2022年9月

その他

英国

CMA、アマゾンのマーケットプレイスについて、審査を開始

2022年7月6日 英国競争・市場庁 公表
原文
【概要】

 英国競争・市場庁(以下、「CMA」という。)は、7月6日、アマゾンが運営するアマゾンマーケットプレイスについて1998年競争法に違反している疑いがあるとして、審査を開始した旨を公表した。欧州委員会(以下「欧州委」という。)が同様の懸念について現在審査中であるが、英国は欧州連合から離脱したため、欧州委の調査の対象外とされている。
 アマゾンマーケットプレイスに出品されている商品の一部は、アマゾンの小売部門を通じて供給されている。しかし、大半はサードパーティの販売者によって供給されている。アマゾンはこれらの販売事業者に対し、消費者とのマッチングなど、販売に不可欠なサービスを提供している。また、アマゾンは、保管、梱包、配送など、販売プロセスの一部を代行するオプションサービスも提供している。
 
 CMAの審査では、英国においてアマゾンが支配的な地位を有しているかどうか、また、アマゾンがその地位を濫用し、アマゾンの小売部門以外のサードパーティの販売事業者と比較して、アマゾンの小売部門又はアマゾンのオプションサービスを利用する販売事業者に対して不当な利益を与えることによって競争を歪めているかどうかが検討される。
 
  CMAの審査は、主に3つの分野に焦点を当てている。
(1)アマゾンが、どのようにしてサードパーティの販売事業者のデータを収集・使用しているか。これは、アマゾンに対して不当な優位性を与えているかどうかを含む。
(2)アマゾンが、アマゾンマーケットプレイスに表示される「Buy Box」に、優先的に又はお勧めとして表示される販売事業者を割り当てるための基準をどのように設定しているか。「Buy Box」とは、アマゾンの商品のページに目立つように表示され、特定の販売事業者の商品について「Buy now」又は「Add to Basket」を1クリックして選択できるようにするボタンである。
(3)アマゾンが、プライムラベルをどのように設定しているか。プライムラベルとは、アマゾンのプライム会員が、商品が迅速に配送されるなど利便性の高いサービスが受けられることを示すラベルである。
 
 欧州委は、既に同じ分野を対象とした2つの審査を実施している(訳注:「マーケットプレイスにおける販売事業者データの使用に関する審査」並びに「「Buy Box」及びプライムラベルに関する審査」)。CMAは、英国における独自の審査を進めていく過程で、欧州委との連携を図ることになる。

CMA、Pfizer及びFynnに対して、総額7000万ポンドの制裁金を賦課

2022年7月21日 英国競争・市場庁 公表
原文
【概要】

 英国競争・市場庁(以下「CMA」という。)は、フェニトインナトリウムのカプセル(訳注:てんかん発作の予防薬。以下「フェニトインカプセル」という。)の供給価格について、不当な高価格を設定することにより1998年競争法に違反していたとして、Pfizerに対して約6330万ポンドの制裁金を、Fynn Pharma(以下「Flynn」という。)に対して約670万ポンドの制裁金を、それぞれ賦課した。
 Pfizer及びFlynnの競争法違反行為により、英国の国営医療サービス事業(National Health Service(以下「NHS」という。))の負担額は、1年間で約200万ポンドから約5000万ポンドに上昇した。
 
 CMAは、詳細審査の結果、Pfizer及びFlynnは4年以上にわたりフェニトインカプセルに不当に高い価格を設定し、最終的にNHSがその価格を負担していたとして、Pfizer及びFlynnに対して制裁金を賦課した。
 
 両社が以前はエパヌチンと呼ばれていたこの薬のブランド名を変更することにより、この薬が価格規制の対象外となって以降、両社は供給価格を自由に設定できるようになった。当時、Pfizer及びFlynnは、英国でフェニトインカプセルを独占的に販売していたため、NHSは、この重要なてんかん治療薬の高騰した最終価格を支払う以外に選択肢がなかった。
 
 その後、Pfizerは、4年間にわたり、Flynnへの供給価格について7.8倍から16倍引き上げた。Flynnは、卸売業者や薬局への販売価格について23倍から26倍引き上げた。これらの違反行為により、NHSが負担するフェニトインカプセルの年間コストは、2012年の約200万ポンドから2013年には約5000万ポンドに増加した。
 
 CMAは、最初の審査を経て、2016年12月に、Pfizer及びFlynnの行為が競争法に違反すると認定した。これに対し、Pfizer及びFlynnは、競争審判所(Competition Appeal Tribunal(以下「CAT」という。))に異議を申し立てた。CATは、市場画定及び支配に関するCMAの審査結果を支持したものの、Pfizer及びFlynnの設定した価格が、支配的地位の濫用に該当するという結論については棄却した。CATは、この点については更なる検討を要すると判断し、CMAに対して差し戻した。
 
