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英国

CMA、大韓航空によるアシアナ航空の買収計画に係る競争上の懸念を表明

2022年11月14日 英国競争・市場庁 公表
原文
【概要】
 英国競争・市場庁(CMA)は、大韓航空によるアシアナ航空の買収計画について、第1次審査の結果、ロンドン=ソウル間の旅客輸送及び貨物輸送サービスに係る競争上の懸念がある旨を公表した。
 大韓航空及びアシアナ航空(以下、「当事会社」)だけが、ロンドンとソウルを結ぶ直行便を運航する航空会社であり、現在、顧客に対して緊密に競争している。ロンドン=ソウル路線で当事会社が対峙する唯一の競争相手は経由便(indirect flights)サービスの供給者であり、CMAの第1次審査において、経由便は利用者にとってはるかに人気のない選択肢であることが判明した。
 こうしたことから、CMAは、本件買収計画は、ロンドン=ソウル路線の航空便を利用する旅客にとって、価格の上昇とサービスの質の低下を招くおそれがあると判断した。2019年には約15万人の乗客がロンドンからソウルに移動している。近年は、パンデミックの影響によってロンドン=ソウル路線の利用者の需要は低下しているものの、今後数年で同水準の需要が戻ると予想される。
 また、CMAは、本件買収計画が航空貨物サービスの供給において競争上の懸念を生じさせることも明らかにした。CMAは、当事会社が英国と韓国間の直行貨物便の2大供給事業者であり、経由貨物便の供給事業者が(貨物輸送の)利用者に対してより激しい競争(more significant competition)をもたらしていることを考慮しても、本件買収後、当事会社は十分な競争に直面しないであろうと判断した。したがって、本件買収計画は、韓国へ又は韓国から製品を輸送する英国の事業者にとってコストの上昇につながるおそれがある。
 本件買収計画は、英国のほか、米国、中国、日本及びEUの競争当局から承認を得る必要がある。
 CMAのColin Raftery 合併担当シニアディレクターは、次のように述べた。
「当事会社は、ロンドン=ソウル路線の主要な航空会社であり、本件買収計画により、英国の利用者や事業者が割高な料金を支払ったり、質の低いサービスを受けたりするおそれがある。本件買収計画は、当事会社がCMAの懸念に対処できない場合、より詳細な調査に移行することとなる。」
 当事会社は、2022年11月21日までに、CMAが表明する競争上の懸念を解消する是正措置案を提示することが求められている。また、CMAは、同年11月28日までに、当事会社が提示する提案を受け入れるか、第2次審査を実施するかについて判断する。

 

CMA、クラウドゲーム及びモバイルブラウザを対象とした市場調査の開始

2022年11月22日 英国競争・市場庁 公表
原文
【概要】
 英国競争・市場庁(以下「CMA」という。)は、2022年6月に公表したモバイルエコシステムを対象とした市場研究(market study)の最終報告書の提案に寄せられた多方面の意見を踏まえ、クラウドゲーム及びモバイルブラウザを対象とした市場調査(market investigation)を開始することとした。
 CMAは、アップル及びグーグルが、モバイル端末のOS、アプリストア、ウェブブラウザ等のモバイルエコシステムにおいて事実上の複占状態(duopoly)にあり、これらの市場を支配していると指摘したモバイルエコシステム市場研究の最終報告の発表と並行して、アップル及びグーグルを対象としたより詳細な市場調査の実施を検討し、意見募集を行ってきた。
 ブラウザは、モバイル端末で最も重要かつ広く利用されているアプリであるといえる。大抵の人は、情報、ニュース、ビデオ、ショッピング等のオンラインコンテンツを利用する際に、少なくとも1日に1回はブラウザを使用している。英国内における2021年のモバイルウェブサイトの閲覧のうち、97%はアップル又はグーグルの検索エンジンを搭載したブラウザを通じて行われているため、検索エンジンに何らかの制限がかかれば、ユーザー体験に大きな影響を与える可能性がある。
 コンピュータゲームは、英国では数十億ポンド規模の産業であり、何百万人もの人々が利用している。英国では既に80万人以上のユーザーがクラウドゲームサービスを利用しているが、モバイル端末での(ゲームの)配信が制限されると、この分野の成長が妨げられ、英国のゲームプレイヤーが取り残されてしまう。
 本日(2022年11月22日)、意見募集で提出された意見が公表された。その中で、アップル及びグーグルがモバイルブラウザ市場を支配していること、そしてアップルがApp Storeを通じてクラウドゲーム市場を制限していることについて、より詳細な調査の実施を求める意見が多く見られた。意見の多くは、ブラウザベンダー、ウェブ開発業者及びクラウドゲームサービスプロバイダーからのもので、現状がビジネスに悪影響を与え、イノベーションを妨げ、及び不要なコストを増やしていると述べている。
 ウェブ開発業者は、アップルによる制限及びブラウザ技術への投資不足が相まって、ウェブページを作成する際にバグや不具合に対処しなければならず、コストとフラストレーションが増大すること、そして、ウェブサイトが正しく作動するか明確でない場合には、特注のモバイルアプリを作成せざると得ないといった不満を述べている。
 結局のところ、こうした制限はウェブ開発業者等にとっての選択肢を狭め、英国の消費者の手に革新的な新しいアプリを届けることをより困難にする可能性がある。同時に、アップル及びグーグルは、ユーザーを保護するために制限が必要であると主張している。市場調査では、これらの懸念を考慮し、より良い結果を導くために新たなルールが必要か否かを検討する。
 市場調査は、事業者の行動及び制限の変更を促し、ひいては競争を改善し、消費者の選択肢を広げ、より高品質の製品の生産につながることがある。
 サラ・カーデルCMAチーフエグゼクティブ代行は、次のように述べた。
「我々は、英国の消費者が最高の新しいモバイルデータサービスを受けられるようにし、英国の開発業者が革新的で新しいアプリケーションに投資できるようにしたいと考えている。英国の事業者やウェブ開発業者の多くは、我々に対し、アップルやグーグルが定めた制約によって足止めされているように感じることを伝えてきている。新しいデジタル市場規制(digital market regime)が整えば、この種の問題にも対応できるようになると思われる。他方で、我々は、既存の権限を使って、できるところから問題に取り組んでいる。我々が耳にした懸念が妥当か否かを調査し、妥当なものであれば、これらの市場における競争及びイノベーションを改善するための手段を明らかにすることとなる。」

