その他

中国

中国国家市場管理監督総局、独占禁止法の改正に伴い4つの規則を改正

2023年3月24日 中国国家市場管理監督総局 公表(*1)

原文

①独占的協定の禁止に関する規定  
②市場支配的地位濫用の禁止に関する規定  

③事業者集中審査規定  

④行政権力濫用による競争を排除、制限する行為の禁止に関する規定  


【概要】
  中国国家市場管理監督総局(以下「SAMR」という。)は、2022年8月1日から施行されている中国改正独占禁止法を踏まえ、同法の解釈・細則である①独占的協定の禁止に関する規定、②市場支配的地位濫用の禁止に関する規定、③事業者集中審査規定、④行政権力濫用による競争を排除、制限する行為の禁止に関する規定の4つの規則を改正した(注)。
 主な改正内容は以下のとおり。
 
(注)本件改正は、2022年6月27日から同年7月27日まで改正案の意見募集が行われ、その結果を踏まえた成案であり、4月15日から施行されている。
 
1 独占的協定の禁止に関する規定の改正
(1)競争関係の判断基準の明確化
 プラットフォームを含めた関連市場の定義の明確化や、潜在的な競争の相手方に関する規定を追加するなどして、競争関係の考え方等を明確化(第7条、第8条)。
 
(2)デジタル経済分野における関連規定の追加
 独占的協定の類型として、「アルゴリズムとプラットフォーム規則」によるものを明記(第8条)。販売市場又は原材料購入市場の分割に関し、「データ」などの要素を追加(第10条)。
 また、事業者がデータ、アルゴリズム、技術プラットフォーム規定を使用して水平又は垂直的独占的協定を締結することに関する禁止規定を追加(第13条、第15条)。
 
(3)垂直的独占協定の決定に関する規定
 独占的協定が競争を排除又は制限する効果を持たないことを、事業者が証明できた場合には、当該協定を禁止してはならない(第14条)。事業者が、SAMRが定める市場シェア基準その他の条件を満たしていることを証明できる場合には、当該協定を禁止してはならない(第17条)。
 
(4)独占的協定の締結の幇助等に関する規定の明確化
 独占禁止法第19条に規定されている独占的協定の締結の「組織」及び「実質的な幇助」に関する判断基準の明確化(第18条)。
 
(5)調査手順の明確化
 行政処分決定等の執行手続について、処分前の告知、聴聞等についての手続を明記(第27条、第28条)。実名通報者に対する処理結果のフィードバック等に関する規定を追加(第23条)。その他、リニエンシー規定等を含めた手続規定の詳細化(第37条等)。
 
2 市場支配的地位濫用の禁止に関する規定についての改正 
(1)プラットフォーム事業者の市場支配的地位の濫用行為に関する明確化
 「市場支配的地位を有する事業者は、データ、アルゴリズム、技術、プラットフォーム規則等を用いて市場支配的地位の濫用をしてはならない」との規定を新たに追加し、市場支配的地位の濫用行為の各類型について、多面的市場におけるコストの考え方といったプラットフォーム経済領域に関する考え方を明記(第21条、第14条~第19条)。プラットフォーム事業者が、市場支配的地位を有すると判断するための考慮要素に「取引金額」、「取引数量」及び「アクセス制限を行う能力」を追加(第12条)。
 
(2)市場支配的地位の濫用の判断基準の明確化
 プラットフォームを含めた関連市場の定義の明確化や、当該市場における競争状況を分析する際の考慮要素の追加等、市場支配的地位の濫用に関する判断基準の追加・修正(第5条、第14条~第19条等)。
 
(3)調査手順の明確化
 実名通報者に対する処理結果のフォードバック等に関する規定を追加(第25条)。行政処分決定等の執行手続について、処分前の告知、聴聞等についての手続を明記  (第29条、第30条)。改正独占禁止法第55条を踏まえた行政指導、改善措置に関する規定を追加(第37条)。
 
3 事業者集中審査規定についての改正 
(1)審査手続の明確化等
 簡易案件の手続に関し、10日間の公表期間等の関連規定を整備(第21条)。
 審査期間の中断(改正法第32条)に関する細則を規定(第23条~第26条)。
 届出基準を満たさないが、競争を排除・制限する効果がある事業者集中に関する手続を明確化(第8条、第43条及び第56条)。
 
(2)事業者集中分類・クラス分け審査制度の整備等
 事業者集中分類・クラス分け審査制度を整備し、国民経済や国民生活等の重要分野に関し、事業者集中審査制度の実施効果を評価し、当該評価の結果により審査業務を改善することができると規定(第6条)。
 事業者集中審査の情報システムの構築を強化し、スマート監督管理を促進することを規定(第7条)。
 
(3)法的責任の明確化及び抑止効果の向上
 届出代理人の法的責任等を明確化(ただし、意見募集稿に規定されていた具体的な処罰については明記されなかった。第13条、第14条及び第70条)。
 規則に従って職責を履行しなかった受託者等に対する罰金の上限を3万元から10万元に引上げ(第71条及び第72条)。
 
