米国

FTC及びDOJ,違法な合併に対する取締り強化へ

2022年1月18日 米国連邦取引委員会 公表
原文 
【概要】
 米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)及び米国司法省(以下「DOJ」という。)反トラスト局は,2022年1月18日,違法な合併に対する取締り強化を目的とする共同の意見募集を開始した。近時,経済全体を通じて数多くの産業における市場集中の進行及び競争の減少がみられ,それにより,消費者,労働者,起業家及び中小企業の,選択肢及び経済的利益が損なわれていることが指摘されている。この問題は,2020年から2021年にかけての合併届出件数が2倍以上に増加したといった合併の急増からみても,持続し又は悪化する可能性が高い。高まる懸念に対処するため,FTC及びDOJ(以下「両当局」という。)は,今日の現代的な市場における違法な反競争的合併をより適切に探知し未然に防ぐために,合併ガイドラインを近代化する方法について,意見募集を開始した。
 本日開始した意見募集手続においては,現代の経済発展及び合併が競争に及ぼす影響に関する新たな証拠について意見を求め,ガイドラインの改正の可能性について検討する。両当局は,市場参加者,政府機関,エコノミスト,弁護士,学者,労働組合,従業員,農業従事者,労働者,事業者,フランチャイジー,消費者などの幅広い国民に,ガイドラインの改定に役立つ意見,証拠及びアイデアを共有して欲しいと考えている。
 
 意見募集は60日間にわたって実施され,意見の提出期限は2022年3月21日(月)である。情報を基に,ガイドラインの更新及び改定について検討する。寄せられた証拠及び両当局が実施する調査を踏まえ,合併ガイドラインの改定が必要である考えられる場合,両当局は,ガイドラインの改定案を公表し,意見募集を実施する。

FTC,ロッキード・マーチンによるエアロジェット・ロケットダイン・ホールディングスの垂直統合を阻止するために審判手続を開始

2022年1月25日 米国連邦取引委員会 公表

原文

【概要】
 2022年1月25日,FTCは, ロッキード・マーチン(Lockheed Martin。以下「ロッキード」という。)が44億ドルを投じて計画している米国最後の独立系(訳注:同業他社は全て垂直統合されている)ミサイル推進システムの下請事業者であるエアロジェット・ロケットダイン・ホールディングス(Aerojet Rocketdyne Holdings。以下「エアロジェット」という。)の垂直統合を阻止するために,審判手続を開始した。エアロジェットは,ロッキードなどの防衛関連元請事業者が製造するミサイルの重要部品である高度な動力,推進力及び武装システムを供給している。FTCの審判開始決定書によると,本件買収計画が承認された場合,ロッキードは,エアロジェットの支配権を利用して競合する防衛関連企業に損害を与え,さらに,国家安全保障及び防衛に不可欠な複数の市場を統合する可能性があるとしている。FTCが防衛関連企業の合併差止めを求めて審判手続を開始するのは,数十年ぶりである。
 米国国防総省(以下「国防総省」という。)は,本件買収計画を検証し,国家安全保障,国家の産業・技術基盤,競争及びイノベーションに対する潜在的な影響について検討した。国防総省は,この評価の一環として,国防総省に影響を受ける利害関係者に対するインタビューをFTC主導の下で実施した。FTCは,検討及び最終的な意思決定を,国防総省の評価に基づいて行った。
 ロッキードによるエアロジェットの買収計画によって,競合他社がロッキードに対抗するために必要となる重要な推進装置を,ロッキードが支配することとなる。特に,ロッキードは,本件買収計画によって,競合他社が様々な兵器システムの重要な推進装置を使用することを拒否,制限又は当該装置へのアクセスにおいて不利益を与える力及びインセンティブを得ることができるようになると,FTCは審判開始決定書において主張している。合併後の当事会社は,製品の価格及び品質,エンジアリングサポートの品質,そして開発・供給に係るスケジュール及び契約条件に悪影響を与え,競合事業者に対して不利益を与えるおそれがある。また,エアロジェットは,技術の進歩,コスト,スケジュール及び事業戦略に関する元請事業者の機密情報について,下請事業者として知り得る立場にある。審判開始決定書によると,ロッキードは,本件買収完了後に競合事業者の機密情報を知り得る立場となることを利用して,競合事業者との競争で優位に立つおそれがあるとしている。
 そして,その結果,ミサイル・システム,ミサイル迎撃車両及び極超音速巡行ミサイルの費用が上昇し,イノベーションが阻害され,品質低下を招き,国家安全保障及び防衛上の利益が損なわれることになるため,米国政府は損害を受けるおそれがある。
 審判開始決定書によると,本件買収計画により,米国がこれらのテクノロジーのリーダーであり続けるために不可欠な,研究開発及び将来のイノベーションに影響が出るおそれがあるとしている。エアロジェットは,独立系下請事業者であるため,どの元請事業者を支援しているかということを気にする必要がなく,投資に対する利益の見通しに基づき,研究開発資金を投下するというインセンティブを持つ。審判開始決定書によると,合併後の当事会社は,合併完了後,自社の利益のためだけにエアロジェットの投資資金を配分しようとすることとなり,その結果,イノベーションが阻害されるおそれがあるとしている。
 審判手続の開始及び仮差止命令の請求については,委員会の投票の結果4対0で議決された。FTCは,仮差止命令を請求する訴状をコロンビア特別区連邦地方裁判所に提出する。審判は,2022年6月16日に開始される予定である。(訳注:ロッキードは本件買収計画の断念を2022年2月13日付けで公表。)

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