 

CMA、NECソフトウェアソリューションズによるCapitaグループ傘下の警察等の緊急サービス向けソフトウェア事業の買収について、一部事業の売却を命令

2022年12月1日 英国競争・市場庁 公表
原文
【概要】
 英国競争・市場庁(以下「CMA」という。)は、第2次審査の結果、NEC Software Solutions UK(訳注:NECの子会社。以下「NEC」という。)が行った、Capitaグループ傘下の警察等の緊急サービス向けソフトウェア事業(以下、「本事業」という。)を行う2社(SSS Public Safety Limited 及び Secure Solutions USA)の買収について、公的資金で運営されている緊急サービス機関が、不可欠なソフトウェアに多額の費用を支払わされることになることが判明したとして、一部事業の売却を命じた。
 NEC及びSSSは、警察、消防、救急隊等といった青色灯サービスやロンドン交通局、鉄道等の交通サービス事業者にとって不可欠なソフトウェアを提供する数少ない事業者である。
 CMAの独立審査チームは、本件買収に係る第2次審査の結果、当事会社が供給する総合的な情報管理サービス(Integrated Communication and Control Services、以下「ICCS」という。)及び業務管理システム(Duties Management Systems software:、以下「Duties」という。)向けのそれぞれの専門ソフトウェア市場において、競争上の懸念があることを明らかにした。

1 ICCS向けソフトウェア
 主に指令室(コントロールルーム)の職員が、緊急対応スタッフと連絡を取るための緊急電話の受発信などに使用されるソフトウェアで、公共の安全にとって必要不可欠なものである。

2 Duties向けソフトウェア
 警察が職員の勤務シフトを計画し、スケジュールを組むために使用するソフトウェアである。同ソフトウェアの提供には高度な専門性と経験が求められる。
 CMAの審査グループは、本件買収により、独立して競争していたいずれかの事業者が消滅するため、前述の2つのソフトウェア市場における競争を著しく低下させることになると判断した。その結果、英国の救急サービスは同じソフトウェアに割高な料金を支払うこととなり、新機能や新製品に関するイノベーションが阻害され、利用者の選択肢が狭まるおそれがある。
 CMAは、本件買収によって失われる競争を回復するために、NECに対して、ICCS及びDutiesに係るソフトウェア事業の譲渡を要求している。CMAは、今後、これらの事業の譲渡先の承認を含む事業譲渡に係る条件について順次決定していく。
 
 本件を担当するKip Meek CMA独立審査グループ長は、次のように述べた。
「救急サービス及び当該サービスの提供を受ける英国の納税者は、火災及び犯罪への対処、A&E(Accident & Emergency:救急外来)への搬送等の重要な業務を遂行するために、これらの不可欠なソフトウェアシステムに依存している。CMAは、本件買収により、青色灯サービス用ソフトウェアの料金が割高になったり、代替品が少なくなったり、質が低下したりするおそれがあると認定した。当事会社は、本件買収によって問題が生じる一部の事業を売却することにより、CMAの競争上の懸念を解消し、これらの重要な市場における競争の回復に寄与することとなる。」

