その他

英国

英国競争・市場庁、アマゾンによるマーケットプレイス上のルールの変更に関する確約案を公表

2023年7月26日 英国競争・市場庁 公表

原文

【概要】
 アマゾンは、英国競争・市場庁(以下「CMA」という。)が同社に対して提起した競争上の懸念に対処するため、英国のマーケットプレイス・プラットフォームを利用するサードパーティの出品者(third-party sellers)の取扱いを変更することを盛り込んだ確約案を提出した。
 CMAは、この確約案が承認されれば、サードパーティの出品者による出品が、アマゾンによる自社製品に関する出品と競合する場合、商品ページの「Buy Box」(訳注:購入者が商品をショッピングカートに追加する際に使用する、「カートに入れる」と表示されるボタンのこと。)において、(サードパーティの出品もアマゾンと同等に)顧客に目立つように表示される公正な機会が確保されると考えている。また、この確約案は、アマゾンがサードパーティの出品者から入手したデータを利用して、自社(アマゾン)に不当な競争上の優位性をもたらすことを防止することも目的としている。
 
 2022年7月、CMAは、アマゾンが、アマゾンマーケットプレイスを利用する競合出品者によりも自社の小売部門を不当に有利に扱い、又は、競合関係にある物流事業者よりもアマゾン独自の倉庫・配送サービスを利用する出品者に対して不当な優位性を与えることが、英国を代表するオンライン小売プラットフォームとしての地位の濫用に該当するという競争上の懸念について、審査を開始した。
 
 CMAは、アマゾンから提案のあった確約案は(CMAが提起した)競争上の懸念を解消し得ると暫定的に考えているが、現在、確約案を承認するか否かを決定する前に、提案された確約案について意見を募集している。
 
 確約案は、以下を提案している。
・ アマゾンが、他の出品者よりも不当に有利になるように、競合する出品者のマーケットプレイスに関するデータを利用しないことを確実にする。これは、アマゾンがサードパーティの出品者に関する商業的に機密性の高いデータにアクセスできることが、アマゾンの小売部門が販売する商品の決定、それらの商品の在庫量の管理、価格の設定、その他の重要な商業的決定を有利に行うことを助けているという懸念に対処するものである。
・ アマゾンは、「Buy Box」に掲載する商品を決定する際、全ての商品オファーを平等に扱うことを保証する。これは、サードパーティの出品者が提供する商品が、アマゾンの小売部門や同社の配送サービスを利用するサードパーティの出品者が提供する同様の商品よりも「Buy Box」に掲載されにくいとの懸念に関連するものである。
・ マーケットプレイスを利用するサードパーティが、プライム配送サービスを提供する独立したプロバイダーと直接料金を交渉できるようにし、より望ましいサービス料金が交渉された場合には、顧客がより安い配送コストの恩恵を受けられるようにする。
・ アマゾンがこれらの確約を遵守しているかを監視する、独立したトラスティー(監視人)の任命を義務付ける。CMAはトラスティーの任命につき、職務に必要な技能と専門知識を有することを保証するために、直接の介入権を持つ。
 
 ポープCMAシニアディレクター(執行担当)は、次のように述べた。
「アマゾンが提案した確約案は、アマゾンマーケットプレイス上のサードパーティ出品者が、アマゾンの小売部門と対等に競争できることを保証する。これは、最終的には英国の顧客がより望ましい取引ができることを意味する。CMAは、アマゾンが、アマゾンマーケットプレイスにおいて顧客を獲得している数千もの事業者に対して優位に立つために市場での強みを利用しているとの懸念を審査した上で、今般の判断に至った。
 これらの確約案について、現段階ではCMAの懸念に対処できるものであると信じている。現在、我々は確約案について、意見を募集している。」
 
 CMAは現在、アマゾンが提出した確約案について、意見を募集している。確約案が承認されれば、長期にわたり得る事件審査が必要なくなり、事業者や消費者に利益をもたらす迅速な変更がもたらされる。CMAは、現在までの審査で、同社の競争法違反を認定していない。
 

