その他豪州
ACCC、グーグル検索サービスの調査において、Telstra及びOptusによる確約を承認
2024年7月2日 オーストラリア競争・消費者委員会 公表【概要】1 オーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)は、オーストラリアにおけるグーグルの検索サービスに関する進行中の競争法調査の一環として、Telstra及びOptusによる確約を承認した。ACCCは、グーグルの行為に対する調査の過程で、グーグルがTelstra及びOptusが提供するアンドロイドOS搭載端末に、グーグルの検索サービスがデフォルトの検索サービスとしてプリインストールされる契約を両社と契約していたことを認定した。
2 グーグルはアンドロイドOSを開発し、遅くとも2017年から行われているTelstra及びOptusとの契約において、グーグルの広告収入を分配することを見返りに、競合他社製の検索サービスが端末にプリインストールされ、宣伝されることを制限していた。この契約は2024年6月30日に失効した。
3 Telstra及びOptusは、ACCCの調査に全面的に協力してきた。両社はそれぞれ2024年6月30日以降、グーグルとの間でグーグルの検索サービスがプリインストールされ、排他的なデフォルトの検索サービスとして設定することを要求するような契約更新又は新たな契約締結をしない旨約束した。両社によるこの確約は、反競争的行為の疑いのある行為への関与というACCCの懸念を解消するものである。
4 ACCCのリザ・カーバー委員は、次のように述べた。「Telstra及びOptusがACCCの競争上の懸念に対応してくれたことに感謝している。両社の確約は、代替的な検索サービスが、両社の供給するアンドロイドOS搭載端末においてデフォルトの検索サービスとなるための競争を可能とするものである。 我々はグーグルのこのような行為には、競争法上問題となる可能性があると考えているため、より広範な調査を継続している。本件調査に関して、現時点ではこれ以上のコメントは差し控える。独占を確保するために契約を締結するといった行為は、消費者の選択を制限し、イノベーションを阻害する。大きな市場支配力を有するデジタルプラットフォームは、オーストラリア競争法における自らの義務を認識する必要がある。 デジタル経済の競争を維持・促進させるための様々な措置が世界的に進められている。Telstra及びOptusによる今回の確約は、オーストラリアの消費者に、デジタルプラットフォーム及びサービスについてのより多くの選択肢を与え、デジタル市場における競争をより促進させるもので、競争を促進するための重要な一歩となると考える。オーストラリア競争・消費者法の改正、特に特定のデジタルプラットフォームによる反競争的行為を防止するためにサービス毎の行動規範を策定することは、デジタルプラットフォームが経済全体に及ぼす影響に対処するために、引き続き非常に重要である。」
5 本件の背景 (1) オーストラリアにおいて、モバイル端末は、一般検索サービスの流通チャネルとして最も大きく、また、最も速く成長しており、2023年においては95%の成人がインターネットにアクセスするためにモバイル端末を利用している。オーストラリアにおいて、端末へのプリインストール及びデフォルト設定という「箱から出してすぐに使える」権利を確保することは、検索サービスの供給事業者にとっては重要な流通チャネルである。
(2) ACCCによるグーグルの検索サービスに対する競争上の調査は、デジタルプラットフォームサービス調査(以下「DPSI」という。)における競争・消費者問題を検討している中で生じた。同調査の第3次中間報告書において、グーグルの検索エンジンがデフォルトの検索サービスとして端末にプリインストールされていることが、オーストラリアにおいて支配的な検索エンジンとなっていることの一因となっていることが明らかになった。ACCCは、デフォルトとして設定されると、強い消費者バイアスがかかることを発見した。ACCCはDPSIの第9次中間報告書を2024年9月に、そして、最終報告書を2025年3月に提出する予定である。
(3) 2022年9月のDPSIの第5次報告書において、ACCCはデジタルプラットフォームによる消費者、中小企業及び競争に対する悪影響に対処するための様々な新しい措置を推奨した。またこの報告書は、特定のプラットフォームやサービスが競争を維持・促進するための義務的な行動規範についても提案している。 2023年12月8日、政府は、規制改革に焦点を当てたACCCのDPSIの第5次報告書の全ての提言を基本的に支持した。英国、ドイツ、日本及びEUは、デジタルプラットフォームに対する重大で新たな競争・消費者規制を既に発表又は実施している。
