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豪州

ACCCによるデジタルプラットフォーム調査の最終報告書は、グローバル規模の発展及び新たな競争・消費者問題に焦点

2024年7月25日 オーストラリア競争・消費者委員会 公表

【概要】

1 オーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)は、2025年3月31日までに政府に提出される予定のデジタルプラットフォームサービス調査の最終となる第10次報告書において、デジタルプラットフォーム市場における最近の動向までをカバーし、新たな問題を特定して、また、海外の重要な動向とそれによる消費者及び競争への影響を提示する予定である。ACCCは、潜在的な又は新たな問題の概要を捉えることで、絶えず進化しているデジタル市場について、さらなる検討や監視のための優先事項を明らかにしていくことを目指している。 本日(2024年7月25日)、ACCCは論点ペーパー(注1)を発表し、今後発行する最終報告書における3つの関心分野(①デジタルプラットフォームサービス市場に対する最近の国際的な法令の進展及びそれらによる競争・消費者への影響、②デジタルプラットフォームサービス市場における大幅な発展と主要な動向、③デジタルプラとフォームサービスに関する潜在的及び新たな競争・消費者問題)をまとめ、関係者にこれらについて意見を求めている。

(注1) accc.gov.au/system/files/dpsi-10-final-report-issues-paper.pdf?ref=0&download=y

 2 ACCCのジーナ・キャス・ゴットリーブ委員長は、次のように述べた。
「最終報告書は、グローバルな視点に立ち、世界にどのような課題と可能性が存在するかを確認する機会となる。過去5年間にわたるACCCのデジタルプラットフォームに関する取組は、既に経済に変化をもたらし、消費者に利益をもたらしている。しかし、オーストラリアは、他の国・地域の発展からさらに学び、利益を得ることができる。 現在我々は、最終報告書作成のため、消費者、事業者、その他の人々に、我々が述べた問題点について意見を求めている。」

3 論点ペーパーでは、EU、ドイツ、インド、韓国、日本及び英国における関連法令の著しい進展について概要を述べている。最終報告書では、発行までの更なる進展も含め、これらの国及びその他の国・地域における更なる詳細が記載される。
 この点についてジーナ・キャス・ゴットリーブ委員長は、次のように述べた。
「多くの場合、これらの法令は最近制定されたばかりであるため、その全ての影響が明らかでないこともあると認識している。しかし、デジタル市場における競争と消費者保護のバランスを見出すという点では、多くの国・地域における取組が我々の目的と一致している。」

デジタルプラットフォームサービス調査における従前の調査結果の更新

4 最終報告書において、ACCCは、これまでの調査報告書における調査結果の更新情報も含める予定である。2020年9月のオンライン・プライベート・メッセージサービスに関する報告書及び2021年3月のアプリ配信市場に関する報告書は、これまでの調査結果を更新する余地がある分野である。しかし、ACCCは必要に応じて、これ以外にも、これまでの報告書で調査したサービスや市場における大幅な発展や大きな動向について検討する可能性がある。ACCCは、最近の技術的発展の結果も含め、これらのサービスの提供に関する変化を調査する。最終報告書はまた、新規参入の存在がある分野を含めた規模の調整やこれらのサービス分野の主要なサプライヤーの素性を確認する。また、消費者によるサービスの利用方法の変化を確認し、信頼性と品質についての消費者の見方の変化も調査する。

5 ACCCはまた、エピックゲームズが現在オーストラリアでアップル及びグーグルに対して行っている訴訟など、国内外における最近及び現在進行中の訴訟についても、最終報告書に含める可能性がある。エピックゲームズとスマートフォンユーザー及びアプリ開発者の代理をする集団訴訟の弁護士は、アップルとグーグルそれぞれが競争・消費者法の様々な規定に違反していると主張している。

