その他
オーストラリア
ACCC,メタによるカスタマーの買収計画を承認へ
2021年11月18日 オーストラリア競争・消費者委員会 公表
原文
【概要】
オーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)は,メタ(Meta。旧フェイスブック〔Facebook〕)によるカスタマー(Kustomer)の買収計画を承認する。
カスタマーは,米国に拠点を置く,小規模な顧客関係管理(CRM:Customer Relationship Management)のSaaS(software-as-a-service)提供事業者であり,ビジネスにおける顧客とのやり取りに特化したサービスを提供している。カスタマーのサービスには,フェイスブックメッセンジャー(Facebook Messenger),ワッツアップ(WhatsApp),ツイッター(Twitter),電子メール,SMS,ウェブチャットなどの,事業者の各種ツール使用時における顧客とのやり取りの照合が含まれる。
メタは,デジタルプラットフォームであるフェイスブック(Facebook)及びインスタグラム(Instagram)における広告及び関連サービスから収益の大半を得ているテクノロジー企業である。また,メタは,企業が消費者とのコミュニケーション手段として利用可能なフェイスブックメッセンジャー,ワッツアップ及びインスタグラムの三つのメッセージングサービスを提供している。メタは,消費者をこれらのサービスに誘導する広告(例:クリック・トゥ・メッセージ広告〔click-to-message ads〕〔訳注:広告を クリックしたユーザーを,広告主とのメッセージツールのチャット画面に遷移させるもの。〕)も販売している。
本件買収計画の審査期間中,ACCCには,一部の市場関係者から,メタのメッセージングサービスへのアクセスは,特に中堅企業にサービスを提供している一部のCRM提供事業者にとって重要な要素であるという意見が寄せられており,ACCCは懸念を抱いた。 しかしながら,メタにとっての利益は,同社がメッセージングサービスの利用を促進することによって,広告事業を成長させることだと考えられ,競合するCRM提供事業者のアクセスを制限することは,それとは矛盾することになる。このように,ACCCは,メタは,カスタマー以外のCRM提供事業者を通じて,今後もサービスを提供していく可能性が高いと判断した。
ACCCは更に,カスタマーのオーストラリアでのプレゼンスは極めて小さく,メタとカスタマーのサービスの重複はごく僅かにすぎないと指摘する。
ACCCは,本件買収計画が,米国,EU及び英国を含む他の国・地域の規制当局による審査の対象となることを指摘する。
中国
中国の国家独占禁止局が正式に発足
2021年11月18日 国家市場監督管理総局 公表
【概要】
2021年11月18日,国家市場監督管理総局の庁舎に,国家独占禁止局が正式に看板を掲げた。
市場経済の発展に伴い,公正な競争がますます重要になる。中国の市場主体の総数が1億5000万を超えた現在,高水準の市場システムの構築,質の高い発展及び共同富裕を推進し,高水準の対外開放を実現する上で,独占禁止の強化及び資本の無秩序な拡大防止の重要性がますます顕著になっている。
2018年の国務院の機構改革により,これまで商務部,国家発展改革委員会,国家工商行政管理総局がそれぞれ行っていた独占禁止執行業務が統一され,国家市場監督管理総局の独占禁止局が独占禁止執行を担当する機関となり,同時に,国務院の独占禁止委員会の事務を担当することになった。
3年が経過して,国家独占禁止局が設立されたことは,国家の独占禁止制度が更に改善されたことを反映している。独占禁止監督管理能力を強化し,市場競争を適切に秩序あるものとし,強大な国内市場の構築を促進し,各種の市場主体の投資・起業・健全な発展を秩序あるものとするため,国家独占禁止局は,公正,透明かつ予測可能な良好な競争環境を構築していく。
英国
エヌビディアによるアーム買収計画について,DCMSがCMAに詳細審査の実施を要請
2021年11月16日 英国デジタル・文化・メディア・スポーツ省 公表
原文
【概要】
英国デジタル・文化・メディア・スポーツ省(Department for Digital, Culture, Media & Sport。以下「DCMS」という。)のナディン・ドリーズ大臣は,米エヌビディア(NVIDIA)による英アーム(訳注:Arm。ソフトバンクグループ企業)の買収計画について,競争上及び国家安全保障上の理由から,英国競争・市場庁(以下「CMA」という。)に対して詳細審査(Phase 2)を実施するように求める書簡を提出した。
DCMS大臣は,2002年企業法(Enterprise Act 2002)に基づき,公共の利益の観点から一定の合併案件に介入することができる「準司法的(quasi-judicial)」権限を有する。本日の決定は,CMAが本件買収計画について初期調査を行ったところ,競争上の懸念があることが認められた一次審査(Phase 1)の結果を受けて行われたものである。
