入する,それが不可能な場合には,企業結合を禁止するということである。
 ダイナミックな市場はますます複雑化し,競争当局は,将来を見据えた評価を行う必要性が高まっているため,行動的な措置よりも構造的な措置を求める必要がある。複雑な行動的問題解消措置は,継続的な経済的結びつきと依存を生み出すものの,企業結合前の市場の競争の激しさを再現する可能性が低く,大きな回避リスクをもたらし,市場の状況が変化するにつれ,すぐに時代遅れとなる可能性があると,広く認識されている。状況によっては,市場の自然な発展を歪めることもある。また,行動的問題解消措置は,結合後企業及びその行動に対する広範なモニタリングを必要とするため,競争当局及び産業界に負担を強いることとなる。
 一方,構造的問題解消措置は,企業結合の禁止であるか独立した事業の売却であるかにかかわらず,競争を維持し,利害関係者にとって最適な解決策となる可能性が高く,それゆえ消費者にとって最善の利益となる。重要なことは,失われた競争を取り戻すために事業の売却が効果的でないという場合には,企業結合の禁止に求められる立証水準は高くならないようにするという点である。実際に,競争と消費者の保護は,企業結合を完全に禁止することによってのみ達成できる場合がある。
 
将来的な提言
 企業結合規制が効果を発揮することは,自由な市場経済の中で競争的な市場を確保するためには欠かせない。競争によって,価格が下落し,品質,選択の幅及びサービスが向上し,企業のイノベーションが促される。競争は,反競争的な企業結合を禁止することによってのみ維持することができるのであり,このことは,感染症の拡大の影響を受けて急速に発展しているデジタル世界においては,さらに強調されるべきである。今日の世界において,我々競争当局は,高い集中度が一般に常態とならないようにし,消費者の利益のための競争を維持・促進するために,世界中の競争当局による強力な企業結合規制の執行が真に必要であると考えている。これを達成するために,競争当局,裁判所及び審判所は,疑義のある企業結合によって生じる不確実性がある場合には,競争を保護し,当事会社の利益に優先して消費者の利益が促進されることを確保するよう強く奨励される。

 

