その他

ドイツ

カルテル庁がメタ(旧フェイスブック)によるカスタマーの買収を承認

2022年2月11日 ドイツ連邦カルテル庁 公表
原文
【概要】

 米国メンローパーク所在のメタ・プラットフォームズ(Meta Platforms。以下「メタ」という。旧フェイスブック〔Facebook〕)は、カスタマー(Kustomer)の買収計画(以下「本件買収計画」という。)を発表した。カスタマーは、ニューヨーク(米国)に本社を置き、法人顧客にクラウドベースの顧客関係管理プラットフォームを提供している事業者である。ドイツ連邦カルテル庁(以下「カルテル庁」という。)は、本件買収計画について、承認した。
 欧州委も本件買収計画について審査し、2022年1月27日に、条件付で承認した。
本件買収計画は、オーストリアの競争当局から欧州委に移管された後、欧州委が審査した。カルテル庁は欧州委への移管申請に加わっていなかったが、これはカルテル庁の一般的な慣行として、付託を行うためには加盟国の競争法上の合併届出の対象となっていることが必要であり、本件ではそれがまだ明らかではなかったためである。
 カルテル庁が別の手続で、本件買収計画がドイツの合併規制における、いわゆる取引価額基準を満たすことを立証した後(2021年12月9日付け公表文を参照)、当事会社はカルテル庁に本件買収計画を届け出た。
 カルテル庁は、その審査に当たり、欧州委が審査した市場に関する審査の結果を考慮するとともに、独自の手続においては、それ以外の点についての検討に専念した。

英国

エヌビディアがCMAの審査中にアームの買収を断念

原文
2022年2月8日 英国競争・市場庁 公表
【概要】

 米エヌビディア(NVIDIA)は、英アーム(Arm)の買収計画(以下本記事において「本件買収計画」という。)について、本件買収計画は競争の実質的な減殺につながるおそれがあるとする英国競争・市場庁(以下「CMA」という。)による第1次審査の認定を受けて行われていた詳細審査中に、本件買収計画を断念した。
 その結果、CMAは、2022年2月8日、本件買収計画に関する審査を打ち切る意向を固めた。
 CMAの審査グループは、正式手続の一環として、本件買収計画に係る情報を精査するために主要な関係者に対する事情聴取を2月に実施する予定であったが、その前に本件買収計画は断念された。
 CMAは、本件買収計画に関して、2021年7月にデジタル・文化・メディア・スポーツ省(Department for Digital, Culture, Media and Sport。以下「DCMS」という。)大臣が国家安全保障を理由に公益性に基づく介入通知を発出した後、その法的義務に従って、DCMS大臣に報告書を提出した。
 CMAは、報告書の中で、本件買収計画が実行された場合、合併後の当事会社が、アームが所有する知的財産(Intellectual Property:IP)へのエヌビディアの競合事業者によるアクセスを制限することによって、当該競合事業者の競争力を阻害する能力及びインセンティブを持ち得るという競争上の懸念が認められることから、本件買収計画に対する詳細な審査は正当化されると判断したとしている。本件に係る技術は、半導体チップ及び関連製品を製造する、エヌビディアの競合事業者によって使用されている。報告書の要約は、オンラインで閲覧可能である。
 その後、DCMS大臣は、国家安全保障及び競争上の懸念に基づき、2021年11月に本件買収計画について、詳細な第2次審査に進めることを決定していた。
 CMAは、審査を行う際、世界中の競争当局と緊密に連携し、本件買収計画の影響を慎重に検討してきた。