(4) モバイル端末におけるグーグル検索のマーケットシェアは、2021年9月から2024年2月まで一貫して約98%であり、マイクロソフトのBingを含むその他の検索エンジンの存在感はわずかである。
フランス
2024年7月2日 オーストラリア競争・消費者委員会 公表【概要】
1 オーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)は、オーストラリアにおけるグーグルの検索サービスに関する進行中の競争法調査の一環として、Telstra及びOptusによる確約を承認した。ACCCは、グーグルの行為に対する調査の過程で、グーグルがTelstra及びOptusが提供するアンドロイドOS搭載端末に、グーグルの検索サービスがデフォルトの検索サービスとしてプリインストールされる契約を両社と契約していたことを認定した。
2 グーグルはアンドロイドOSを開発し、遅くとも2017年から行われているTelstra及びOptusとの契約において、グーグルの広告収入を分配することを見返りに、競合他社製の検索サービスが端末にプリインストールされ、宣伝されることを制限していた。この契約は2024年6月30日に失効した。
3 Telstra及びOptusは、ACCCの調査に全面的に協力してきた。両社はそれぞれ2024年6月30日以降、グーグルとの間でグーグルの検索サービスがプリインストールされ、排他的なデフォルトの検索サービスとして設定することを要求するような契約更新又は新たな契約締結をしない旨約束した。両社によるこの確約は、反競争的行為の疑いのある行為への関与というACCCの懸念を解消するものである。
4 ACCCのリザ・カーバー委員は、次のように述べた。
「Telstra及びOptusがACCCの競争上の懸念に対応してくれたことに感謝している。両社の確約は、代替的な検索サービスが、両社の供給するアンドロイドOS搭載端末においてデフォルトの検索サービスとなるための競争を可能とするものである。
我々はグーグルのこのような行為には、競争法上問題となる可能性があると考えているため、より広範な調査を継続している。本件調査に関して、現時点ではこれ以上のコメントは差し控える。独占を確保するために契約を締結するといった行為は、消費者の選択を制限し、イノベーションを阻害する。大きな市場支配力を有するデジタルプラットフォームは、オーストラリア競争法における自らの義務を認識する必要がある。
デジタル経済の競争を維持・促進させるための様々な措置が世界的に進められている。Telstra及びOptusによる今回の確約は、オーストラリアの消費者に、デジタルプラットフォーム及びサービスについてのより多くの選択肢を与え、デジタル市場における競争をより促進させるもので、競争を促進するための重要な一歩となると考える。オーストラリア競争・消費者法の改正、特に特定のデジタルプラットフォームによる反競争的行為を防止するためにサービス毎の行動規範を策定することは、デジタルプラットフォームが経済全体に及ぼす影響に対処するために、引き続き非常に重要である。」
5 本件の背景
(1) オーストラリアにおいて、モバイル端末は、一般検索サービスの流通チャネルとして最も大きく、また、最も速く成長しており、2023年においては95%の成人がインターネットにアクセスするためにモバイル端末を利用している。オーストラリアにおいて、端末へのプリインストール及びデフォルト設定という「箱から出してすぐに使える」権利を確保することは、検索サービスの供給事業者にとっては重要な流通チャネルである。
(2) ACCCによるグーグルの検索サービスに対する競争上の調査は、デジタルプラットフォームサービス調査(以下「DPSI」という。)における競争・消費者問題を検討している中で生じた。同調査の第3次中間報告書において、グーグルの検索エンジンがデフォルトの検索サービスとして端末にプリインストールされていることが、オーストラリアにおいて支配的な検索エンジンとなっていることの一因となっていることが明らかになった。ACCCは、デフォルトとして設定されると、強い消費者バイアスがかかることを発見した。ACCCはDPSIの第9次中間報告書を2024年9月に、そして、最終報告書を2025年3月に提出する予定である。
