2023年6月

米国

司法省反トラスト局、JetBlueによるSpiritの買収計画について差止訴訟を提訴

2023年3月7日 米国司法省反トラスト局 公表

原文1

原文2
【概要】

 米国司法省反トラスト局(以下「DOJ」という。)は、マサチューセッツ州、ニューヨーク州及びコロンビア特別区の司法長官とともに、Jet Blue Airways Corporation(以下「JetBlue」という。)によって計画されている、その最大かつ最も成長著しい超低価格の競合事業者であるSpirit Airlines, Inc.(以下「Spirit」という。)に対する38億ドルでの買収を差し止めるため、本日(2023年3月7日)、反トラスト民事訴訟を提起した。JetBlue及びSpiritは、現在、数百万の旅行者を輸送する何百もの路線で激しく競い合っている。本件買収計画は、その競争を減殺すること及び米国の航空業界をさらに統合することにつながり、全米の路線で運賃を上昇させ、選択肢を減少させることになるため、航空移動する一般国民のコストを引き上げ、コスト意識の高い航空利用者に最も深刻な害を与えることになる。
 
 マサチューセッツ州地方裁判所に提出した訴状では、Spiritの低価格でサービスを省いた航空オプションが、全米の路線の低運賃及び選択肢の増加をもたらし、より多くの米国民(特に、旅行に関して自身が支払う運賃に敏感な乗客)が旅行できるようになったと主張している。JetBlueがSpiritを買収することにより、Spiritが市場に存在することで、JetBlueを含む他の航空業者が運賃を引き下げざるを得ないという「Spirit効果」が抹消される。また、本件買収計画により、米国内の超低価格帯の航空輸送能力の半分が消減することになる。これは、運賃の上昇及び座席数の減少につながり、何百もの路線で何百万人もの消費者に害を及ぼすことになる。
 
 メリック・B・ガーランド司法長官は、次のように述べた。
「訴状で我々が主張するように、JetBlueとSpiritの合併は、数千万人の乗客に運賃の上昇及び選択肢の減少という結果をもたらすことになり、飛行機に乗るために超低価格航空事業者と呼ばれる事業者に依存している人々に大きな影響を与える。DOJは、反トラスト法を執行し、米国の消費者を保護することをためらわないということについて、あらゆる業界の事業者が気づくべき時である。」
 
 ヴァニタ・グプタ副長官は、次のように述べた。
「我々は、訴状において、JetBlueとSpiritの合併は、特にコスト意識の高い旅行者に害を与えるだろうと主張している。超低価格航空事業者のおかげで、より多くの米国民が、必要性の高い家族旅行をしたり、身近な人々と祝ったり悼んだりするために飛行機に乗ることができるようになった。我々は、本件買収計画が、旅行者にとって座席数の減少や価格の上昇につながると主張している。」
 
 ドーハ・メッキ反トラスト局首席次長は、次のように述べた。
「JetBlueの計画したSpiritとの合併は、数百万もの米国民にとって破壊的で低価格な選択肢を減少させる。Spiritを利用するかどうかに関わりなく、全米の旅行者が独立したSpiritから利益を受けている。なぜなら、Spiritが競争している場所では、JetBlueを含む他の航空会社が、運賃を引き下げたり、優れた改革を提供したり、消費者の選択肢を増やしたりすることによって、積極的に競争することを強いられているからである。本件買収計画は、米国における長年にわたる航空業界の統合を背景に生じたものである。」
 
 クレイトン法第7条に基づき本件合併計画の差止めを求める訴状では、Spiritが特に破壊的な力を持ち、急速に成長している事業者であり、革新的な製品を導入し、消費者が購入するサービスを選択できるようにしながら、低価格でサービスを利用できるようにしていると主張している。Spritは、自由にカスタマイズできる航空券オプションを導入し、運賃を引き下げることにより、既に低価格を達成しているJetBlueを始めとする大手航空会社に対し、顧客獲得競争を強いて、より多くの米国民が旅行できるようになった。もし本件買収計画が進められれば、現在2つの航空会社が競合している路線の価格が上昇することになる。特に、40以上の直行便路線において、両社の合計市場シェアが非常に高いため、本件買収計画は反競争的であると推定される。
 
 本訴状でさらに主張しているように、過去10年間で、Spiritはネットワークの規模を倍増させているため、本件買収計画が計画される前から、急速に拡大することが予想されていた。本件買収計画は、将来の競争を開始前に止めるものである。


 また、本件買収計画により、当事会社以外の航空会社が、運賃の値上げや輸送能力の制限について調整することがより容易になる。JetBlueは、DOJが差止めを求めて提訴しているNortheast Allianceを通じ、既に世界最大の航空会社であるアメリカン航空と提携している。そして今、JetBlueは統合を強化しており、超低価格の主要な競合事業者を買収して排除しようとし、旅行者から他の選択肢を奪っている。
 
