米国
米国司法省,化学会社ダウ及びデュポンの企業結合計画の禁止を求め民事提訴するとともに,一部資産の譲渡を要請する和解案を提出
2017年6月15日 米国司法省 公表
原文
【概要】
米国司法省は,化学会社ダウ及びデュポンがおよそ1300億ドルの価値がある企業結合計画を進めるためには,複数の農業用薬剤及び2種類の石油化学製品を譲渡する必要がある旨公表した。
司法省反トラスト局は,アイオワ,ミシシッピー及びモンタナの3州の司法長官室とともに,コロンビア連邦地方裁判所に対して当該計画の差止めを求めて民事提訴するとともに和解案を提出した。同裁判所が和解案を承認すれば,司法省の競争上の懸念は解消されることになる。
司法省が提出した訴状によれば,ダウ及びデュポンは,冬小麦用の広葉除草剤及び咀嚼性害虫用殺虫剤の市場において,数少ない重要な競争業者のうちの2社である。具体的には,デュポンが生産するフィネス(Finesse)は冬小麦用の広葉除草剤市場における有力な商品であるところ,ダウは,フィネスに対抗するために,最近キュレックス(Quelex)という新製品を発売したところである。また,デュポンが米国市場でアルタコル(Altacor),コラーゲン(Coragen)及びプレベイソン(Prevathon)の商品名で販売するリナキシピル(Rynaxypyr)系の咀嚼性害虫用殺虫剤は市場で最も売れている商品であり,ダウが販売するメトキシフェノジド系(methoxyfenozide)及びスピノシン系(spinetoram)の同殺虫剤と競合している。司法省は訴状の中で,ダウとデュポンの間で競争が消失することによって,これら製品の価格は上昇し,(売買)契約の条項は(買手に)不利なものとなり,これらの製品に関して研究開発を行う誘因の減退に繋がると主張している。
さらに,司法省は,両社は食料品の包装などのプラスチック応用製品の重要な原料である酸共重合体及びアイオノマー樹脂の供給業者でもあるところ,これら製品の顧客は,結合後の企業による価格の引上げを受け入れざるを得なくなるだろうと主張している。
提出された和解案で司法省は,デュポンに対して,同社の有力な製品である除草剤のフィネス及びリナキシピル系の殺虫剤に係る事業を同省が承認した買手に譲渡する必要があるとしている。司法省は,米国内における年間の売上げが1億ドルを超えるこれらの製品が譲渡されることで,冬小麦用の広葉除草剤市場及び咀嚼性害虫用殺虫剤市場における競争が維持されるだろうとしている。更に司法省は,両社の企業結合が酸共重合体市場及びアイオノマー樹脂市場における競争に与える危害を解消するため,ダウに対して,米国におけるこれら2つの事業を同省が承認した買手に譲渡することを求めている。
司法省反トラスト局は欧州委員会と,本企業結合計画に対する各々の審査の全期間を通じて緊密に連携してきた。2017年3月27日,欧州委員会は,多様な製品における競争上の懸念を解消するために一定範囲の事業を譲渡することを条件に本件計画を承認した。この譲渡条件には,反トラスト局が和解案で譲渡を命じた製品が含まれるだけでなく,デュポンが持つ,農業用薬剤の開発に係る資産の譲渡も含まれている。本企業結合が農業用薬剤の研究開発活動に与える影響については,欧州委員会と同様,反トラスト局も審査した。しかし,米国の市場状況を踏まえれば,現時点において欧州委員会と同様の結論は出されなかった。
※ダウ及びデュポンの企業結合計画に関するその他競争当局の動きは以下のとおり。
・4月7日,韓国公正取引委員会は,酸共重合体の開発・生産・販売に係る各事業部門の売却を条件に承認した旨公表
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・6月8日,オーストラリア競争・消費者委員会は,当事会社が各国の当局に提出した問題解消措置により,競争上の懸念は解消されるとして,同計画を承認した旨公表
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・6月27日,カナダ競争局は,除草剤事業及び研究開発事業の大部分並びに特殊プラスチック事業の売却を条件に承認した旨公表
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