(3) 2022年9月のDPSIの第5次報告書において、ACCCはデジタルプラットフォームによる消費者、中小企業及び競争に対する悪影響に対処するための様々な新しい措置を推奨した。またこの報告書は、特定のプラットフォームやサービスが競争を維持・促進するための義務的な行動規範についても提案している。
2023年12月8日、政府は、規制改革に焦点を当てたACCCのDPSIの第5次報告書の全ての提言を基本的に支持した。英国、ドイツ、日本及びEUは、デジタルプラットフォームに対する重大で新たな競争・消費者規制を既に発表又は実施している。
(4) モバイル端末におけるグーグル検索のマーケットシェアは、2021年9月から2024年2月まで一貫して約98%であり、マイクロソフトのBingを含むその他の検索エンジンの存在感はわずかである。
フランス
フランス競争委員会、電気自動車用充電ステーションに関する調査報告書を発表
2024年6月11日 フランス競争委員会 公表この原稿は、以下の原文を要約して作成した。I 背景
1 欧州連合は、2050年までに温室効果ガスのネットゼロエミッションを達成するという目標を掲げているところ、運輸分野においては、電気自動車充電インフラ(以下「EVCI」という。)の配備及び価格設定並びにその関連サービスの創出が、運輸分野における脱炭素化の鍵となっている。フランスの自動車分野の戦略目標には、2023年に10万か所だった公に(誰でも)アクセス可能な充電ポイントを、2030年までに40万か所に増やすという目標が含まれている。
2 フランス競争委員会(以下「競争委員会」という。)は、EVCI分野における競争状況の概要を作成するため、2023年2月に職権による調査を開始し、2023年5月に意見募集を開始した。競争委員会は、関係する分野別規制当局であるフランスエネルギー規制委員会(Commission de regulation de l’energie、CRE)及びフランス運輸規制委員会(Autorite de regulation des transports、以下「ART」という。)の取組も参考にした。
II 調査及び提言の概要1 公にアクセス可能なEVCIについて(1) 公にアクセス可能なEVCIでは、様々な契約関係を通じて相互作用する多くのプレーヤーが関与している。① 充電事業者(Charging Operator、以下「CO」という。)は、競争入札又は用地所有者との相互契約によって、EVCIを設置・運営する。② モビリティ・サービス・プロバイダー(以下「MSP」という。)は、アプリやサブスクリプションを通じてエンドユーザーに充電サービスを提供する。 エンドユーザーは、COに直接支払うことも、ローミング契約を通じてMSPに支払うこともできる。充電ステーションの所有者は、政府機関や民間団体など様々である。(2) 公にアクセス可能な充電ステーションは、フランス国や地方政府、高速道路コンセッション事業者(以下、「MCO」という。)、地方公共団体、公共団体、一般市民がアクセスできる私有地(ショッピングセンター、レストランなど)の所有者など、様々な所有者によって管理されている場所に設置されている。(3) 電気自動車の普及を促進するためには、EVCIの地域格差の改善、料金の透明性の向上などが求められる。競争委員会は、包括的な公的データベース、配備計画のための省庁間調整、COとMSPによる明確な価格開示を推奨している。また、競争委員会は、消費者が価格予測をしやすくするために、kWhベースの価格設定、リアルタイムの価格更新、充電後の価格表示を提唱し、これは、最終的にはCO間及びMSP間での競争を促進するとしている。(4) 公にアクセス可能なEVCIの設置及び運営に係る競争の状況 COには、充電事業専門業者のほか、エネルギー会社系、石油会社系、自動車メーカー系の事業者や小規模事業者もいる。競争委員会は、川上又は川下市場において市場支配力を有する特定のCOによって実施される可能性があるレバレッジ効果を用いた行為に対しては特に警戒が必要だとしている。 競争委員会は、公正な市場慣行と消費者の選択肢を確保するため、潜在的な統合や立地アクセスや垂直統合などの競争上の優位性などを踏まえ、CO間の市場競争を監視していく。(5) 高速道路におけるEVCI設置に係る競争の促進 競争委員会は、コンセッション方式で運営される高速道路においては、MCOに対し、COの選定基準及び同一の契約要件を標準的な手続で定めることで、競争を促進することを提言している。この提言には、EVCIごとの個別入札、EV充電の価格規制(プライス・インデックスの導入など)、高速道路のCO間の競争促進に重要な役割を担っているARTの権限強化などが含まれる。