2024年6月

その他

オーストラリア

ACCC、インターネット検索サービスの動向について調査を開始

2024年3月18日 オーストラリア競争・消費者委員会 公表

原文

【概要】

1 オーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)は本日(2024年3月18日)、消費者、企業及び業界関係者に対し、5年間にわたるデジタル・プラットフォームサービスに関する調査(訳注:2024年9月に中間報告を提出予定)の一環として、オーストラリアにおける一般的なインターネット検索サービス(以下「検索サービス」という。)の動向について意見を提供するよう呼びかけた。 


2 海外における規制改革、技術開発の影響及び検索サービスの品質の変化は、ACCCがオーストラリアにおける検索サービスの競争状況を検討する際に考慮すべき問題の一つである。 ACCCが本日発表した論点ペーパー(注)は、消費者が検索サービスにおいて何を求めているのかや、市場の競争レベルと検索サービスの品質の関係も含め、検索サービスにおける競争のレベル及び品質の変化について意見を求めている。  また、海外における選択画面(訳注:デバイスのセットアップ時にデフォルトブラウザの選択画面が出てくる仕組み)の導入及び生成AIの出現といった規制や産業の進展の影響も調査の範疇である。
 (注)https://www.accc.gov.au/system/files/dpsi-september-2024-report-issues-paper.pdf?ref=0&download=y 

3 ジーナ・キャス・ゴットリーブACCC委員長は、次のように述べた。 「ACCCが最後に検索サービスを調査した2021年以降、大きな変化が起きている。いわゆるゲートキーパーと呼ばれる検索エンジンに義務を課す新たな法律が海外で導入されたほか、生成AIのような新技術が登場した。消費者がオンラインで情報を検索する方法が変わり、消費者が受けているサービスの質に影響を与えている可能性がある。 ACCCは、これらの動きが検索サービスに与える影響、ひいては競争と消費者に与える影響を理解したいと考えている。」

4 ACCCは以前、2021年9月の中間報告書及び2019年のデジタル・プラットフォーム調査報告書において、検索サービス及びウェブブラウザサービスにおける競争と消費者の問題を検討した。これらの報告書では、グーグルの検索エンジンがデフォルトの検索サービスとして端末にプリインストールされていることが、オーストラリアにおけるグーグルの検索エンジンの優位性に寄与していると指摘している。 

5 ACCCの2022年9月の報告書には、デジタル・プラットフォームサービスにおける競争の保護と促進を目的とした新たな法律、すなわち、消費者の選択肢を増やし、新規参入や競合他社の事業拡大を容易にするため、特定の指定検索サービスに対して、義務的行動規約となる可能性も含めた新たな法制度の設立を提言している。ACCCは、これらの提言に対する政府の基本合意を歓迎している。 

6 新報告書では、欧州連合、英国、その他の法域において、検索エンジンに競争促進義務を課す法改正が施行、又は検討されていることについても取り上げられる予定である。 

7 報告書では、AIを搭載した検索エンジンの出現と、検索サービス市場における競争への潜在的な影響について検討するが、ACCCによる生成AIの検討は、一般的な検索サービスに限定される。報告書では、プライバシー、オンラインの安全性、誤情報といった生成AIのその他の問題については検討対象外となる。 

8 ジーナ・キャス・ゴットリーブACCC委員長は、次のように述べた。 「我々は、規制や業界の発展が検索サービス市場における競争及び消費者にどのような影響を与えているかをさらに理解するために、産業界や消費者から検索サービスに関する意見を聞きたい。」 
 なお、意見提出期限は、2024年4月17日までである。

 【2022年9月の規制改革に関する提言】 
9 デジタル・プラットフォームサービスに関する調査の第5回報告書(2022年9月)において、ACCCはデジタル経済における競争を強化し、大手ハイテク企業とオーストラリア企業との競争条件を平準化し、消費者視点で価格を引き下げるための様々な提言を行った。 提言には、法律で定める基準に基づいて指定された、特定の「指定デジタル・プラットフォーム」に対して、サービスごとに義務付けられた新たな行動規範を課すことが含まれている。
 
10 この新たな規制枠組みは、オーストラリアの既存の競争法と並行して機能するもので、反競争的行為、ビジネスユーザーに対する不公正な取引方法、潜在的な競争相手による参入及び事業拡大の障壁に対処するものである。 また、ACCCは、詐欺、有害アプリ及び虚偽レビューに対処するため、全てのデジタル・プラットフォームに対して、通知及び是正措置の要求、ビジネスユーザー及びレビューの検証強化といった新たな義務を提案した。 これらの措置案は政府によって基本的に合意されている。 