 もしSpiritという選択肢を排除することが認められるのであれば、JetBlueは、Spiritが現在就航している全ての路線の価格を引き上げるであろう。その結果、過去にSpiritの低価格でシンプルなサービスを好んでいた旅行客は、不要なアメニティのために余計に支払わなくてはならなくなるか、もはや旅行する金銭的余裕を失ってしまうかもしれない。
 
 JetBlueは、ニューヨーク州のロングアイランドシティに本社を置くデラウェア州の事業者である。2022年には、3900万人以上の乗客を世界中の約107の目的地まで運び、約91億ドルの収益を上げた。
 
 Spiritは、フロリダ州のミラマーに本社を置くデラウェア州の事業者である。2022年には、3800万人以上の乗客を米国内の約92の目的地まで運び、約50億ドルの収益を上げた。
 
(注)2023年3月31日、カリフォルニア州、メリーランド州、ニュージャージー州及びノースカロライナ州の司法長官が、JetBlueによるSpiritの38億ドルでの買収計画を差し止めるために、DOJ、マサチューセッツ州、ニューヨーク州及びコロンビア特別区によって提起された反トラスト民事訴訟に参加した。DOJ、マサチューセッツ州、ニューヨーク州及びコロンビア特別区の司法長官は、マサチューセッツ州において修正した訴状を提出した。
 ドーハ・メッキ反トラスト局首席次長は次のように述べた。
「JetBlueが競合事業者であるSpiritを排除することを阻止するために、州の法執行パートナーと共にこの重要な訴訟を行うことを楽しみにしている。我々は、カリフォルニア州、メリーランド州、ニュージャージー州及びノースカロライナ州が、住民に代わって航空業界における競争の利益を保護するために訴訟に参加したことを歓迎する。」


FTC、フランチャイザーによる加盟店及びその従業員に対する支配力の行使について、意見募集を開始

2023年3月10日 米国連邦取引委員会 公表

原文
【概要】

 米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)は、フランチャイザーが加盟店及びその従業員に対してどのように支配力を行使するかなど、フランチャイズ契約とフランチャイザーの取引行為について意見を求めている。
 
 フランチャイズ関係では、加盟店は通常、フランチャイザーが開発した取引形態や取引システム、フランチャイザーの商標を特定の年数使用する権利及びフランチャイザーによる支援と引き換えに手数料を支払う。一方、フランチャイズの経営には、明確なコスト、フランチャイザーの支配及び契約条件が伴う。
 
 FTCは、フランチャイザーが加盟店及びその従業員に対してどのような支配力を行使する可能性があるかについて、さらに知りたいと考えている。具体的には、フランチャイザーがフランチャイズ関係の特定の側面や契約条件をどのように開示するか、また、FTCは、それらの側面や契約条件の範囲、適用及び効果について、関心を持っている。
 
 Samuel Levine FTC消費者保護局長は、次のように述べた。
「フランチャイズ業界における不当・欺瞞的行為に対する懸念が高まる中、FTCは、フランチャイズ関係がどのように機能しているか、またどのように機能していないかについて、幅広い利害関係者から意見を聞くことを望んでいる。このFTC全体の取組は、加盟店にとっての公正な市場を確保するために、我々の政策や執行活動に反映される。」 
 
 Elizabeth Wilkins FTCの政策企画室長は、次のように述べた。
「少なくともいくつかの事例において、経済的流動性及び有給雇用の原動力としてのフランチャイズ契約の約束が十分に実現されていないことは明らかである。今回の情報提供要請は、フランチャイズ契約に内在する不平等な交渉力が、加盟店、労働者及び消費者にどのような影響を及ぼしているかについて解明するものである。」
 
 FTCは、情報提供要請の一環として、フランチャイザー、加盟店、フランチャイザー及び加盟店の現在及び過去の従業員、政府機関、経済学者、弁護士、学者、消費者並びにその他の利害関係者に、次のような加盟店及びその従業員に影響を及ぼす幅広い問題について意見を求めている。
 
①     加盟店が契約前にフランチャイズ契約の条件を交渉する能力及び加盟店の加盟後にフランチャイザーがフランチャイズ・システムを一方的に変更する能力。
②     フランチャイザーによる非難禁止条項、営業権条項又は類似の条項の実施。
③        フランチャイズ契約における特定の契約条項の普及及び正当化。
④     フランチャイズ契約の条件に基づかない、フランチャイザーによる加盟店舗の賃金や労働条件の管理。
⑤     加盟店が第三者から商品又はサービスを購入したことに伴い、フランチャイザーが第三者(サプライヤー、ベンダーなど)から受け取る支払又はその他の対価。
⑥     フランチャイザーの商慣習に関連して、間接的に影響を受ける加盟店の人件費。
⑦     フランチャイザーが英語以外の言語でフランチャイズの営業を行うことの広がりとその合理的理由。

 一般市民は、60日間を期限としてRegulations.govを通じてコメントを提出することができる。提出されたコメントは、Regulations.govに掲載される。
 
