その他
ドイツ
アルファベット及びグーグルが大規模デジタル事業者に適用される新たな濫用規制の対象に ─ カルテル庁が「市場横断的に極めて重要な存在」と判断
2022年1月5日 ドイツ連邦カルテル庁 公表
原文
【概要】
ドイツ連邦カルテル庁(以下,「カルテル庁」という。)は,米国マウンテンビューに所在するアルファベット(Alphabet)及びその子会社であるグーグル(Google)について,適用範囲が拡大された,競争当局による濫用規制の対象に認定する決定を発出した。
カルテル庁は,ドイツ競争法(以下「GWB」という。)に新設され,2021年1月に施行された規定(GWB第19a条)により,特に大規模デジタル事業者の行為に対して,より迅速かつ効果的に介入できるようになった。カルテル庁は,複数市場をまたぐ競争に極めて重要な影響(paramount significance)を与える事業者に対して,2段階のアプローチで反競争的行為を禁止することができる。
グーグルは,多くのインターネット・サービスやソフトウェア製品を提供する多国籍企業グループで,親会社はアルファベットである。グーグルが提供する最も有名なサービス及び製品として,グーグル検索エンジン,地図及びナビゲーションサービスのGoogle Maps,動画サービスのYouTube,ブラウザのChrome,Androidオペレーティング・システム(OS),アプリストアのPlay Store,電子メールサービスのGmailがある。これらのサービスは,通常,個人ユーザーには無料で提供されており,その大半は広告によって収入を得ている。また,グーグルは,自社及び第三者のオンライン広告インベントリ(訳注:広告枠における表示可能な広告表示数)のマーケティングのための様々な広告サービスや,ユーザー行動の追跡などの関連サービスも提供している。
カルテル庁は,グーグルについて,GWB第19a条1項が規定する,「複数市場をまたぐ競争に極めて重要な影響を与える」事業者に該当すると認定した。グーグルは,競争による十分なコントロールがなされない,市場横断的な規模の活動を可能にするような,経済的な力を持つ地位にある。
グーグルは,ドイツにおける一般検索サービス市場において,80%以上のシェアを持ち,市場支配的な地位を占めるとともに,検索連動型広告の主要な提供者でもある。また,グーグルは,ドイツにおいて広範なサービスを提供し,多数のユーザーを獲得している。グーグルは,オンライン広告のマーケティングに関しても,バリューチェーン全体をカバーする広範な広告サービスを提供している。
さらにグーグルは,自社のデジタル・エコシステムにおいて,他社によるユーザーや広告顧客へのアクセス(グーグル検索,YouTube,Android,Play Storeやその広告サービスなどを介して)に対して大きな影響力を持ち,市場横断的に他の事業者に対するルールや条件を設定することができる。この点で,これらのサービスは,一つには,他の多くのサービスが,相当な程度で,グーグルのサービスを使用しなければ提供できないこと,もう一つには,グーグルのサービスが,サードパーティの事業活動にとって極めて重要であることから,「インフラ」と表現することができる。
特に,グーグルは,そのサービスが広範に及ぶことから,競争に関連するデータを収集する能力が高い。グーグルの大規模なユーザー基盤,広く利用されている広告サービス,サービス間及び一部のデバイス間で収集可能な多数のユーザーデータのおかげで,グーグルは,対象を絞った広告を販売できるだけでなく,そのサービスを継続的に開発することができる。このようなデータへのアクセスや「グーグル」ブランドなどのリソースから得られる競争優位性は,市場横断的に様々な形で共有可能な材料として利用することができる。これにより,既存のサービスの運用,改善,拡張,あるいは全く新しいサービスの開発が容易になる。最後に,グーグルの競争への極めて重要な影響は,世界最高水準の時価総額に表れており,グーグルの大きな財力を反映している。
カルテル庁の決定の有効期限は,法の条項に基づき5年間に限定されている。グーグルは,この期間中,GWB第19a条第2項に規定されるカルテル庁による特別な濫用規制の対象となる。
これまでのところ,カルテル庁は,既にグーグルのデータ処理条件及びグーグル・ニュース・ショーケースサービス(Google News Showcase service)について調査している。
グーグルは,本決定に対して不服申立てを行わず,また,GWB第19a条第1項による規制対象としての地位を否定しないことを表明しているが,その際,グーグルは特に,カルテル庁が本決定において認定した事実及びこれらの事実から導かれた結論の全てについて,必ずしも同意しているとは表明していない。
インド
CCI,カルテルを行っていたとして,日本の海運会社3社に対し制裁金を賦課
原文
2022年1月24日 インド競争委員会 公表
【概要】
インド競争委員会(以下「CCI」という。)は,日本郵船株式会社(以下「日本郵船」という。),川崎汽船株式会社(以下「川崎汽船」という。),株式会社商船三井(以下「商船三井」という。)及び日産専用船株式会社(以下「日産専用船という。」)の海運会社4社(以下「4社」という。)に対して,様々な航路における自動車メーカー向けの自動車海上運送に係る運賃についてカルテルを行っていたとして,最終命令を下した。4社のうち,日本郵船,商船三井及び日産専用船(以下「3社」という。)は,CCIに対しリニエンシーを申請した。
利用可能な証拠を評価した結果,4社は,4社間の競争を回避しつつ,自動車メーカーと4社の現行取引を維持することを含む「リスペクトルール(Respect Rule)」と称するルールの実施を目的とする合意を結んでいたことが判明した。4社は,この目的を達成するために,多国間又は2国間に係る合意,会合及び電子メールによって相互に連絡することにより,特に運賃などの営業上の秘密情報を共有していた。また,4社は,市場における地位を維持しつつ,自動車メーカーからの値下げを要求されても,それに抵抗するなどして価格を維持し,又は引き上げることを目的としていた。
CCIは,証拠を詳細に検討した結果,4社が,2009年から2012年にかけて,カルテルを含む反競争的合意を禁止している2002年競争法第3条の規定に違反したと認定した。また,日本郵船の14名,川崎汽船の10名,商船三井の6名,日産専用船の3名についても,それぞれが勤務する事業者においてカルテルに関与しており,2002年競争法第48条の規定に違反すると認定した。
3社がリニエンシーを申請したところ,CCIは,4社に排除措置命令を発出するとともに,日本郵船及びその担当者に対する制裁金を全額免除し,商船三井及びその担当者に対する制裁金を50%減額し,日産専用船及びその担当者に対する制裁金を30%減額した。その結果,各社に課された制裁金は,川崎汽船に対して2億4230万ルピー,商船三井に対して1億120万ルピー,日産専用船に対して2億8690万ルピーとなった。