オーストラリア

オーストラリア競争・消費者委員会は,モバイルアプリ市場に関する調査の中間報告書を公表

2021年4月28日 オーストラリア競争・消費者委員会 公表
原文

【概要】
 オーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)は,アプリ開発事業者がアプリストアと取引をする際の公正で合理的な取引条件及びアプリ市場におけるGoogleとAppleの市場力に対処するためのアプリの承認プロセスの改善を必要としているなどとする報告書を,本日公表した。
 ACCCのデジタルプラットフォームサービスに係る調査の2件目の中間報告書(訳注:1件目は2020年10月に公表されたオンラインプライベートメッセージングサービスに関する中間報告書)は,オーストラリアにおけるモバイルアプリの流通において,AppleによるApp Store及びGoogleによるPlay Storeが大きな市場力を有しており,これに対処する措置が必要であると示している。
 ACCCのSims委員長は,以下のように述べている。
 「アプリはどこにでも存在し,私たちの日々の生活に欠かせないものとなっている。ニュースをチェックしたり,友人と連絡をとったり,動画ストリーミングのプラットフォームで最新のドラマをチェックしたり,乗り物を呼んだり,食事を注文したり,オンラインショッピングをしたりする際に,私たちはアプリを使用することとなる。消費者がAppleの携帯端末を使用している場合には,アプリはAppleによるApp Store経由でしかダウンロードができない。そして,Android OSで動く携帯端末を使用している消費者は,アプリをダウンロードする主なサイトはGoogleが運営するPlay Storeとなる。
 AppleとGoogleが提供するアプリストアは,消費者とアプリ開発事業者の間のゲートウェイであり,両者に多大な利益をもたらしているのは事実である。しかし,この市場の運営方法には重大な問題がある。
 AppleとGoogleは,アプリストアを運営するだけでなく,自社もアプリを提供してアプリ市場においてアプリ開発事業者と競争をしている。彼らは他の事業者のアプリよりも自社のアプリを宣伝する能力とインセンティブを有しており,また,彼らの競争相手であるアプリ開発事業者がアプリストアにアクセスするために遵守しなければならない条件をコントロールしている。
 この市場力に対処するために,アプリ開発事業者はどのようにすれば自社のアプリが消費者の目に留まるのかについて多くの情報を持つべきであり,また,消費者はプリインストールされているアプリを変更・削除できるようになるべきだと考えている。また,AppleとGoogleは,第三者から収集した情報を自社アプリが有利にする目的で使用しないようにするべきである。
 また,ACCCは,アプリ開発事業者がアプリ内課金について,AppleとGoogleによる決済システムしか使用できないという制限を課されていることについても懸念している。
 さらに,AppleとGoogleは悪質なアプリをアプリストアから除外する取組を行なっているが,例えば詐欺的な定期課金(subscription trap)その他詐欺行為などを特徴とするアプリを予防・除外するために,より多くの取組ができると考えている。
 こうしたアプリによって被害を受け,また,支払いの問題等で係争を抱えている消費者が,より良い補償や解決策を求めているのは明らかである。このような状況下においては,以前ACCCが提言した,AppleやGoogleを含むデジタルプラットフォーム事業者のための外部紛争解決機関の必要性が,さらに強調されるべきである。
 ACCCは,今回の調査結果を受けて,消費者が全てのアプリを評価・レビューできるようにすること,消費者が端末にプリインストールされているアプリを変更できるようにすること,アプリ開発事業者が他の支払い方法に関する情報を消費者に提供できるようにすること,AppleやGoogleがアプリストアの運営事業者として収集した情報は,他の事業とは切り離して管理(ring-fenced)することといった一連の推奨される措置案を提唱している。
 我々は,対策の実行が求められる多くの課題を提示し,特に懸念のある課題に対処するための推奨される措置案を提唱した。また,AppleとGoogleにとっても,報告書が明らかにした措置案を実行することによって,アプリ開発事業者と消費者の利益の増進に貢献する機会となる。
 ACCCは,5年間のデジタルプラットフォームサービスに係る調査の期間中に,本件報告書において提起された問題を再検討するものの,Apple及びGoogleが今回特定された懸念に対処するための行為をとるならば,それらの行為を考慮することになるだろう。
 また,ACCCは,同様の懸念を示した他国における重要な提案や法令の変更も考慮に入れる予定である。ただし,AppleやGoogleが今回の懸念に対処する策を講じなかった場合には,規制が必要となる可能性がある。」
 
背景
 ACCCのデジタルプラットフォーム課(Digital Platform Branch)は,財務大臣の指示を受けて,オーストラリアにおけるデジタルプラットフォームサービスの市場及びそれらの競争と消費者に及ぼす影響について,5年間の調査を行っている。この調査は,6か月ごとに財務大臣に報告され,様々な形のデジタルプラットフォームサービス,広告サービス,データ仲介事業等を調査するものである。
 ACCCによる3件目の報告書は,2021年9月30日までに財務大臣に提出される予定であり(訳注:同報告書はウェブブラウザー及び検索エンジンの市場並びに消費者に対するそれらの選択画面が競争促進的かどうかについてのものとなる予定),その際,ACCCは,欧州において,Googleが新しいAndroid端末での検索エンジンのオプションを展開することについて,オーストラリア政府に助言をすることしている。
 さらに,ACCCは,デジタル広告サービスについても現在調査中であり,最終報告書は2021年8月31日までに財務大臣に報告される。

 

英国

英国競争・市場庁内にデジタルマーケットユニットが発足

2021年4月7日 英国競争・市場庁 公表
原文 

【概要】
 英国競争・市場庁(以下「CMA」という。)内に,オンライン市場改革において大きな役割を担うデジタルマーケットユニット(以下「DMU」という。)が発足した。DMUは,消費者に自らの個人情報の取り扱いに対してより多くの選択肢と管理権を与え,オンライン市場の競争を促進することを目的として,消費者及び企業の選択肢を狭め,より高価な商品やサービスを課すような不公正な商慣習の取締りを行う。
 オンラインプラットフォームは,仕事の効率を上げ,人々の交流の助けとなり,企業や社会に対して莫大な利益を与える。しかし,少数の企業に市場力が集中することによって,成長が妨げられ,オンラインプラットフォームに依存している消費者や企業に悪影響を及ぼすことは広く認識されている。
 2020年11月,英国政府は,戦略的市場地位(strategic market status)として知られている著しく強大な市場力を有しているプラットフォームを監督するため,新たな競争促進的な規制枠組みを構築することを目的とした,新たなユニットの立上げを発表した。本日,その新たなユニットが発足した。DMUには今後完全な法的権限が与えられる予定だが,それに先立ち,本日,非法定の「影」(shadow)の形で最初の作業プログラムを開始した。
 
