米国

司法省,連邦地方裁判所が,地方債を発行して得た資金に係る投資契約等に関する入札談合等について,BOA社の元幹部に対し禁錮26か月を命じる判決を下した旨公表

2015年5月18日 司法省 公表
原文

【概要】

 司法省は,地方債収入に係る投資契約及び地方財政に係る契約の入札について共謀し,詐欺を計画したとして,1998年から2002年の間,Bank of America(以下「BOA社」という。)の地方債デリバティブ取扱部署の責任者であった元幹部に対し,ノースカロライナ州西部地区連邦地方裁判所が禁錮26か月を命じる判決を下したことを公表した。
 同人は,早ければ1998年から2006年にかけて,他の金融機関及び仲介業者と共謀して複数の詐欺行為を行っていたとする有罪答弁を2014年2月10日に行っている。
BOA社及び他の金融機関は,米国全域の州政府,郡政府等の地方政府・関係機関及び非営利団体に対し,いわゆる投資契約を提供する「受託機関」(provider)業務を行っていた。これらの公的機関は,特に公共事業の資金を調達するために発行した地方債収入を主な資金源として,投資を行っていた。公的機関は,通常,仲介業者1社と契約して,投資支援や,(投資業務の)受注者となる金融機関を決めるための競争入札を行わせている。
 同人は,投資契約及び他の地方財政に係る契約について,BOA社の落札数及び利益を高めるために,地方債等の仲介業者(Rubin/Chambers Dunhill Insurance Services Inc.,通称CDR Financial Products(以下「CDR社」という。))及び他の事業者と共謀を行った。同人は,CDR社が行った入札手続の不正操作を利用して,他の金融機関には,落札できない入札価格で応札させ,投資契約の受託機関業務を落札したもので,これは米国財務省の法令で明白に禁止されている。その結果,関係する金融機関は,投資契約及び他の地方財政に係る契約について,人為的に定められた価格で落札した。また,同人は,いくつかの投資契約及び他の地方財政に係る契約の入札において,要請を受けた場合は意図的に落札し得ない入札価格で応札した。時には,CDR社及び他の共謀する仲介業者に対して,報酬を支払う旨合意し又は手配した。
 同人及び共謀者は,入札談合を行うと同時に,地方自治体及び米国内国歳入庁(IRS)が依拠する証明について,多くの意図的な虚偽証明を提出した。これらの虚偽証明は,入札手続が米国財務省の法令に則って競争的手法で行われていたと偽るものであった。地方自治体は,これらの虚偽証明による虚偽情報に基づき,BOA社及び他の金融機関と契約することになった。また,虚偽証明は,米国財務省に支払われるべき税収(revenue)についての,米国内国歳入庁の徴収能力を妨げた。
 司法省反トラスト局が地方債に係る審査を行った結果,これまで同人を含む個人17名及び法人1社が,有罪判決を下されるか又は有罪答弁を行っている。

司法省,米シティ社,米JPモルガン・チェース社,英バークレイズ社,英RBS社及びスイスUBS社の5行が,外国為替市場等における不正操作事件に関与したことを認め,司法省に対し総額25億ドルの罰金支払いに合意し,UBS社が,非訴追合意に違反してLIBOR等の不正操作事件に関与したことを認め,司法省に対し2億300万ドルの罰金支払いに合意した旨公表

