2024年2月

その他

オーストラリア

ACCC、デジタル・プラットフォームに対する新たな規制案について、オーストラリア政府の基本合意を歓迎

2023年12月8日 オーストラリア競争・消費者委員会 公表

原文

【概要】

 オーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)は、ACCCがデジタル・プラットフォームによる悪影響の対処に向けた新たな競争・消費者法の提言について、オーストラリア政府が基本合意に達したことを歓迎している。
 
 ACCCは、2022年9月に公表したデジタル・プラットフォームサービス調査報告書の中で、反競争的行為を防止するために、特定のデジタル・プラットフォームに対する義務的な行動規範を求める提言を行った。
 
 同報告書で指摘された反競争的行為には、プラットフォームが検索結果やアプリストア内で自社サービスを優遇する自己優遇、開発者が最大30%の手数料を徴収するアプリストアのアプリ内決済システムを強制的に利用させられるなどの抱き合わせなどが含まれる。
 
 また、同報告書は、プラットフォームに依存して顧客を獲得している中小企業に対する不公正で恣意的な取引事例についても指摘している。
 
 カトリオナ・ロウACCC委員長代理は、次のように述べた。
「グーグル、アップル、メタ、マイクロソフト、アマゾンのような事業者は、ほとんどのオーストラリア国民が毎日利用するサービスを提供している。これらのデジタル・プラットフォームは、しばしばオーストラリアの事業者と消費者の間の避けられない「ゲートキーパー」であり、経済全体に多大な影響を与えている。
 提案されている改革は、中小企業に対してより公正で透明性の高い取引を保証し、オーストラリア国民がデジタル経済に参加することによる恩恵を十分に享受できるようにする。
 この改革は、デジタル市場における競争を促進することで、消費者により多くの選択肢、より質の高いサービス、より公正な取引条件を提供することになる。」
 
 また、政府は、詐欺、有害アプリ及び虚偽レビューによる消費者被害に対処することについても原則合意した。本合意には、デジタル・プラットフォームが2024年7月までに自主的な内部紛争解決基準を策定するよう要請することや、プラットフォームに対する内部及び外部の紛争解決要件を策定するためのさらなる作業が含まれる。
 
 また、政府は11月下旬、詐欺に対処するため、デジタル通信プラットフォームを含む業界に、義務的な業界規範を導入することを約束した。
 
 本日(2023年12月8日)の発表は、競争及び消費者に損害を与える大手デジタル・プラットフォームによる行為に対処するための、世界各国の政府及び規制当局の行動とも整合するものである。
 
 ロウACCC委員長代理は、次のように述べた。
「英国、ドイツ、日本及びEUは既に、デジタル・プラットフォームに対する重要な競争・消費者規制を新たに発表又は実施している。プラットフォームが特定の法域で実施された法制の変更を他の法域にも拡大したことはほとんどなかったため、オーストラリア政府は、消費者や中小企業が取り残されないよう、これらの改革を迅速に実施することが重要である。」
 
【規制改革に関する提言】
 本日、政府が基本合意した提言は、ACCCのデジタル・プラットフォームサービスに関する調査の第5回報告書に記載されたものである。同報告書では、オーストラリアの消費者、中小企業及び競争に対する悪影響に対処するための様々な提言がなされた。
 提言には、法定要件に基づき指定される「指定デジタル・プラットフォーム」に対して、サービスごとに義務付けられた新たな行動規範を課す内容が含まれている。
 この新たな規制枠組みは、オーストラリアの既存の競争法と並行して機能するもので、定められる各規範は、各デジタルサービスに最も関連する種類の反競争的行為に対処するための的を絞った義務を導入するものである。
 また、ACCCは、詐欺、有害アプリ及び虚偽レビューに対処するため、全てのデジタル・プラットフォームに対する新たな義務を提案した。
 
 第5回報告書の中で、ACCCは、不公正な契約条件及び不公正な取引方法の改正を含む、オーストラリア消費者法の改正を経済全般に影響を与えるものとして改めて支持した。不公正な契約条件の改正は2023年11月初めに施行されている。また、不公正な取引方法の改正に関しては、財務省が最近意見募集手続を終了したところである。
 
【背景】
 ACCCのデジタル・プラットフォーム担当部署は、2020年の財務大臣からの指示に従い、オーストラリアにおけるデジタル・プラットフォームサービスの供給市場並びにデジタル・プラットフォームサービスの競争及び消費者への影響について、5年間にわたる調査を実施している。

 ACCCは、様々な種類のデジタル・プラットフォームサービスを調査し、6か月ごとに政府に報告している。
 2024年3月に政府に提出される予定の第8回報告書では、データブローカーについて検討する。

韓国

KFTC、企業結合審査基準の改正案に対する意見募集を開始

2023年11月14日 韓国公正取引委員会 公表

原文(韓国語)

【概要】

 韓国公正取引委員会(以下「KFTC」という。)は、現代のデジタル経済の各種特性がよく反映されるよう企業結合の審査方式を現代化する内容の「企業結合審査基準」(以下、「審査基準」という。)の改正案を取りまとめ、2023年11月15日から同年12月5日まで意見募集を行う。改正案は、市場における競争を効果的に保護し、デジタル経済特有のイノベーションを更に促進するため、デジタル分野の企業結合の競争制限効果と効率性の増大効果がバランスよく審査されるように作成された。
 
