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フランス

フランスの小売市場におけるカーボン・フットプリントのデータ収集及び共有のためのプラットフォームの創設に関するインフォーマルガイダンスの公表

2025年10月30日 フランス競争委員会 公表

原文

【概要】

経緯
 本日(2025年10月30日)、フランス競争委員会(以下「仏競争委」という。)は、サステナビリティに関する分野において、2024年5月27日付けの通知(注1)に基づくインフォーマルガイダンスを公表した。
 同ガイダンスは、小売市場におけるサプライヤーのカーボン・フットプリント(注2)を収集・共有するためのプラットフォームを創設するプロジェクト(以下「LESSプロジェクト」という。)を主導する「商業流通連盟(FCD)」(注3)及び「ペリフェム」(注4)という2つの専門的な団体から仏競争委の首席報告官(General Rapporteur)(注5)宛てに申請があったことを契機として策定されたものである。
 (注1) 企業や事業者団体が仏競争委に対して、サステナビリティを目的とする取組と競争法との適合性に関する質問を提出し、仏競争委から見解を得る枠組みを開始した。
 (注2) 製品・サービスのライフサイクルにおいて発生した温室効果ガス排出量をCO2排出量に換算したもの。
 (注3) フランス主要な小売業者の利益を代表する業界団体。
 (注4) フランスの小売及び流通セクターの技術団体。
 (注5) 仏競争委の審査部門のヘッドにあたる。

LESSプロジェクト
 LESSプロジェクトとは、小売業者のサプライチェーン上流で発生する間接的なCO2排出量に関するデータを一元化するプラットフォームの構築を目的とするもので、具体的な取組内容は次のとおり。
 1. プラットフォームに参加することを選択したサプライヤーは、CO2排出量を始めとする複数の情報を登録することができる。登録内容には、各ブランドのCO2排出量(スコープ(注6)ごとの排出量)やブランド間での排出量配分方法(金銭的シェア、物理的シェアなど)、CO2排出量削減に向けたコミットメント(削減経路や目標値を含む。)及び関連実績、製品又は製品ファミリーレベルのCO2データなど、複数の種類の情報が含まれる。また、使用した方法論についての情報を登録することも可能である。
 (注6) 企業や企業グループが自らのCO2排出源を正確に把握し、管理する観点から、スコープ1(企業自身が所有・運営する施設や車両から直接排出されるCO2のこと)、スコープ2(企業が消費する電力や熱エネルギーなどの間接的なエネルギー使用に伴って排出されるCO2のこと)及びスコープ3(原材料の調達や製品輸送などサプライチェーン全体から排出されるCO2のこと)の3つに分類される。
 2. OpenClimatというCO2データの収集を専門とする事業者がプラットフォームを管理し、提供された情報のチェックと検証を行う。
 3. 小売業者はダッシュボードを通じて自社のサプライヤーのデータにアクセスでき、そのデータを自社の目的に合わせてエクスポートすることができる。さらに追加のオプションモジュールも開発される可能性がある。

 このほか、希望するサプライヤーは、自らの実績値とは別に、自発的にCO2排出量削減に向けたコミットメントを公表することが期待される。
  
首席報告官による判断
 首席報告官は、申請者に対するレターにおいて、本プロジェクトは、カーボン・フットプリント測定プラットフォーム及び測定ツール市場における競争への影響に関して審査されないことを示すとともに、製品のカーボン・フットプリントが競争上の要素となり得ると改めて指摘した。
 また、同首席報告官は、LESSプロジェクト上のカーボン・フットプリントに関するデータの共有について次のとおり指摘した。
 ・データの共有は効率性の源泉である。
 ・データの共有自体が反競争的な目的をもつものではない。
 ・データの共有により、サプライヤーが複数のデータ要求を受けるのを回避する。
 ・サプライヤーが小売業者とデータを共有することで、脱炭素化戦略に取り組むインセンティブを高める。
 ・小売業者が単一のツールを通じてサプライヤーのデータと取組にアクセスすることができる。 

 LESSプロジェクトが、次の条件を全て満たす限り、EU水平的協力協定ガイドライン第9章(訳注:サステナビリティ協定に関する章)で定義される競争上のリスクを生じさせる可能性は低いとみなすことができる。
・競合他社間の機密情報の交換を伴わない。
・開放的で、任意性や非排他性があり、商業活動に関する共同の取組を含まない。
・報告されたカーボン・フットプリントに基づくサプライヤーのランク付けを行わない。 