2015年5月20日 司法省 公表
原文

【概要】

 司法省は,Citicorp(以下「シティ社」という。),JPMorgan Chase & Co.(以下「JPモルガン・チェース社」という。),Barclays PLC(以下「バークレイズ社」という。)及びThe Royal Bank of Scotland plc(以下「RBS社」という。)が,外為スポット市場で売買される米ドル(以下「ドル」という。)及びユーロの価格操作を共謀して行ったとして有罪答弁に合意するとともに,総額25億ドル以上の罰金を支払うことに合意した旨,及びUBS AG(以下「UBS社」という。)が,ロンドン銀行間取引金利(以下「LIBOR」という。)事件において合意した2012年12月の非訴追合意に違反し,LIBOR及び他の指標金利の不正操作を行ったとして有罪答弁に合意するとともに,2億300万ドルの罰金を支払うことに合意した旨公表した。
 シティ社,JPモルガン・チェース社,バークレイズ社及びRBS社のユーロ・ドル担当のトレーダーは,2007年12月から2013年1月にかけて,自身を「ザ・カルテル」のメンバーと称して,インターネット上の専用チャットルームと暗号を用いて,為替レートの指標を不正に操作していた。これらの指標となるレートは,主として,欧州中央銀行の午後1時15分時点での仲値(fix)及びロイター社が発表する世界市場の午後4時時点での仲値といった毎日の2つの主要な仲値を踏まえて決定される。第三者機関は,この時間の取引データを収集して毎日の仲値レートを算出し公表する。この仲値レートは,多くの大口顧客向け注文価格に用いられる。「ザ・カルテル」のメンバーであるトレーダーは,ドル・ユーロの取引量を調整することで,午後 1時15分時点の仲値及び午後4時時点の仲値に基づき決定する指標レートを操作し,メンバー各行の利益の増加を図っていた。
 また,これらのトレーダーは,ユーロ・ドル・レートを不正に操作するためにも,インターネット上の専用チャットルームを利用していた。「ザ・カルテル」のメンバーは,共謀者が保有する建玉(open positions)にとって為替レートが不利な方向へ動かないように,ユーロ・ドルの売買を差し控えることに合意し,ユーロ・ドルの為替レートを不正に操作した。トレーダーは,特定の時間に売買しない旨合意することで,外国為替市場での需給を均衡させてFX市場の競争を抑え,互いに建玉のヘッジを図った。
 これら4行に対する罰金は次のとおり。
・ シティ社は,早ければ2007年12月から2013年1月にかけて関与したとして,9億2500万ドルの支払に合意した。
・ バークレイズ社は,早ければ2007年12月から2011年7月にかけて及び2011年12月から2012年8月にかけて関与したとして,6億5000万ドルの支払に合意した。
・ JPモルガン・チェース社は,少なくとも早ければ2010年7月から2013年1月にかけて関与したとして,5億5000万ドルの支払に合意した。
・ RBS社は,少なくとも早ければ2007年12月から少なくとも2010年4月にかけて関与したとして,3億9500万ドルの支払に合意した。
 さらに,バークレイズ社は,同社の外為取引,販売行為及び共謀行為が連邦法上の犯罪に当たり,これがLIBOR及び他の指標金利に係る不正操作事件において合意した2012年6月の非訴追合意における主要な条件に違反した旨を認め,追加して6000万ドルの罰金を支払う旨合意した。
 次に,司法省は,特定の外為市場におけるUBS社の共謀行為だけでなく,特定の外為市場取引における同社の不正為替取引及び販売行為が,LIBOR事件において合意した2012年12月の非訴追合意に違反すると判断した。司法省が,UBS社の行為が当該合意に違反することを明らかにしたことを受け,UBS社は,LIBOR及び他の指標金利の不正操作に関連した電信詐欺に関与していたとして有罪答弁に合意するとともに,2億300万ドルの罰金の支払に合意した。
 UBS社は,LIBORに関する非訴追合意文書に署名した後,特定の顧客向けの外為取引において,顧客には黙って利ざや(markup)を上乗せする等の不正為替取引及び販売行為に従事していた。UBS社のトレーダー及び販売担当者は,特定の取引における顧客に対し,実際は利ざやを上乗せしているにもかかわらず,上乗せしていないと事実を曲げて伝えていた。ある時は,UBS社のトレーダー及び販売担当者は,これらの利ざやを顧客に知られないようにするため手信号を用いていた。さらにある時は,UBS社の特定のトレーダーは,顧客に知られないうちに利ざやを上乗せするため,顧客が指定した価格と異なる指値注文(limit order)を行っていた。加えて,UBS社のFXトレーダーは,外為スポット市場において販売業務を営む他の銀行と共謀して,ドル・ユーロの売買取引に関し競争を制限する合意を行った。UBS社は,2011年10月から少なくとも2013年1月にかけて,本件共謀行為に参加していた。