(4)その他
 事業者集中審査を委託された地方市場監督部門(北京、上海、広東、重慶及び陜西)の指導と監督を強化(第2条)。
 事業者集中審査において、「法に基づく全ての事業者の平等な扱い」、「公平、公正の堅持」との要件を追加(第3条)。
 
4 行政権力濫用による競争を排除、制限する行為の禁止に関する規定 
(1)法執行要件の明確化等
 改正独占禁止法(第54条)を踏まえ、関係する組織又は個人は調査に協力することを新たに追加(第16条)。
 調査対象機関は、是正内容を上級機関及び独占禁止法執行機関に書面で報告することを追加(第21条)。
 独占禁止法執行機関が、調査の終結又は指導を行うための要件として、関連する競争制限効果の解消を追加(第20条及び第21条)。
 
(2)「指導」に関する規定の追加
 改正独占禁止法(第55条)を踏まえ、指導の内容、手続等を明確に規定(第24条及び第25条)。
 
(3)公正競争審査制度との連携
 改正独占禁止法(第5条)において、公正競争審査制度(訳注:行政機関等が新しい政策等を導入する際、事前に当該政策等の競争制限効果について審査する制度)の改善に関する規定が追加されたことを踏まえた規定を追加(第29条)。
 
(4)行政機関等の公平競争意識の強化
 各級市場監督部門が、行政機関等に対し、公正競争の理念を強化するための宣伝、研修、助言等を行うことを追加(第30条)。
 
*1 国家市場管理監督総局の公表文では、規則の改正後の条文及び解説が掲載されている。本稿は、公正取引委員会が現行法と照らし合わせて主要な改正部分を取りまとめたものである。

英国

英国政府、デジタル市場に関する競争及び消費者法案を議会に提出

2023年4月25日 英国ビジネス・貿易省及び英国競争・市場庁 公表

原文【DBT】

原文【CMA】

【概要】
 4月25日、英国政府は、デジタル市場に関する競争及び消費者法案(Digital Markets, Competition and Consumers Bill:以下、「DMCCB」という。)が議会に提出された旨を公表した。同法案はケビン・ホリンレイク英国ビジネス・貿易省(Department for Business and Trade:以下、「DBT」という。)政務次官によって英国議会下院に提出され、英国競争・市場庁(Competition and Market Authority:以下、「CMA」という。)は、これを歓迎する旨の発表を行った。同法案のポイント並びにDBT及びCMAの発表の概要は以下のとおり。
 
1 法案のポイント
(1) 2023年4月25日に議会に提出されたデジタル市場に関する競争及び消費者法案(DMCCB)は、デジタル市場の競争を促進する観点からCMA内のデジタル市場ユニット(DMU)に法的権限を付与することに加えて、CMAによる消費者法の執行強化が盛り込まれている。
(2) デジタル市場における競争促進の観点では、ごく少数の大手IT企業を対象とした個別にカスタマイズされたルールの導入、英国政府によるプラットフォームビジネスへの介入等が盛り込まれている。また、競争法の枠組みを変更することで、英国の消費者や企業に損害を与える合併に対して、より円滑に対応できるようになる。
(3) 消費者法の執行強化の観点では、フェイクニュースやサブスクリプショントラップ等の詐欺行為が認められた場合、CMAが企業に対して直接制裁金を課すことができるようになる。
 
2 DBTによる公表 
(1) 本日(4月25日)、企業及び消費者を詐欺から守り、デジタル経済の恩恵を最大限に享受できるようにするための新しい法律(DMCCB)が導入された。
 顧客を騙すフェイクレビュー、年間10億ポンド以上の消費者損失を与えているサブスクリプショントラップ、消費者法に違反する企業に対処するCMAの新しい権限は、全て広範囲にわたる法案の要素となっている。
 競争的な市場では、企業は消費者に最高の製品、最も多くの選択肢、そして可能な限り低い価格を提供するよう努力する。DMCCBは、企業が共謀して英国の消費者を犠牲にして価格を吊り上げる場合など、競争上の問題を調査し、より迅速で効果的な措置を講じるための強力な手段をCMAに提供するものである。
 CMAは、長期間にわたる裁判手続を経ず、直接、消費者法を執行することができるようになる。この改革(reform)により、CMA及び裁判所は、消費者法違反に対して全世界売上高の10%を上限とする制裁金を課す権限を有することになり、不正行為を行う者への影響も大きくなる。
 
(2) DMCCBにより、英国政府は、フェイクレビューを助長する行為や、信憑性を確認する合理的な手順を踏まずに消費者レビューを宣伝する行為を禁止することも可能となる。新たな規則により、消費者にとって分かりやすく、費用対効果が高く、タイムリーな方法でサブスクリプションを終了できるようにし、無料体験やキャンペーン期間が終了する際には、企業が消費者にリマインダーを送付することを義務付ける。これは、消費者の購入する製品や利用するサービスに対する選択肢と信頼を高めることによって、経済を成長させるという英国政府の5つの優先事項のうちの1つを実現するものである。
 
