最近の動き(2021年11月更新)

オーストリア

オーストリアにおいて違法な合併に係るFacebookの制裁金が確定

2021年8月31日 オーストリア連邦競争庁 公表
原文
【概要】
 2021年7月22日,オーストリアのカルテル裁判所は,オーストリア連邦競争庁(以下「AFCA」という。)の要求どおり,AFCAとFacebookとの間の和解案に基づき,FacebookがGIPHYを違法に買収していたとして,Facebookに対して960万ユーロの制裁金を賦課した。
 AFCAは,連邦カルテル法第9条に基づき,一定の閾値を超える企業結合に関して,当該企業結合により市場支配的地位が生じる又は増大するか否かを調査する権限を有する。Facebookは,2020年5月にGIPHYを買収した際,法定の閾値を超えたにもかかわらず,AFCAに対して連邦カルテル法第9条第4項に基づく届出を行わなかった。その結果,AFCAは,和解案に基づき,Facebookに制裁金を賦課することをカルテル裁判所に要求した。カルテル裁判所は,AFCAの要求を認め,2021年7月22日,Facebookに対して960万ユーロの制裁金を賦課した。Facebookは,AFCAに全面的に協力し,決定に対して異議を申し立てなかったため,同決定は確定した。
 2021年7月20日,Facebookは,GIPHYの買収を事後的にAFCAに届け出た。同届出を受けて,AFCAは,4週間の調査の間に,本件買収を承認するか(フェーズ1),カルテル裁判所による詳細な審査を要求するか(フェーズ2)を決定しなければならなかった。本件のフェーズ1の調査の間に,AFCAは膨大な情報を収集し,多数の市場関係者からの意見を得た。AFCAは,本件買収には競争上の懸念があるため,フェーズ2の調査において,カルテル裁判所による詳細な審査が必要であると判断した。カルテル裁判所は,5か月の期間内に,詳細な審査を行わなければならない。

オーストラリア

ACCC,カンタス航空と日本航空の提携は公共の利益に反すると判断

2021年9月13日 オーストラリア競争・消費者委員会 公表
原文
【概要】
 オーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)は,カンタス航空と日本航空が共同事業契約に基づき日オーストラリア間の航空便を調整することについての認可申請を却下した。ACCCは,本提携が海外旅行の再開に当たり競争の低下を招き,日オーストラリア間を往来する乗客に不利益をもたらす可能性が高いと判断した。
 ACCCが5月に下した決定案を受けて,カンタス航空は,一定の需要基準に達した場合,ケアンズ・東京間で新サービスを開始するという確約を提出した。
 ACCCは,COVID-19のパンデミックの間,幾つかの競争法の適用除外を認可している。これらの適用除外は通常,短期間のものであり,パンデミック時のリソースの供給を確保するために業界関係者が協力することを目的とした提案を含んでいた。
 カンタス航空と日本航空は,本提携が実現すれば,3年間,価格及びサービスの全ての面において競争を行わないことが認められることとなる可能性があった。

英国

CMA,ソニーによるAWALの買収について競争法上の懸念を表明

2021年9月7日 英国競争・市場庁 公表
原文
【概要】
 英国競争・市場庁(以下「CMA」という。)は,ソニーによるAWALの買収(訳注:2021年5月18日に完了)について,初期審査(フェーズ1)において,競争上の懸念が認められると判断した。
 音楽業界は進化し続けており,ソーシャルメディアやストリーミングの発展により,アーティスト自らがコンテンツ配信やブランドのプロモーションを管理できるようになっている。その結果,ほとんどのアーティストはこれまで少数のメジャーレーベルと契約していたが,別のビジネスモデルが登場してきた。特に,独立系のアーティスト・アンド・レーベル(以下「A&L」という。)サービスは,メジャーレーベルが提供する一般的なサポートを合理化して提供しており,また,同サービスにより,アーティストは自らの楽曲の所有権と高いロイヤルティを確保できるようになっている。
 ソニーは,現在,英国の3大レコードレーベル(訳注:ユニバーサル,ソニー及びワーナーブラザーズ)の一つである。ソニーは,主要レーベルであるSony Music Entertainmentに加えて,2012年に買収した,A&Lサービス提供事業者であるThe Orchardを傘下に置いている。AWALは,新興の音楽配信事業者であり,A&Lサービス及びアーティストが自らの音楽をアップロードして配信できる「DIYプラットフォーム」を提供し,従来の音楽ビジネスに代わる新しい音楽配信サービスを提供している。
CMAの調査によると,現在,英国の音楽の卸売市場(wholesale distribution of recorded music)の大部分を3大レーベルが占めており,寡占状態となっている。AWALは,革新的なビジネスモデルで広く認知されている重要な新興企業である。同社は,大手レーベル以外で市場において重要な地位を獲得できた数少ない事業者の一つであり,近年急成長を遂げている。
 CMAは,本件審査において,本件買収が行われなかった場合,ソニーとAWALは,将来激しく競合する可能性があったと認定した。AWALは,今後数年間でビジネスを更に成長可能なポジションにあった。また,ソニーがThe Orchardのサービスを拡大し,新興の小規模アーティストに注力しようとしていたことを示す証拠もあり,これによって,ソニーとAWALとの競争が激化した可能性がある。
 ソニーとAWALの競争により,音楽配信事業者との契約条件が改善されれば,アーティストは,得られる収益の配分を拡大し,より多くの楽曲の権利を所有できる可能性があった。CMAは,AWALのような革新的な競争相手が存在しなくなることによって,他の大手レーベルが存在してはいるものの,アーティストの契約条件が悪化し,音楽分野におけるイノベーションが阻害されることを懸念している。
 CMAが認定した懸念に対して,ソニーが当該懸念を解消する適切な措置を5営業日以内に申し出なかった場合,本件買収は,詳細審査(フェーズ2)に進むこととなる。