 FTCは、本情報提供要請とは別に、一定の場合に労働者に対する競業避止契約を禁止する規則案について、意見募集を行っている。FTCは、同規則案を制定する一環として、同規則案をフランチャイザーと加盟店の間の競業避止契約にも適用すべきかどうかという問題に関する意見に関心を持っている。フランチャイズ契約における競業避止義務の設定に関する意見は、競業避止契約の規則制定の一環として、2023年4月19日までに提出する必要がある。本情報提供要請は、競業避止契約に関する規則制定手続とは別のものである。同様に、本情報提供要請は、フランチャイズ契約に関する規制の見直しとは別のものである。本情報提供要請に対して提出されたコメントは、自動的に競業避止契約制定手続及びフランチャイズ規則規制見直しの記録の一部となることはない。

FTC、早期がん検出の技術に係る競争を保護するため、Illuminaに対しがん検出テストメーカーであるGRAILの売却を命令

2023年4月3日 米国連邦取引委員会 公表

原文

【概要】
 米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)は、DNAシーケンシング(訳注:塩基配列を解析すること)の供給業者であるIlluminaによる多がん早期検出(Multi-cancer early detection :MCED)検査を行うGRAILの買収は、命を救うがん検査に関する米国市場における競争及びイノベーションを阻害すると判断し、Illuminaに対しGRAILの売却を求める意見・命令書(Opinion and Order)を発出した。本意見・命令書は、反トラスト法に違反しているとしてFTC事務局が提起した請求を棄却したFTC行政判事の決定(Initial Decision and Order)を覆すものである。
 
 GRAILは、無症状の患者を対象に、極めて早期に、DNAシーケンシングにより複数のがんの検査をすることができ、身体に負担が少なく早期検出が可能なリキッドバイオプシー検査(訳注:組織採取ではなく、血液採取など身体に負担の少ない方法で行う生検)を行っている。GRAILは、命を救うリキッドバイオプシー検査の開発及び商品化を目指して競争している複数の競合事業者の一社である。Illuminaは、MCED検査のために採取された血液サンプルの遺伝物質の解析に使用される次世代シーケンシング(next-generation sequencing:NGS)のプラットフォームにおける支配的な事業者である。これらの検査は、今日、そのほとんどについて全くスクリーニングされない複数の種類のがんを検出することに利用できる可能性がある。
 
 FTCは、本件買収により、MCED検査の米国市場におけるイノベーションが低下する一方で、価格が上昇し、検査の選択肢が減少し質が低下することを明らかにした。これは、がんを早期に検出するための有効かつ安価なツールを迅速に開発することの重要性を考えると、極めて懸念すべきことである。
 
 本意見・命令書は、本件買収に関する以下のような他の懸念も提起しており、これはFTCによるGRAIL売却命令を支持するものである。
 
1  Illuminaは現在からかなり近い将来にかけて、重要な投入物の唯一の供給事業者として存続することになる。重要な投入物とは、すなわち、MCED検査に必要なNGSプラットフォームである。競合しているプラットフォームは、Illuminaの高い処理能力、高精度、価格の安さという参入障壁があるため、対抗することができない。
2 Illuminaは、GRAILの競争事業者であるMCED検査の開発者のコストを引き上げる又はそれらの競争事業者が必要な投入物の供給、サービス又は新技術へのアクセスを制限又は困難にさせることにより、GRAILの競争事業者を容易に排除することができる。 
3 Illuminaは、GRAILが米国のMCED市場におけるイノベーション競争に勝つことを確実にするための非常に大きな経済的インセンティブを有している。つまり、Illuminaは、競合事業者の検査開発者を支援するよりも、GRAILのMCED検査を販売することにより、実質的に多くの利益を得ることができる立場にある。そして、Illuminaは、排除を行うためのメカニズムを十分に備えており、インセンティブを働かせるための方法を複数保持している。
 
 Illuminaの過去の行動に関する実際の証拠は、FTCの反トラスト法上の懸念をさらに強めるものである。例えば、Illuminaは、GRAILがIlluminaの完全子会社であった時に、特別価格やその他の利益を与えていた。また、本意見・命令書は、Illuminaの顧客であるMCED検査供給業者との供給契約によって本件買収の競争上の懸念に対処しようとする当事会社の「オープンオファー」は、その場限りの非効果的な問題解消措置であると結論付けている。本意見・命令書によると、このような行動的問題解消措置は、「競争市場におけるインセンティブに取って代わることは到底できない」。
 
 最後に、本意見・命令書は、本件買収が命を救う結果をもたらす可能性が高いという当事会社の主張を否定し、当事者の効率性の予測は曖昧で、自己満足的であり、裏付けがないと指摘した。本意見・命令書は、最終的に、MCED検査供給業者間のイノベーションによる競争を促進させる方が、独占企業が垂直統合を行って当該市場を獲得するよりも、人命救助に役立つと判断した。
 本意見・命令書は、名宛人らがこの命令書の送達日から60日以内に連邦控訴裁判所に再審査を申し立てない限り、最終的なものとなる。
 
 FTCは、意見・命令書の発出について、4対0の賛成多数で発出を議決した。クリスティーン・ウィルソン元委員は、同意についての別意見を発表した。FTCの投票は、ウィルソン元委員が委員を退任する前の2023年3月31日に終了した。


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