CMA、プライバシー・サンドボックスの最終確約案を提出したグーグルを「監視」

原文
2022年2月8日 英国競争・市場庁 公表2022年2月8日 英国競争・市場庁 公表
【概要】

 CMAは、今回のグーグルからの提案(プライバシー・サンドボックス)により、オンライン広告費が更にグーグルに集中し、競争が減殺され、最終的にオンライン広告に関するコストを支払うことになる消費者に損害を与えるおそれがあるとの懸念から、2021年1月から競争法の観点で本件審査を行ってきた。また、CMAは、プライバシー・サンドボックスによって、新聞社等のオンライン出版社が、収益を上げ将来にわたって価値のあるコンテンツを制作し続ける能力が損なわれることになり、国民にとってのニュースソースの選択肢が減少することも懸念していた。
 CMAが承認した最終的な確約は、CMAによる詳細審査、並びに2回の正式な意見募集を含むグーグル及び市場参加者との幅広い協力の結果である。これらの措置は、CMAが抱いていた競争に関する懸念に対処するものであり、グーグルは、今回の確約の内容を全世界的に展開することも表明している。
 CMAは、英国個人情報保護監督機関(Information Commissioner's Office。以下「ICO」という。)と緊密に連携し、プライバシー・サンドボックスの進展を監視している。これにより、競争を不当に制限したり、消費者に損害を与えたりすることなく、プライバシーを保護することが可能となる。
 確約案の主な内容は、以下のとおり。
・競争とプライバシーの両方を保護し、消費者にとって効果的な結果を得られるように、プライバシー・サンドボックス提案の開発及び検証にCMA及びICOを関与させる。
・グーグルは、サードパーティとの連携や検証結果の公表など、当初の提案内容よりも透明性の高いプロセスに取り組み、CMAがグーグルに対して、CMA又はサードパーティが提起する問題に対処することを要求できるようにする。
・グーグルは、CMAが競争上の懸念に対処したと判断するまで、サードパーティクッキーを廃止しない。CMAは、競争上の懸念に対処していないと判断した場合、同社に対して追加措置(審査の再開、暫定措置の実施又は決定手続への移行)を講じることができる。
・サードパーティクッキーが廃止された際に、グーグルが競合事業者よりも有利にならないように、自社のエコシステム内でのデータ共有を制限すること及び自己優遇につながる広告サービスを提供しないことを確約する。
・グーグルが確約における義務を遵守するよう、本件確約の履行状況について、CMAと協力して厳格に監視する監視受託者(Monitoring Trustee)が間もなく任命される。
 グーグルは本日(2022年2月11日)、本件確約の下での義務及びプライバシー・サンドボックスの今後の開発に関するブログ記事を公開した。
 グーグルは、サードパーティとの連携に関して遵守すべき、詳細なプロセスを定めている。
 CMAは、グーグルの責任を追及するためのメカニズムを、本件確約において確保した。
 本件確約には以下の内容が含まれる。
・サードパーティクッキーの代替となる制度やその他のプライバシー・サンドボックスに関する提案の試行の設計について、CMAが監視する。
・グーグルがサードパーティクッキーの廃止を進めるまでに、最低60日間の停止期間を設定し、その間に、残されている全ての競争上の懸念について、CMA及びグーグルが解決に取り組む。
・CMAが提起した懸念事項について、グーグルが遅滞なく解決するためのメカニズムを導入する。
 CMAは、必要に応じて、1998年競争法に基づく審査を再開し、将来にわたって暫定的な措置を講じることができる。本件確約は、1998年競争法第31A条第4項に基づき早期に解除されない限り、2022年2月11日から6年間有効である。

韓国

KFTC、大韓航空によるアシアナ航空の買収計画を条件付承認

原文
2022年2月22日 韓国公正取引委員会 公表
【概要】

 韓国公正取引委員会(以下「KFTC」という。)は、2022年2月21日、大韓航空がアシアナ航空の株式の63.88%を取得する企業結合を条件付で承認することを決定した。
 審査の結果、①国際線の場合、両社の重複路線計65路線のうち26路線、②国内線の場合、両社の重複路線計22路線のうち14路線において競争を制限するおそれが大きいと判断した。
 なお、国内外の貨物路線、その他航空整備市場等については、競争制限のおそれがないと判断した。
 競争を制限するおそれがある国内外の旅客路線については、競合する航空会社の新規参入等を促進するため、今後10年間のスロット(訳注:発着枠)の返還及び運輸権(訳注:政府が航空会社に配分した運行権利)の移転等の構造的問題解消措置を課した。
  構造的問題解消措置が実施されるまでには一定の時間が必要であることを考慮して、措置対象の各路線について、運賃引上げの制限及び座席数の縮小禁止の措置等を並行して課した。
 今回の航空会社の企業結合案件は、国内の大型航空会社(Full Service Carriers)間の企業結合としては最初の事例であり、構造的問題解消措置が課された最初の事例でもある。
 パンデミックの継続による航空需要の急減など、航空業界の不確実性が非常に高く、海外主要国も審査中(訳注:シンガポール、ベトナム、台湾、トルコ、マレーシア、フィリピン、タイ及びニュージーランドの8か国で審査完了。米国、イギリス、オーストラリア、 EU、日本及び中国の6か国で審査中。)であることを考慮して、綿密かつ迅速に先制的に審査を完了するように努めた。
 2021年1月の届出受理以後、1年余りの間、審査専門チームの構成、旅客・貨物分野における経済分析の実施、海外競争当局との協議、路線別の競争制限性の検討、問題解消措置案の取りまとめ等の審査過程を経た。
 特に、本件問題解消措置を効果的に履行するために、航空当局の協力が必要であることを考慮して、2021年10月に国土交通部(訳注:日本の国土交通省に相当)と覚書(MOU)を締結し、実務協議を数回行った。
 競争制限が問題となる路線に対して課された構造的問題解消措置は、当該路線に競合航空会社が新規参入しなければ、実際の効果は現れない。したがって、KFTCは今後、航空当局及び履行監督委などとともに、問題解消措置の効果的な履行に向けて最善を尽くす。また、 東南アジア、中国等の中・短距離路線においては、スロットの返還のほかに運輸権再配分等を通じて、国内格安航空会社(LCC)などにとって新たな機会となる。
 国内最大手の航空会社として長期間競争してきた当事会社の企業結合によって、国内航空運送サービス産業の競争力が向上し消費者利益が高まることが期待される。

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