 (3) ケビン・ホリンレイクDBT政務次官は、次のとおり述べた。
「スマートフォンやオンラインショッピングは、企業や消費者の状況を大きく変えた。成長を続ける現代経済の基盤は、消費者の強い選択、信頼、競争にある。
 ハイテク企業による権力の濫用から、フェイクレビュー、サブスクリプショントラップに該当するような詐欺まで様々な問題があり、消費者はより保護されるべきである。今日、我々が提案する新しい法律は、CMAに対して消費者法を直接執行する権限を与え、デジタル市場における競争を強化し、全国の人々が苦労して稼いだ財産を維持できるようにするものである。」
 
(4) 本法案(DMCCB)の一環として、ごく少数の大手IT企業が英国の消費者や企業に対して保持してきた過剰な市場支配(訳注:経済全体のイノベーションと成長を阻害し、新興企業や中小企業が市場や消費者にアクセスすることを妨げる。)に対処するため、CMA内のデジタル・マーケット・ユニット(Digital Market Unit:以下「DMU」という。)に対して新たな権限が付与される。大手IT企業による市場支配は経済全体の革新と成長を阻害し、新興企業や中小企業が市場や消費者にアクセスするのを妨げている。
 英国政府の新しいデジタル制度(digital regime)は、企業や消費者が巨大企業によって不当に不利益を被ることがないよう、DMUに対して権限を与え、ダイナミックで成長し続けるデジタル市場へのアクセスを可能にし、最終的に経済成長を支援するものである。ある企業が主要なデジタルサービスにおいて戦略的市場地位(strategic market status)を有すると判断された場合、DMUは、その企業の行動や運営方法についてカスタマイズされたルールを設定するために介入することができるようになる。
 例えば、最大手のテック企業は、顧客により多くの選択肢と透明性を提供するようDMUから指示されるかもしれない。もし、企業がこれらのルールを遵守しない場合、DMUはその企業の全世界売上高の10%を上限とする制裁金を課すことになる。
 また、DMUは、デジタル市場における競争上の問題の根本的な原因に対して、的を絞った介入を行うことが可能となる。こうしたことにより、これまで市場の成長と競争に苦戦していた新興企業や中小企業に向けて新たな道を開くことができるようになるだろう。
 
(5) 企業は、オンラインで製品を購入する際に、顧客により大きな柔軟性を与え、ユーザーが異なるデバイスやシステムで製品を使用することを妨げる技術的障壁を取り除くよう指示されるかもしれない。新たな規制は、経済全体のイノベーションを促進し、国際的な投資のための魅力的な技術面での目的地としての英国を維持・発展させ、デジタル経済を企業や顧客にとってより公平な場所にするものである。
 
(6) ポール・スカリー科学・イノベーション・技術省政務次官は、次のとおり述べた。
「本日の法案の発表は、英国政府がハイテク分野全般において、誇りを持って成長とイノベーションの促進を図り、企業の規模にかかわらず、全ての企業に新しい機会を提供し、消費者に力を与える狙いがあることを示すものである。
 スナク首相は、経済の隅々まで成長とイノベーションを確保する意図を明確にしている。DMUは、デジタル経済における英国の重要な優先事項を実現するのに役立つだろう。」
 
3 CMAによる公表
(1) DMCCBは、オンラインと実店舗の両方で、企業間の自由で活発な競争を確保することにより、英国経済の成長を促進するとともに、CMAが有する不公正な慣行を取り締まる権限を強化するものである。
 DMCCBは、CMAの活動を支える主要な原則、すなわち、人々、企業、経済を支援することを強化するものである。法案は以下の3つの分野(消費者保護、デジタル市場及び競争)に重点を置いている。
 
ア 消費者保護
 人々は騙される心配なく買い物をすることができ、公正な取引を行う企業は、ルールを破る人々によって不利益を被ることなく競争できるようにする必要がある。CMAは、フェイクレビュー、サブスクリプショントラップ、押し売りなど、不公正な方法で人々を騙す企業に対して強制措置を講じてきた。DMCCBに規定された新しい規則は、CMAがより一層効果的に活動できるようにするものである。消費者法違反が認められた場合、個々のケースを裁判にかけるのではなく、CMAが判断できるようになる。これにより、人々がより迅速に保護され、公正な取引を行う企業が不利にならないようにすることができる。また、この法案により、CMAは、法律(消費者法)に違反した企業に対し、全世界売上高の10%を上限とする制裁金を課すことができるようになる。
 
イ デジタル市場
 人々と企業は、最新の製品とサービスを提供する活気に満ちた競争力のあるデジタル市場から恩恵を受ける。DMCCBは、CMA内のDMUが監督する、デジタル時代のために新たに構築された的を絞った体制を確立するものであり、釣合いのとれたアプローチによりデジタル企業の行動に対する責任を追及し、全ての企業が公平に競争できるようにするものである。また、戦略的市場地位を有する企業が、その規模や力を利用してデジタルイノベーションや市場アクセスを制限することを防ぐためのルールを設定し、英国が全ての人にとって投資やビジネスを行う上で非常に魅力的な場所であり続けることを保証するものである。
 
