2021年10月

最近の動き(2021年10月更新)

米国

FTC,合併届出の増加に対応するために合併審査手続を調整

2021年8月3日 米国連邦取引委員会 公表
原文

【概要】
 米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)は,合併届出の急増に対応するために,合併審査手続を調整している。
FTC競争部門の責任者であるHolly Vedova氏は,ブログへの新規投稿の中で,「(ハート・スコット・ロディノ法に基づく)待機期間内に十分な合併審査ができていない案件について,FTCの審査が継続していることを当事会社に警告するとともに,FTCが審査の結果,当該合併を違法と判断する可能性があることを当事会社に注意喚起する書簡の送付を開始したことを明らかにした。当局による審査が完了していない中で合併を進める当事会社は,自己責任において合併を進めていることになる」と述べている。
 同書簡が送付された場合,同書簡は,当事会社に対して,FTCが審査の結果,合併を違法なものであると判断する可能性があるとともに,合併の取りやめを求める可能性があることを示唆するものとなっている。 

FTC,Facebookが一連の技術革新の試みに失敗した後,競争を回避するために違法な「買収するか,葬り去るか」の手法に訴えたと主張

2021年8月19日 米国連邦取引委員会 公表
原文
 

【概要】
 FTCは,本日,現在進行中のFacebookに対する連邦反トラスト法訴訟において,修正訴状を提出した。訴状によると,Facebookは,自社ネットワーク内に革新的なモバイルユーザー向けサービス(mobile feature)を開発しようとした試みが何度も失敗した後,代わりに,その支配力を維持するため,違法な「買収するか,葬り去るか」(buy-or-bury)の手法に訴えたとしている。Facebookは,自社が開発に失敗した分野で成功を収め,人気のあった革新的な競合他社を違法に買収した。また,Facebookは,独占を維持するために,アプリ開発者を自社のプラットフォームに誘い込み,アプリ開発者の成功の兆しを監視し,アプリ開発者が自社にとって競争上の脅威となった際には,葬り去っていた。本格的な競争がないことで,Facebookは監視に基づく広告モデルに磨きをかけ,ユーザーにより一層大きな負担を強いることが可能となった。
 FTCは,本日,最初の訴状に対する6月28日付けの裁判所決定を受けて,コロンビア特別区地方裁判所に修正訴状を提出した。修正訴状には,Facebookが独占企業であり,その優位性を脅かすものを排除するために過剰な市場支配力を濫用したとするFTCの主張を裏付ける追加的なデータや証拠が含まれている。
 修正訴状によると,インターネットの歴史やFacebookの歴史の中で重要な転換期となったのは,2010年代にスマートフォンとモバイル・インターネットが登場したことである。FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏は,当時,「当社(Facebook)はモバイル分野に弱い」と認識しており,主要なステークホルダーは,Facebookがモバイル分野の弱さによって「他のネットワークに負けてしまうという,考えられないことが起こるリスクがある」ことを不安視していた。
 この重要な転換期に大きな失敗を経験した後,Facebookは,時代遅れのデスクトップ・ベースの技術をモバイル・ファーストのコミュニケーションという新たな時代に迅速かつ効果的に適合させるためのビジネスの才能やエンジニアリングの洞察力が自社に欠如していることを認識した。公正な競争を行うことで独占や広告収益を維持することができなくなったため,Facebookの経営陣は,2012年に競合のInstagram,2014年にモバイル・メッセージ・アプリのWhatsAppなど,Facebookが開発に失敗した分野で成功した新たなアプリ開発者を買収することで,この存亡の危機に対処した。Facebookは,この反競争的な買収劇に加えて,open-first-close-later方式を採用し,競合者や今後競合者になり得る企業がその実績に基づいて競争するための能力を著しく阻害することで,自社の独占を強固なものにした。Facebookは,個人向けソーシャル・ネットワーキング市場における独占を反競争的に強化することで,競争プロセスを害し,消費者の選択を制限した。
 修正訴状に記載のとおり,Facebookは,独立系ソフトウェア開発者向けに開かれた場としてFacebookプラットフォームを開設した後,突然,方針を転換し,成功したアプリケーションがFacebookに対する競争上の脅威となるのを防ぐための取引条件に同意するよう開発者に要求した。このように開発者を誘い込みながら,後から方針転換することで,Facebookは技術革新が進んだ重要な時期に,自社が競争にさらされないようにした。Facebookのオープン・アクセス・ポリシー(open-access policies)を信用した開発者は,新たな制限が課せられたことで,自らが開発するソフトウェアに互換性を持たせることが困難になった。Facebookの行為は,CircleやPathなどの開発者に損害を与えただけでなく,Facebookに自社の製品やサービスの改善を迫ることができたかもしれない,有望で破壊的な業界の異端児を消費者から奪った。
 修正訴状では,Facebookが米国の個人向けソーシャル・ネットワーキング市場において圧倒的な市場シェアを持っていることを示す詳細な統計情報を提供することで,独占力に関するFTCの主張を補強している。また,修正訴状は,Facebookが価格をコントロールし,競争を排除する力を持っていること,相当数のユーザーや有効な数のユーザー・エンゲージメント(訳注:ユーザーによるサービスの利用等)を失うことなくユーザーに提供するサービスの質を大幅に低下させる力を持っていること,実際の又は潜在的な競争者の事業活動を困難にすることで競争を排除する力を持っていることを示す,新たな直接証拠を提供している。
 また,Facebookの支配的地位は,高いスイッチングコストなどの大きな参入障壁によっても守られている。個人向けソーシャル・ネットワークのユーザーは,時間の経過とともに,より多くのつながりを構築し,投稿や共有体験の履歴を蓄積していくが,これらを他の個人向けソーシャル・ネットワーク・サービスに移すことは容易ではない。
 その他の重要な参入障壁として,ネットワーク効果と呼ばれるユーザー間に生じる効果がある。ネットワーク効果とは,より多くのユーザーがサービスに参加することで,個人向けソーシャル・ネットワークの価値が高まるというものである。修正訴状にあるとおり,新規参入者が,ユーザーの友人や家族が既に参加している既存の個人向けソーシャル・ネットワークに取って代わることは,非常に困難である。
 修正訴状では,Facebookは,個人向けソーシャル・ネットワーキング市場における自社の独占状態に対する競争上の脅威がないか,業界を監視し続けているとしている。Facebookは,特に,次に「技術的な転換期における急激な競争圧力」に直面した場合,自社のプラットフォームへのアクセスに非競争的な条件を課したり,潜在的な脅威と思われる企業の買収を試みたりする可能性が高いと,修正訴状は主張している。
 FTC法律顧問室(Office of General Counsel)は,リナ・カーン委員長が本件訴訟に関与しないよう求めるFacebookの嘆願書を慎重に検討した。本件は連邦判事の下で提訴されるため,適切な憲法上の適正手続の保障が同社に提供されることになる。秘書室(Office of the Secretary)はこの申立てを却下した。
 コロンビア特別区の連邦地方裁判所に修正訴状を提出することについて,委員会の投票結果は3対2で議決された。クリスティン・ウィルソン委員は反対意見を表明した。
 

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