 【背景】 
11 ACCCのデジタル・プラットフォーム担当部署は、2020年の財務大臣からの指示に従い、オーストラリアにおけるデジタル・プラットフォームサービスの供給市場並びにデジタル・プラットフォームサービスの競争及び消費者への影響について、5年間にわたる調査を実施している。ACCCは、様々な種類のデジタル・プラットフォームサービスを調査し、6か月ごとに財務大臣に報告している。 今回の論点ペーパーは2024年9月30日までに財務大臣に提出される予定の第9回報告書に反映される予定である。第8回中間報告書はオーストラリアにおけるデータブローカーサービスの供給における競争及び消費者問題に焦点を当てており、2024年3月31日までに財務大臣に提出される予定である。 

12 これまでのその他の報告書では、オンラインプライベートメッセージングサービス、検索サービスやウェブブラウザにおける市場ダイナミクスと消費者の選択画面、アプリマーケットプレイス、オンライン小売マーケットプレイス、規制改革、ソーシャルメディアサービスと拡大するエコシステムについて調査した。 ACCCは、「検索デフォルトと選択画面に関する報告書」の中で、選択画面の利用を推奨しており、海外の一部の法域では既に導入されている。 ACCCは、産業・科学・資源省の「オーストラリアにおける安全で責任あるAI」協議や、オーストラリアの教育制度における生成AIの使用に関する雇用・教育・訓練にかかる下院委員会の調査等、生成AIの広範な問題に関する他のいくつかの政府活動が現在進行中であることに留意する。

英国

CMA、AI基盤モデルに関する競争上の懸念を表明

2024年4月11日 英国競争・市場庁 公表

原文

【概要】

1 英国競争・市場庁(以下「CMA」という。)が、昨年(2023年)9月に公表したAI基盤モデルに関する調査報告書の中で、イノベーションを維持し、AI基盤モデル市場を企業、消費者及び経済にとってプラスになるよう導くための一連の原則が提案されている。 


2 本日(2024年4月11日)、ワシントンDCで開催された米国法曹協会(American Bar Association)の会議に登壇したサラ・カーデルCMAチーフエグゼクティブは、AI基盤モデルに関するCMAの最新の取組を紹介した。同チーフエグゼクティブは、AI基盤モデルによる変革の可能性について、社会と経済にとっての「パラダイムシフト」であると述べた。また、同チーフエグゼクティブは、CMAによるAI基盤モデルのエコシステムに対する深化した理解を踏まえた上で、AI基盤モデル市場全体で急速に進展している様々な動きについて概説し、懸念が著しく増していることを示した。 

3 カーデル・チーフエグゼクティブによるスピーチは、重要なデジタル市場の多くで既に市場支配力を有している少数の既存のテック企業が、AI基盤モデル市場全体で存在感を高めていることを浮き彫りにしている。これらの企業は、AI基盤モデルの開発(コンピュート(訳注:組織の資産やデータを整理、処理、取得する主要な役割を果たすもの。)、データ、人材といった重要なインプットの供給を含む。)と、アプリやプラットフォームといった主要なアクセスポイントや市場参入経路を通じたモデルの展開の両方において、強力な地位を占めている。 

4 CMAは、一部の企業が、既存の市場支配力を守るため、また、新たな分野にまで支配力を拡大するため、自らの利益のためにこれらの市場支配力を形成する能力及びインセンティブを持つ可能性を懸念している。このことは、AI基盤モデル関連市場における公正で、開放的で、効果的な競争に重大な影響を及ぼし、最終的には、選択肢の減少、品質の低下、価格の上昇などを通じて、企業や消費者に損害を与えるのみならず、AIによる前例のないイノベーションやより広範な経済利益を阻害する可能性がある。 

5 本日公表された最新の報告書では、グーグル、アップル、マイクロソフト、メタ、アマゾン及びエヌビディアが関与する90以上の業務提携と戦略的投資の「相互関連網(interconnected web)」が確認されている。CMAは、上記の大企業がもたらす豊富な財源、専門知識、イノベーション能力、そしてAI基盤モデル市場で果たす役割、さらにこの種の業務提携や合意がテクノロジー・エコシステムにおいて競争促進的な役割を果たしうることを認識している。 