ウ 競争
 調査及び執行権限の強化により、CMAはより迅速かつ柔軟な競争法上の調査を実施し、違法な反競争的行為をより迅速に特定し、差し止めることができる。合併や制裁金の閾値の更新を含む競争の枠組みの変更により、CMAは、英国の消費者や企業に損害を与える合併に対して、より簡単に行動を起こすことができるようになる。このような競争の枠組みの変更により、CMAはオープンで自由な市場の保護と促進を継続し、企業の技術革新とより多くの製品の市場投入を促し、顧客により多くの選択肢を提供し、経済成長のための強力な基盤を構築することができる。
 
(2)サラ・カーデルCMAチーフエグゼクティブは、次のとおり述べた。
「我々(CMA)は、CMAに対して新たな権限を与え、人々や企業を保護し、経済を支援するために更に多くのことを行えるようにするこの重要な法案を歓迎する。この法案は、英国の消費者を保護する方法と、デジタル市場が英国経済のために機能し、経済成長、投資、イノベーションを支援する方法における分水嶺(watershed)となる可能性がある。
 人々は、可能な限り最高の取引を得るために自由で公正な市場に依存しているが、同時に、物事が上手くいかない時に彼らを保護するための規則が整備されていることも期待している。企業が消費者法に違反した場合、CMAに強力な執行権限(直接制裁金を科す権限も含む。)を与える提案は、詐欺行為や裏取引を確実に取り締まり、企業が人々を利用するのを抑止するのに非常に重要である。
 デジタル市場は大きな利益をもたらすが、それは競争によって、あらゆる形や大きさの企業が成功する機会を得ることができる場合に限られる。本法案は、デジタル時代にふさわしい法的枠組みである。最大かつ最も強力なIT企業を規制するために、カスタマイズされた、証拠に基づく、状況に応じたアプローチを確立し、全ての人に利益をもたらす効果的な競争を保証する。
 我々は、この法案が立法プロセスを通過する際にサポートすることを楽しみにしており、議会で承認された後は、これらの新しい権限を行使する準備が整っている。」

英国競争・市場庁、マイクロソフトのアクティビジョン買収計画を差止め

2023年4月26日 英国競争・市場庁 公表

原文

【概要】
 英国競争・市場庁(以下「CMA」という。)は、マイクロソフトによるアクティビジョンの買収計画は、急成長するクラウドゲーム市場の将来を変え、今後数年間、英国のゲーマーにとってイノベーションの減少や選択肢の減少につながると判断し、差止めを命じた。
 
1 マイクロソフトによるアクティビジョンの買収計画について、マイクロソフトが提案した是正措置が、本年2月に公表されたCMAの暫定的な見解に示されたクラウドゲーム市場における競争上の懸念に効果的に対処できなかったため、CMAから同買収計画を阻止する最終決定が下された。 
 
 マイクロソフトは、2022年1月に、世界で最も人気のあるビデオゲーム開発業者のうちの1つであるアクティビジョンを買収するため、687億ドルの契約を締結した。CMAは、2022年9月に本件買収計画の詳細審査を開始し、本年(2023年)2月に本件買収によりマイクロソフトがクラウドゲーム市場でより一層強い存在となり、この成長市場での競争を阻害する可能性があると暫定的に認定した。
 
2 英国のクラウドゲーム市場は急成長している。英国における月間アクティブユーザーは、2021年初頭から2022年末にかけて3倍以上に増加した。2026年には世界で最大110億ポンド、英国で10億ポンドの規模になると予測されている。なお比較として、2021年の英国における音楽市場の売上は11億ポンドだった。
 マイクロソフトは、クラウドゲーム市場において強力な地位を築いており、CMAが入手した証拠から、マイクロソフトは、アクティビジョンのゲームを自社のクラウドゲームサービスに独占させることが商業的に有益であると判断していたことが判明した。
 マイクロソフトは、既に世界のクラウドゲームサービスの60~70%を占めていることに加えて、Xbox、主要なPCオペレーティングシステム(Windows)、グローバルクラウドコンピューティングインフラ(Azure及びXbox Cloud Gaming)を所有しており、クラウドゲームにおいて重要な強みがあるといえる。
 この買収は、Call of Duty、Overwatch、World of Warcraft等の重要なゲームコンテンツをコントロールすることで、クラウドゲーム市場におけるマイクロソフトの優位性を強化するものである。CMAが入手した証拠は、本件買収がなければ、アクティビジョンは近い将来クラウドプラットフォーム経由でゲームを提供するようになることを示している。
 
 クラウドサービスを利用することで、英国のゲーマーは高価なゲーム機やPCを購入する必要がなくなり、遊び方についてもより多くの柔軟性と選択肢が与えられる。クラウドゲーム市場が急成長し始めた時に、マイクロソフトがこのような強力な地位を占めることを認めると、市場の成長に不可欠なイノベーションが損なわれるおそれがある。
 
