最近の動き(2021年9月更新)

オーストラリア

ACCC,携帯電話の電気通信事業者が4社から3社に減少したことに伴い,通話料の値上げが起きているとする調査結果を公表

2021年6月21日 オーストラリア競争・消費者委員会 公表
原文

【概要】
 オーストラリアの何百万人もの消費者が,電気通信事業者3社による最近の値上げにより,携帯電話プランの料金をより多く支払うことになるということがオーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)の新たな分析により明らかになった。
 Telstra,Optus及びVodafoneの3社は,2020年7月以降,複数のポストペイドプラン(post-paid plans)を値上げしてきたほか,様々なプリペイドプランの有効期限を短縮することによって消費者により高頻度で再入金させ,実質的な値上げを行ってきた。
Telstra,Optus及びVodafoneの3社は,携帯電話小売市場全体の87%を占めているほか,ポストペイド市場の95%以上を占めている。
 過去12か月の間に,Telstraはポストペイドプランの料金を1か月当たり5ドルから15ドルの範囲で値上げした。また,35日間及び42日間のプリペイドプランの再入金期限を28日間に短縮したが,これは事実上,1年間で25%から50%の値上げに相当する。
 Optusは5月,全てのポストペイドプランの料金を1か月当たり6ドル値上げしたが,これは8%から15%の値上げに相当する。一方,Optusのプリペイドプランのコストは一切上昇していない。
Vodafoneのポストペイドプランも1か月当たり5ドルから40ドル値上げされたが,現在のところ,この値上げは大幅な割引や一時的なボーナスが適用されている。2020年12月,これまで35日間有効だったVodafoneのプリペイドプランの有効期限が同じ月額料金で28日間に短縮された。これは,1年当たり,実質的に25%の値上げに相当する。
 これらの携帯電話料金の値上げは,2020年のTPGとVodafoneの合併に伴うものである。
 ACCCは,Telstra,Optus及びVodafoneの携帯電話ユーザーに対し,これら3社のネットワーク上でサービスを再販している小規模プロバイダーの価格や機能を比較することを推奨している。 

ACCC,オンラインマーケットプレイスにおける競争及び消費者に与える問題を調査

2021年7月22日 オーストラリア競争・消費者委員会 公表

原文

【概要】
 オーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)は,オーストラリアにおけるデジタルプラットフォームサービスに関する調査の一環として,eBay Australia,Amazon Australia,Kogan,Catch.com.auなどの一般的なオンラインマーケットプレイス(以下「マーケットプレイス」という。)における競争及び消費者に与える問題について調査している。
 ACCCは,消費者並びに中小企業から大手までのプラットフォーム運営者及びプラットフォーム運営者以外の独立系販売業者から意見を募集しており,意見募集文書を本日公表した。また,消費者や中小の販売者には,簡単なオンラインアンケートに回答することで,マーケットプレイスに関する経験を報告するよう求めている。
 マーケットプレイスでは,販売者が様々な商品を掲載し,消費者がその商品を検索して購入することができる。これらのマーケットプレイスは,対買い手と対売り手の両面において,相互に競争しており,また,いわゆる実店舗型のビジネスとも競争している。
 ACCCは,マーケットプレイスと独立系販売業者や消費者との関係を調査するとともに,これらのマーケットプレイスがオーストラリア市場における競争にどのような影響を与えるかについて分析する予定である。
COVID-19の感染拡大と,それに伴うロックダウンにより,オンラインショッピングを利用するオーストラリア人が増加している。2020年のオンラインショッピング購入額は前年比57%増となり,オーストラリア人のオンラインショッピング購入額は2018年の  
 275億ドルに対し,2020年には過去最高の505億ドルに達した。非食品分野の全売上額に占めるオンライン売上額の割合は,2020年2月は10.9%だったが,2021年5月には14.2%まで増加した。
ACCCは,価格設定の方法,データの利用,独立系販売業者に課される取引条件,マーケットプレイス自身がプラットフォーム上で販売者として活動する場合に競争へ及ぼす影響などを評価することとなる。
 消費者問題では,消費者が販売者や商品についてのレビューを書き込んだり読んだりすることができるかどうか,苦情の処理方法,消費者のデータの収集及び活用方法などを評価することとなる。
 また,マーケットプレイスが提供するサービス,市場構造及び市場の仕組みについても評価することとなる。 

