2020年12月

米国

米国連邦議会下院反トラスト小委員会は,「デジタル市場における競争に関する調査」報告書を公表

2020年10月6日 米国連邦議会下院反トラスト小委員会 公表
原文 原文【報告書本体】

【概要】

 本日,米国連邦議会下院司法委員会反トラスト法,商法及び行政法に関する小委員会(以下「反トラスト小委員会」という。)は,16か月に及ぶデジタル経済における競争の状況,特にApple,Amazon,Google及びFacebook(以下「4社」という。)の支配並びにその事業慣行によって生じている課題に関する調査結果を公表した。
 調査報告書は,「デジタル市場における競争に関する調査-多数派スタッフによる報告及び提言-」と題され,合計400頁超であり,議会における7回の公聴会,提出された130万点近くの内部文書等,38名の反トラスト法の専門家からの意見,240以上の市場参加者,調査対象となったプラットフォーム事業者の元従業員等からの聴取りなどの調査の成果である。
 米国連邦議会下院司法委員会のナドラー委員長及び反トラスト小委員会のシシリン委員長は,以下の共同声明を発出した。
「今日,4社は,経済の広範にわたってそれぞれが相当な市場支配力を有している。近年,各社は反競争的な方法で市場支配力を利用・拡大している。我々の調査を踏まえると,議会や反トラスト執行当局には,競争を回復し,イノベーションを改善し,民主主義を保護するために行動する明確かつ差し迫った必要性があることに疑いの余地はない。本報告書は,当該目標を達成するためのロードマップである。」
 本報告書は,4社の市場支配力によって生じている課題の概要を説明した上で,(1)デジタル経済における競争の回復,(2)反トラスト法の強化,(3)反トラスト法の執行の活性化に向けて,一連の改善策を提供している。
 その改善策は,以下のとおりである。

  •  プラットフォーム事業者の構造分離(当該プラットフォームに係る事業と隣接する事業の実施を禁止)
  •  プラットフォーム事業者による自社優遇の禁止
  •  相互互換性及びデータ・ポータビリティの確保のための,プラットフォーム事業者による競合するネットワークと互換性を有するサービスの提供の義務付け
  •  プラットフォーム事業者による,市場参加者に対する適正手続の義務付け
  •  競争を減殺する戦略的買収を禁ずる基準の確立
  •  デジタル経済の課題に対応するための,クレイトン法,シャーマン法及び連邦取引委員会法の改善
  •  契約における反競争的な強制仲裁条項(訳注:裁判外での紛争解決を強制するもの)の禁止
  •  連邦取引委員会及び司法省反トラスト局の強化
  •  反トラスト執行当局の一層の透明性及び民主化の促進
 

米国司法省は,独占的地位を維持しているとしてGoogleを提訴

2020年10月20日 米国司法省 公表
原文

【概要】

 本日,司法省は,11州の司法長官とともに,Googleが検索市場及び検索連動型広告市場における反競争的かつ排他的な行為を通じて,同社の独占的地位を違法に維持しているとして,これを阻止し,競争上の阻害を是正するため,コロンビア特別区連邦地方裁判所に対して,反トラスト民事訴訟を提起した。今回の提訴に参加した11州は,アーカンソー,フロリダ,ジョージア,インディアナ,ケンタッキー,ルイジアナ,ミシシッピ,ミズーリ,モンタナ,サウスカロライナ及びテキサスの各州である。
 司法省Jeffrey A. Rosen副長官は,以下のとおり述べた。
「1974年のAT&T,1998年のMicrosoftに対する歴史的な反トラスト訴訟と同様に,今回,司法省はデジタル市場における競争を回復し,次のイノベーションを確保するため,Googleの行為に対してシャーマン法を執行する。」
 Googleは,1兆ドルの市場価値を有し,地球上で最も莫大な財産を有する企業の1つであり,世界中の数十億人のユーザーと数え切れない広告主にとって,インターネットに接続する際の独占的な「ゲートキーパー」となっている。Googleは,長年にわたり,米国における全ての検索クエリ(訳注:検索時に入力する言葉)のうちの90%近くを占め,反競争的な戦略を活用し,検索市場及び検索連動型広告市場における独占を維持し,拡大してきた。
 訴状によると,Googleは,数十億台に上る世界中の携帯端末及びコンピューターについて,自社の検索エンジンをデフォルトの検索エンジンとして搭載するよう要求し,多くの場合,競合事業者の検索エンジンをプリインストールすることを禁止することにより,ユーザーが検索エンジンやインターネットにアクセスするための主要な手段を制限する一連の排他的契約を締結していた。特に,Googleは,以下のとおり,検索市場及び検索連動型広告市場における独占を不当に維持している。

  •  競合する検索サービスのプリインストールを禁止する排他的契約の締結
  •  消費者の選好にかかわらず,携帯端末の主要な位置に自社の検索アプリケーションをプリインストールすることを強制し,削除できないようにする抱き合わせなどの取決めの締結
  •  Appleとの間で,SafariブラウザなどのAppleの検索ツールにおいて,Googleの検索エンジンをデフォルトの検索エンジンとする旨の長期契約の締結
  •  独占により得た利益を活用し,端末上の検索エンジン,Webブラウザ及びその他の検索アクセスポイント(訳注:ユーザーが入力したキーワードに応じて,検索エンジンが稼働する場所)において優遇されるようにすることによる,独占を維持し強化するサイクルの形成

 これらの行為を含む様々な反競争的行為は,競争及び消費者に害を与えるとともに,新たな革新的な事業者が成長し,競争し,Googleの行為を正す能力を低下させている。
 反トラスト法は,自由な市場経済を保護し,独占者による反競争的行為を禁じている。また,同法は,司法省に対して,同法違反を是正し競争を回復するため,提訴する権限を与えており,司法省は,過去にStandard OilやAT&Tなど,米国経済の土台を支える重要な産業において独占者が関与した著名な事案について,1世紀以上にわたって訴訟を提起してきた。数十年前(訳注:1998年),司法省が提訴したMicrosoftに係る事件においては,高度な技術を有する独占者が,自社の製品をデフォルトとしてプリインストールするよう要求し,競合事業者の流通チャネルを遮断する反競争的契約を締結した行為が,反トラスト法に違反することが認められた。今回の訴状においても,Googleが自社の優位性を維持し,拡大するため,Microsoftと同様の契約を利用していると主張している。
 さらに,訴状によれば,Googleの反競争的行為は,競争及び消費者に有害な影響を及ぼしている。Googleは,いかなる競合事業者も重要な流通手段及び市場規模を獲得できないように検索市場から締め出し,米国における検索クエリの競争を排除した。Googleの行為は,検索市場における競争を制限することにより,検索の質を低下させ(プライバシー,データ保護及び消費者データの使用などの側面を含む。),検索における選択肢を減らし,イノベーションを妨げることにより,消費者に害を及ぼした。また,Googleは,検索連動型広告市場における競争を抑制することにより,競争的な市場であった場合よりも高額な料金を広告主に請求し,提供するサービスの品質を低下させている。司法省は,今回の提訴を通じて,Googleの反競争的行為を阻止し,米国の消費者,広告主及びインターネット経済に関わる事業者全てのために,競争を回復しようとしている。
 Googleは,デラウェア州法に基づき設立された有限責任会社であり,カリフォルニア州マウンテンビューに本社を置く。同社は,同じくデラウェア州法に基づき設立され,カリフォルニア州マウンテンビューに本社を置く上場企業であるAlphabet.Incの子会社である。

 

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