最近の動き(2021年8月更新)

英国

CMAがFacebookの広告データ利用について調査

2021年6月4日 英国競争・市場庁 公表
原文

【概要】
 英国競争・市場庁(以下「CMA」という。)は,Facebookが,クラシファイド広告や出会い系サービス(online dating)を提供するに当たり,特定のデータの収集・利用方法によって競合他社よりも不当に有利な立場を得たか否かを確認するため,調査を開始した。
 Facebookは,他の事業者がFacebookユーザー向けに広告を掲載できるデジタル広告サービスや,FacebookユーザーがFacebookのログイン情報を使って他のウェブサイトやアプリ,サービスにサインインできるシングルサインオンの仕組みを通じて,データを収集している。
 CMAは,Facebookが広告やシングルサインオンによって得られたデータを,自社サービス,特に,ユーザーや事業者が商品を販売するための広告を掲載できる「Facebook Marketplace」及び2020年に欧州で開始した出会い系サービス「Facebook Dating」のために不当に使用しているか否か調査する。
 また,欧州委員会も本日,Facebookのデータ利用に関する調査を開始した。CMAは,それぞれ独立して行う調査の進捗に応じて,欧州委員会と緊密に連携する。
 CMAの調査は開始されたばかりであり,Facebookが法律に違反しているかどうかについての判断はなされていない。
 CMAは,4月にデジタル・マーケット・ユニット(Digital Markets Unit,以下「DMU」という。)を立ち上げた。DMUは,今回のFacebookの広告データの利用に関する調査とは別に,行動規範(code of conduct)がデジタルプラットフォームとデジタルプラットフォームに依存して潜在顧客を獲得する中小事業者との取引関係をどのように規律するかについての検討を開始した。DMUは,調査権限を付与する法律が制定されるまでの間,法定外の「影の組織」として活動している。これに先立ち,CMAは,必要に応じて強制措置を採ることも含め,デジタル市場における競争と消費者利益を促進する調査を継続する。
 本調査は,CMAが最近デジタル市場で開始した競争法違反の疑いに関する3件目の調査である。また,CMAは,GoogleのPrivacy SandboxとAppleのAppStoreについても調査している。  

CMAがAppleとGoogleのモバイルエコシステムについて市場調査を開始

2021年6月15日 英国競争・市場庁 公表

原文

【概要】
 英国競争・市場庁(以下「CMA」という。)は,AppleとGoogleがOS(iOS及びAndroid),アプリストア(App Store及びPlay Store),ウェブブラウザ(Safari及びChrome)の供給を実質的に二重に独占していることで,幅広い分野で消費者が不利益を被っている可能性がないかどうかを詳しく調査している。
 「モバイルエコシステム」とは,消費者が,音楽,テレビ,ビデオのストリーミングに加え,フィットネス,ショッピング,バンキングなど,さまざまな製品,コンテンツ,サービスにアクセスするためのゲートウェイの集合体を指す。また,これらの製品には,スマートスピーカー,スマートウォッチ,ホームセキュリティ,照明(携帯電話から接続して操作可能)などの技術や機器も含まれる。
 CMAは,両社がモバイルエコシステムを支配することによって,様々なデジタル市場の競争が阻害されているかどうかを調査している。CMAは,こうした状況下で,デジタル市場におけるイノベーションが低下し,機器やアプリ,あるいは広告価格の上昇によって,消費者が商品やサービスに対して高い価格を支払うことになるのではないかと懸念している。
 本調査では,Apple及びGoogleのスマートフォンを通じて消費者に商品を提供し両社に依存しているアプリ開発者など,他の事業者に対する両社の市場支配力の影響についても調査する。
 この調査は,CMAが担う幅広い業務の一環であり,デジタル・マーケット・ユニット(Digital Markets Unit)を通じて,デジタル市場において新たに競争促進的な規律を設けることも念頭に置いているものである。CMAは,こうした政府内の取組と合わせて,デジタル市場における競争の評価と保護のために,引き続き,既存の権限を最大限活用する予定である。
 CMAは,AppleのApp StoreとGoogleのPrivacy Sandboxについて,競争上の問題の観点から別途調査を行っている。先行しているこれらの調査はいずれも本調査の範囲内に含まれるものであるが,モバイルエコシステムに関するCMAの活動は,これらの調査より更に広範囲にわたるものである。CMAは,消費者や事業者にとって最良の結果を得るべく,これら関連する全ての案件を連携させたアプローチを採る予定である。
 市場調査においては,政府やその他の機関に対して提言を行い,必要に応じて事業者や消費者にガイダンスを提供することが可能である。
 CMAは,7月26日までに想定される問題についての意見募集を行っており,また,同日までにアプリ開発者からアンケートを通じて意見を求めている。CMAは,12か月以内に本調査を終了する予定。 