 英国政府はDMUに対し,広告やサービスを消費者に提供する際にデジタルプラットフォームに依存している中小企業等とデジタルプラットフォームとの関係を公正化するために行動規約(Codes of conduct)が実際にどの程度有効なのかについて,調査を開始するよう指示した。DMUは,競争を促進する視点から,デジタル市場の広範囲にわたるプラットフォームの役割を調査する際に,産業中立的な方法を採ることとする。
 デジタル担当大臣は,DMUに対し,プラットフォームとニュース配信会社などのコンテンツ・プロバイダーとの関係を,可能な限り公正かつ合理的なものにするために規約の中でどのように規定するべきかについて,通信規制機関であるOfcom(英国通信庁)と協力して,具体的に検討するよう求めた。
 これは,将来の道筋を示すものであり,新型コロナウイルス感染症の拡大を通じた支援策等に続いて,報道機関の持続可能性を高めるために政府が行っている幅広い活動と並行して行われるものである。
 
 Dowdenデジタル担当大臣は,次のように述べている。
 「本日は,消費者,起業家,コンテンツパブリッシャーが中心となる,世界で最も競争力のあるオンライン市場を構築するための大きな節目となる日である。DMUの発足を受け,私は,プラットフォームとコンテンツ・プロバイダー,プラットフォームとデジタル広告主の関係の調査を開始するよう指示した。これにより,新しいデジタルサービスの開発と低価格化への道が開かれ,消費者は自らの個人情報のこれまで以上の選択と管理が可能になり,表現の自由と民主主義の価値にとって欠かせないニュース産業を支えることができる。」
 
 Kwartengビジネス担当大臣は,次のように述べている。
 「DMUの発足は,消費者の選択肢を増やし,より良いサービスを低価格で提供するという我々の目標に向けた重要な一歩である。英国は世界的な技術ハブとして羨望の的となっており,私たちはこれを継続させたいと考えている。しかし,私は,中小企業や新興の起業家,さらには広く英国国民にとって公平なシステムにしなければならないと考えている。私たちの競争を促進する新たな制度は,巨大テクノロジー企業の支配を抑制し,市場全体に革新を波及させ,中小企業の排除防ぐことにつながるだろう。」
 
 Coscelli CMAチーフエグゼクティブは,次のように述べている。
 「インターネットで買い物をしたり,情報を共有したりする人々は,ダイナミックで競争の激しい市場で得られる選択肢,自らの情報の安全性及び公正な競争価格を享受できるべきである。本日は,デジタル市場における公正な競争環境の構築に向けた新たな一歩である。DMUは,この分野で世界をリードする専門家の拠点となり,必要な権限が与えられれば,イノベーションの発展と消費者のためのより良い成果の確保において重要な役割を果たすと確信している。」
 
 本年,英国政府は新たな競争促進的な規制枠組みの制度設計を行うため,議会スケジュールの許す限り速やかに,DMUに法的権限を与えるための作業を進めていくことになる。
 DMUは,競争を阻害し,消費者や企業に対して悪影響を与えるデジタル企業の商慣行を調査しているCMAの執行部門と緊密に連携することとなる。これには,GoogleやAppleに対する法執行やFacebookやeBayに関する詳細な合併審査も含まれる。
 また,本日,英国政府は,DMUの職務や初年度の取組に向けた業務の概要を公表した。これは,産学官が連携して,エビデンスや知識,専門性を蓄積することを含むものである。これらの取組を進めることで,新たな競争促進的な規制枠組みが法定化されれば,DMUは可能な限り迅速に任務を遂行することが可能になる。
 DMUは,これらの問題に取り組んでいる世界中の国々とともに,国際的な連携を進めていく。そして,英国は,この分野での議論を形成する世界のリーダーであり続ける。
 英国は,既に二国間の協議やG7の議長国を通じて,国際的なパートナーと共にデジタル競争へのアプローチについて議論しているところである。デジタル担当大臣は(2021年)4月中にもデジタル技術大臣会合を招致し,より望ましい情報共有に係る連携や,規制的及び政策的アプローチの融合に向けたコンセンサスを得ることに努める。
 DMUは,ICO(情報コミッショナー事務局)やOfcom,FCA(金融行為規制機構)等の重要な規制当局と緊密に連携していく。それにより,消費者や企業は包括的に保護され,新たな規制枠組みは明確で効果的なものとなっていく。


ページトップへ