中国

SAMR,テンセントに対して,音楽配信の独占的ライセンスをやめること等を命ずる処分を発出

2021年7月24日 国家市場監督管理総局 公表
原文

【概要】
 2021年1月,国家市場監督管理総局(以下「SAMR」という。)は,通報に基づき,テンセントホールディングスリミテッド(以下「テンセント」という。)に対して,2016年7月に中国音楽集団の株式を取得した行為が事業者集中の違法実施に当たるとして調査を開始した。
 SAMRは独占禁止法(以下「独禁法」という。)に基づき,本件行為が事業者集中の違法実施に当たるという事実を調査で明らかにし,当事会社の関連市場における市場シェア,支配力,集中度並びに集中が市場参入及び消費者に与える影響等の要素を十分に評価した。同時に,関係政府部門,業界団体,専門学者,競争事業者の意見を広く求め,かつ,テンセントから何度も意見を聴取した。
 調査の結果,本件の関連市場は中国国内における音楽配信プラットフォーム市場であると認められた。正規の音楽著作権は音楽配信プラットフォームの運営における核心的資産であり,重要な資源である。2016年のテンセントと中国音楽集団の関連市場における市場シェアはそれぞれ約30%と約40%であり,テンセントは市場における主要な競争事業者と合併することで,高い市場シェアを獲得することとなる。また,合併後,当事会社が占有する独占的楽曲資源は80%を超え,川上の著作権者との間で,更に多くの独占的ライセンス契約を結ぶ能力を有することとなる可能性があるほか,著作権者に対して,競争事業者よりも有利な取引条件を認めさせる能力を有することとなる可能性がある。さらに,高額な契約一時金の支払その他のライセンス料支払方法を通じて,市場への参入障壁を高め,関連市場の競争を排除・制限する能力又は効果を有することとなる可能性がある。
 独禁法第48条,事業者集中審査に関する暫定規定第57条の規定に基づき,発展と規制を同等に重視する原則に照らし,SAMRは法にのっとり行政処分決定を行い,テンセント及びその関連会社は30日以内に独占的音楽ライセンスを解除すること,高額な契約一時金等のライセンス料支払方法を取り止めること,正当な理由なく川上の著作権者に対して競争事業者よりも有利な取引条件を要求してはならないこと等の市場の競争状態を回復させる措置を命じた。テンセントは3年間,毎年SAMRに対して義務の履行状況を報告し,SAMRは法にのっとりその執行状況を厳格に監督する。

フランス

フランス競争委員会,Googleが差止命令に従わなかったとして,最大5億ユーロの制裁金を賦課

2021年7月13日フランス競争委員会 公表
原文

【概要】
 フランス競争委員会(以下「競争委員会」という。)は,2020年4月の暫定措置決定で発出された差止命令に従わなかったとして,Googleに対して最大5億ユーロの制裁金を課した。
 競争委員会は,Googleに対し,競争委員会に本件を申告した報道機関等に対してコンテンツ使用料を支払う旨提示すること,及び当該使用料を評価するために必要な情報を提供することを命令した。
 Googleが本命令に2か月以内に従わなかった場合には,遅延1日につき最大90万ユーロの追加制裁金が課される。

フランス競争委員会,眼鏡ブランド及びメーカーがサングラス及び眼鏡フレームの小売価格を拘束していたなどとして,制裁金を賦課

2021年7月23日 フランス競争委員会 公表
原文

【概要】
 フランス競争委員会(以下,「競争委員会」という。)は,経済財政産業省競争消費者問題不正行為防止総局(DFCCRF)による立入検査及び調査報告書に基づき,眼鏡店に対して眼鏡若しくはサングラスフレームの小売価格を拘束し,又はこれらのオンライン販売を禁止していた(訳注:それぞれ一部事業者を除く)として,サングラス及び眼鏡フレーム事業者数社に対し,制裁金を賦課した。
 