3 マイクロソフトは、これらの懸念に対処するための是正措置案を提出し、CMAはこれを詳細に検討した。この是正措置案は、マイクロソフトが10年間にわたり、どのようなゲームをどのようなプラットフォームで、どのような条件で提供しなければならないかを規定することを要件としている。
 このような是正措置は、合併に関与する企業の行動を規制しようとするものであり、企業の商業的インセンティブに反するような行動を要求することから、「行動的」な是正措置と表現される。つまり、これは、CMAが監督執行する規制に代わる、ゲーム分野におけるある種の継続的規制といえる。
4 マイクロソフトの是正措置案には、クラウドゲームサービスの成長と進歩に伴う重大な欠点が以下のとおり認められた。
(1) マルチゲーム配信サービスなど、様々なクラウドゲームサービスのビジネスモデルを十分にカバーできていない。
(2) Windows以外のOSでゲームを提供しようとするプロバイダーに対し、十分に開かれていない。
(3) クラウドゲームの提供条件が標準化される。これは、合併がない場合に予想されるような市場の競争のダイナミズムと創造性によって決定されるのとは対照的である。
 
5 この是正措置は、アクティビジョンの決められたゲームにのみ適用され、決められたクラウドゲームサービスにおいてのみストリーミングが可能であり、決められたオンラインストアでの購入を条件としていることから、特に急速に変化する市場において、10年間にわたってマイクロソフトとクラウドゲームサービスプロバイダーとの間に不一致と対立が生じるリスクが大きい。
 また、マイクロソフトが提案する是正措置を受け入れるには、必然的にCMAによるある程度のモニタリングが必要となる。これに対し、合併を阻止すれば規制当局が介入することなく、市場原理が継続し、クラウドゲーム市場の成長が形成されることになる。
 
6 CMAは、アクティビジョンのコンテンツがゲームパス(訳注:マイクロソフトが提供するゲームサブスクリプションサービス)で利用できるようになることによって生じる利益が、本件買収が英国におけるクラウドゲーム市場の競争にもたらす損害を上回るかどうかを慎重に検討した。CMAは、この新しい支払オプションは、一部の顧客には有益であるものの、特にマイクロソフトがアクティビジョンの価値あるゲームの追加配信を踏まえて、本件買収後にゲームパスの利用料金を引き上げるインセンティブを考えると、本件買収によって生じる競争(ひいては英国のゲーマー)に対する全体的な損害を上回ることはないと判断した。
 
7  コールマンCMA調査グループ長は、以下のとおり述べた。
「ゲームは、英国最大のエンターテインメント分野である。クラウドゲームは、ゲームの遊び方を変え、高価なゲーム機やゲーム用のPCへの依存から人々を解放し、ゲームの遊び方や場所についてより多くの選択肢を与えることで、ゲームそのものを変える可能性を有して急成長している。つまり、このエキサイティングな新興市場における競争を保護することが極めて重要である。
 マイクロソフトはクラウドゲームにおいて、既に他の競合事業者よりも強力な地位と優位性を享受しており、本件買収はその優位性を強化し、新しく革新的な競合事業者を弱体化させる能力を与えることになる。
 マイクロソフトは、これらの問題に対処するため、我々(CMA)と建設的な関係を築いてくれたことには感謝している。しかし、彼ら(マイクロソフト及びアクティビジョン)の提案は、我々の懸念を改善するための有効なものではなく、ダイナミックな新興市場において、競争を非効率な規制に置き換えてしまうことになる。
 クラウドゲームは、イノベーションと選択肢を促進するため、自由で競争的な市場を必要としている。これは、クラウドゲームにおける現在の活発な競争を維持することにより、最もよく達成される。」

フランス

フランス競争委員会、メタがオンライン広告の検証市場において、市場支配的地位の濫用行為を行った疑いがあるとして、利用条件を変更するよう暫定命令を発出

2023年5月4日 フランス競争委員会 公表

原文

【概要】
1 背景
 フランス競争委員会(以下「競争委員会」という。)は、2022年10月のAdloox SAS(以下「Adloox」という。)からの申告を受け、オンライン広告検証市場におけるMeta Platforms Inc.、Meta Platforms Ireland Ltd.及びFacebook France(以下、3社を「メタ」という。)による行為について審査を行ってきたところ、本日(2023年5月4日)、メタに対して暫定命令を発出した。本件審査は今後も継続して行う。競争委員会は、メタの「ビューアビリティ」及び「ブランドセーフティ」パートナーシップ(後述)への参加基準が、市場支配的地位の濫用に該当し、Adlooxの利益及び独立系広告検証市場に重大かつ直接的な損害を与える可能性があると判断した。
 これを受け、競争委員会は、メタに対し、「ビューアビリティ」及び「ブランドセーフティ」パートナーシップへの参加及び参加継続のための新たな基準として、客観的で透明性があり、かつ差別的でない適切な基準を策定し、公表するよう命じた。また、Adlooxが新たな参加基準を満たすことを条件に、これらのパートナーシップに同社を迅速に参加させるよう命令を発出した。
 
2 広告検証市場
 広告検証とは、オンライン広告市場において、広告枠や広告インプレッション(訳注:広告のオンラインサイト上の表示回数)の品質を検証することを目的とした手順を指す。オンライン広告の品質を保証するために、主に以下の目的を追求している。
(1) ビューアビリティ:広告がインターネットユーザーによって実際に見られたかどうかを確認すること。
(2) 不正の検出(機械やロボットからの無効なトラフィックを含む)
(3) ブランドセーフティ:ブランドの利益や価値を損なうような環境で広告が表示されていないことを確認すること。
(4) ブランドスータビリティ:広告主独自の基準で、ブランド及びブランドの価値に最も適した環境で広告が表示されていることを確認すること。
 
