その他

英国

CMA、ヴェオリアとスエズの合併について、競合事業のほとんどの売却を命令

2022年8月25日 英国競争・市場庁 公表
原文
【概要】

 競争・市場庁(以下「CMA」という。)は、ヴェオリアによるスエズの買収について詳細に審査(二次審査)した結果、本件買収がいくつかの市場において競争上の懸念を生じさせるとの結論に達し、2022年8月25日、ヴェオリアに対して以下の3つの事業の売却を命じた。
(1)スエズの英国における廃棄物処理サービス事業
(2)スエズの英国における工業用水運用・保守サービス事業
(3)ヴェオリアの欧州における移動式水処理サービス事業
 
 上記の3事業は、英国においてヴェオリア及びスエズが競合している事業のほとんど全てとなっている。
 ヴェオリアは、二次審査の暫定的な結果の公表を受けて、スエズの英国における廃棄物処理サービス事業を売却すると述べた。CMAは、英国の廃棄物処理サービス事業に加えて、上記2つの水処理サービスの売却条件を決定することとする。また、ヴェオリアは、これらの事業の売却前に、売却先についてCMAから承認を得る必要がある。
 ヴェオリア及びスエズは、共に廃棄物処理及び水処理サービスを提供するグローバル企業である。2020年には、英国において、ヴェオリアは約20億ポンド、スエズは約10億ポンドの収益を上げている。これは、ヴェオリアの年間世界売上高の約10%、スエズの年間世界売上高の約7%に相当する。
 ヴェオリア及びスエズは、廃棄物処理のサプライチェーン全段階で事業活動をしている。家庭や企業から廃棄物を収集し、リサイクル用及びコンポスト用に分別し、残りの廃棄物を処理する。その一部は発電用として焼却される。英国の多くの地方自治体は、廃棄物処理のニーズを満たすために、ヴェオリア又はスエズのいずれかに大きく依存している。また、ヴェオリア及びスエズは、工業用水に係る水処理サービスも提供している。
 CMAは、審査を通じて、いくつかの市議会や顧客に対してヒアリングを実施したところ、本件買収によるサービスの質や価格への潜在的な影響について懸念が示された。上記売却が実行されない場合には、最終的に、納税者及び企業が費用の増加分を負担させられることになるであろう。
 本日(2022年8月25日)公表されたCMAの最終報告書は、2022年5月の暫定的な審査結果の内容を確認するものである。同報告書によると、本件買収は、5つの廃棄物処理サービス市場及び2つの水処理サービス市場において競争上の懸念をもたらすと考えられる。これらの各市場において、ヴェオリア及びスエズは激しく競争しており、本件買収後は競争が限定的となるであろう。CMAは、本件買収が、地方自治体が負担することになるコストの上昇やサービスの質の低下を招き、納税者や英国中の企業に打撃を与える可能性が高いと判断した。
 CMAは、本件買収について、昨年(2021年)の10月に一次審査を開始した後、12月に本件を担当する独立審査グループによる二次審査を開始した。CMAは、二次審査の結果、本件買収によって英国の廃棄物処理及び水処理サービスの供給市場の競争が著しく阻害されることが懸念される旨の暫定的な見解を2022年5月に公表した。
 本件買収は、世界中のいくつかの競争当局によって審査され、EU及びオーストラリアの競争当局からも大規模な事業売却が求められた。

ドイツ

中国国際海運集装箱集団、ドイツ連邦カルテル庁の懸念を受け、マースク・コンテナ・インダストリーの買収計画を断念

2022年8月26日 ドイツ連邦カルテル庁 公表
原文
【概要】

 中国の深圳に本社を置く中国国際海運集装箱集団(英語名、China International Marine Containers (Group) Ltd.(以下「CIMC」という。))によるデンマークのティンクレフに本社を置くマースク・コンテナ・インダストリー(以下「MCI」という。)の買収計画について、当事会社は届出を取り下げた。ドイツ連邦カルテル庁(以下「カルテル庁」という。)は、集中的かつ世界規模の審査をした結果、当事会社に対し、競争上の深刻な懸念があることについて詳細に説明した。両当事会社とも、輸送コンテナの製造業者である。
 
 被買収事業者であるMCIは、コンテナ輸送会社であるマースク・グループに属しており、リーファーコンテナ(訳注:冷蔵又は冷凍用の特殊コンテナ)、リーファーボックス及びリーファーユニット(訳注:リーファーボックスはリーファーコンテナの箱型の保管部分、リーファーユニットはその冷却装置である。)の製造を専門としている。また、MCIは、これらの製品を「スタークール」というブランドで、世界規模で販売している。MCIの製造部門は中国に拠点を置き、研究開発部門及びその他の部門はデンマークに拠点を置いている。 
 また、CIMCは、リーファーボックスに加え、他のタイプのコンテナ(ドライカーゴ、タンク及び特殊なコンテナ)を世界規模で製造・販売している。リーファーボックスは、他の事業者によって製造されたリーファーユニットと一体化することにより、リーファーコンテナとして使用することができる。
 
 アンドレアス・ムント・カルテル庁長官は、次のように述べた。
「当事会社は非常に限定的な市場で事業活動を行っている。リーファーボックス及びリーファーユニットを製造している事業者は、世界でたった4社のみである。CIMCは、何年もの間、数十億の価値のあるリーファーボックスの製造市場において、2位以下を大きく離す首位事業者であ り続けている。CIMCがMCIを買収することになれば、既に強力な地位を更に強化し、その結果、同社の世界市場におけるシェアが60~70%にまで到達することになる。また、本件買収計画が実行されれば、CIMCは、リーファーボックスに搭載するリーファーユニットの製造部門を得ることになり、自社の品揃えを補完することが可能となる。その結 果、コンテナ船運航会社等の顧客は、選択し得るに十分な代替製品を失うことになっていた。つまりMCIは、CIMCの重要な代替サプライヤーではなくなっていた。我々は、企業結合審査の間、我々と同様に合併の届出を受けていた米国司法省(以下「DOJ」という。)と協力した。」
 