フランス

フランス競争委員会、アップルに対してiOSモバイルアプリケーションの広告に関する異議告知書を送付

2023年7月27日 フランス競争委員会 公表

原文

【概要】
 フランス競争委員会(以下「競争委員会」という。)の首席報告官(訳注:競争委員会の審査局の長)は、アップルグループ(以下「アップル」という。)に対し、モバイルアプリの流通分野における行為が、広告及び消費者サービスに係る複数の関連市場に影響を及ぼす可能性が高いとして異議告知書(注)を送付した。
 アップルは、広告に利用するために収集したユーザーデータのデータマイニング(訳注:大量のデータから様々な分析手法を用いて必要な情報を習得すること。)に関して、差別的、恣意的及び不透明な条件を課すことにより、支配的地位を濫用したことを疑われている。
 本件異議告知書の送付により、当事者間の手続(訳注:正式審査手続)が開始され、アップルは意見提出を通じて防御権を行使することができる。異議告知書は、これを受領した事業者の違反を予断するものではない。関係人の防御権を尊重した当事者間の審査手続が行われて初めて、競争委員会は、書面及び口頭での聴聞手続を経て、異議告知書に示された行為の適法性を判断することができる。
 競争委員会は、違反の疑いがあるとした本件行為についてこれ以上のコメントは行わない。
 
 今後、競争委員会は、異議告知書に基づいて、関係人との意思の疎通を図っていくこととなる。
 フランス商法典L.463-6条は、情報公開が公共の利益に適い、関係事業者又は事業者団体に対する無罪推定原則に厳格に従っている限りにおいて、競争委員会が、反競争的行為の審査、検討又は制裁に関する措置の情報を簡潔に公開することができると規定している。
 当該規定は、EU加盟国の競争当局が、より効果的な競争法の執行及び域内市場の適切な機能の確保のための手段の有することを目的とした、2018年12月11日付け欧州議会及び欧州理事会指令(EU)2019/1の移行に関する2021年5月26日付け政令2021-649による商法典改正に基づいている。
 欧州委員会、オーストリア、ベルギー、オランダ、ギリシャ、ポルトガルの競争当局等の他の競争当局も、同様の規定を導入している。
 
(注) 異議告知書とは、「起訴状」である。反競争的行為(主にカルテルと支配的地位の濫用)を行った疑いのある事業者や団体に対して、競争委員会の審査局から送付されるものである。
 この送付により、関係人の防御権を尊重しつつ当事者間の手続が開始され、競争委員会の前で法的又は事実に関する見解を示すこととなる。
書面による当事者間の手続は、2020年12月3日に「DDADUE法」として知られる法律によって新たに導入された。
 事案の特徴に応じ、書面による手続が1~2回実施され得る。
 全ての事件において、競争委員会による聴聞が行われ、当事者、政府委員のほか、場合によっては証人や専門家に意見を述べさせることもある。
 異議告知書は関係事業者や団体の競争法違反を認定するものではなく、聴聞の会議が開催され審査が終了した後に、異議告知の根拠の有無を競争委員会が独立して判断する。
 
(背景)  競争委員会は、2020年10月23日、オンライン広告業界の様々な事業者を代表する団体から申告を受領し、アップルに対して暫定的措置を採るよう要請を受けた。申告には、アップルが、ターゲティング広告や広告効果測定の目的で、自社のアプリから収集したユーザーや端末のデータを、他社のアプリやウェブサイトから収集したユーザーや端末のデータとリンクさせてユーザーの行動を追跡しようとし、iOSアプリへATT機能(App Tracking Transparency)を強制的に導入しようとしていたことが含まれていた。
 競争委員会は、2021年3月17日の決定で、ATTの導入を阻止しない旨の発表を行ったが、本件アップルの行為について審査を継続すると述べていた。

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