 

ドイツ

ドイツ連邦カルテル庁、アマゾンに対する審査について、ドイツ競争法第19a条の適用も視野

2022年11月14日 ドイツ連邦カルテル庁 公表
原文
【概要】
 ドイツ連邦カルテル庁(以下「カルテル庁」という。)は、アマゾンに対する市場支配的地位の濫用に係る2つの事件審査について、大規模デジタル事業者に対するより効果的な監視のための新しい規制(ドイツ競争法(以下「GWB」という。)第19a条)の適用を視野に入れて審査を継続することとした。
 カルテル庁のアンドレアス・ムント長官は、次のように述べた。
「我々は、2件の審査について、アマゾン・マーケットプレイスで事業活動を行い、アマゾン自身の小売事業と競争関係にある事業者に対し、アマゾンがその事業機会を阻害しているどうか、また、阻害がある場合はその方法について審査を行っている。アマゾンは、電子商取引における最も重要なマーケットプレイスを運営しているため、同分野において重要な地位を占めており、それにより自社のプラットフォーム上の競争に大きな影響を与えるようなルールを作ることが可能となっている。我々は、まさにそのようなルールを制定する力を抑止することを目的とした新たな権限(competencies)を手に入れたことによって、アマゾンの反競争的行為に対してより効果的な介入ができるようになった。」
 カルテル庁は、2022年7月5日の決定において、既にアマゾンをGWB第19a条の「複数市場をまたぐ競争に極めて重要な影響を与える事業者」に認定し、新たな規制を同社に適用することができることを示した。アマゾンはこの認定を不服として、連邦裁判所に控訴しているが、同裁判所による判決が下されるまでは、カルテル庁は、引き続き予備的な執行をすることが可能である。
 カルテル庁は、1件目の審査案件では、アマゾン・マーケットプレイス上のサードパーティ販売者の価格を統制するメカニズム、すなわち、アルゴリズムによってサードパーティ販売者の価格設定を統制する行為を審査している。これらのメカニズムを適用することによって、最終消費者が販売者による商品の提供を見つけることを困難にしたり、提供自体をもはや見えないものにしてしまったりする可能性すらある。
 2件目の審査案件では、ブランド化に係る問題を扱っている。カルテル庁は、アマゾンが、販売者に対して様々なルール(例えば、個人事業者がアマゾン・マーケットプレイスにおいてブランド品を販売することができるか否かについて、アマゾン及び当該ブランド品の製造業者が締結する協定)を設けることにより、アマゾン・マーケットプレイスで製品を販売する事業者が被る可能性のある不利益について審査している。

 

