2023年9月

米国

FTC、消費者を同意なしにアマゾンプライムに登録させ、解約を妨害したとしてアマゾンを提訴

2023年6月21日 米国連邦取引委員会 公表

原文

【概要】
 米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)は、長年にわたり、消費者の同意なしにアマゾンプライム(以下「プライム」という。)に登録させる一方、プライムの定期利用契約を解約することについては故意に困難にしているとして、恒久的な差止命令、民事罰、金銭的救済等を求めてアマゾンを提訴した。
 
 FTCは、訴状において、アマゾンが故意に何百万人もの消費者を操って、無意識のうちにプライムに加入させたとしている。具体的には、アマゾンは「ダークパターン(dark patterns)」と呼ばれる巧みで強制的、又は欺瞞的なユーザー向けのインターフェース・デザインを採用し、消費者を欺いて自動更新のプライム会員に登録させた。
 
 また、アマゾンは、プライム会員が退会しようとする際の解約手続を故意に複雑にしていた。プライムの解約手続の主な目的は、加入者が解約することではなく、解約を阻止することであった。アマゾンの経営陣は、解約により自社の収益が悪影響を受けるため、加入者がプライムの解約を容易にできるようにするための変更を手間取らせたり、阻んだりした。
 
 リナ・カーンFTC委員長は、次のように述べた。
「アマゾンは、ユーザーを欺いて、同意なしに定期契約をさせ、ユーザーを苛立たせるだけでなく、多大な金銭的損失を与えた。このような巧妙な手口は、消費者だけでなく、法を遵守して活動する事業者にも損害を与える。FTCは今後も、デジタル市場における「ダークパターン」及びその他の不公正又は欺瞞的な行為からアメリカ国民を精力的に保護していく。」  
 
 現時点では、FTCの訴状は大幅に修正(機密情報が削除)されているが、FTCは裁判所に対し、継続的な秘密保持の必要性に説得力があるとは思わないと述べている。それにもかかわらず、訴状には、同意のないプライムへの登録を防止するための変更を行わないというアマゾンの決定や、加入者がプライムを解約しようとする際に直面した困難に関する多くの疑惑が含まれている。具体的には、アマゾンがいわゆる 「ダークパターン」 を使用して、FTC法及びオンライン購入者信頼回復法(Restore Online Shoppers’Confidence Act)に違反して、消費者に同意なくプライムに登録させたと告発している。
 
 アマゾンのオンライン支払手続の中で、消費者には月額14.99ドルのプライムへの勧誘画面が何度も表示される。多くの場合、消費者にとって、プライムに加入せずにアマゾンの商品を購入する方法を見つけるのは困難であった。取引完了用に表示されるボタンについては、そのボタンの選択の結果、プライムの定期利用契約へ同意したことになる旨が明確に記載されていない事例も見受けられた。
 
  訴状によると、プライムを解約しようとした消費者は、実際に解約するために複数の段階を踏まなければならなかった。まず、消費者は解約を行うための方法を見つけなければならなかったが、アマゾンはそれを困難にした。解約手続を開始しても、割引価格で定期利用契約を継続させるページや、自動更新機能をオフにするページ、解約を取りやめるページなどが表示され、これらのページを経て初めて、消費者は最終的に解約をすることができた。過去のある報道では、アマゾンが解約手続を説明するために 「イリアス(Iliad)」 という言葉を使ったと指摘した上、この解約手続は、十年間にわたるトロイア戦争について書かれたホメロスの大叙事詩のようであると報じられている。
 
 訴状によると、アマゾンは、ユーザーが同意なしにプライム会員に登録されていることや、解約プロセスが複雑で分かりにくいことを認識していたが、同社の経営陣はこの問題に対処するための有意義な措置を講じなかったという。また、FTCは、訴状において、アマゾンが何度もFTCの審査を遅らせ、妨げようとしたと主張している。
 
 FTCは、本件の提訴について、3対0の賛成多数で議決した。訴状はワシントン州西部地区連邦地方裁判所に提出された。

FTC及びDOJ、ハート・スコット・ロディーノ法に基づく合併の事前届出書式等の改正案を公表

2023年6月27日 米国連邦取引委員会 公表

原文

【概要】
 米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)は、米国司法省(以下「DOJ」という。)反トラスト局長とともに、合併審査をより効果的かつ効率的に行うために、合併の事前届出の書式及び関連の記載方法並びにハート・スコット・ロディーノ (以下「HSR」という。) 法に基づく合併の事前届出規則の改正案を公表した。
 
 HSR法及び同法の実施規則は、特定の合併の当事会社に対し、FTC及び司法省反トラスト局 (以下「両当局」という。) に合併の事前届出を行うことを求めており、この手続にはHSR法に基づく合併の事前届出書式(以下「HSRフォーム」という。)への記入が含まれ、合併を完了する前に一定期間待機する必要がある。
 
 HSRフォーム及び関連の記載方法の改正案により、両当局は、通常30日間の第一次審査の待機期間内に、潜在的な競争上の問題について、より効果的かつ効率的に合併を審査できるようになる。
 この競争に関する第一次審査は、両当局が第二次審査を必要とする合併を特定するために重要である。第二次審査では、両当局は提案された合併が反トラスト法に違反するか否かについて判断し、違反している場合には、提案された合併を差し止め、米国民の損害を防ぐよう努める。
 
 改正案の主たる内容は以下のとおり。
・    合併理由の詳細及び投資対象又は当事会社間の関係に関する詳細な情報の提供
・    水平的な商品・サービス及び供給契約などの非水平的な取引関係の両方に係る商品・サービスに関する情報の提供
・    計画している商流、取引の分析及び市場の状況を分析した内部文書並びにプライベートエクイティ投資などの関係事業者の構造に係る情報の提供
・    過去の合併に関する詳細の提供
・    現行の標準職業分類システムのカテゴリーに基づいた従業員の分類による労働市場について分析した情報の開示
 
 これらの改正案は、問題視されている外国の団体からの補助金が競争のプロセスを歪めたり、補助金を受けた企業が合併後の競争を減殺するような事業戦略の変更を行ったりする可能性があるという議会の懸念にも対応するものである。2022年の合併届出手数料現代化法では、両当局は、米国にとって戦略的又は経済的脅威である特定の外国政府又は団体から受領した補助金に関する情報を収集することが求められている。
 
 改正案の意見募集は、今週後半に、米国連邦官報に掲載され、意見の提出期限は公表から60日後である。意見募集の詳細については、米国連邦官報告示ページの関連するFAQを参照のこと。
 
 FTCは、改正案の意見募集を行うことについて、3対0の賛成多数で議決した。リナ・カーンFTC委員長は、レベッカ・ケリー・スローター委員とアルバロ・ベドヤ委員と共に、FTCの修正案に関する声明を発表した。


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