米国
米国司法省は,携帯端末の電子SIMの規格の刷新に関連し,GSM協会に対し,ビジネスレビューレターを発出
2019年11月27日 米国司法省 公表
原文
【概要】
米国司法省反トラスト局(以下「反トラスト局」という。)は,2019年11月27日,約2年にわたる,移動通信事業者の事業者団体であるGSM(Groupe Speciale Mobile)協会による規格の標準化活動に対する調査を終了したことを公表した。反トラスト局の調査により,近年,GSM協会が携帯端末における電子SIMの設計を誘導するため,モバイルコミュニケーション産業における影響力を行使していたことが明らかとなった。本件調査を踏まえ,GSM協会は,モバイルコミュニケーション産業の非加盟業者からの意見をより組み込んだ新たな規格の標準化手続案を作成した。この新たな規格の標準化手続によって,携帯端末の顧客にとって競争上の恩恵が創出される可能性がより高くなる。
GSM協会は,反トラスト局からのビジネスレビューレターの要請に応え,当該新手続を採用する意図を表明した。本件調査の終了後,反トラスト局は,同日,ビジネスレビューレターを発行したところ,従前の手続及びそれに伴う一部の標準化に係る条項について懸念を示した上で,変更案によって上記懸念に適切に対処していると思われると結論付けている。
モバイルコミュニケーション産業においては,単一のモバイルネットワークに接続されるようにあらかじめ設定された着脱可能なプラスチック製の伝統的なSIMカードから,革新的な電子SIMに移行し始めた。当該電子SIMはSIMカードと同一の機能を果たすが,端末に組み込まれており,異なる移動通信事業者のモバイルネットワークに接続するため,遠隔でのプログラミングや再プログラミングをすることが可能である。モバイル産業では,この過程をリモートSIMプロビジョニング(Remote SIM Provisioning(以下「RSP」という。))と称している。
反トラスト局の調査によれば,GSM協会及び同協会に加盟する移動通信事業者は,ネットワーク間の競争を制限するために設計された規定を含むRSPの仕様を定めるため,自らが有利となるような不公平な規格の標準化手続を採用していた。
米国司法省は,ジェネリック医薬品に係る価格カルテル及び顧客割当てを行ったRising社との間で訴追延期を合意した旨公表
2019年12月3日 米国司法省 公表
原文
【概要】
2019年12月3日,米国司法省は,ニュージャージー州に本社を置くジェネリック医薬品製造業者Rising Pharmaceuticals社(以下「Rising社」という。)が,ジェネリック医薬品に係る価格カルテル及び顧客割当てを行ったため,起訴したと発表した。
同日,フィラデルフィアに所在するペンシルベニア東部地区連邦地方裁判所に提出された訴状によると,Rising社は,2014年4月頃から少なくとも2015年9月まで,ジェネリック医薬品の競合業者やその役員とともに,高血圧治療薬Benazepril HCTZについて,価格カルテル及び顧客割当てに参加した。今回の起訴は,米国司法省反トラスト局(以下「反トラスト局」という。)がジェネリック医薬品業界について捜査中の事案のうち4件目である。以前の事案は,役員2名が反トラスト法違反で起訴され,罪を認めた事案,Heritage Pharmaceuticals社が起訴され,反トラスト局と訴追延期の合意(deferred prosecution agreement)を結んだ事案である。
同日,反トラスト局はRising社に対する制裁金額を決定する訴追延期の合意についても公表した。本件合意に基づき,同社は,Benazepril HCTZについて,価格カルテル及び顧客割当てを行ったことを認めている。また,本件合意に基づき,同社は,本件行為の被害者に支払うべき原状回復額について1,543,207ドルが適切であると合意している。米国司法省民事局との別個の合意においては,Rising社による反トラスト行為に基づく虚偽請求取締法違反に係る損害賠償額について,同社に対し約110万ドルの支払を要求しているところ,今回の訴追延期の合意においては,当該金額を考慮して,原状回復の金額を相殺し,438,066ドルとすることを求めている。さらに,本件合意は,Rising社に150万ドルの罰金の支払も求めているところ,当該金額は,連邦量刑ガイドラインに基づく約360万ドルから,Rising社の財務状況及び清算を踏まえ,減額されている。本件訴追延期合意及び民事和解合意はいずれも,破産裁判所の承認が必要となる。承認された場合には,訴追延期の合意は,連邦地方裁判所に提出される。
さらに,訴追延期の合意に基づき,Rising社は反トラスト局において進行中の捜査に十分協力することに合意した。Rising社が当該合意に従うことを条件に,米国は3年間又は進行中の破産手続が終了するまでのいずれか早い時期まで,Rising社の起訴を延期することとなる。ただし,当該合意は,裁判所によって承認されるまでは最終的なものではない。
反トラスト局は,個々の事実や本件の事情を踏まえ,Rising社と本件訴追延期の合意を結んだ。当該事実及び事情において,本件合意は特に現在までの同社の十分かつ継続的な捜査への協力について確認しており,そこには,今回の起訴及び本件合意において確認された医薬品以外の医薬品に関連する反トラスト法違反に係る情報の開示も含まれている。本件合意によると,当該協力により,他のジェネリック医薬品製造業者間の反トラストの共謀について捜査を進展させることが可能となる。また,本件合意において確認された他の事実や事情には,Rising社による原状回復に係る支払の合意や有罪判決(有罪答弁を含む。)がRising社の進行中の破産手続や清算を大幅に遅らせることになる可能性があるということも含んでいる。本件合意は,重大な違反が発生した場合には,Rising社がその犯罪行為に責任を負い,米国が起訴を行う能力を維持することを保証している。
今回の起訴は,反トラスト局が,米国郵政公社監察総監室,連邦捜査局ワシントン支局及びペンシルベニア州西部地区連邦検事局とともに行っている,ジェネリック医薬品業界における価格カルテル,入札談合及びその他の反競争的行為に係る継続中の反トラスト捜査の結果である。