フランス

フランス競争委員会,ネット広告市場において自社サービスを優遇したとして,Googleに対し2億2000万ユーロの制裁金を賦課

2021年6月7日 フランス競争委員会 公表
原文

【概要】
 フランス競争委員会(以下「競争委員会」という。)は,News Corp Inc.,Le Figaroグループ(訳注:Le Figaroグループは,2020年11月6日に申告を取り下げた。)及びRossel La Voixグループからの申立てを受けて,Googleに対する調査を行ってきたところ,同社がウェブサイト及びモバイルアプリのパブリッシャー向け広告サーバー市場における支配的地位を濫用したとして,同社に対して最大2億2000万ユーロの制裁金を賦課する命令を発出した。競争委員会によれば,Googleは,「Google Ad Manager」のブランドで提供する独自技術をDFP広告サーバー(サイトやアプリの媒体社が広告スペースを販売できるようにするもの)及びSSP AdX販売プラットフォーム(媒体社が「インプレッション」又は広告インベントリを広告主に販売できるようにするオークション過程を取りまとめるもの)の運用に際して,自社を優遇することにより,競合他社及び媒体社に不利益を与えていた。
  問題の行為は,SSP市場におけるGoogleの競合他社並びにモバイルサイト及びアプリケーションの媒体社に不利益を与えたという点で,特に深刻なものである。その中でも,競争委員会に申告を行ったメディアグループは,紙面の売上減少及びそれに伴う広告収入の減少により,その経営モデルが非常に弱体化している上に,本件により影響を受けていた。
支配的地位にある企業は,能率競争とは無関係な行為によって効果的で健全な競争を損なうことのないよう一定の責任を負っていると考えられている。
 Googleは,本件の事実関係に異議を唱えず,和解による解決を希望し,競争委員会はその希望を受け入れた。Google は,Google Ad Manager サービスとサードパーティの広告サーバー及び広告枠販売プラットフォームとの相互運用性を向上させること,並びにGoogle に有利な規定を廃止することを内容とする和解案を提案した。競争委員会はこれらの和解案を受け入れ,和解案に法的拘束力を付与する決定を行った。

ドイツ

ドイツ連邦カルテル庁,Google News Showcaseについて調査

2021年6月4日 ドイツ連邦カルテル庁 公表
原文
 

【概要】
 ドイツ連邦カルテル庁(以下「カルテル庁」という。)は,Alphabet Inc.,米国のMountain View及びその関連会社(以下「Google」という。)に対し,同社が提供するGoogle News Showcaseサービスについて,ドイツ競争制限禁止法に基づく審査手続を開始した。本件審査は,主に,大規模なデジタル事業者に適用される新たな規定による新たな権限に基づくものである。これは,改正ドイツ競争制限禁止法(以下「GWB」という。)第19a条に基づき,複数市場での競争にとって顕著な重要性を有するか否かを判断するために,カルテル庁が2021年5月25日に開始したGoogleに対する審査手続と同様の手続である。過去数か月の間に,Googleに対する審査手続とは別に,カルテル庁は,既にこの新しい競争法に基づいて,Facebook(2021年1月28日付け)及びAmazon(2021年5月18日付け)に対する調査を開始している。
 Google News Showcaseは,出版社のニュースコンテンツを目立つように,かつ詳細に表示させるGoogleのサービスである。Googleは,当該サービスをドイツの多くの出版社に対して提供している。
2020年10月1日,Googleは,ドイツでの「Google News Showcase」のサービス開始を発表した。Googleによると,当該サービスは,Googleが掲載料を支払っている高品質なジャーナリズム・コンテンツを紹介するものだという。当初,20社のメディア企業が参加し,50の出版物を提供していたが,その後,サービスの対象を拡大し,更に多くのコンテンツを提供している。また,Google News Showcaseは,当初,Google Newsアプリに組み込まれ,現在では,デスクトップ版Google Newsでも閲覧できる「ストーリーパネル」(story panel)に注力している。Googleは,近日中にGoogleの一般検索結果にもストーリーパネルを表示すると発表している。ストーリーパネルは,写真,タイトル及びその他のコンテンツが,出版社のロゴの下に要約して表示されるショーケースボックスである。参加している出版社には,一般的な検索結果よりも目立つように,また詳細にコンテンツを表示するために,様々なオプションが用意されている。また,Googleは,Google News Showcaseにおいて,各出版社から有料記事を購入し,読者に無料で提供している。
 カルテル庁は,Corint Mediaからの申告を受けて,Google News ShowcaseがGoogleの一般検索機能に統合されることにより,自己優遇(self-preferencing)や競合する第三者が提供するサービスの阻害につながる可能性があるか否かを,本調査において検証している。カルテル庁は,契約条件の中に,参加出版社に不利益となる不合理な条件が含まれているか否か,特に,2021年5月にドイツ連邦議会と連邦参議院が導入した報道機関の出版社に対する付随的な著作権の行使を不当に困難にするものが含まれているか否かについても調査している。また,Google News Showcaseサービスへのアクセス条件がどのように定義されているかを調査することも重要である。
 2021年1月,GWBの第10次改正法が施行された。重要な新規定(GWB第19a条)により,当局は,特に大規模なデジタル企業の行為に対して,より早期に,より効果的に介入することが可能となった。カルテル庁は,2段階の手続を経て,複数市場での競争にとって顕著な重要性を有する企業が反競争的行為を行うことを禁止することができる。

 

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