CMAは,本件買収計画がデータセンター,モノのインターネット(Internet of things),自動車及びゲームアプリケーションという「四大市場における競争を実質的に制限」するおそれがあると認定し,本日,一次審査の報告書の全文を公表した。
また,政府内の複数の部局から集められた証拠を検討した結果, DCMS大臣は,国家安全保障上の利益が将来にわたって重要であることを理由に,本件買収計画について審査を更に進めるべきであると判断した。
アームは,ケンブリッジに本社を置き,半導体に関する知的財産(以下「IP」という。)をライセンス供与しており,世界の半導体産業の主要なプレーヤーである同社のIPをベースにした半導体は世界中で数百億個使用されている。同社のIPをベースにした半導体は,スマートフォンを駆動し,家庭用,自動車,企業用の接続機器の大半に搭載されている。同社のIPをベースにした半導体を使用している全ての機器が,必ずしも「重要である」とは限らないものの,同社による広範なサプライチェーンにおけるセキュリティや強靭性は,英国の国家安全保障にとって重要な要素である。
CMAは,本件買収計画について,競争及び国家安全保障の観点から詳細審査を開始する。詳細審査の期間は24週間(一定の場合には8週間延長することが可能)とされ,最終報告書をDCMS大臣に提出することとされている。
今後について
最終報告書を受領したDCMS大臣は,次のいずれかの措置を採る。
・本件買収計画について,国家安全保障上及び(又は)競争上の理由から,公共の利益に反する事案であるかを判断する。もし,本件買収が公共の利益に反すると認定した場合は,当事会社に対して,公共の利益に悪影響を与えないよう是正措置を命じる。
・本件買収計画が公共の利益に反すると認定しなかった場合は,CMAに差し戻し,特定の競争上の懸念を是正させる。
CMA,フェイスブックにジフィーの売却を命令
2021年11月30日 英国競争・市場庁 公表
原文
【概要】
CMAは,2021年8月に公表した詳細審査の暫定結果に従い,フェイスブックによるジフィー(Giphy)の買収によって,ソーシャル・メディア・プラットフォーム間の競争が阻害され,ディスプレイ広告市場における将来有望なチャレンジャーとしてジフィーが既に排除されていると結論付けた。
CMAで本件合併の審査を担当している独立調査委員会は,フェイスブックが,以下により,他のソーシャル・メディア・プラットフォームとの関係において,強大な市場支配力を更に強化することになると指摘している。
・他のプラットフォームからの,ジフィーが提供するGIF(訳注:Graphics Interchange Format。画像ファイルフォーマットの一つ。)へのアクセスを拒否又は制限することにより,英国におけるソーシャル・メディアのユーザーの利用時間の73%を占める,フェイスブックが所有するサイト(フェイスブック,ワッツアップ及びインスタグラム)へのアクセスを増やすこと。又は,
・ティックトック(TikTok),ツイッター,スナップチャット(Snapchat)等が,ジフィーが提供するGIFにアクセスするために,フェイスブックに対してより多くのユーザーデータを提供することを要求するなど,アクセス条件を変更すること。
CMAは,詳細審査の中で,本件合併がディスプレイ広告市場にどのような影響を与えるかについても検討した。その結果,本件合併前に,ジフィーは革新的な広告サービスを開始し,英国を含む,米国以外の国への展開を検討していたことが判明した。ジフィーが提供するこのサービスによって, ダンキンドーナツ(Dunkin' Donuts)やペプシ(Pepsi)等の企業が,ビジュアル・イメージやGIFを使用して自社ブランドの販促を行うことができるようになった。
CMAは,ジフィーの広告サービスが,フェイスブックが提供するディスプレイ広告サービスと競合する可能性があったと判断した。また,ジフィーの広告サービスは,ソーシャル・メディア・サイトや広告主を含む,ディスプレイ広告市場における他の企業のイノベーションを促進したともいえる。フェイスブックは,買収時(訳注:2020年5月)にジフィーの広告サービスを終了させ,ディスプレイ広告市場における重要な潜在的競争要因を排除した。CMAは,フェイスブックが英国における70億ポンドのディスプレイ広告市場の半分近くを支配していることに鑑み,これ(訳注:ジフィーの広告サービスの終了)を特に問題視している。
CMAは,フェイスブックが提示した問題解消措置について,ディスプレイ広告市場における利害関係者と協議した上で評価した結果,フェイスブックが,ジフィーをCMAが承認した企業に完全に売却することでしか,同市場における競争上の懸念に対処できないと結論付けた。