米国

DOJは,大手決済業者であるVisaによるフィンテックアプリ事業者であるPlaidの買収計画について,シャーマン法第2条及びクレイトン法第7条違反の疑いで民事提訴

2020年11月5日 米国司法省 公表
原文 

【概要】
 司法省反トラスト局(以下「反トラスト局」という。)は,VisaによるPlaidの買収計画について,差止めを求めて,カリフォルニア州北部地区連邦裁判所に民事提訴した。Visaは,オンラインデビッドサービス市場において独占的地位にある一方,Plaidは,有力なフィンテック企業として,Visaの独占的地位を脅かし得る決済プラットフォームの開発を行っていた。
 反トラスト局の訴状によると,Plaidがフィンテックアプリの開発事業者に対し,フィンテックに関連する極めて革新的なアプリ開発を促進することによって,同開発事業者が,消費者の同意の下,様々な金融口座にアクセスすることが可能となり,支出データの蓄積,口座残高の確認及び個人の金融情報に関する認証を行うことが可能となった。また,Plaidは,2億人に上る消費者の銀行口座及び10,000の銀行とアクセスでき,多くのフィンテックアプリの利用者の金融データを集積することで,米国内において金融データの蓄積を行う最大手企業となっている。さらに,Plaidは,こうした銀行口座や銀行へのアクセスを通じて,Visaと競合することとなる,銀行口座とリンクした決済ネットワークシステムの構築を計画している。当該ネットワークシステムを通じて,消費者は,Visa等が提供するデビットカードを介さず,Plaidが提供する銀行口座情報(bank credentials)を利用して,自らの銀行口座から購入商品に係る決済を直接行うことができる。銀行口座や銀行とのアクセス及び決済プラットフォームに係る技術によって,決済市場に参入したPlaidは,Visaの独占的地位を脅かし得る比類なき存在として位置付けられる。
 反トラスト局の主張によれば,VisaのCEOは,本件買収計画について,同社の米国におけるデビットカード事業に対する脅威を未然に防ぐための「保険証書(insurance policy)」であると認識していた。また,同CEOは,本件買収計画を正当化したうえで,「Visaの米国におけるデビットカード事業は危機的状況にあり,これを守るための事業戦略を常に打ち出していかなければならない」と主張し,仮にVisaによる買収が行われなければ,Plaid(又は同社を買収したVisaにとっての競争事業者)が,2024年までに,Visaの米国におけるデビッド事業において3億から5億ドルの損失を生じさせ得る脅威となることを懸念していたとされる。
 反トラスト局は,新興の競争事業者に対する本件買収計画は,米国の事業者及び消費者から,Visaに代わる革新的な選択肢を奪い,また,将来の革新的な事業者に対する参入障壁を高めるものであるとして,シャーマン法第2条及びクレイトン法第7条の規定に違反する。

 

米国司法省は,調停の利用に関するガイダンス及び中小企業向けポータルサイトの立上げを公表

2020年11月12日 米国司法省 公表
原文 原文<調停ガイダンス> 原文<Antitrust and Your Small Business>

【概要】
 米国司法省反トラスト局(以下「反トラスト局」という。)は,下記の2件の公表を行った。

  1. 反トラスト局は,調停(arbitration)の利用に関するガイダンスの改訂版を公表した。同ガイダンスでは,反トラスト局が調停の申請を行うことが有益であると考えられる事件を判別するための選択基準について言及されている。また,同ガイダンスでは,反トラスト局がNovelisとAleris Corporationとの合併事案に係る民事訴訟を解決するために,調停プロセスを用いた事例が紹介されている。このほか,調停における合意,調停プロセス,調停人の選択,調停人に対する報酬及び費用負担の転換並びに反トラスト局で調停業務を担当するスタッフ向けの研修に関する説明についても言及されている。
  2. 反トラスト局は,中小企業の経営者に対し,反競争的行為に関する情報及びガイダンスを提供する新規のポータルサイト「Antitrust and Your Small Business」を立ち上げた。同ポータルサイトには,これまで反トラスト局が公表した「中小企業を害する潜在的な反競争的行為を認識するためのガイダンス」,「刑事的制裁の対象となる反トラスト法違反行為の回避及び報告に関するガイダンス」,「リニエンシーの申請に関するガイダンス」,「労働市場における反競争的行為の防止に関するガイダンス」,「新型コロナウイルス感染症の状況下におけるガイダンス」等といった情報が掲載されている。
     

 

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