 CMA及びFlynnはその後、控訴裁判所(Court of Appeal)に控訴した。2020年3月、控訴裁判所はFlynnの訴えを全面的に棄却し、CMAが主張した不当な価格設定に関するリーガルテスト(legal test for unfair pricing)の実施を支持する判決を下した。これを受けて、CMAはCATから差し戻された事項について再審査することを決定し、2020年6月に現在の審査(再審査)を開始した。
 追加の証拠収集と分析を経て、CMAは、Pfizer及びFlynnの行為はそれぞれの市場における支配的地位の濫用に該当し、フェニトインカプセルに不当な供給価格を設定していたと認定した。

韓国

KFTC、ソウル地下鉄2号線、金浦(キンポ)都市鉄道などの鉄道車両の談合を摘発

2022年6月2日 韓国公正取引委員会 公表
原文

【概要】

 韓国公正取引委員会(以下、「KFTC」という。)は、コーレイル(韓国鉄道公社)、ソウル交通公社等の鉄道運営機関が2013年1月から2016年11月の期間に発注した鉄道車両購入に係る、ソウル地下鉄2号線、金浦都市鉄道、釜山地下鉄1号線等の入札6件において、事前に落札予定者を決定していた現代(ヒョンデ)ロテム株式会社、株式会社宇進産電(ウジンサンジョン)の2社と、2019年2月から2019年12月の期間に発注した鉄道車両購入に係る、ソウル地下鉄5、7号線、GTX等の入札5件において、各社が受注する物件を事前に配分していた現代ロテム株式会社、株式会社宇進産電及び株式会社ダウォンシス(以下それぞれの社名から「株式会社」を省略する。)に対し、是正命令とともに、総額564億ウォン(暫定) の課徴金を賦課することとした。
 
1 違反行為
第1共同行為 2013年1月~2016年11月 現代ロテム及び宇進産電の2社の談合
合意背景
 現代精工、大宇重工業及び韓進重工業の3社が、1999年に、現代ロテムの前身である「韓国鉄道車両株式会社」に統合され、国内の鉄道車両製造市場は、2015年まで、事実上、現代ロテムの独占体制にあった。
 一方、宇進産電は、現代ロテムの鉄道車両に電装品等を供給し、売上のほとんどを現代ロテムに依存していた。
 このような状況において、宇進産電は、2010年に、釜山地下鉄4号線に関連する軽電鉄車両を製造・納入し、現代ロテムは、宇進産電を鉄道車両製造市場における潜在的な競合事業者であると考え始めた。
 このため、現代ロテムは、2013年に発注された「金浦都市鉄道列車運行システム一括購入設置入札」において、宇進産電との競争を事前に回避しようとした。
 現代ロテムの部品協力会社としての性格が濃かった宇進産電も、競争ではなく合意を通じて、安定的に現代ロテムに電装品等を供給しようとする動機があった。
 
合意内容
 2社は、鉄道車両購入に係る入札6件において、現代ロテムが落札できるよう、宇進産電は応札しないこと、又は談合の協力者として参加し、その見返りとして、入札事業に関連する下請の一部に入ることについて、3回にわたって合意し、これを実施した。
 
第1共同行為の合意対象入札リスト
(単位:百万ウォン)

 

公告名

公告日

需要機関

契約金額

金浦都市鉄道列車運行システム一括購入設置

2013年1月10日

韓国鉄道施設公団

203,778

電動車調達購入要請
(2号線200両)

2015年2月3日

ソウルメトロ(現ソウル交通公社)

209,600

コーレイル空港鉄道電動車2編成購入

2015年3月4日

韓国鉄道施設公団

26,525

5号線(河南線)電動車
調達購入契約依頼

2015年10月30日

ソウル特別市都市基盤施設本部

48,275

釜山市1号線電動車
40両製作購入

2016年1月5日

釜山交通公社

52,800

都市鉄道9号線電動車
32両購入

2016年9月28日

ソウル特別市都市基盤施設本部

44,094

 
 本件入札は、単独応札によって2回以上不調になれば、「再公告による随意契約」で契約が締結されるところ、この場合、一般に、事業者は、随意示談の過程で高い交渉力を持つようになるため、現代ロテムは、この点を利用して、最大限高い金額で入札事業を受注しようとした。ただし、発注機関が入札を有効に成立させるために複数の入札参加者を要求した場合、宇進産電が協力業者として参加し、現代ロテムが通知した価格で入札していた。
 
第2共同行為 2019年2月~12月 現代ロテム、宇進産電及びダウォンシスの3社の談合
合意背景
 宇進産電及びダウォンシスが、2015年から本格的に入札に参加し、鉄道車両1両当たりの価格は、現代ロテムの独占体制の1999年から2014年までの間の平均11.6億ウォンから、2015年から2018年までの間は、平均8.1億ウォンへと急激に下落した。 
 また、前記第1で述べた共同行為の終了以降、2017年から2018年の間に、鉄道車両調達の入札において、実際に競争が行われ、3社間の競争が激しくなった。
 このため、2018年末頃から、国内の鉄道車両業界内において、低価格受注を防止して収益を最大化すべきという共通認識が形成され、鉄道車両の製造能力が向上したダウォンシスを含め、国内の全ての鉄道車両製造事業者3社の間での談合が2019年2月に始まった。
 