(6) 非コンセッションの道路網 非コンセッションの道路網は、地方政府によって管理されており、無料の高速道路や国道が含まれる。ここでの、EVCIの配備は政府目標に達しておらず、競争入札が少ないなど競争が欠如している。競争委員会は、コンセッション方式の高速道路に対する全ての提言に加え、特にフランス高速道路公社にEVCI普及率の目標を与え、その達成状況を公表することを提案している。 また、EVCI配備における地方自治体の役割を強調し、COの投資の性質及び金額に見合った契約条件を設定するよう求め、価格及びサービスの質に関してCOを監視し、EVCI開発のマスタープランの策定の義務化を促している。(7) 私有地のEVCI スーパー、ショッピングセンター、ホテル、ファーストフードチェーンなどの私有地における公的にアクセス可能なEVCIは、急速に増加している。EVCIの有無が集客に影響を与えるので、私有地の所有者は、COの希望に沿って長期契約を締結する傾向にあり、競争の欠如につながる懸念がある。
2 集合住宅におけるEVCIについて(1) 電気自動車ユーザーに人気の家庭用充電は、一戸建て住宅では簡単に利用できるが、集合住宅に住む人々にとってははるかに複雑である。集合住宅におけるEVCI設置市場についても、まだ成熟していない。集合住宅の共用インフラは、公共配電網に接続されたインフラで、そこでは、アパートビル事業者(以下、「ABO」という。)と配電網事業者(以下、「DNO」という。)がEVCIを供給している。DNOは、共有インフラを公共配電網に接続する法的独占を与えられながら、そこでのEVCIの設置という競争部門においても事業を展開している。これについて、競争委員会は、DNOは公共サービスの使命に重点を置き、競争部門から撤退することを提案している。(2) 競争委員会は、アパートの契約時にEVCIを設置したABOやCOにオーナーやテナントが囲い込まれるリスクを指摘した上、囲い込みを防ぎ、競争を確保するために、異なる事業者のインフラ間の相互運用性を義務付けることを法制化することを提案している。そして、ABO及びCOに対し、インフラ契約をユーザー契約の条件としないよう助言し、独立した契約解除を提唱している。(3) さらに、競争委員会は、消費者の権利を保護し、透明性のある契約管理を確保するため、将来の契約にインフラ所有権移転条項と期限条項を含めることを義務付けることを提案している。
III 事業者による相談 業界関係者は、2024年5月27日に競争委員会が公表した通達に基づいて、持続可能性を目的とする取組について、競争委員会に競争法との適合性に関し質問し、非公式なガイダンスを要請できる体制が整えられた(注)。(注)https://www.autoritedelaconcurrence.fr/en/press-release/autorite-publishes-its-notice-provision-informal-guidance-companies-questions
ドイツ
2024年6月11日 フランス競争委員会 公表
この原稿は、以下の原文を要約して作成した。
I 背景
1 欧州連合は、2050年までに温室効果ガスのネットゼロエミッションを達成するという目標を掲げているところ、運輸分野においては、電気自動車充電インフラ(以下「EVCI」という。)の配備及び価格設定並びにその関連サービスの創出が、運輸分野における脱炭素化の鍵となっている。フランスの自動車分野の戦略目標には、2023年に10万か所だった公に(誰でも)アクセス可能な充電ポイントを、2030年までに40万か所に増やすという目標が含まれている。
2 フランス競争委員会(以下「競争委員会」という。)は、EVCI分野における競争状況の概要を作成するため、2023年2月に職権による調査を開始し、2023年5月に意見募集を開始した。競争委員会は、関係する分野別規制当局であるフランスエネルギー規制委員会(Commission de regulation de l’energie、CRE)及びフランス運輸規制委員会(Autorite de regulation des transports、以下「ART」という。)の取組も参考にした。
II 調査及び提言の概要
1 公にアクセス可能なEVCIについて
(1) 公にアクセス可能なEVCIでは、様々な契約関係を通じて相互作用する多くのプレーヤーが関与している。