 これらの検証サービスは、統合型広告プラットフォームが自社の広告枠を対象に提供するほか、一般に、より正確できめ細かな測定を行う独立系専門運営事業者が提供することがある。独立系専門運営事業者が統合型広告プラットフォームの広告枠を対象に検証サービスを提供するためには、統合型広告プラットフォームのエコシステムにアクセスする必要がある。
 
3 関係事業者
 Adlooxは、特に広告主やメディアエージェンシーを対象とし、インターネット上で広告検証サービスを提供するフランスの事業者である。
 メタは、インターネットユーザー、広告主及び開発者に対し、インターネット関連のサービスや製品を提供する多国籍テクノロジー企業である。メタは、広告プラットフォーム事業の一環として、自社のインベントリ(Facebook、Instagram、Messenger)及びMeta Audience Networkにおいて広告検証情報及び機能を提供している。
 
 メタは、独立した第三者による広告検証サービスに関する2つのパートナーシップを構築している。1つはビューアビリティ(2015年)、もう1つはブランドセーフティ及びブランドスータビリティ(2019年)である。これらのパートナーシップは招待制で、メタがデータを収集、処理し、パートナーに提供することにより、パートナーはメタのインベントリ(特にFacebookとInstagram)上で検証サービスを提供することができる。ビューアビリティパートナーの3社(DoubleVerify、Integral Ad Science及びOracle MOAT)、ブランドセーフティパートナーの3社(DoubleVerify、Integral Ad Science及びZefr)は、メタの広告枠で広告検証サービスを提供している。2021年以降、これらのパートナーシップは、Meta Business Partnersプログラムの一部となっている。
 
4 Adlooxが申告した行為
 Adlooxは2016年から2022年まで、メタの広告枠で独自の広告検証サービスを提供する目的で、いくつかの競合他社と同様に、メタのエコシステムへのアクセスについて直接又はクライアントを通じて間接的に要求した。 
 
 Adlooxは、ビューアビリティ及びブランドセーフティに関するパートナーシップに参加できる他の事業者と同様の状況にあったにもかかわらず、メタによって差別的に参加を拒否されたと主張している。さらに、Adlooxは、メタが不当な参加条件を課し、エコシステムへのアクセスを部分的にしか認めないことにより、その市場支配的地位を濫用していると考えている。
 
 Adloox は、2022年8月に最終的な要求を行ったが、メタからの回答は得られなかった。このような状況の中、Adlooxは、本案件の本案に関する申告と並行して、特にメタに対し、当該パートナーシップにAdlooxを参加させるよう命じる暫定措置を要求している。
 
5 メタの行為が市場支配的地位の濫用に該当するおそれがある旨の競争委員会の判断
 競争委員会は、メタが市場支配的地位の濫用を構成する可能性のある様々な行為を行っていると考えている。
   第一に、メタは、ビューアビリティ及びブランドセーフティに関するパートナーシップに参加しているが、参加を継続するための基準について、客観的で透明性があり、かつ差別的でない適切なものについての定義を行っておらず、自社のみが開始できる不透明な手続に従って現在のパートナーをパートナーシップに参加させた。したがって、メタの手法は、広告主の広告費のかなりの部分を占めるプラットフォーム上の独立した広告検証市場における支配的な運営事業者及び規制機関としての特別な責任を果たしていない。
  メタは、審査の過程で、2023年1月に、これらのパートナーシップのための新たな「資格基準」を競争委員会に提示したが、これらは公表されず、引き続き招待制を維持しようとしている。さらに現段階では、これらの基準は不適当であり、不当であると思われる。
 第二に、Adlooxはパートナーシップに参加している特定の事業者と同様の状況にあったにもかかわらず、メタが適用したとされる基準によってAdlooxがパートナーシップへの参加を拒否されたことは、差別的と判断される可能性が高い。さらに、メタとAdlooxの間のやり取りからは、メタがAdlooxを参加させるつもりはなかったことが明らかであり、いくつかのやり取りは、純粋に遅延戦術と考えられる。
 
