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オーストラリア
ACCC、制裁金の引上げ及び不公正な契約条件への適用拡大を含む法律案の可決を歓迎
2022年11月1日 オーストラリア競争・消費者委員会 公表
原文
【概要】
2022年10月24日の週に議会を通過した改正競争・消費者法の下では、違反事業者は、より高額な制裁金を賦課される可能性がある。
本改正は、不公正な契約条件に関する制裁金の導入及びその他の変更並びに競争・消費者法などにおける一部の違反行為に対する制裁金の最高額の大幅な引上げの2点で構成されている。不公正な契約条件に関する制裁金の規定は、連邦総督の裁可による公布の日から、12か月経過した日の翌日から施行される。また、競争・消費者法の制裁金の最高額の引上げの規定は、公布の翌日から施行される。
制裁金の上限額を5倍に引上げ
一部の違反行為に対する制裁金を強化する改正により、これらの規定に違反した事業者に対する制裁金の最高額は、5000万豪ドル、違反行為により得た利益の3倍、当該利益が確定できない場合には当該違反行為を行った期間の売上高の30%、のうち最も高い金額に引き上げられた。
ジーナ・キャスゴットリーブオーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)委員長は、次のように述べた。
「制裁金の上限額の引上げは、事業者が競争するという義務を遵守し、消費者を誤認させたり、不誠実な行為を行ったりしてはならないという強力な抑止的メッセージとなる。これらの制裁金の最高額の改正により、裁判所は、競争・消費者法違反に対して課される制裁金が事業上のコストではなく、 むしろ重大な賦課金として所有者又は株主の大きな関心を喚起する可能性のあるものとしてみなされることを保証することができるようになる。」
不公正な契約条件に対する初の制裁金導入を歓迎
本改正には、消費者及び中小企業との間で締結した標準約款に不公正な契約条件を定めている事業者に対する制裁金の導入が含まれている。
キャスゴットリーブACCC委員長は、次のように述べた。
「我々は、不公正な契約条件が消費者及びフランチャイジーを含む中小企業に与える悪影響について長い間注目してきた。そして、これらの行為は違法であり、事業者に遵守を促すより強力なインセンティブを与えるための制裁金が必要であると提言してきた。」
裁判所は、これまで、特定の不公正な契約条件を不当として無効とし得たものの、それらの行為は禁止されておらず、標準約款に不公正な契約条件を定めている事業者に対して、制裁金を賦課することはできなかった。
キャスゴットリーブACCC委員長は、次のように述べた。
「事業者は、新たな制裁金が適用される前に、12か月以内に標準約款を見直し、改定しなければならない。これらの改定により、今後、中小企業及び消費者は、標準約款の締結又は更新時に不利な立場にならないと自信を持つことできるようになる。中小企業が持つ大企業への苦情の多くは不公正な契約条件に関係しており、不公正な契約条件に対する抑止力の強化は、中小企業にとって大きな支援となる。」
本改正は、より多くの中小企業との契約にも適用が拡大される。この保護的な措置は、従業員数が100人未満、又は年間売上高が1000万豪ドル未満の中小企業との契約に適用され、契約額に関係なく適用される。本改正は、「標準約款」をより明確に定義するなどの関係法の関連事項も明確にしている。
キャスゴットリーブACCC委員長は、次のように述べた。
「標準約款は、多くの事業者が多数の顧客と契約する際に費用対効果の高い方法である。しかしながら、標準約款による契約は、その定義より提示条件を交渉できないことが多い。不公正な契約条件に関する法律は、このような交渉力の不均衡に乗じた契約条件から、消費者及び中小企業を保護するために不可欠である。我々は今回の法律の強化を喜ばしく思っている。」
背景
2022年財務省関連法のMore Competition, Better Prices改正に関する法案は、2022年10月27日に議会の両院を通過した。
競争・消費者法に基づく増額された制裁金は、法律の施行後に行われる違反行為に適用される。
事業者に対する新たな制裁金の最高額は、以下のうち、最大の金額が適用される。
・5000万豪ドル
・裁判所が認定できる場合、違反行為から得た「合理的に帰属することができる」利益の3倍。
・裁判所が認定できない場合、違反行為が行われた期間の調整後の売上高の30%。
改正前の制裁金の最高額は1000万豪ドルであり、違反行為に関連する利益の3倍又は関連売上高の10%であった。
個人に対する制裁金の最高額は50万豪ドルから250万豪ドルに引き上げられる予定である。
ACCC、デジタル・プラットフォームに対する新たな競争・消費者法の制定を提言
2022年11月11日 オーストラリア競争・消費者委員会 公表
【概要】
オーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)は、オーストラリアの消費者、中小企業及び競争に悪影響を与えるデジタル・プラットフォーム事業者の行為に対する新たな対応について提言した。