 デジタルサービスを提供する事業者らは、これまでの事業者らとは異なる特性を持っている。あるサービスは無料で提供されることがあり、既に多くの利用者が特定のサービスを利用しているということ自体が当該サービスへの需要を喚起する要因となる「ネットワーク効果」も主な特徴である。これらの特徴は、KFTCの企業結合審査実務において既に考慮されてきたが、審査基準には反映されておらず、事業者の予測可能性が高くない面があった。
  今回の改正案は、このような問題を解消するためのものであり、KFTCは、改正案の整備過程において、これまでの国内外の法執行の傾向、学術的な議論だけでなく、デジタル経済における企業結合の主な主体であるオンラインプラットフォーム事業者やスタートアップら、そして関係省庁等の意見を幅広く聴き、その意見も忠実に反映した。
 
1 市場画定   
 企業結合審査の第一段階は、当事会社の競合事業者を識別し、結合の効果が及ぶ市場の範囲を特定する「市場画定」である。現行の審査基準によれば、Aサービスの価格引上げ時にBサービスに需要代替が行われる場合、AとBは競合事業者として、同じ市場にあると画定される。
 しかしながら、消費者に無料でサービスを提供する代わりに広告を見させるタイプのデジタルサービスプロバイダらには、このような方法論の適用が困難になる。改正案は、このような場合、価格の上昇ではなく、サービス品質の悪化等による需要代替の確認など他の方法を用いて市場を画定できるようにした。
 また、当事会社がAサービスの利用者とBサービスの利用者間の取引を仲介するサービスを提供する事業者である場合、Aサービスの利用者の数がBサービスの利用者のサービス需要にプラスの影響を与える場合などには、サービス別に別個の市場を画定するのではなく、一つの「多面市場」を画定できるようにした。
 さらに、イノベーション活動(研究開発等)が活発な事業者間の企業結合の場合、これらが価格競争ではなくイノベーション競争をしていることを考慮し、「イノベーション市場」を別途、画定することができる。
 
2 競争制限性のおそれの評価方法の整備
 改正案は、競争制限効果を分析する際にネットワーク効果を考慮しなければならないことも明確にした。デジタルサービスプロバイダの企業結合は、当該サービスの利用者数や当該事業者が保有するデータ量の増加につながる可能性がある。このような場合、当該サービスに係る追加需要が喚起され(ネットワーク効果)、当事会社の市場における支配力が更に大きくなることがあり、その効果が相当程度ある場合、当事会社が単独で価格を引き上げる可能性も生じることになる。改正案は、競争制限のおそれを評価する際に、この側面も考慮できるようにした。
 また、無料サービスの提供事業者間の結合が行われる場合は、価格引上げのおそれよりもサービス品質の低下等の非価格面での弊害のおそれを中心に、競争制限性を評価できるようにした。
 さらに、需要が多いA商品とそうでないB商品の混合型結合の場合、当事会社は抱き合わせ戦略を駆使し、B商品の競争事業者を排除したり、B商品市場への新規参入を困難にさせたりする可能性がある。改正案は、この可能性を企業結合審査の際に考慮する必要があることを明示した。
 
3 効率性を増大する効果の補完
 改正案は、競争制限のおそれだけでなく、デジタル分野特有の効率性を増大する効果の事例も補強し、企業結合のプラスの効果もバランスよく審査できるようにした。企業結合の結果、革新的なサービスが創出されたり、スタートアップらが買収されることにより、投下資本が回収されて、新規のスタートアップの創業がなされたりする等の効果が企業結合の審査時に考慮されるようにした。
 
4 簡易審査の対象の整備
 改正案は、簡易審査の対象を整備した。現行の審査基準は、市場に及ぼす影響が微々たるものである企業結合は、関連する事実関係の真偽のみを確認する形で「簡易審査」を行うようにしつつ、その対象を列挙している。
 改正案は、オンラインプラットフォームが自己のサービスと補完関係等に無いサービスを供給する他業種の事業者を買収する場合であって、買収される事業者が、月平均500万人以上に商品やサービスを供給し又は、年間の研究開発費として300億ウォン以上を支出する場合には、一般審査がなされるようにした。これは、我が国の人口の約10%に相当する顧客を有していたり、相当な規模の研究開発を通じてイノベーティブなサービスを創出する可能性が高い事業者が、多くの利用者を既に確保しているオンラインプラットフォームによって買収されたりする場合、その経済的影響が微々たるものであるとは認められないという点を考慮した結果である。
 
※ ただし、企業結合審査は、届出がなされた企業結合を対象として行われるため、上記のように一般審査を受けるには、被買収企業が企業結合届出要件(売上額又は資産総額が300億ウォン以上)も満たさなければならない。
 
 上記のとおり審査基準が改正される場合、デジタル分野における企業結合を通じた人為的な独占力の創出及び強化がより効果的に防止され、イノベーティブなベンチャー・中小企業及び消費者厚生がよりよく保護され得るものと期待される。また、企業結合を実施しようとする事業者らの審査に係る予測可能性も高まるものと期待される。KFTCは、今後、改正される審査基準に基づき、デジタル分野の企業結合をスピード感をもって審査し、企業結合を通じたイノベーションの創出を積極的に支援していく。
 
 KFTCは、意見募集期間中に利害関係者の意見が十分に収れんした後、KFTCの委員全員が出席して開催される全員会議の議決等の関連手続を経て、改正案を迅速に確定・施行する予定である。

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