デジタルプラットフォームサービスにおける新たな問題

6 最終報告書においては、オンラインゲームなど、これまで調査されてこなかったデジタルプラットフォームサービスにおける潜在的又は新たな競争及び消費者問題を検討する。オンラインゲームとゲームプラットフォームは、デジタル時代におけるエンターテイメントとソーシャル・ネットワークの一形態として普及しており、約91%の世帯がゲーム端末又はゲーム機器を所有し、2024年の市場規模は42.1億豪ドルに達すると推計されている。ACCCは、これまでオンラインゲーム市場における競争・消費者問題を調査したことはないが、競争及び消費者に関する潜在的な懸念を生じさせる慣行が存在する可能性のある分野であるとして監視している。

7 最終報告書で調査の対象となる可能性のある問題の中には、流通モデルやサブスクリプションモデル、欺瞞的な可能性のあるデザイン要素などがある。

8 ACCCはまた、生成AIに関連する潜在的な競争上の問題を調査することを計画している。これらの問題には、市場への高い参入障壁や巨大なプラットフォーム事業者が大規模言語モデル(LLMs)との統合を通じて、自らのマーケットパワーを拡大・強化する可能性について検討することも含まれる。

9 ジーナ・キャス・ゴットリーブ委員長は、次のように述べた。
「我々は、最近の生成AIの発展を注視している。生成AIは広範に利用され、急速に拡大・発展を続けている。生成AIの製品やサービスは、新たな機会をもたらす可能性がある一方で、我々の任務に大きな影響を与えるような新たな課題もある。」

10 2024年9月に政府に提出される予定の第9次報告書では、一般検索サービスに関する競争・消費者問題を検討しており、これには一般検索サービスに関連する生成AIの潜在的な影響も含まれる。このような現在の調査対象を踏まえ、最終報告書において、一般検索サービスにおける生成AIの潜在的影響をさらに検討することは考えていない。

11 ACCCは、2023年9月の報告書において、拡大するデジタルプラットフォームによるエコシステムの一例として、消費者向けクラウドストレージサービスを調査した。過去のこのような調査を踏まえ、消費者向けクラウドストレージサービスを再調査するつもりはないが、クラウドストレージサービスはクラウドコンピューティングサービスの1つの側面に過ぎないことに留意し、ACCCはビジネスユーザーを中心にネットワークへのアクセス、サーバー、アプリケーション、ストレージなど、他のサービスを重点的に調査する予定である。

背景

12 ACCCのデジタルプラットフォーム部門は、2020年の財務大臣からの指示に従い、デジタルプラットフォームサービス市場とそれによる競争・消費者への影響について、5年間にわたる調査を実施している。この調査は6か月ごとに政府に報告されるもので、様々な形態のデジタルプラットフォームサービス、それらによる広告サービス、データ仲介サービスを調査している。

13 今回の論点ペーパーは、2025年3月31日までに政府に提出される予定の最終報告書に反映される。第9次報告書は、一般検索サービスにおける競争及び検索品質の動向に焦点を当てたもので、2024年9月30日までに財務大臣に提出される予定である。

14 その他の報告書では、オンライン・プライベート・メッセージサービス(第1次:2020年9月)、アプリ配信(第2次:2021年3月)、検索サービスとウェブブラウザにおける市場ダイナミクスと消費者選択画面(第3次:2021年9月)、オンライン小売市場(第4次:2022年3月)、規制改革(第5次:2022年9月)、ソーシャルメディアサービス(第6次:2023年3月)、エコシステムの拡大(第7次:2023年9月)について調査してきた(訳注:データ企業によるデータ製品・サービスの供給(第8次:2024年3月))。これまでの報告書は、デジタルプラットフォームサービス調査2020-25のウェブページ(注2)に掲載されている。
(注2) https://www.accc.gov.au/inquiries-and-consultations/digital-platform-services-inquiry-2020-25