首席報告官による警告
 ただし、首席報告官は、申請者に対して、次の4つの注意点を指摘した。
 1. 小規模なサプライヤーへの不当な障壁とならないようにするため、プラットフォームへのアクセス条件は、客観的で、透明性があり、そして非差別的でなければならない。
 2. サプライヤーに対して、カーボン・フットプリントの計算方法や使用するデータソースを自由に選べるようにすることは、制約を軽減することによってLESSプロジェクトへの参加を促進するのみならず、測定ツール間の競争を維持するのに役立つ可能性がある。ただし、この仕組みが、科学的根拠に乏しい測定ツールが集団的に利用される事態や、小売業者がデータの比較可能性を提供する測定ツールの使用を要求できなくなる事態を招いてはならない。したがって、首席報告官は、サプライヤーや小売業者に対して、提供される情報の質、既存のツール間の競争、そして、カーボン・フットプリントを指標にして競争する可能性について警戒を怠らないように求める。
 3. 本プロジェクトの運営に注力する様々なグループや委員会への参加において、サプライヤーや小売業者は、脱炭素化戦略、カーボンインパクトや脱炭素化に関するコミュニケーション等といった機密情報の交換や競合他社間の調整を一切控える必要がある。
 4. 要請書ではLESSプロジェクトの一環としてサプライヤーに対して脱炭素化に関するコミットメントの公表を促す選択肢について言及されていたため、インフォーマルガイダンスのレターでは、公表することと同様にこの選択肢に関する議論そのものが情報交換とみなされ得ることを強調している。こうした選択肢に関する議論は商業的な性質として機密性が高く、競争を制限する可能性があるため、特に、サプライヤーが脱炭素化に関するコミットメントで競争するインセンティブを維持する観点から、慎重に評価されるべきである。

韓国

KFTC、ヴァレオ・カペックに対し中小企業の技術情報の不正使用を理由に制裁を科す

2025年10月26日 韓国公正取引委員会 公表
原文(韓国語)

原文(英語)

【概要】

1 韓国公正取引委員会(以下「KFTC」という。)は、トルクコンバーター(注1)を含む自動車部品メーカーであるヴァレオ・カペック(注2)が下請事業者の技術情報を不正に流用し、下請取引の公正化に関する法律(以下「下請公正法」という。)に違反していたことを理由に、同社に対し、是正命令及び4億1000万ウォン(約4300万円)の課徴金を賦課することを決定した。
(注1) 自動車のエンジンからトランスミッションへ動力を伝達する動力伝達装置。手動クラッチ操作なしにスムーズで連続的な変速を可能とする。
(注2) 韓国パワートレインと自動車部品のグローバルサプライヤーであるヴァレオ・バイエンとの合弁企業。トルクコンバーター市場における主要な事業者である。

2 ヴァレオ・カペックは、自社で設計し、所有する図面(注3)を下請事業者に貸与し、製造を委託する下請取引を行っていた。2019年頃、同社は貸与図面の特定の寸法を修正し、初期サンプル(注4)の供給を要求した。下請事業者は、修正後の寸法が他の部分に欠陥を生じさせることを認識し、これを解決するための新たな寸法値(以下「提案値」という。)を開発し、ヴァレオ・カペックに対して、設計変更要求レビュー(ECRレビュー)(注5)を提出した。
(注3) 元請事業者が設計・所有する図面を下請事業者に貸与し、その図面に基づいて部品の製造を委託する方式。自動車業界では一般的に「貸与図面」と呼ばれる。
(注4) 量産前に実際の生産条件下で少量生産される部品。設計仕様や要求事項を満たすか検証するために使用される。
(注5) 下請事業者が貸与図面と異なる寸法で部品を製造する必要が生じた際に作成する文書。修正寸法、修正理由、予想される影響を明記する。

3 ECRレビューのフォームには許容誤差(公差)や形状といった特定部品の寸法を記載する。記載事項には修正後の寸法や修正提案の理由も含まれる。このフォームは部品の製造方法に関連しており、不良品率の低減や量産化促進といった技術的利点をもたらす。したがって、技術的有用性と独立した経済的価値を有している。 

4 ヴァレオ・カペックは下請事業者と協議することなく、同社が独自に作成した図面において、下請事業者の提案値を使用し、さらにそれらの修正図面を第三者に提供した。

5 下請事業者は、不良品削減のため提案値を用いた製造の実現可能性をヴァレオ・カペックに確認を求めたに過ぎない。しかし、ヴァレオ・カペックは協議を一切行わず、下請事業者の提案値を自社の図面に流用し、合意された使用目的や範囲を超えて、下請事業者と競合する第三者にまで当該図面を提供した。このような行為は下請公正法の規制対象である技術情報の不正な流用に該当する。

6 本件は、下請事業者の提案値を含むECRレビューのフォームが技術情報と認定された初の事例である。下請事業者が修正を提案した場合であっても、元請事業者が下請事業者に協議することなく提案値を無断に使用したり、第三者に提供したりすることが技術情報の不正流用に該当することを確認した点で重要な事例である。

7 KFTCは、本件とは別に、ヴァレオ・カペックが下請事業者6社に対し、製造工程フローチャートや管理計画を含む生産部品承認プロセス(注6)の関連技術情報198セットについて、目的を明記した書面を交付せずに提供することを求めた事実を認定し、これに対する制裁を科した。
(注6) 国際自動車品質規格IATF16949:2016に基づき自動車メーカーに要求される製造工程における品質保証プロセス。 

8 下請公正法は、元請事業者が正当な理由なく技術情報を要求することを禁止し、技術情報を要求する際には目的や権利帰属などの重要事項を事前に協議し、合意を得た上で、書面で行うことを義務付けている。 
 これは中小企業の技術情報に関する権利を明確化する最低限のセーフガードとして機能している。KFTCは、中小企業の競争力を損なう不正な技術流用に対し、今後も厳しく監視し、措置を講じていく。これにより中小企業の技術力とノウハウが市場で公正に評価されることを確実なものとする。

 

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