① 充電事業者(Charging Operator、以下「CO」という。)は、競争入札又は用地所有者との相互契約によって、EVCIを設置・運営する。
② モビリティ・サービス・プロバイダー(以下「MSP」という。)は、アプリやサブスクリプションを通じてエンドユーザーに充電サービスを提供する。
エンドユーザーは、COに直接支払うことも、ローミング契約を通じてMSPに支払うこともできる。充電ステーションの所有者は、政府機関や民間団体など様々である。
(2) 公にアクセス可能な充電ステーションは、フランス国や地方政府、高速道路コンセッション事業者(以下、「MCO」という。)、地方公共団体、公共団体、一般市民がアクセスできる私有地(ショッピングセンター、レストランなど)の所有者など、様々な所有者によって管理されている場所に設置されている。
(3) 電気自動車の普及を促進するためには、EVCIの地域格差の改善、料金の透明性の向上などが求められる。競争委員会は、包括的な公的データベース、配備計画のための省庁間調整、COとMSPによる明確な価格開示を推奨している。また、競争委員会は、消費者が価格予測をしやすくするために、kWhベースの価格設定、リアルタイムの価格更新、充電後の価格表示を提唱し、これは、最終的にはCO間及びMSP間での競争を促進するとしている。
(4) 公にアクセス可能なEVCIの設置及び運営に係る競争の状況
COには、充電事業専門業者のほか、エネルギー会社系、石油会社系、自動車メーカー系の事業者や小規模事業者もいる。競争委員会は、川上又は川下市場において市場支配力を有する特定のCOによって実施される可能性があるレバレッジ効果を用いた行為に対しては特に警戒が必要だとしている。
競争委員会は、公正な市場慣行と消費者の選択肢を確保するため、潜在的な統合や立地アクセスや垂直統合などの競争上の優位性などを踏まえ、CO間の市場競争を監視していく。
(5) 高速道路におけるEVCI設置に係る競争の促進
競争委員会は、コンセッション方式で運営される高速道路においては、MCOに対し、COの選定基準及び同一の契約要件を標準的な手続で定めることで、競争を促進することを提言している。この提言には、EVCIごとの個別入札、EV充電の価格規制(プライス・インデックスの導入など)、高速道路のCO間の競争促進に重要な役割を担っているARTの権限強化などが含まれる。
(6) 非コンセッションの道路網
非コンセッションの道路網は、地方政府によって管理されており、無料の高速道路や国道が含まれる。ここでの、EVCIの配備は政府目標に達しておらず、競争入札が少ないなど競争が欠如している。競争委員会は、コンセッション方式の高速道路に対する全ての提言に加え、特にフランス高速道路公社にEVCI普及率の目標を与え、その達成状況を公表することを提案している。
また、EVCI配備における地方自治体の役割を強調し、COの投資の性質及び金額に見合った契約条件を設定するよう求め、価格及びサービスの質に関してCOを監視し、EVCI開発のマスタープランの策定の義務化を促している。
(7) 私有地のEVCI
スーパー、ショッピングセンター、ホテル、ファーストフードチェーンなどの私有地における公的にアクセス可能なEVCIは、急速に増加している。EVCIの有無が集客に影響を与えるので、私有地の所有者は、COの希望に沿って長期契約を締結する傾向にあり、競争の欠如につながる懸念がある。
2 集合住宅におけるEVCIについて
(1) 電気自動車ユーザーに人気の家庭用充電は、一戸建て住宅では簡単に利用できるが、集合住宅に住む人々にとってははるかに複雑である。集合住宅におけるEVCI設置市場についても、まだ成熟していない。集合住宅の共用インフラは、公共配電網に接続されたインフラで、そこでは、アパートビル事業者(以下、「ABO」という。)と配電網事業者(以下、「DNO」という。)がEVCIを供給している。DNOは、共有インフラを公共配電網に接続する法的独占を与えられながら、そこでのEVCIの設置という競争部門においても事業を展開している。これについて、競争委員会は、DNOは公共サービスの使命に重点を置き、競争部門から撤退することを提案している。
(2) 競争委員会は、アパートの契約時にEVCIを設置したABOやCOにオーナーやテナントが囲い込まれるリスクを指摘した上、囲い込みを防ぎ、競争を確保するために、異なる事業者のインフラ間の相互運用性を義務付けることを法制化することを提案している。そして、ABO及びCOに対し、インフラ契約をユーザー契約の条件としないよう助言し、独立した契約解除を提唱している。