連邦取引委員会,pay-for-delay合意を行っているとして提訴していた製薬会社セファロン社と和解し,同社が12億ドルの支払に合意した旨公表

2015年5月28日 連邦取引委員会 公表
原文

【概要】

 連邦取引委員会(以下「FTC」という。)は,Cephalon, Inc.(以下「セファロン社」という。)が大ヒット商品(blockbuster)となった睡眠障害治療薬Provigil(以下「プロビジル薬」という。)に対するジェネリック薬の競争を違法に阻止したとして提起していた訴訟について,和解に達した旨公表した。本件和解によって,セファロン社の違法行為によって医薬品卸売業者,薬局及び保険業者等の購入者が支払い過ぎた分に対する補償として,2012年にセファロン社を買収したTeva Pharmaceutical Industries, Ltd.(以下「テバ社」という。)による,総額12億ドルの支払いが確保されることになる。
 また,テバ社は,本件和解の一環として,セファロン社がプロビジル薬の価格を人為的に引き上げるために行った,この種の反競争的特許和解について,禁止することに合意した。テバ社は,世界最大のジェネリック薬製造業者であり,今回の禁止は,米国におけるテバ社の全事業活動に適用される。
 プロビジル薬は,睡眠時無呼吸,ナルコレプシー(発作性睡眠)及び交代勤務睡眠障害といった患者の過剰な眠気の治療用に承認された処方薬である。ジェネリック薬が参入する前年において,米国におけるプロビジル薬の売上高は10億ドル超であった。
 本件和解は,2005年末及び2006年初頭にジェネリック薬製造業者4社と一連の合意を締結したことにより,セファロン社がプロビジル薬の独占権を不法に保護したとして提訴したFTCの2008年訴訟に端を発したものである。FTCは,セファロン社がジェネリック薬製造業者に対し特許侵害訴訟を提起した後,当該特許訴訟を取り下げるに当たり,当該製造業者に対し総額3億ドル超を支払い,2012年4月までの6年間,ジェネリック薬の市販を控えさせたと主張していた。
 この種の和解,つまり,ジェネリック薬製造業者が,一定期間,自社製ジェネリック薬を市販しない旨合意して,ブランド薬製造業者がジェネリック薬製造業者に対し,金銭上の形式であるか否かを問わず報酬を与える旨の和解は,一般的に「リバース・ペイメント特許和解」と呼ばれている。2013年に,Actavis事件において,最高裁判所は,リバース・ペイメントが反トラスト法に違反し得る旨判決を下した。
 本件和解がペンシルバニア東地区連邦地方裁判所に承認されれば,今回の事件は終結することとなる。また,本件和解は,リバース・ペイメント特許和解が,米国の事業活動の一般的な規範たる反トラスト法制に基づき判断されることになる旨を明らかにしたActavis事件の2013年最高裁判決以降,FTCが和解まで漕ぎ着けた初めての事件である。

連邦取引委員会のデビー・ファインスタイン競争局長,製薬の特許権譲渡はハート・スコット・ロディノ法に基づく届出対象資産とみなすFTCの規則制定を支持する旨の判決を受け,声明を公表

2015年6月10日 連邦取引委員会 公表
原文

【概要】

 連邦取引委員会(以下「FTC」という。)のデビー・ファインスタイン競争局長は,製薬の特許権譲渡は,たとえ譲渡者が製造に関する特許権の一部を引き続き保有していたとしても,ハート・スコット・ロディノ法(以下「HSR法」という。)に基づく届出対象資産とみなすとしたFTCの2013年11月の規則制定について支持する旨のコロンビア特別区巡回区連邦控訴裁判所の2015年6月9日の判決を受け,次のとおり声明を公表した。
 「今回の規則制定は,製薬分野における競争を保護するという我々の取組において重要である。連邦控訴裁判所がこの規則制定を支持したことを喜ばしく思う。
 HSR法は,米国の商取引に影響を及ぼす,一定規模以上の企業結合案件のほとんどについて,FTC又は司法省の審査を受けることを義務付けている。いずれかの当局は,その案件が実質的に競争を減殺し得ると認定した場合,これを阻止する訴訟を提起することができる。
 FTCの2013年11月の規則制定は,HSR法を修正し,製薬業界で一般的に用いられている特許譲渡契約にHSR法がどのように適用されるかについて明確化したものであり,後に,この規則について米国研究製薬工業協会が異議申立てを行った。
 今回の連邦控訴裁判所の判決は,米国研究製薬工業協会を支持する略式判決(summary judgment)を否定し,FTCを支持する内容のコロンビア特別区連邦地方裁判所2014年略式判決を支持するものである。」

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