 フランス商法(Code de commerce)のL.464-1条は、「経済全体、関連分野、消費者利益、場合によっては申告を行った事業者」に深刻かつ急迫した損害を与える行為があると判断した場合、競争委員会は、暫定措置を講じることができると規定している。競争委員会は、本件において、メタの行為が以下の2つのことを引き起こすと考えた。
(1) 市場の寡占的な構造をより強固なものにするという点で、広告検証市場に深刻かつ急迫した損害を与える。広告主がメタのインベントリに大規模な投資を行っていることに加え、全てのオンライン広告チャネルを網羅する単一のサービスに対するクライアントからの需要の高まっている状況の中、独立系広告検証業者にとって、メタのエコシステムへのアクセスは極めて重要である。参入や拡大に対して人為的な障壁を設けるメタの行為は、広告検証市場の発展やイノベーションへのインセンティブを著しく阻害する。また、メタのこれらの行為は、独立系広告検証市場の開放が間近に迫っている状況下で実施されていることから、阻害の程度はより深刻である。欧州のデジタル市場法には、主要な広告プラットフォーム事業者に対し、広告枠の独立した検証に必要な全てのデータへの自由なアクセスを提供する義務を定める規定が置かれている。
(2)  Adlooxは、メタ上で検証サービスを提供することができなくなると、重要な成長の原動力を奪われて現在の顧客を失う可能性が高く、Adlooxの利益に深刻かつ急迫した損害を与える。また、Adlooxのビジネスは、2017年以降、メタが同社のエコシステムへのアクセスを拒否したと同時に大幅に減少しており、一方、エコシステムにアクセスした競合他社のビジネスは大幅に成長していることに留意する必要がある。したがって、Adlooxの参加を拒否することは、本件の是非に関する審査が終了する前に、広告検証市場からの同社を閉め出すことにつながる可能性がある。
 
6 発出された暫定措置
 申告された行為は、反競争的な性質を持つ可能性があり、広告検証市場及びAdlooxの利益に損害を与えることから、競争委員会はメタに対し、まず2023年1月から実施している基準を停止すること、次にMeta Business Partnersプログラムのウェブサイトを通じて2か月以内に、「ビューアビリティ」及び「ブランドセーフティ」パートナーシップへの参加及び参加継続に関する新たな基準として、客観的で透明性があり、差別的でない適切なものを定義し、公表することを命じた。メタは、この基準に基づき、招待制ではない透明性のある参加手続を実施しなければならない。
 
 また、競争委員会は、メタが採用する新たな基準に基づいて審査した結果、Adlooxの参加申請が受理された場合、当該パートナーシップに同社を迅速に参加させることを求める暫定措置を発表した。
 
 これらの暫定措置は、本件の是非について競争委員会が決定を下すまでの間有効である。この期間中、暫定措置の有効性を確保するため、メタは暫定命令の履行状況について定期的に競争委員会に報告する必要がある。

韓国

KFTC、自社のアプリマーケットであるGoogle Playでのみゲームを発売するようにさせたグーグルの反競争的行為に制裁

2023年4月11日 韓国公正取引委員会 発表(抄訳)

原文 (韓国語)

【概要】
 韓国公正取引委員会(以下「KFTC」という。)は、グーグルがモバイルゲーム会社らによる競合Androidアプリマーケットにおけるゲームの発売を妨げ、アプリマーケット市場における競争を阻害した行為に対し、是正命令とともに課徴金421億ウォン(暫定)を課すことを決定した。
 グーグルは、モバイルゲームの売上げ等において非常に重要なアプリであるグーグルのPlay Store(以下「Google Play」という。)のトップ画面表示や海外進出支援等をGoogle Playにおける独占発売と引換えに提供し、ゲーム会社らが競合アプリマーケットで自由にゲームを発売できないようにしていた。
 
1 関連市場の現状
 アプリマーケットは、アプリ開発者と消費者間のアプリ取引を仲介するデジタルプラットフォームである。韓国のAndroidのアプリマーケットには、Google Playや韓国企業が運営するワンストア(訳注:Google Playに対抗するために2016年に韓国の4つのアプリマーケットを統合して設立された。)等がある。Google Play及びワンストアは、いずれも国内売上げの9割以上がゲームから発生していることから、両者にとって良質なゲームを確保することは特に重要である。Google Playは、全世界(中国を除く。)と国内の両市場で圧倒的なシェアを占めるゲートキーパーであり、ゲーム会社に対して優越的な地位を有する。
 モバイルゲームは国内外で成長傾向を示しており、韓国のモバイルゲーム会社らの海外売上げの規模及び比率は拡大している。海外市場の確保は、ゲーム会社らの売上げの拡大に非常に重要であるが、海外では韓国のゲーム会社やゲームに係る認知度が低いため、モバイルゲーム会社らは、海外進出の成功のためにグーグルの支援が非常に重要であると認識していた。
 モバイルゲームは、PCゲームに比べて寿命が短く、発売直後の短期間に売上げが集中するため、発売初期の展開に成功することが重要である。ゲーム会社らは、グーグルが提供するトップ画面表示や海外進出の支援等が非常に重要であると認識しており、グーグルは、これを利用してゲーム会社らの行動を拘束することができた。
 グーグルは、消費者がGoogle Playを開いたときに最もよく見える場所(トップ画面)にゲームを表示でき、これを「フィーチャリング」という。毎年数十万個ものゲームが発売される状況において、フィーチャリングはゲームを消費者に公開しダウンロード数及び売上げを増加させるために非常に効果的な手段である。
 
