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英国

CMAは、グーグル及びアップルのアプリストアに関する既存の競争法違反被疑事件審査を終了し、デジタル市場・競争・消費者法で対処へ

2024年8月21日 英国競争・市場庁 公表

【概要】

1 競争・市場庁(CMA)は、本年5月に成立した「2024年デジタル市場・競争・消費者法」(DMCCA:Digital Markets, Competition and Consumers Act)の下、デジタル市場に関する新たな規制体制の導入が予定されている中で、グーグル及びアップルのアプリストアに対する既存の競争法(1998年競争法)による事件審査を終了した。

2 これは、グーグル及びアップルの違反被疑行為によってどのような損害が生じているかについて何ら決定を行ったものではない。CMAは、どのようなデジタル分野の問題に最初に取り組むかについては決定していないが、新しいデジタル市場規制の下での初期の作業は、アプリストアを含むモバイルエコシステムなど、既に調査した分野での経験を基礎にし、それを活用することになると予想している。
3 CMAが既存の競争法に係る事件審査を開始した理由は、グーグル及びアップルが、それぞれのアプリストア(Play Store及びApp Store)を通じた市場における地位を利用して、英国のアプリ開発者にとって不当に、競争と消費者選択を制限し、デジタルコンテンツの価格上昇やアプリユーザーの選択肢の減少につながる可能性が懸念されたためである。
4 事件審査の焦点は、ゲーム等のデジタルコンテンツを提供するアプリ開発者にグーグル及びアップルの独自のアプリ内課金システムの使用が義務付けられている点にあり、アプリ開発者にとっては、支払方法の選択肢が制限されることによって消費者と直接取引することが困難になることが懸念される。
5 このような懸念に対して、グーグルは確約計画(改善措置)を提出したが、CMAはこれを承認しなかった。グーグルの提案では、従来のグーグルの課金システムに代わる支払オプションとして、「開発者専用課金」(DOB:Developer-only Billing)及び「消費者選択課金」(UCB:User Choice Billing)という支払方法を利用できるようにすることが提案されていた。
6 CMAは、アプリ開発者と協議し、そのフィードバックとその他入手可能な証拠を検討した結果、グーグルが提案した改善措置は競争上の懸念に効果的に対処するとは判断しなかった。アプリ開発者からのフィードバックによると、代替支払方法の利用に係るグーグルの提案は不十分であり、実際にはグーグルの従来の支払システムに拘束されたままになるだろうとの意見があった。特に、アプリ開発者は、グーグルに支払うことになる手数料の水準や、消費者が別の支払方法を利用することを躊躇させるような「ポップアップ画面」の存在を懸念した。
7 最近の動向、特に本年5月に成立したDMCCAを踏まえ、CMAは、グーグル及びアップルのアプリストアに関する既存の競争法の事件審査を行政上の優先事項に照らして評価し、この時点でこれらの事件審査を終了することを決定した。
8 DMCCA下において、アップル及びグーグルの一方又は両方が、モバイル分野のデジタル活動に関連して「戦略的市場地位」(strategic market status)を有すると指定された場合、CMAは新たな権限を使用することにより、既存の競争法による事件審査の場合よりも包括的な検討を行うことができ、競争促進のために必要となる介入についても検討することができる。
9 CMAのウィル・ヘイターデジタル市場担当エグゼクティブディレクターは、次のように述べた。
「新たな競争促進の枠組み(DMCCA)が発効すれば、我々は既存の取組を通じて既に特定した懸念事項に対して新たな権限の適用を検討できるようになる。
 アプリ開発者を含む英国のテクノロジー企業が、公正かつ競争力のあるアプリエコシステムにアクセスできるようにすることは、業界の成長、投資の促進、そして英国の消費者にとってより良い結果をもたらすために非常に重要である。これらは全て、新たな規制の下での最初の調査を開始する前に検討している要素である。」
10 その他
(1) DMCCA下において、CMAは、デジタル市場において戦略的市場地位を有するものとして指定された企業の行動に条件を課す権限を持ち、それらの条件に違反した企業に対して多額の制裁金を課すことができるようになる。
(2) CMAは、DMCCA発効後1年以内に、約3~4件の戦略的市場地位に関する調査を開始する予定(2024年後半を目途。)。
(3) CMAは、行政上の優先事項を理由として、本件アプリストアに対する既存の競争法の事件審査を終了したのであって、グーグル及びアップルの行為が既存の競争法に違反したかどうかについてはいかなる決定も下していない。

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