米国
米国財務省、アルコール市場における競争に関する報告書を公表、小規模事業者の機会拡大を提言
2022年2月9日 米国財務省 公表
原文
【概要】
米国財務省は、2022年2月9日、米国司法省(以下「DOJ」という。)及び米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)と協議の上、ビール、ワイン及びスピリッツ市場(以下「アルコール市場」という。)における競争に関する新たな報告書(以下本記事において「報告書」という。)を公表した。報告書では、過去数十年間にわたる新興企業の増加を高く評価する一方で、小規模事業者及び新規参入事業者が成長する上での課題についても詳述している。報告書には、競争促進効果のある現行法を執行し、時代遅れのアルコール市場規制を近代化することによって、小規模事業者及び新規参入事業者にとってより公平な競争環境を整えることを目的とする一連の提言が盛り込まれている。報告書は、大統領令14036号「アメリカ経済における競争促進」(Promoting Competition in the American Economy)の成果物である。
報告書は、アルコール市場を分析し、特定の分野に著しい集中があることを認定している。また、複雑な規制によって、小規模事業者が萎縮し、新規参入事業者の市場参入を阻んでいると分析している。報告書は、アルコール市場における競争上の課題を解決するために、水平統合の見直しの強化、排除的行為を禁じる取引慣行規則の執行、小規模事業者及び新規参入事業者の市場参入を妨げる禁酒法時代以降の規制改革などの優先事項を挙げている。
DOJ、サプライチェーン混乱に乗じた談合から米国人を守るための取組を発表
2022年2月17日 米国司法省反トラスト局 公表
【概要】
新型コロナウィルス感染症のパンデミック(以下「パンデミック」という。)によるサプライチェーンの混乱に起因する価格上昇が続いていることから、DOJ反トラスト局及び連邦捜査局(以下「FBI」という。)は、2022年2月17日、サプライチェーンの混乱に乗じて談合行為を行う者を抑止、探知及び訴追するための取組を発表した。
反トラスト局は、この取組の一環として、競合する事業者が不正な利益のためにサプライチェーンの混乱を悪用している可能性がある継続中の全ての案件を優先的に審査し、特にサプライチェーンの混乱の影響を受ける業界における談合を積極的に審査するための措置を講じている。また、反トラスト局は、海外のパートナーであるオーストラリア競争・消費者委員会、カナダ競争局、ニュージーランド商務委員会及びCMAとともに、グローバルなサプライチェーンにおける談合に対処するためのワーキンググループを結成した。このワーキン ググループは、既存の国際協力ツールを活用し、談合の探知及び撲滅のための知見を発達させ共有している。
パンデミックに起因するサプライチェーンの混乱により、全世界の経済が重大な試練に直面している。運送上の制約、日常業務の混乱及び原材料の入手困難によって、あらゆる生産・出荷コストが増加し、その結果、消費者物価が上昇した。サプライチェーンの混乱は広範囲 に及び、農業から医療に至るまで、様々な産業に悪影響を及ぼしている。
経済の様々な分野の個人及び事業者の多数が、見事なまでに創意工夫(物資が欠乏している地域への物資輸送、既存の生産能力の拡大並びに新たなニーズに対応する製品及びサービスの開発)をこらしてパンデミックによるサプライチェーンの混乱に対応し続ける一方で、サプライチェーンの混乱の陰に隠れて談合行為を行おうとする者もいるかもしれない。サプライチェーンの混乱を利用して不正な利益を得ようとする者に対して、反トラスト局は、FBIとともに、価格若しくは賃金の固定、入札談合又は市場割当てを行うための個人間及び事業者間の合意を含む、反トラスト法違反の刑事事件を審査し、訴追する。
DOJ、ユナイテッドヘルス・グループによるチェンジ・ヘルスケアの買収計画差止めを求め提訴
2022年2月24日 米国司法省 公表
原文
【概要】
DOJは、2022年2月24日、ミネソタ州及びニューヨーク州の司法長官とともに、ユナイテッドヘルス・グループ(United Health Group Incorporated。以下「ユナイテッド」という。)によるチェンジ・ヘルスケア(Change Healthcare Inc.。以下「チェンジ」という。)の買収計画(以下本記事において「本件買収計画」という。)の差止めを求めて、民事訴訟を提起した。コロンビア特別区連邦地方裁判所に提出された訴状では、130億ドルの本件買収計画によって、民間医療保険市場並びに、医療保険会社が医療保険請求処理及び医療費削減に使用する重要な技術の市場における競争が阻害されるとしている。
訴状で主張されているとおり、本件買収計画によって、米国最大の医療保険会社を所有する巨大企業であるユナイテッドが、競合する医療保険会社に関する、大量の競争上の機密情報にアクセスすることが可能となる。ユナイテッドは、買収後、競合相手の情報を利用して不当な優位性を獲得し、医療保険市場における競争を阻害することが可能になると考えられる。本件買収計画により、ユナイテッドは、健康保険請求を効率的に処理し、健康保険会社が毎年何十億ドルものコストを削減するために使用する重要製品である、一次審査通過保険請求処理技術(first-pass claims editing technology)における、ユナイテッドの唯一の大手競合他社を排除し、市場で独占的なシェアを獲得することになる。
本件買収計画が実行されれば、チェンジという独立した革新的な企業が排除されることになる。チェンジは、ユナイテッドにとって主要な医療保険の競合相手となる事業者を始め、医療エコシステムに参加する様々な事業者に対して、重要なソフトウェア及びサービスを提供している。これには、保険会社と医療提供者の間で請求及び支払の情報をやり取りする電子データ交換(electronic data interchange:EDI)情報センターのサービス及び医療保険会社の方針と関連する治療手順に基づき請求を審査する一次審査保険通過請求処理ソリューションが含まれる。実際、チェンジは、保険会社の重要なパートナーとして、保険会社と緊密に連携してイノベーション及び問題解決に取り組むことを売りにしている。ユナイテッドが中立的な事業者であるチェンジを買収すれば、競争環境を自社に有利に仕向け、現在の競争が阻害され、将来的に、ユナイテッドは、この業界におけるイノベーションの流れを支配しゆがめるおそれがある。