その他
オーストラリア
オンラインマーケットプレイスにおける消費者及び販売者の懸念について
2022年4月28日 オーストラリア競争・消費者委員会 公表
原文
【概要】
Amazon Australia、Catch、eBay Australia、Koganなどの一般的なオンライン小売マーケットプレイス(以下「マーケットプレイス」という。)に関するオーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)の調査報告書により、マーケットプレイスが消費者及び販売者に莫大な利益をもたらすことやマーケットプレイスの運営方法に関する様々な懸念があることが明らかになった。
マーケットプレイスのおかげで、販売者は低コストで市場に参入することができ、消費者にとっては商品の選択の幅が広くなる。
懸念事項としては、商品のランキングや表示方法を決定するためのアルゴリズムの使用(マーケットプレイスの中には自社製品を優遇するものもある。)、消費者データの収集及び利用、不十分な紛争解決プロセス並びに消費者保護の強化の必要性などが挙げられる。
ACCCは、第4回デジタル・プラットフォームサービスに関する調査において、マーケットプレイスが消費者及び販売者のために、公正かつ競争的な市場を促進しているかどうかについて調査した。その結果、マーケットプレイスは、プラットフォーム上の消費者と販売者との間の取引について、高度に管理及び関与していることが分かった。
本報告書は、マーケットプレイスによる、プラットフォーム上での消費者に対する商品の表示及び商品のランク付けの方法に係る、消費者及び販売者の懸念を強調している。
マーケットプレイスは既に、消費者の購買意思決定に多大な影響を及ぼすランキングアルゴリズムやその他の慣行を展開している。これらのアルゴリズムや慣行は、ハイブリッド型マーケットプレイスにおける自社製品の優遇のために利用可能である。
本報告書は、マーケットプレイスで収集・利用される大量の消費者データについて強調しており、そのようなデータは、多くの消費者のプライバシーに係る嗜好又は期待に応えるものではない可能性がある。
例えば、自主的な「製品安全に関する誓約」(Product Safety Pledge)(訳注:ACCCが一部のマーケットプレイスと共同開発した自主的な取組であり、複数の重要な約束事を通じて安全ではない製品から消費者を保護することを目的としている。)に参加するマーケットプレイスもあり、誓約に参加するマーケットプレイス(signatories)は、検索結果に表示された、安全ではない製品を2営業日以内にマーケットプレイスから削除することを約束するなど、消費者に対して更なる保護を提供する。ACCCは、他のマーケットプレイスに対しても、マーケットプレイスの更なる安全性強化を図るために、製品安全に関する誓約への参加を促す。
報告書は、紛争解決の手段を欠いていることについても懸念を示している。
本報告書において、オーストラリアでは他国とは異なり、いずれのマーケットプレイスも支配的地位には達していないものの、一つの支配的なマーケットプレイスが有利になるように、市場が「傾く(訳注:消費者が一つのマーケットプレイスに集中すること)」可能性について指摘されている。傾くことによって、支配的なマーケットプレイスが出現し、反競争的な行為をしたり、消費者及び販売者が競争によって得られるはずの利益が減殺されたりすることになれば、ACCCは、重大な懸念を抱くことになるだろう。
報告書によると、Amazon Australiaの売上高は、eBay Australiaよりも大幅に低く、また、Big W、David Jones、Kmart、Myer又はTargetといった、オーストラリアでオンライン事業を展開する多くの大手小売業者の売上高をも大きく下回っている。しかし、オーストラリアにおける4大マーケットプレイス全ての売上げが伸びている中、Amazon Australiaの売上げは、他のプラットフォームよりも更に速い伸びを示している。ACCCは、第5回デジタル・プラットフォームサービスに関する調査報告書において、デジタル・プラットフォームに係る競争及び消費者の懸念に幅広く対処するための新たな規制枠組みがオーストラリアに必要とされているかどうかについて、検討している。
英国
CMA、緊急サービス用ソフトウェア供給事業者同士の合併について、競争上の懸念を認定
2022年4月29日 英国競争・市場庁 公表
原文
【概要】
NEC Software Solutions UK(訳注:NEC子会社。以下「NEC」という。)及びSSS(訳注:SSS Public Safety Limited(旧Capita (SSS) Limited)及びSecure Solutions USA LLC(旧Capita Software (US) LLC)を指す。)は、警察、消防・救急施設、救急車等の緊急サービス供給事業者及びロンドン交通局(Transport for London:TfL)、鉄道運営事業者等の交通機関に不可欠であるソフトウェアを供給している数少ない供給事業者のうちの2社である。
供給しているソフトウェアの機能には、以下のようなサービスが含まれる。
・指令室の担当者が、緊急対応スタッフと連絡を取るための緊急電話の受発信など、日常の業務で使用する「統合通信制御サービス(integrated communication and control services(ICCS))」。
・警察の勤務シフトの計画及びスケジュール作成を支援する専門ソフトウェア(「Duties」と呼ばれる。)。このソフトウェアの供給には、高度な専門知識及び経験を要する。
・警察が被身柄拘束者の処理や検察用の事件ファイル管理などの事件関連情報を記録し、管理するための「記録管理システム(records management systems(RMS)」。
英国競争・市場庁(以下「CMA」という。)は、上記三つのサービスのそれぞれについて、市場が寡占に近い状態となっており、NEC及びSSSは、基本的には僅か3社しか存在しない、大口顧客を有する供給事業者のうちの2社であると認定した。
CMAは、本件合併がこれらのサービスに与える影響を検証した結果、三つのソフトウェア製品の全てについて、競争上の懸念が生じると判断した。
これらの懸念を解消するために、CMAは、NECに対して、承認可能な問題解消措置を2022年5月9日までに提出するよう求めている。
CMAの懸念を解消する問題解消措置が提出されない場合、本件合併は2次審査に進むことになる。