2024年5月

その他

シンガポール

CCCS、環境サステナビリティ協力のためのガイダンスノートを公表

2024年3月1日 シンガポール競争・消費者委員会 公表

原文

【概要】

1 シンガポール競争・消費者委員会(以下「CCCS」という。)は、競争を阻害することなく業務提携を進める方法をより明確にするため、「環境サステナビリティ目標を追求する業務提携に関するガイダンスノート」(以下「ESCGN」という。)を発行した。
 
2 シンガポールは、気候変動の脅威にさらされる中、2050年までに排出量ゼロを達成するため「シンガポール・グリーンプラン2030」(注)を策定し、持続可能な社会の実現に国を挙げて取り組んでいる。CCCSは、この目標を達成するために、事業者が、既存市場、新興市場、さらには新規分野において、競合他社を含む事業者との協力を望む可能性があると考えている。このような協力は、状況によっては効率的であり、必要となる場合もある。例えば、いずれの当事者も単独で活動を行うことができない場合や、新製品や新市場を創出する際の「先行者の不利」を克服するために協力が必要となる場合などである。
 
(注)https://www.greenplan.gov.sg
 
3 ESCGNの目的は、2004年競争法(以下「競争法」という。)違反の懸念に対処するために、CCCSがこのような業務提携を競争法第34条(注) の文脈においてどのように評価するかを明確にすることである。ESCGNの対象として含まれる事例等は以下の通り。
 
(注)競争法第34条は、事業者間の協定、団体による決定又は協調的な行為が反競争的な場合には、それらが除外又は免除されない限り禁止している。
 
(1) 一般的に競争に悪影響を及ぼさないと考えられる環境サステナビリティを目標とした協力の例(注)として、事業者間の競争に影響を及ぼさない協力(供給される商品・サービスに関する価格、数量、品質、選択又はイノベーションに関係しない協力)や、事業者が単独で活動を行うことができない協力などが挙げられる。
 
(注)環境サステナビリティに関する目標とは、気候変動緩和策、大気・水質の改善、天然資源の効率的利用、生物多様性の保全など、負の環境外部性の削減に関する目標を指す。
 
(2) 事業者間の協力により競争上の懸念が生じる可能性が低い場合、及び事業者が協力から生じる可能性のある競争上の懸念を最小限にする場合なども含まれる。
 
(3) CCCSは、反競争的な効果をもたらす可能性のある協力が、競争法に違反しないように純経済的利益 (Net Economic Benefit、以下「NEB」 という。) の除外要件を満たすことができるかどうかに関するCCCSの評価を行う(注)。 CCCSの通常のNEB評価の枠組みでは、協定の影響を受ける市場内で生じる経済的利益のみを考慮するのに対し、環境サステナビリティを追求する協力が社会全体の利益(生産工程から生じる環境負荷の低減など)をもたらし得る場合、CCCSは経済評価においてシンガポール全体に生じる関連する経済的利益を必要に応じて考慮することができる。
 
(注)NEBの除外は、協定から得られる効率性の利益(例えば、コストの削減、品質やサービスの改善、革新的な新製品の生産)が競争に与える害を上回る場合、そのような協定は競争法第34条に違反しないと規定している。
 
4 事業者は、ESCGNを利用して協力関係を自己評価することが推奨される(注)。 より確実な適法性を求める事業者は、CCCSに協力関係を通知し、ガイダンス又は決定を請求できるところ、CCCSは、環境サステナビリティ目標を実現するためのシンガポール国家全体の取組を支援するべく、迅速な評価を提供するための合理的な届出プロセスを導入した。
 
(注)ESCGNは、CCCSの第34条禁止に関するガイド(https://go.gov.sg/cccs12guidelines)及び業務提携に関するガイダンスノート(https://go.gov.sg/bizcollabguidancenote)と合わせて読むべきである。
 
5 ESCGNは、2023年7月20日から2023年9月4日にかけて実施された意見募集の結果を検討した上で策定された。意見募集では、ESCGNの策定に向けたCCCSの取組に対する支持及び、改善のための提案が寄せられた。意見募集から得られた意見に対するCCCSの回答は、意見の概要(注)に記載されている。


(注)https://go.gov.sg/env-sustainability-guidance

6 CCCSのシア・アイ・コー(Sia Aik Kor)チーフエグゼクティブは、「環境への悪影響の防止、軽減、緩和、又は環境サステナビリティの促進を目指す事業者間の協力は、経済的利益をもたらす可能性があり、シンガポールが気候変動という地球存亡の危機に取り組む上で重要である。ESCGNは、一般的に競争を害することのない協力を明確にし、事業者がより自信を持って協力できるよう、CCCSによる迅速な評価のための合理化された届出プロセスを定めている。しかし、事業者は環境サステナビリティ目標を反競争的行為の口実として用いるべきではない。CCCSは、今後も市場の動向を注視し、必要に応じてESCGNを改正していく。」と述べた。

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