ドイツ連邦カルテル庁、メタのMeta Quest VRヘッドセット使用に係る条件の変更等について公表

2022年11月23日 ドイツ連邦カルテル庁 公表
原文
【概要】
 メタ(旧フェイスブック)は、ドイツ連邦カルテル庁(以下「カルテル庁」という。)の懸念に対応し、フェイスブックアカウントがなくてもバーチャルリアリティ(以下「VR」という。)用のヘッドセットを使用できるように変更した。
 Meta Quest(旧Oculus)が提供するVRヘッドセット「Quest2」を使用したいユーザーにとって、フェイスブックアカウントはもう必要とされないこととなった。メタは、カルテル庁の競争上の懸念に対応し、現在では、フェイスブックアカウントとは別のアカウントであるメタアカウントを使用してヘッドセットを設定することも可能と変更したことから、当該ヘッドセットのドイツ国内販売が承認された。また、新型のQuest Proヘッドセットについても同様の扱いとなる。
 カルテル庁のアンドレアス・ムント長官は、次のように述べた。
「メタは、非常に多くのユーザーを持つデジタルエコシステムを作り上げることにより、ソーシャルメディアにおけるキープレーヤーとなり、さらに、成長期にあるVR市場においても重要なプレーヤーとなっている。フェイスブックやインスタグラムの会員でないとVRヘッドセットを使用できないとすると、ソーシャルメディア及びVRの分野における競争が著しく阻害されるおそれがある。カルテル庁の懸念を解消するため、メタは問題解消措置として、QuestのVRヘッドセットのユーザーに、別のメタアカウントを作成するという選択肢を提案した。
 我々は、この進展を歓迎するが、手続を本日終了することはなく、今後もユーザーオプションの実際の設計並びに様々なメタサービスからのユーザーデータの組合せ及び使用方法に係る問題を監視し続ける。
 本件は、大規模デジタル事業者をより効果的に監視するための新たな手段であるドイツ競争法(以下、「GWB」という。)第19a条に基づき、実際の競争上の問題に効率的に対処できることを示すものである。」
 カルテル庁は、2020年末、フェイスブックアカウントの保有をOculusのVRヘッドセットの利用の条件としているとして、メタに対する審査手続を開始した。カルテル庁は、GWB第19a条の導入直後である2021年初頭、本件に同条を適用して審査を開始した。
 カルテル庁は、2022年5月2日の決定で、メタが「複数市場をまたぐ競争に極めて重要な影響を与える事業者」であると認定した。この認定は、カルテル庁がGWB第19a条第2項に基づく措置を講じるための前提条件となるものである。メタはこの認定に対して上訴しておらず、この認定は確定している。
 メタは、フェイスブック・Oculus事件の円満な解決を希望し、2022年8月末に、フェイスブックやインスタグラムのアカウントを保有していなくてもQuest2ヘッドセット及びQuest Proヘッドセットを使用できるメタアカウントを導入した。カルテル庁は、ヘッドセットの使用条件を設定する上で、ユーザーがヘッドセットを単独で使用するか、他のメタサービスと組み合わせて使用するかについて、できるだけ自由に、かつメタからの影響を受けずに決定できるようにしなければならない旨を明確に示した。Quest2ヘッドセット及びQuest Proヘッドセットは、特にユーザーの選択の機会の確保に係るカルテル庁とメタとの調整を経て、ドイツでもまもなく発売される予定である。
 一方で、本件審査はまだ終了していない。カルテル庁は、本件審査において、ユーザーの選択を促す基本設計に加えて、メタの他のサービスと連動させる際に処理されたデータが蓄積されるか否か、またどのように蓄積されるのかについても審査している。ユーザーデータの利用がどの程度まで許容されるかについては、カルテル庁とメタの間で今後も議論を継続していく。この論点に関連して、フェイスブックのデータ処理の条件に関する競争法適用については、現在、欧州司法裁判所による判断を待っている状況である。この点が明確になるまでの間、メタは、一定の例外を除いて、Meta Questヘッドセットの使用中に発生するメタアカウントを持つユーザーのデータを、他のメタのサービスから収集したデータから分離して保存することとしている。

 

韓国

KFTC、「オンラインプラットフォーム政策課」を新設し、オンラインプラットフォーム分野の自主規制の支援と体系的な競争促進政策の樹立を目指す

2022年12月1日 韓国公正取引委員会
原文(韓国語)
【概要】
 韓国公正取引委員会(以下「KFTC」という。)は、オンラインプラットフォームに関連する政策問題に対するより体系的な対応のために、関連業務を専門に担当する「オンラインプラットフォーム政策課」をKFTCの市場監視局内に新設した。
 今回の新設は、各政府省庁が自主的に課単位の組織を設置・運営できるようにする「機関長自律機構制」を活用したもので、現在、臨時組織として運営中であった「オンラインプラットフォームチーム」を正規組織である「オンラインプラットフォーム政策課」に拡大・改編したものである。
  このために、本日(2022年12月1日)、KFTCは、「自律機構オンラインプラットフォーム政策課の設置及び運営に関する規定」(KFTC訓令)も制定・発令した。新設課の運営期間は1年(規定されている6か月及び行政安全部との協議なしでの6か月)であるが、緊急措置等が必要と認められる場合、行政安全部長官が定めるところにより、運営期間の1年を超えて再延長することができる。定員は、課長を含め7人である。
  近年、オンラインプラットフォーム中心に経済構造が激的に変化してきたことを受け、プラットフォーム事業者の独占又は寡占による市場の歪み、プラットフォームと利用事業者間の優越地位の濫用問題、消費者被害の問題等が継続的に提起されてきた。
 このような複雑で多様なプラットフォーム問題に体系的かつ積極的に対応する必要が生じたことから、関連の専門担当部署の新設が推進されてきた。
「オンラインプラットフォーム政策課」は、これまでオンラインプラットフォームチームで行っていたプラットフォーム分野における優越地位の濫用問題及び消費者問題に対する民間の自主規制の議論の支援、プラットフォーム業種別の実態調査等を行うだけでなく、オンラインプラットフォーム市場の独占又は寡占問題の解消及び競争促進に関する政策立案業務も担当する予定である。また、関連する政策方向を議論するため、内外の専門家を加えてのタスクフォースを2022年12月中に発足させることを目標に検討中である。
  ハン・キジョンKFTC委員長は、次のように述べた。
「今回のオンラインプラットフォーム政策課の新設により、プラットフォーム-プラットフォーム関係、プラットフォーム-利用業者関係、プラットフォーム-消費者関係など、プラットフォーム市場の多様な取引関係において発生する政策課題について、より体系的かつ迅速な対応が可能になると期待する。」
 

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