6 しかし、CMAは、強力な業務提携や統合された企業は、競合他社の競争力を低下させるべきではなく、また、強い立場にある企業を競争から保護するために利用されるべきではないと警告している。特に、金融、医療、教育、防衛、運輸、小売など、経済のあらゆる分野にわたってAI基盤モデルが利用される可能性があることを考えると、市場の多様性及び選択肢を維持することは、ごく少数の大手テック企業に過度に依存するリスクを回避するためにも不可欠である。AIが企業及び消費者にもたらす恩恵は、最も強力な立場にあるテック企業が、デジタル市場において、AI基盤モデルを活用することで既存の支配的地位をより一層強固なものにし、市場力を拡大することができるような世界よりも、潜在的なスタートアップや企業との間で、公正で、開放的で、効果的な競争にさらされる世界において実現する可能性の方がはるかに高い。 

7 「勝者総取り方式」によって少数の強力なプラットフォームが台頭したデジタル市場でCMAが10年で得た経験を振り返り、カーデル・チーフエグゼクティブは、「CMAは、変革の可能性を秘めた新しいテクノロジーの出現という極めて重要な瞬間に、歴史の教訓を活かす決意を固めた。」と語る。 

8 カーデル・チーフエグゼクティブによるスピーチ及び最新の報告書は、公正で、開放的で、効果的な競争に対する3つの重要な連動するリスクを強調している。
(1)AI基盤モデルを開発するために重要なインプットを支配する企業は、競争から身を守るためにアクセスを制限する可能性がある。 
(2)強力な既存企業が、消費者市場や企業向け市場でその立場を悪用し、AI基盤モデルの選択を歪め、競争を制限する可能性がある。
(3)主要なプレーヤーが関与する業務提携は、バリューチェーンを通じて既存の市場支配力を悪化させる可能性がある。 

9 CMAが公表した最新の報告書は、各リスクが(CMAが提案する)原則によってどのように軽減されるかについての詳細と、これらの懸念に対処するためにCMAが現在講じている、又は、近い将来に講じることを検討している措置を示している。これには、市場調査や合併審査のような既存の措置のみならず、CMAが「デジタル市場・競争・消費者法案」の下でどのデジタル活動を優先的に調査するかを決定する際のAI基盤モデルの動向も含まれる。 また、 カーデル・チーフエグゼクティブによるスピーチ には、CMAが現在実施しているAI基盤モデルがクラウドサービスにおける競争に与える潜在的な影響についての先見性のある 評価を含めたクラウドサービスに関する市場調査(Cloud Services Market Investigation)や、マイクロソフトとOpenAIの業務提携がエコシステムの様々な部分において競争にどのような影響を与えうるかを理解するためのCMAの調査など 現在進行中の取組にも焦点を当てている。 

10 カーデル・チーフエグゼクティブは、「CMAは現在進行中の業務提携や、新たに生まれつつある業務提携を非常に注意深く見守っている。」と述べている。これには、この種の業務提携が合併規制の範囲に含まれるか、また、どのような状況において競争上の懸念を引き起こすかを評価するための合併規制に関する権限行使が含まれる。  
 また、カーデル・チーフエグゼクティブは、「我々は、合併の審査を強化することで、合併規制がより明確になることを望んでおり、その明確化により、企業自身にも利益をもたらす可能性がある。」と述べた。 

11 さらに、カーデル・チーフエグゼクティブは、次のように述べた。 
(1)この仕事を始めたとき、我々(CMA)は好奇心を抱いていた。今、より深く理解し、動向を注意深く見守る中で、我々は真の懸念を抱いている。 
(2)我々が直面している本質的な課題は、市場支配力の潜在的な搾取や予期せぬ結果を回避しつつ、いかにしてこの非常にエキサイティングな技術を全人類の利益のために活用するかということである。 
(3)我々が発展させた原則を適用し、この変革的かつ構造的に重要な技術がその役割を果たすことを確実にするために、将来にわたって、あらゆる法的権限を行使することを約束する。

フランス競争委員会、2022年6月の確約の一部を履行しなかったグーグルに対し2億5000万ユーロの制裁金を賦課

2024年3月20日 フランス競争委員会 公表

原文

【概要】

1 フランス競争委員会(以下「競争委員会」という。)は、グーグルの著作隣接権(related rights)に関する確約案を受け入れる旨の2022年6月21日付け決定により拘束力を持つことになった確約の一部を遵守しなかったとして、アルファベット、グーグル、グーグルアイルランド及びグーグルフランス(以下本稿では特に断りのない限りこの4社を単に「グーグル」とする。)に2億5000万ユーロの制裁金を課した。 