合意内容
 現代ロテム、宇進産電及びダウォンシスの3社は、2019年2月から2019年12月の期間に発注された入札5件のうち、①宇進産電は「5、7号線新造電車の車両(336両)購入入札(2019年2月)」において、②ダウォンシスは「幹線型電動電車の車両(EMU-150)(208両)の購入入札(2019年9月)」におい て、③現代ロテムはその他3件の入札において、ぞれぞれ受注することで、配分内容について事前に合意した。ただし、第2で述べる共同行為は、第1の共同行為とは異なり、3社がいずれも鉄道車両製造事業者の立場において行った合意であるため、下請の内容を含めていない。
 
第2共同行為の合意対象入札リスト
(単位:百万ウォン)

 

公告名

公告日

需要機関

契約金額

落札予定者

5、7号線新造電車の車両
(336両)購入

2019年2月27日

ソウル交通公社

373,100

宇進産電

幹線型電動電車の車両
(EMU-150)(208両)購入

2019年9月16日

コーレイル

382,100

ダウォンシス

京仁線、果川安山線、分唐線、一山線新造電車の車両(448両)購入

2019年11月6日

コーレイル

638,606

現代ロテム

ピョルネ線(8号線)電動電車の車両購入

2019年10月17日

ソウル特別市都市基盤施設本部

71,196

現代ロテム

GTX-A路線運航車両購入

2019年12月13日

SGレール

345,213

現代ロテム

 
合意方法
 当時、宇進産電及びダウォンシスは法的紛争中であり、「現代ロテム及び宇進産電」、「現代ロテム及びダウォンシス」間の役職員の会合及び連絡等を通じて合意した。
 特に現代ロテムは、合意過程において自らを「長男」と呼ぶなど強い仲裁の意志を示し、現代ロテムの主導の下で、関係が悪化した宇進産電及びダウォンシスを含む3社間の合意が成立した。
 
合意の実行
 3社の役職員は、最初の合意以降も粘り強く連絡を取り、合意を実行した。
 一例として、宇進産電が受注し、その他の事業者は応札しないことで合意がなされた「5、7号線新造電車の車両購入入札(2019年2月)」にダウォンシスが発注先の要請により参加することになると、宇進産電の役員は、それまで不和であったにもかかわらず、ダウォンシスの役員に会って、協力者として入札 参加する(宇進産電が通知した価格で入札する)約束を得た。
 以後、宇進産電は、ダウォンシスの入札協力への見返りとして、両社間で進行中であった法的紛争に関連する抗告を取り下げた。
 また、ダウォンシスが受注し、その他の事業者は応札しないことで合意がなされた「幹線型電動電車の車両(EMU-150)の購入入札(2019年9月)」の前に、ダウォンシスが現代ロテムの合意の実行(当該入札に不参加)について再度確認を求めると、現代ロテムの職員がダウォンシスの役員に対し、「現代ロテ ムは当該入札に参加しない」という内容の秘密文書をテレグラム(訳注:チャットアプリ)を通して送付した。
 
2 適用法条 ‧ 是正措置
適用法条
 (第1共同行為)
旧「独占規制及び公正取引に関する法律」第19条第1項第8号(入札談合)
(2021年12月30日施行の現行法(第17799号)の第40条第1項第8号)
(第2共同行為)
旧「独占規制及び公正取引に関する法律」第19条第1項第3号(物量配分談合)
(2021年12月30日施行の現行法(第17799号)の第40条第1項第3号)
 
是正措置・課徴金
 KFTCは、3社に是正命令を発出するとともに、現代ロテムに約323億ウォン、宇進産電に約148億ウォン及びダウォンシスに約93億ウォンの総額564億ウォンの課徴金を賦課することとした。
                         
 今回の措置は、2015年以前の現代ロテムの独占、その後の現代ロテム、宇進産電及びダウォンシスの3事業者のみで構成された閉鎖的な鉄道車両製造市場において数年にわたり発生した談合を摘発・制裁したものであり、1回の取引量と取引金額の規模が大きく、国家の基幹産業と連携し経済的波及力の大きい交通産業内の競争制限行為を是正したことに意義がある。
 特に、第2共同行為の場合、国内の鉄道車両製造市場における事業者全員の合意であるため、入札の競争が制限されていたところ、今回の措置を通じて、国民の重要な交通手段である鉄道車両製造市場における競争秩序が回復すると期待する。
 KFTCは、今後も、多くの国民が利用する交通施設に関連する談合に対する監視を強化し、法違反の摘発時には、国民の安全な交通環境作りと公共予算の削減のために、厳重に制裁していく。

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