米国

司法省,電子書籍に係る価格協定事件に関し,アップル社の法的責任を認める第2巡回区控訴裁判所の判決を受け,ビル・ベーア反トラスト局長の声明を公表

2015年6月30日 司法省 公表
原文

【概要】

 司法省のビル・ベーア反トラスト局長は,Apple Inc.(以下「アップル社」という。)事件に係る連邦第2巡回区控訴裁判所の判決を受け,次のとおり声明を公表した。
 「我々は,今回の裁判所の判決を喜ばしく思う。今回の判決は,価格協定の共謀において,どんなに特別な役割や参加する理由があったとしても,事業者がこのような共謀に故意に参加することが違法であることを認めた。アップル社及び被告出版社は,電子書籍の販売において価格競争の排除を企図したことから,消費者は,多くの電子書籍により高い価格を支払うことを余儀なくされた。」
 司法省が提訴したアップル社に対する裁判は,ニューヨーク南地区連邦地方裁判所において2013年6月3日に開始した。同裁判所は,2013年7月10日,故意に共謀に加わり,出版社に共謀を促したアップル社の法的責任を認める意見及び命令を発出し,2013年9月5日,アップル社に対し,当該共謀を通じて締結した契約と同様の電子書籍販売契約を被告出版社と新たに締結すること及び最恵国待遇条項(most- favored-nations provisions)を含む電子書籍販売契約を締結することを禁じる最終判決を下した。

連邦取引委員会,pay-for-delay合意(リバース・ペイメント特許和解)における非金銭的支払について,金銭的支払でないことを理由に反トラスト法の適用を免れる旨判示した地方裁判所の判決の棄却を求め,連邦第1巡回区控訴裁判所に対して意見書を提出

2015年6月19日 連邦取引委員会 公表
原文

【概要】

 連邦取引委員会(以下「FTC」という。)は,リバース・ペイメント特許和解事件において,ジェネリック薬の参入を遅らせるために,ブランド薬製造業者がジェネリック薬製造業者に対して行った非金銭的支払について,金銭的支払でなかったことを理由に反トラスト法の適用を免れるとする主張を支持した地方裁判所の判決の棄却を求め,連邦第1巡回区控訴裁判所に対して意見書(Amicus Brief)を提出した。
 FTCが医薬品製造業者数社に対し審査したpay-for-delay事件に端を発したActavis事件に係る重要な2013年判決において,最高裁判所は,リバース・ペイメント特許和解について,反トラスト法の適用を免れないものであり,伝統的な反トラスト法の要件に基づいて審査されるべきであるとした。
 本件は,ジェネリック製造業者数社が原告となり,Warner Chilcott(以下「ワーナー・チルコット社」という。)の経口避妊薬Loestrin24の特許に対して提訴し,当該薬のジェネリック薬を販売しようとしたのが発端であったが,同製造業者らはその後,ワーナー・チルコット社が様々な非金銭的形式での補償を提供することと引換えに,特許訴訟を取り下げることに合意した。ロードアイランド州連邦地方裁判所は,2014年9月,Loestrin24に関して疑われているようなリバース・ペイメント特許和解は,金銭的支払が行われていない限り,Actavis事件で確立した基準の下では反トラスト法の適用を免れる旨判示した。
 FTCは,提出した意見書において,Actavis事件の判決は金銭的支払と非金銭的支払の双方に適用されるものであり,金銭的支払のみを反トラスト法の適用対象と限定することは,経済学的な裏付けがない旨主張している。ブランド薬製造業者は,非金銭的支払により特許訴訟を和解に持ち込むことにより,金銭的支払に基づく和解と少なくとも同程度の独占的利益を維持し,共有することができる。FTCは,Lamictal事件を審理している連邦第3巡回区控訴裁判所に対して同様の意見書を提出しているが,未だ保留となっている。
 また,FTCの意見書によると,ジェネリック薬製造業者が法令で定められているジェネリック薬に係る6か月間の排他的販売期間を享受できたかもしれないときに,ブランド薬製造業者によってブランド薬の「公認ジェネリック薬(authorized generic) ※1」を導入しないこととする旨の合意は,競争を阻害し小売価格を引き上げうるとしている。排他的期間内における公認ジェネリック薬との競争がなくなることによって,ジェネリック薬の本格的な競争が開始するまでは,ジェネリック薬の価格をより高くする傾向がある。
 FTCは,ジェネリック薬製造業者がそのジェネリック薬を発売するに先立って競争を控えるという約束及びジェネリック薬製造業者が一たび市場に参入すれば公認ジェネリック薬を通じた競争は控えるというブランド薬製造業者の約束は,相互に競争しない合意であることを示していると指摘した。そのような市場分割は,長期間反トラスト法に違反してきたものである。

※1 公認ジェネリック薬(authorized generic)とは,ブランド薬製造業者からライセンスを受けたジェネリック薬製造業者が製造するジェネリック薬のことであり,特許が切れた後に,ジェネリック薬製造業者が製造するジェネリック薬をGEと呼ぶのに対し,当該ジェネリック薬はAGと呼ばれる。

ページトップへ