15 2022年9月に政府に提出された第5次報告書において、ACCCは、デジタルプラットフォームサービスの提供において見られる様々な阻害性に対処するため、新たな競争・消費者保護措置の導入を提言した。2023年12月8日、政府はこれら全ての提言についての基本的な支持を表明し、競争のための措置に関する法的枠組みについて公的に協議を行うとした。

16 ACCCは、産業・科学・資源省における「オーストラリアにおける安全で責任あるAI」協議や、国会の雇用・教育・訓練常任委員会による「オーストラリアの教育制度における生成AIの使用に関する調査」を含め、生成AIの広範な問題に関連する他の政府による活動が現在行われていることに留意する。

韓国

KFTC、AI市場実態調査を開始

2024年8月1日 韓国公正取引委員会 公表

原文

【概要】

1 韓国公正取引委員会(以下「KFTC」という。)は、2024年8月1日から人工知能(Artificial Intelligence、以下「AI」という。)分野の国内及び海外の主要事業者を対象に、「AI市場実態調査」に着手する。


2 チャットGPTを筆頭に、生成型AI(注1)の急速な発展が当該産業はもちろん、日常生活全般に大きな影響を及ぼしており、現在、AI市場は、企業間(B2B)、企業・消費者間(B2C)で多様な取引関係を形成しており、今後の経済成長を導く(注2)重要産業になると見込まれている。
(注1)大規模データ等を学習し、既存のデータを活用して新たなテキスト、画像等の新たなコンテンツを生成するAI技術
(注2)生成型AIの導入により、今後10年間、世界中のGDPが7%増大すると予想(ゴールドマンサックス、2023年)

3 しかし、大規模な資本及びコンピューティングインフラが必要なAI技術の特性により、少数企業が競争優位性を確保しており、高い市場集中度、主要生産要素に係る参入障壁の構築の可能性など様々な競争法上の問題も現れている。主要競争当局及び国際機関もAI市場について分析を開始したり、報告書を発表したりするなど、AI分野に高い関心を示している状況である。
(注3)英国・カナダ競争当局のAI関連報告書の 発表(2023年)、欧州委員会の生成型AI市場に係る研究の推進(2024年)、OECDのAI関連報告書の発表(2024年)等

 4 このため、KFTCは、国内の生成型AI市場における取引関係及び競争状況を分析し、今後の市場において発生する可能性のある競争・消費者問題を捉えるために、市場研究(Market Study)を目的として、独占規制及び公正取引に関する法律第87条第1項(注4)に基づき実態調査を行う。
(注4)独占規制及び公正取引に関する法律第87条第1項 KFTCは、一定の取引分野の公正な取引秩序の確立のために、当該取引分野に関する書面実態調査を実施し、その調査結果を公表することができる。

5 KFTCは、本格的な実態調査に先立ち、文献調査、学界及び業界懇談会等の意見収れんを通じて、調査対象及び調査項目を選定した。

6 今回の実態調査は、国内顧客にAI分野(ファンデーションモデル(注5)、コンピューティングハードウェア(注6)等)の製品・役務の開発・販売等を行う国内・海外の主要事業者50社以上を対象として実施する予定であり、そのため、KFTCは、書面実態調査票を送付し、必要な範囲で資料の提出を求める予定である。
(注5)膨大なデータを使用して様々な分野の作業を実行できるように学習する巨大AI技術の基礎モデル(Foundation Model)
(注6)生成型AI用に使用されるコンピュータチップなどのハードウェアインフラ 

7 主な調査項目は、①事業の概要、②製品及び市場の状況、③AI関連分野別の取引状況、④不公正取引経験の有無等で、事業者間の取引実態及び競争関係、詳細な市場構造に対する総合的な把握に関する内容である。

8 KFTCは、今回の実態調査結果を基に、AI市場のイノベーション及び公正な競争が持続できる競争政策の方向を模索する一方、AI市場参加者の予測可能性を高め、より競争・消費者に優しい市場環境作りのために、学界及び外部専門家の諮問を経て、2024年末までに「AI政策報告書」を公表する予定である。


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