米国
米国財務省、企業集中と反競争的行為によって労働者の賃金が抑制され、市場における労働者の力を低下させていると報告書で指摘
2022年3月7日 米国財務省 公表
原文
【概要】
米国財務省は、米国司法省(以下「DOJ」という。)、米国労働省及び米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)と協議の上、本日(2022年3月7日)、労働市場における競争に関する新しい報告書(以下「報告書」という。)を発表した。「米国経済の労働市場における競争の現状(The State of Labor Market Competition in the U.S. Economy)」と題する報告書では、米国の労働市場が、雇用者の集中や反競争的な労働行為により、経済学者が長年想定してきた完全競争からは程遠い状態にあることを明らかにしている。これは重大な問題であり、報告書では、労働者の賃金は、競争の欠如によって、完全競争の場合と比べて約20%低下していると推定している。また、雇用者は、その市場支配力を利用して、予測不可能なジャスト・イン・タイム・スケジュール、過酷な労働条件、昇進の機会が無いなどの負担を労働者に強いている。労働市場における競争の減殺によって、経済全体が停滞し、イノベーションが阻害され、物価が上昇し、経済成長が抑制される。
競業避止義務を要求したり、従業員を独立請負人に間違って分類したりするといった雇用主の行為によって、労働者は低賃金と劣悪な労働条件を受け入れざるを得なくなっている。一方、労働組合結成の減少により、労働者は雇用者の権力に対抗する交渉力を失っている。
また、過度に負担の掛かる許認可要件によって、労働者は更に困難な問題に直面している。報告書には、労働市場における反トラスト法の執行強化、最低賃金の引上げ、労働組合結成の容易化など、労働市場における競争を再活性化し、労働者の交渉力を強化して、労働者が経済収益の公正な配分を受けられるようにするための提言が含まれている。
報告書は、バイデン大統領による「アメリカ経済における競争促進に関する大統領令」の成果物である。包括的な取組の一環として、同大統領令は財務省に対して、DOJ、FTC及び労働省と協議の上、労働市場における競争の欠如が、米国経済に及ぼす影響について調査するよう要請していた。