ACCCの5年間(2020年~2025年)にわたるデジタル・プラットフォームサービスに関する調査の第5回報告書は、デジタル・プラットフォーム事業者に対し、義務的な紛争解決手続の導入、詐欺、有害アプリ及び虚偽レビューへの対策強化を求めるなどの対応を採ることを提言している。
また、本報告書は、競争を保護・促進するため、特定のデジタル・プラットフォームサービスに対する行動規範ついても提言している。
ジーナ・キャスゴットリーブACCC委員長は、次のように述べた。
「我々は、オーストラリアにおけるデジタル・プラットフォームの拡大がオーストラリアの消費者及び事業者に多くの利益をもたらしてきたことを理解している。しかし、このデジタル・プラットフォームの拡大は、現行の我が国の競争・消費者法で必ずしも対処できないリスク及び弊害も生み出してきた。
我々の調査の結果、様々なデジタル・プラットフォームサービスにおける消費者及び競争への悪影響は、広く定着し体系化されていることが確認された。
デジタル・プラットフォームは、事業者と消費者の間の「ゲートキーパー」又は「仲介者」としての重要な地位を有し、経済全体に広い影響力を及ぼしているので、我々が提言する改革は、全てのオーストラリア国民にとって重要かつ必要なものといえる。」
本報告書は、デジタル・プラットフォーム事業者に対する消費者及び競争に関する具体的な提言に加え、経済全般における新たな不公正な取引方法の禁止に対するACCCの支持についても改めて述べている。
消費者問題及び提言
ACCC及びその他の関係機関は、デジタル・プラットフォーム上で、弱い立場の消費者を標的とした詐欺が大幅かつ持続的に増加していることを確認している。
また、消費者は、アプリストアで入手可能とされている不適切で詐欺的なアプリ、虚偽レビューや改ざんされたレビューからの被害を受けてきた。
キャスゴットリーブACCC委員長は、次のように述べた。
「詐欺師とその被害者の仲介役となり得るデジタル・プラットフォームは、詐欺を発見して阻止し、有害なアプリを削除することができる特別な地位にある。
ソーシャルネットワーク及び携帯アプリを介して行われた詐欺による損失は、2020年の4900万ドルと比べて2021年には9200万ドルとなっており、1年間でほぼ倍増している。これは、デジタル・プラットフォームが、利用者への詐欺を防止するために、更に努力する必要があることを示している。
また、我々は、検索エンジン、ソーシャルメディア、アプリストア及びオンラインマーケットプレイスに表示されるものを含めて、ランキングとレビューのサービスを提供するプラットフォームにおける虚偽レビューを防止するための更なる対策を必要としている。
このような問題は、消費者や中小企業にとっては、紛争解決の手段がないことが原因で救済を求めることをあきらめることが多いため、デジタル・プラットフォーム事業者にこの問題を適切に考慮させることができず、更に深刻になっている。」
本報告書は、デジタル・プラットフォームに対し、以下の事項を求める新たな法律の導入を提言している。
1 利用者が、詐欺、有害なアプリ及び虚偽レビューを報告するのに使いやすい仕組みを提供し、利用者からの報告に対応すること
2 広告事業者、アプリ開発者、小売業者等のビジネスユーザーを認証することにより、詐欺の危険性を軽減すること
3 オンラインレビューの利用者に重要な情報を提供し、利用者がプラットフォーム上のレビューの信頼性を判断できるように、レビューの検証過程を公開すること
4 自社のプラットフォームサービスにおける詐欺、有害なアプリ、虚偽レビュー及びこれらの行為に対し採った措置を報告すること
5 消費者及び中小企業が適切な問題解決手段にアクセスできるよう、デジタル・プラットフォームに関するオンブズマン制度の新設に協力すること
競争上の問題及び提言
大規模デジタル・プラットフォーム事業者は、効果的な規制がなければ、競争を阻害する行為に関与する能力及び動機を持つ。これには、自社のサービスを優先させたり、デジタル製品やサービスの利用者に他のサービスや製品の利用を強制したりするような抱き合わせ販売(例えば、スマートフォンに特定のアプリをあらかじめ搭載しておくなど)を行ったりすることが含まれる。このような不十分な競争の結果、消費者やビジネスユーザーに損害をもたらす。
ACCCは、反競争的行為、ビジネスユーザーの不当な扱い及び潜在的な競合他社の参入・拡大への障壁に対処する現行のオーストラリア競争法と並行して、新たな規制枠組みの創設を提言している。
キャスゴットリーブ委員長は、次のように述べた。
「我々は、指定するデジタル・プラットフォーム事業者に適用する特定サービスの行動規範を必要としている。
新しい規制は、特定のデジタル・プラットフォームサービスに存在する競争法上の問題を的確に対象とし、利害関係者との協議を可能にし、有害な行為の新たに発生する形態にも対処する柔軟性を備えているものである。」
特定サービスの行動規範には、以下のような義務が含まれる可能性がある。
1 反競争的な自己優遇、抱き合わせ及び排他的なプリインストールに係る協定を防止すること
2 データの優位性に対処すること
3 ビジネスユーザーの公正な取扱いを保証すること
4 代替性、相互運用性及び透明性を向上させること