最近の動き(2021年12月更新)
米国
FTC,反競争的な合併を行った企業の将来の買収を制限へ
2021年10月25日 米国連邦取引委員会 公表
原文
【概要】
米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)は,反競争的な合併を行う当事会社に対して,将来の買収に制限を課すという伝統的な手続を復活させることを公表した。本日公表された事前承認に関する政策声明(The Prior Approval Policy Statement)は,FTCの合併に係る命令(merger enforcement orders)により,買収企業が違反認定された関連市場において,その違反認定から少なくとも10年間,当該市場に影響を与え得る合併を完了する前にFTCから承認を得ることを要求するものである。FTCは,2021年7月,およそ20年間にもわたり,FTCの合併規制を緩和することにより合併を促進してきた1995年の政策声明を撤回した。
事前承認手続を適用することによって,消費者を保護し,合併当事会社による反競争的な買収計画を阻止できるようになる。反競争的な企業結合を試みた際の結果はより厳しいものとなり,反競争的な買収を完了するハードルはより一層高くなる。反競争的な企業結合を同意審決により完了した当事会社は,合併の影響を受ける市場,場合によっては更に広い市場について,少なくとも10年間,別の買収を完了するためにFTCの承認が必要となる。FTCは,事前承認の対象を決定する際に,審査対象となる企業結合の性質,市場集中度のレベル,企業結合が市場集中度を高める度合い,合併前の市場支配力の度合い,当事会社の買収意欲,市場への反競争的な影響の証拠など,多くの要因を検討する。また,FTCは,当事会社が企業結合を断念する場合でさえも,事前承認を求める可能性もある。
FTCは,ダヴィータ株式会社(DaVita,Inc.〔訳注:透析サービス提供事業者。以下「ダヴィータ」という。〕)によるユタ大学病院の透析クリニックの買収の件で,ダヴィータに将来の買収に関する厳しい制限を課す命令案を出しており,当該方針を既に実施している。注目すべき点は,ダヴィータの買収の経緯を踏まえて,ダヴィータに対する命令は,事前承認の対象を企業結合によって直接影響を受ける市場以外にも拡大するとともに,ダヴィータがユタ州に所在する透析クリニックを新たに買収する場合には,FTCから事前 承認を受けることを10年間にわたって義務付けていることである。
FTC及び司法省反トラスト局は,企業結合を審査し,反トラスト法を執行するための共同管轄権を有している。両当局は管轄権を共有しているが,効率的な行政を実現し,審査の重複を回避するために,案件ごとに調整し,どちらの機関が審査を行うかを決定している(「クリアランス・プロセス」という。)。 FTCの2021年の声明(訳注:事前承認に関する政策声明)は,両当局が長年実施してきたクリアランス・プロセスを変更又は無効にするものではない。
FTCは,賛成3対反対2の投票により,政策声明を発表することを議決した。ノア・ジョシュア・フィリップス委員とクリスティン・S・ウィルソン委員は,反対声明を発表した。