 

韓国

KFTC,Android OS関連市場における支配的地位濫用等でGoogleに対して課徴金を賦課

2021年9月15日 韓国公正取引委員会 公表
原文(韓国語) 原文(英語)
【概要】
 韓国公正取引委員会(以下「KFTC」という。)は,Googleが,スマートフォンメーカーに対し,自社の主要アプリ群の使用許諾契約とAndroid OSへの事前アクセス権許諾契約(※1)の締結に際し,競合し得るAndroid OSのフォークOS(※2)を搭載した機器の製造等を制約する「断片化禁止契約」(※3)の締結を強要し,競合OSをインストールした機器の生産を不可能にすること等により,競合OSの市場参入を妨害し,公正取引法に違反(※4)したとして,同社に対して,是正命令及び課徴金2074億ウォンを課すこととした旨を公表した。
(※1)訳注:Googleが最新バージョンのAndroidをオープンソースとして公開する約6か月前にあらかじめスマートフォンメーカーにソースコードを提供する契約であり,ハイエンド機器の早期開発のために必須。
(※2)訳注;GoogleのAndroid OSを改変したOSであり,Googleにとっては競合OSとなる。以下,単に「フォークOS」という。
(※3)Anti-fragmentation Agreement。以下「AFA」という。
(※4)市場支配的地位の濫用(事業活動の妨害,競争事業者の排除)及び不公正な取引方法(取引上の地位の濫用,拘束条件付取引)。
 
 本件の概要は,以下のとおりである。
○ KFTCは,Googleに対して,サムスン電子等のスマートフォンメーカーのフォークOS搭載機器の生産を不可能にすることにより,競合OSの市場参入を妨害し,イノベーションを阻害したとして,是正命令とともに,課徴金2074億ウォン(暫定額)を課すことを決定した。
○ Googleは,スマートフォンメーカーに不可欠なプレイストアライセンス契約(※5)と,OSの事前アクセス権許諾契約を締結する際,その条件として,AFAの締結を強制した。
(※5)訳注;プレイストア,Google検索等のGoogleの主要アプリ群をまとめてライセンスを付与する契約であり,プレイストアは,Android端末におけるアプリ活用のために必須。
○ AFAによると,スマートフォンメーカーは,発売する全ての機器についてフォークOSを搭載できず,自らフォークOSを開発することもできない。
○ フォークOS向けの代替的なアプリエコシステムの出現の可能性を完全に妨げるため,SDK(※6)の配布及びフォークOS向けサードパーティー製アプリのプリインストールを禁じた。
(※6)Software Development Kit。アプリ開発者が特定のOSで動作するアプリを作るために必要なソフトウェア構築ツールの集合体のこと。
○ Googleは,AFAの契約上の文言のみに止まらず,実際にAFAを活用して,スマートフォンメーカーがフォークOS搭載機器を発売できないよう積極的に行動した。そのため,取引先を見つけられなかったAmazon,アリババ等のモバイルOS事業は全て失敗し,機器メーカーは,新たなサービスを搭載した革新的な機器を発売することもできなかった。
○ その結果,Googleは,モバイル分野における市場支配力を更に強固にすることができた。
○ 全てのスマート機器がAFAの対象であるため,メーカーはスマートフォンの発売のみならず,フォークOSを搭載したスマートウォッチ,スマートTV等の新たなスマート機器の発売が制限され,他のスマート機器用OS開発の分野におけるイノベーションも大きく阻害された。
 

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