(3) さらに、競争委員会は、消費者の権利を保護し、透明性のある契約管理を確保するため、将来の契約にインフラ所有権移転条項と期限条項を含めることを義務付けることを提案している。
III 事業者による相談
業界関係者は、2024年5月27日に競争委員会が公表した通達に基づいて、持続可能性を目的とする取組について、競争委員会に競争法との適合性に関し質問し、非公式なガイダンスを要請できる体制が整えられた(注)。
(注)https://www.autoritedelaconcurrence.fr/en/press-release/autorite-publishes-its-notice-provision-informal-guidance-companies-questions
ドイツ
ドイツ連邦カルテル庁、BMW、Mercedes、Thyssenkrupp及びVWによる特定の技術ライセンス取得に係る共同交渉を容認
2024年6月10日 ドイツ連邦カルテル庁 公表【概要】1 ドイツ連邦カルテル庁(以下「カルテル庁」という。)は、「自動車ライセンス交渉グループ」(以下「ALNG」という。)の設立を容認した。ALNGは、BMW、Mercedes-Benz、Thyssenkrupp及びVWが共同で計画している協力グループであり、いわゆる標準必須特許(以下「SEP」という。)のライセンス取得の条件について共同で交渉することを目的としている。この協力グループは、他の自動車メーカーの参加も自由である。
2 アンドレアス・ムントカルテル庁長官は、次のように述べた。「スマートフォンや自動車で4Gや5Gなどの技術を使用するには、何千もの特許のライセンスを取得する必要がある。競争法は、ライセンサーが特定の規格を実施するために必要な特許を束ねて、公正な条件で提供するパッケージとすることを認めている。今回の調査は、ライセンシー側の協力に初めて焦点を当てた、競争法の分野で新境地を開くものであり、ドイツをはるかに超えた重要な進展である。広範な調査の結果、現在計画されているALNGについて深刻な懸念は認められなかった。しかし、ALNGの活動は、自動車分野に特化しない規格に限定され、競争法に基づいて定められた他のガイドラインが遵守される場合に限り、容認される。特に、この協力枠組みによる交渉への参加は、常に任意でなければならない。また、協力枠組みは、自動車業界のサプライヤーに開かれたものでなければならず、参加者の情報交換は、必要最小限に限定されなければならない。」
3 カルテル庁は、ALNGの調査において、影響を受けるライセンス市場(ライセンスを受ける側)に加え、様々な自動車販売市場に焦点を当てた。ALNGのような調達協力は、影響を受ける市場における市場シェアの合計が増加するにつれて、さらに競争に対してマイナスの影響を及ぼす可能性がある。市場シェアの合計が15%を超えない場合には、そのような協力は、水平的協力協定に関するEUガイドラインの下で原則として許容される。 一般的なモバイル通信技術のためのSEPライセンス市場において、メンバー及び将来自動車業界からALNGに参加する可能性のあるメンバーを合わせた需要側の市場シェアは15%未満である。ライセンスは多くのデバイス(例えばスマートフォン)で必要とされるため、需要側には非常に多くの事業者が含まれ、自動車産業をはるかに超えて広がっている。自動車に特化した規格の場合には、状況が異なる可能性がある。 実際には、様々な自動車市場における少なくともいくつかのケースでは、15%のシェアを超えている。しかし、SEPのライセンスコストは通常、自動車の総生産コストの1%未満であることから、共同調達に起因するALNGメンバー間での調整などが行われるリスクは大きくはない。
4 ALNGが容認される条件はほかにもある。1つには、ライセンサーが(二当事者間交渉ではなく)ALNGと行うライセンス条件に関する交渉が常に法律上も実態上も任意であることである。また、ALNG及びALNGが行うライセンス交渉が、自動車業界の他のサプライヤーに対して開かれていることも求められる。ALNGを運用するために必要な範囲を超えて、競争上センシティブな情報の交換がなされるリスクがあるので、参加当事者により、そのような事態を防ぎ、各条件がきちんと満たされるような組織的措置が講じられることが重要である。
5 カルテル庁は、ALNGに対して、ALNG又はその交渉グループが、自動車分野に特化した技術にも活動を拡大する計画がある場合には、計画を実施する前にカルテル庁に通知しなければならないことを伝えた。これは、ALNGの組織や活動に重要な変更がある場合にも適用される。