2 法違反内容
1 行為事実
 グーグルは、2016年6月から2018年4月まで、ワンストアの正常なゲーム誘致を妨げるため、モバイルゲーム会社らに対し、ワンストアとは取引しない条件で、フィーチャリング、海外進出支援等を提供した(Google Play独占発売条件付支援)。 
(1) 行為の背景及び目的
 2016年6月1日、通信事業者3社とネイバーのアプリマーケットを統合した国内アプリマーケットであるワンストアが発足した。グーグルは、ワンストアの登場により韓国事業の売上げに重大な打撃があると分析し、売上げの減少を防ぐ方策として、自己の市場支配力を利用してゲーム会社のワンストアでのゲーム同時発売を防ぐ戦略を立てた。
(2) グーグルの独占発売条件付支援戦略の策定と実行 
ア 大型ゲーム会社Aの「超大型ゲームa」のワンストア同時発売への対応
 グーグルは、2016年6月24日、大型ゲーム会社Aに対し、グーグルでの独占発売を条件として、フィーチャリング、海外進出やマーケティングの支援等の総合的な支援を提案することにより、「超大型ゲームa」のワンストアでの同時発売を断念させた。
 当初、大型ゲーム会社Aは、Google Playとワンストアでの同時発売を計画していた。グーグルは、海外進出を拡大しようとする大型ゲーム会社Aに対し、世界市場における自己の地位を強調し、米国本社の上級役員も来韓するなどして、Google Playでの独占発売の決定を取り付けた。
 結局大型ゲーム会社Aは、「超大型ゲームa」を2016年末にGoogle Playで独占発売し、グーグルは、大型ゲーム会社Aに対してフィーチャリング支援、共同マーケティング支援等を提供した。
イ 独占発売条件付支援戦略の策定
 グーグルは、「超大型ゲームa」の独占発売の確保の成功体験に基づき、2016年7月、国内のモバイルゲーム市場全体を対象として、「独占発売条件付支援戦略」を策定した。
 グーグルは、売上比率、ワンストアとの同時発売の可能性等によってゲーム会社を売上高等で分類し、等級別に独占発売の確保のための戦略を立てた。例えば、売上高が上位4位に入るゲーム会社については、Google Playでの独占発売を条件として、海外進出、共同マーケティング、フィーチャリング等全面的な支援を実施し、ワンストアでの発売を阻止する戦略を立てた。
 
 また、グーグルは、ワンストアの成長を防ぐにはゲーム毎の管理も必要であるとし、重要な新規発売ゲームを選定してGoogle Playで独占発売させるよう特別に管理した。
 グーグルは、ワンストア排除を成果目標として設定・管理し続け、自社の行為によりワンストアで主な新規ゲームが全く発売されない状況でも発売の阻止を強調し続けた。
ウ 独占発売条件付支援戦略の実行
 グーグルは、2018年4月のKFTCの立入検査まで、独占発売条件付支援戦略を忠実に実施した。立入検査後、グーグルは、韓国のアプリ開発者が閲覧するGoogleブログに、独占発売条件付支援行為を行わない旨を掲載した。
 グーグルが独占発売条件付支援戦略を実際に実行した事例は、以下のとおり、多数確認されている。
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2 行為の結果(競争制限効果)
(1) ワンストアのゲーム発売を阻止
 グーグルによる行為の結果、ワンストアは、新発売ゲームの確保が困難で正常な事業運営が不可能となった。特に、売上げの8割以上を占める大型ゲームの場合、グーグルの重点管理対象商品が全てグーグルで独占発売されるなど、ワンストアでの発売が徹底的に阻止された。
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 グーグルによる行為により、ワンストアは発足直後から消費者に提供する主要コンテンツが適切に確保できなかったため、プラットフォームとしての価値が下落した。新規ゲームが正常に発売されないので、ワンストアを利用する有料購入者が減少した。これはゲームの確保を更に困難にする負のクロスネットワーク効果を発生させ、ワンストアの売上げは減少し続けた。
(2) グーグルの市場支配力の強化
 本件行為により、ワンストアのゲーム関連の有料購入者数が半分以下に減少したのに対し、Google Playのゲーム関連の有料購入者数は約30%増加した。国内アプリマーケット市場におけるグーグルのシェアは、2016年の80%程度から2018年の90%以上に上昇し、独占力が強まった。一方、ワンストアの市場シェアは5〜10%程度に下落した。 
 
3 適用法条・措置結果
 市場支配的地位濫用行為のうち排他条件付取引行為(旧公正取引法第3条の2第1項第5号、同法施行令第5条第5項第2号)
 不公正取引行為のうち排他条件付取引行為(旧公正取引法第23条第1項第5号、同法施行令第36条第1項)
 Google LLC、Googleコリア、Googleアジアパシフィックに対し是正命令と課徴金:421億ウォン(暫定) 
 
4 意義と今後の計画
 今回の措置は、巨大プラットフォーム事業者がモバイルアプリマーケット市場において自己の独占力を維持・強化する行為にブレーキをかけたという点で意義がある。
 モバイルアプリマーケットは、デジタル市場全般に波及効果が大きい重要なプラットフォームとして世界中の競争当局が注視している市場であり、英国、日本、豪州等の主要競争当局は、モバイルアプリ マーケット市場における競争が限定的であると評価している。同市場の独占化は、関連するモバイルエコシステム全体に悪影響を及ぼす可能性があり、市場の競争圧力を回復することが何よりも重要である。
 今後も、KFTCは、プラットフォーム事業者の独占的地位の維持・強化を目的とした反競争的行為に対し、事業者の国内外の差別なく厳正に法を執行していく。

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