Luxottica,Logo及びLVMHによる小売価格拘束
 LVMH及びLogo(タグ・ホイヤーブランドが拘束の対象)並びにLuxottica(シャネル,レイバン,オークリー,プラダ,バーバリー,ブルガリ,ドルチェ&ガッバーナ,アルマーニ,マイケル・コース,ミュウミュウ,ラルフ・ローレンを含む同社の全ブランドが拘束の対象)は,小売業者の価格設定の自由を制限していた。
 LVMH及びLogoは,LVMHのタグ・ホイヤーブランドに関するライセンス契約及びLogoのタグ・ホイヤーブランドの選択的流通に係る契約の条項において,眼鏡店に対し,販売価格や販売促進に関する制限を設けていた。また,Logoは,推奨価格を設定していたほか,眼鏡店の販売価格を監視し,値引き販売を行っていた眼鏡店に連絡を取っていた。当該行為の実施期間は,LVMHは1999年9月から2015年まで,Logoは2002年から2015年までである。
 競争委員会は,Luxotticaについて,2005年から2014年までの間,「推奨価格」と称する価格を小売店に浸透させ,自社商品の小売価格を一定に保つことを奨励していたと認定した。特に,Luxotticaは,「推奨価格」リストを作成していたほか,小売店と締結する選択的流通に係る契約において,値引き等を禁止していた。
 また,Luxotticaは,広告価格について小売業者に一定の制限を課していたほか,「発見された不正行為に対抗する」ため,一部の眼鏡店に協力を要請して,小売価格の監視をしていた。眼鏡店の店長によれば,競合店によるこのような監視は,まさに「価格警察」といえるものであった。
 Luxotticaからのメッセージを無視し続けた眼鏡店は,最終的に,店舗への商品遅配や供給停止,Luxotticaブランドの販売許可の取消し,アカウントをブロックして注文を不可能にするなどの報復措置を受けた。
 本件行為は,まさに本質が反競争的なものであり,特に監視及び報復の仕組みを利用していたものであった。さらに,眼鏡又は場合によってはサングラスの購入が欠かせないためブランドの販売戦略を受けざるを得ず,弱い立場となっている者も存在しており,本件当該行為は,最終消費者に影響を与えるものであった。
 また,本件行為は,有名ブランドを対象とし,長期間にわたってブランド内競争(異なる商流間での同一商品の価格競争)に影響を与え,Alain Afflelou,Krys,Grand Vision,Optical Centerなどの全国的な大手小売業者を含む相当数の小売業者が関係していたという点で,経済にも大きなダメージを与えた。
 
シャネル,Luxottica及びLVMHによるオンライン販売の禁止
 シャネルとLuxottica(1999年から2014年),LVMHとLogo(2004年から2015年)との間のライセンス契約の条項や,シャネル,プラダ,ドルチェ&ガッバーナ,ブルガリの各ブランドについてLuxotticaとその正規販売店との間で締結された正規販売店契約(2002年から2013年まで)の条項において,眼鏡店によるサングラス及び眼鏡フレームのオンライン販売が禁止されていた。
 本件行為は,一般的に競争力のある価格で販売が行われる販売チャネルを眼鏡店や最終消費者から奪う効果があり,重大なものである。
 しかしながら,特にEU司法裁判所による2011年10月13日のPierre Fabre判決まで存在していた本件行為の合法性に関する不確実性を考慮して,本件行為の重大性は軽減されることとなる(訳注:2011年10月13日にEU司法裁判所が下した同判決では,選択的流通に係る販売店契約においてオンライン販売を事実上禁止していた行為について,当然に(by object)競争制限的であると判示した。)。
 

ドイツ

ドイツ連邦カルテル庁,大規模デジタル企業に適用される新条項(GWB第19a(1)条)に基づきAppleに対する審査手続を開始

2021年6月21日 ドイツ連邦カルテル庁 公表
原文

【概要】
 ドイツ連邦カルテル庁(以下「カルテル庁」という。)は,大規模デジタル事業者に適用される競争法の新条項に基づいて,テクノロジー企業であるAppleに対する審査手続を開始した。カルテル庁がこの競争法の新たなツールに基づいて開始した大規模デジタル事業者は,これで4社目となる。過去数か月の間に,カルテル庁は,Facebook(2021年1月28日付け),Amazon(2021年5月18日付け),Google(2021年5月25日付け)に対して,同様の審査を開始している。2021年1月に施行されたドイツ競争制限禁止法(以下「GWB」という。)の第10次改正法の新条項(GWB第19a条)により,当局は,特に大規模デジタル事業者の行為に対して,より早期,かつ,より効果的に介入することができることとなった。2段階の手続を経て,カルテル庁は,市場での競争にとって顕著な重要性を有する事業者に対して反競争的な行為を禁止することが可能である。
 本日,カルテル庁は,第1段階として,Appleが市場において顕著な重要性を有する事業者であるか否かを判断するため調査を開始した。様々な市場に広がるエコシステムは,Appleが市場においてそのような地位を有することの証左となり得るものである。Apple以外の事業者にとって,そのような力を持つ事業者に挑戦することは多くの場合極めて困難である。
 この第1段階の手続に基づいて,カルテル庁は,今後の手続において,Appleの特定の行為をより詳細に評価する予定である。 


 

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