6 ALNG のようなライセンス交渉グループ(LNG)の設立は、異なる見解を持つ様々な事業者が参加する新しい形の交渉の始まりである。例えば、ALNG のメンバーは、このような協力によって必要な交渉の回数が減り、その結果、取引コストを削減できると主張する一方、ライセンサー側は、LNGがライセンサーを犠牲にして交渉力のバランスを変化させる可能性があるとの懸念を表明している。
2024年6月10日 ドイツ連邦カルテル庁 公表【概要】
1 ドイツ連邦カルテル庁(以下「カルテル庁」という。)は、「自動車ライセンス交渉グループ」(以下「ALNG」という。)の設立を容認した。ALNGは、BMW、Mercedes-Benz、Thyssenkrupp及びVWが共同で計画している協力グループであり、いわゆる標準必須特許(以下「SEP」という。)のライセンス取得の条件について共同で交渉することを目的としている。この協力グループは、他の自動車メーカーの参加も自由である。
2 アンドレアス・ムントカルテル庁長官は、次のように述べた。
「スマートフォンや自動車で4Gや5Gなどの技術を使用するには、何千もの特許のライセンスを取得する必要がある。競争法は、ライセンサーが特定の規格を実施するために必要な特許を束ねて、公正な条件で提供するパッケージとすることを認めている。今回の調査は、ライセンシー側の協力に初めて焦点を当てた、競争法の分野で新境地を開くものであり、ドイツをはるかに超えた重要な進展である。広範な調査の結果、現在計画されているALNGについて深刻な懸念は認められなかった。しかし、ALNGの活動は、自動車分野に特化しない規格に限定され、競争法に基づいて定められた他のガイドラインが遵守される場合に限り、容認される。特に、この協力枠組みによる交渉への参加は、常に任意でなければならない。また、協力枠組みは、自動車業界のサプライヤーに開かれたものでなければならず、参加者の情報交換は、必要最小限に限定されなければならない。」
3 カルテル庁は、ALNGの調査において、影響を受けるライセンス市場(ライセンスを受ける側)に加え、様々な自動車販売市場に焦点を当てた。ALNGのような調達協力は、影響を受ける市場における市場シェアの合計が増加するにつれて、さらに競争に対してマイナスの影響を及ぼす可能性がある。市場シェアの合計が15%を超えない場合には、そのような協力は、水平的協力協定に関するEUガイドラインの下で原則として許容される。
一般的なモバイル通信技術のためのSEPライセンス市場において、メンバー及び将来自動車業界からALNGに参加する可能性のあるメンバーを合わせた需要側の市場シェアは15%未満である。ライセンスは多くのデバイス(例えばスマートフォン)で必要とされるため、需要側には非常に多くの事業者が含まれ、自動車産業をはるかに超えて広がっている。自動車に特化した規格の場合には、状況が異なる可能性がある。
実際には、様々な自動車市場における少なくともいくつかのケースでは、15%のシェアを超えている。しかし、SEPのライセンスコストは通常、自動車の総生産コストの1%未満であることから、共同調達に起因するALNGメンバー間での調整などが行われるリスクは大きくはない。
4 ALNGが容認される条件はほかにもある。1つには、ライセンサーが(二当事者間交渉ではなく)ALNGと行うライセンス条件に関する交渉が常に法律上も実態上も任意であることである。また、ALNG及びALNGが行うライセンス交渉が、自動車業界の他のサプライヤーに対して開かれていることも求められる。ALNGを運用するために必要な範囲を超えて、競争上センシティブな情報の交換がなされるリスクがあるので、参加当事者により、そのような事態を防ぎ、各条件がきちんと満たされるような組織的措置が講じられることが重要である。
5 カルテル庁は、ALNGに対して、ALNG又はその交渉グループが、自動車分野に特化した技術にも活動を拡大する計画がある場合には、計画を実施する前にカルテル庁に通知しなければならないことを伝えた。これは、ALNGの組織や活動に重要な変更がある場合にも適用される。
6 ALNG のようなライセンス交渉グループ(LNG)の設立は、異なる見解を持つ様々な事業者が参加する新しい形の交渉の始まりである。例えば、ALNG のメンバーは、このような協力によって必要な交渉の回数が減り、その結果、取引コストを削減できると主張する一方、ライセンサー側は、LNGがライセンサーを犠牲にして交渉力のバランスを変化させる可能性があるとの懸念を表明している。