 カルテル庁の予備的評価によると、本件市場における当事会社以外の2社は、買収によって引き起こされる競争状況の悪化を十分に埋め合わせることや、CIMCに効果的な競争圧力をかけることができないと判断された。本件市場における3位の事業者である中国の広東富華重工製造有限公司は、市場支配力が弱く、また生産能力も比較的低い。なお、本件市場における4位の事業者は、中国の国営海運企業であるCOSCOグループに属する上海ユニバーサル物流機器有限公司(市場では「東方」として知られている。)である。本件買収計画が実行されれば、コンテナ運送を精力的に行っている顧客にとって、東方から商品を調達することは、多くの川下市場において強い力を持つ競合他社である COSCOに依存することとなってしまう。さらに、CIMC及びCOSCOの中国企業2社は、ごく最近までの数十年にわたり、会社法の下でつながりがあった上、人的な結びつきもあったことから、これらの2社間では有効競争が必ずしも存在しえないと言える。
 
 今後一定の期間内に、本件市場に新規参入が起こる可能性は低いだろう。なぜなら、リーファーボックスの製造事業者は、その顧客(コンテナ運送会社及びコンテナリース会社)の需要が時期によって激しく変動し、比較的短納期で大量の注文があるため、常に高い生産力を有していなければならないからである。それと同時に、リーファーボックスの製造事業者の利益は、販売量の多さに依存する。
 
 当事会社は、手続の過程で、問題解消措置の承認を得るための取組として、買収計画の構造的変更を伴う提案をいくつか行った。しかし、カルテル庁は、これらの変更が競争法上の懸念を払拭するのに十分であるとは言えないとの見解に達した。
 カルテル庁は、本件買収計画について同様の届出を受けていたDOJと協力して審査を行ったが、今般、その届出も取り下げられた。

オランダ

ACM、多くの持続可能な農業を目的とした事業者間の協定が許可されるとの見方を示したガイドラインを公表

2022年9月7日 オランダ消費者・市場庁 公表
原文
【概要】

 農家、加工業者、卸売業者及びスーパーマーケット事業者は、最近できた農業分野に係る規定により、持続可能な農産物の生産及び販売に関する事業者間の協定をより一層容易に締結できるようになってきている。
 農業分野に必要な変化は、農家間の協力及び「農場から食卓まで」の生産・流通チェーン内の協力によって促進されてきた。オランダ消費者・市場庁((以下「ACM」という。)は、農業分野において利用可能な様々な事例の概要について「農家間の協力に関するガイドライン」として取りまとめた。
 
 マルティン・スノープACM委員長は、以下のように述べた。
「例えば、スーパーマーケット事業者が、農業分野を持続可能なものにするために必要な変化をもたらす協定を結ぶ時に、一定の制限を受けているのを目にすることがある。農家間及び流通事業者間における持続可能な取引を可能にする協調行為は、ほとんどの場合、競争法に抵触しない。」
 
 農家及び生産者は、競争法に抵触することなく、多様な方法で協同することが認められているため、加工業者、卸売業者及びスーパーマーケット事業者に対して、取引上の地位を強化することもできる。欧州では、農業分野において重要な競争法の適用除外が多数存在しているが、それは、特に持続可能性に関しては、他の分野と比べてより多くの協調行為を行うことができることを意味している。
 
持続可能性及び協調行為
 持続可能性を実現する目的で協定を結ぼうとする農家又はサプライチェーンの市場関係者は、当該協定が、持続可能性を実現するために必要であることを示さなければならない。もう一つの重要な要件は、当該協調行為が、例えば、環境保護や動物福祉増進などの法律の規定よりも高度な持続可能性を実現することである。これらの協調行為は、販売価格又は生産量を共通にするものや生産量に関する協定となる場合もあり得る。これらのタイプの協定は、「農場から食卓まで」の流通過程全体において農家同士が締結できるものである。このような方法により、農家は持続可能な農産物の生産を奨励される。
 
農業分野における欧州の規則
 欧州の規則では、農家は、たとえ持続可能性という目的でなくとも、農産物の生産及び販売に関して協同することが認められている。例えば生産者協同組合を通じてそのような行為が行われる。同じ農産物を生産している農家は、共同で農産物の生産及び販売を行うことができる。例えば、園芸分野には、既に約1ダースの生産者協同組合が存在している。その他の農業分野でも、同様に生産者協同組合を通じての同様の協力を利用することができる。
 その他のタイプの協調行為としては、オランダに数多く存在する農産物のサプライチェーン(生産者から小売業者まで)の事業者団体を通じて行うものがあり、そのようなサプライチェーンの市場関係者は、事業者団体を通じて協力することができる。これにより、事業者間で例えば、農産物の流通の効率化の促進や市場の情報の共有を行うことができる。オランダでは、農業分野において多様な事業者団体が存在している。
 
ACMと農業分野
 ACMは、農業市場について注意深く監視を続けている。過去数年間、ACMは、農業・栄養に関する調査(「Agro-Nutri Monitor」)において多様な農産物市場を調査してきており、最新の調査を10月に公表する予定である。また、ACMは、農家の交渉上の地位を強化するための協調行為の事例についての情報も提供している。ACMは、農業及び食品サプライチェーンにおける不公正な商慣行に関する法律の遵守を監視している。

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