2 過去4年間で本件に係る法的措置は、本件を含め4件行われている(訳注:過去の3件は注1~3。)。これら一連の決定は、報道機関、出版社、デジタル・プラットフォーム間のバランスの取れた交渉に必要な条件を整えることを目的とした、2019年7月24日付けの著作隣接権に関するフランス法(2019年4月17日付けの著作権及び著作隣接権に関するEU指令を置き換えたもの)が制定されたことを背景に行われた。この法的枠組は、報道部門の関係者の利益のために、これらの関係者間の価値の共有を再定義し、数年前から報道部門に影響を及ぼしている重大な変化、特に、印刷部数の減少に伴うデジタル視聴者の増加、広告価値の大部分が主要なデジタル・プラットフォームに占められているという事実に対処することを目的としていた。
 
3 競争委員会は、2020年4月9日付けの決定において、差止命令という形で暫定措置を命じた(注1)後、グーグルがこれらの差止命令を遵守していなかったと判断し、2021年7月12日付けの決定において、5億ユーロの制裁金を課すとともに、差止命令を遵守しない場合にはさらに制裁金を賦課するとした(注2)。 
(注1)https://www.autoritedelaconcurrence.fr/en/communiques-de-presse/related-rights-autorite-has-granted-requests-urgent-interim-measures
(注2)https://www.autoritedelaconcurrence.fr/en/communiques-de-presse/remuneration-related-rights-press-publishers-and-agencies-autorite-fines 

4 その後、2022年6月21日付け決定において(注3)、本案件について裁定が下され、競争委員会は、表明された競争上の懸念を解消するためにグーグルが提案した確約について、5年間適用されるものとし、その間1回に限り更新可能な形で受け入れた。これに関連して競争委員会は、グーグルの確約の履行を監視する監視受託者(monitoring trustee)にAccuracy社を任命することを承認した。 
(注3)https://www.autoritedelaconcurrence.fr/en/press-release/related-rights-autorite-accepts-googles-commitments 

5 競争委員会は、今回の決定において、2022年6月21日付け決定で認定された確約における監視受託者に協力するという一般原則及び7つの確約のうち以下の4つに違反したとして、グーグルに制裁金を課した。 
・ 著作隣接権に対する報酬について、透明で客観的かつ非差別的な基準に従って3か月以内に報道機関及び出版社と誠実に交渉すること(確約1及び4)。 
・ 報道機関及び出版社に対し、著作隣接権に対する報酬について、透明性をもって評価するために必要な情報を提供すること(確約2)。 
・ 交渉が、グーグルと報道機関及び出版社との間の他の経済関係に影響を及ぼさないことを確保するために必要な措置を講じること(確約6)。 

6 グーグルが2023年7月に提供を開始した人工知能サービス「Bard」(2024年2月8日から「Gemini」と改名)に関して、報道機関、出版社及び競争委員会に通知することなく、Bardがその基礎モデルを訓練するために報道機関及び出版社のコンテンツを使用していたことが判明した。この事実は、確約1に基づく透明性の義務に違反し、確約1に従わなかったことで確約4にも違反する。 グーグルが提供した情報は、著作隣接権で保護されたコンテンツの使用から得られる全ての収益、特に間接収益をカバーしていない不完全なものであり、報道機関及び出版社が透明性をもって評価することを可能にするものではなかった。この事実は、確約2に違反する。 グーグルはその後、人工知能サービスによる報道機関及び出版社のコンテンツの使用を著作隣接権で保護されたコンテンツの表示に結び付けた。すなわち、グーグルは、「Google Extended」というツールを発表する少なくとも2023年9月28日まで、グーグルの他のサービスでのコンテンツの表示に影響を与えることなくBardによるコンテンツの利用に反対するために必要な技術的解決策を、報道機関や出版社に対して、提案しなかった。その結果、この日まで、サーチ、ディスカバー、ニュースなどグーグルのサービス上のコンテンツにBardが利用されることを拒否したい報道機関や出版社は、関連する権利の対価の交渉の対象となっていた自社コンテンツへのクローリングに反対する指示を挿入しなければならなかった。これらの事実は、確約6に違反する。 

7 競争委員会は、これらの違反を考慮し、グーグルに2億5000万ユーロの制裁金を課した。グーグルは事実関係を争わないことを約束したため、和解手続の恩恵を受けることができた。グーグルはまた、競争委員会によって指摘された特定の違反に対処するため、一連の是正措置を提案した。


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