2023年10月

米国

FTC及びDOJ、合併ガイドライン改正案の意見募集手続を開始

2023年7月19日 米国連邦取引委員会 公表

原文 FTC

原文 Fact sheet

原文 DOJ

【概要】

 米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)及び米国司法省(以下「DOJ」という。)は、現代経済における合併の競争への影響の判断方法や合併の評価方法をより反映させることを目的とした、合併ガイドラインの改正案を公表し、60日間の意見募集手続を開始した。
 
 リナ・カーンFTC委員長は、次のように述べた。
「歴史を通して開放的、競争的で弾力的な市場が、米国経済の成功と活力の礎となっている。誠実かつ強力な反トラスト法の執行が、成功と活力を維持する鍵である。ガイドラインの改正は、現代社会における事業者のビジネスの実態を反映するためのものである。医療従事者、農業従事者、患者支援者、音楽家、起業家らから意見募集手続で得た何千もの情報を基に重要な改正を行った。」
 
 メリック・ガーランドDOJ長官は、次のように述べた。
「歯止めのない集中は、米国経済の基礎である自由で公正な市場を脅かすおそれがある。改正案は、現代の市場の現実に対応し、反競争的な合併がもたらす損害から司法省が透明かつ効果的に米国民を守ることを可能にするものである。」
 
 ジョナサン・カンターDOJ反トラスト局長は、次のように述べた。
「競争的な市場と経済的な機会は密接な関係にある。競争を脅かし独占を形成するおそれのある合併を防ぐため、ガイドライン改正案を公表した。市場や商業の実態が変化するにつれ、現代経済の複雑さを反映した形で競争を保護することができるように法執行の手段を順応させることが不可欠である。簡単に言えば、今日の競争は、50年前やあるいは15年前とは変わっている。本ガイドラインを最終決定する前に、一般市民が評価し、意見を提出するための実質的な手続を行う。」
 
 FTC及びDOJは、反トラスト法やその他の連邦競争法の執行を通じて、競争を保護している。1968年以来、両当局は、合併に関して当局がどのように責任を果たすかについて、透明性の向上及び認識の向上を目的として合併ガイドラインを策定・改正してきた。
 今回の改正案は、従前のガイドラインにおいて示された枠組みを基礎とし、拡大し、明確化したものである。両当局が合併審査において用いる13の原則を示しているところ、概要は以下のとおりである 。
①    合併は集中度の高い市場における集中を著しく増大させるべきではない。
・ 競争者間の合併が集中度を著しく高め、市場の集中度が高まるかどうかを審査。
・ 仮にそのような状況が見込まれるならば、そのような市場構造に基づき、当該合併が競争を実質的に減退させ得ると推定する。
 
② 合併は事業者間の実質的な競争を排除すべきではない。
・ 合併により当事者間の競争は必然的に排除されることになるため、当事者間の競争が実質的なものであるかどうかを審査。
 
③ 合併は協調のリスクを増大させるべきではない。
・ 合併が反競争的な協調のリスクを増大させるかどうかを審査。
・ 集中度の高い市場や過去に反競争的な協調が見られた市場は、本質的に脆弱であり、合併が競争を実質的に減退させる可能性があると推定。
・    まだ高度に集中していない市場では、市場構造だけが示唆するよりも、事実が協調のリスクを示唆しているかどうかを審査。
 
④ 合併は集中度の高い市場における潜在的な参入者を排除すべきではない。
・ 集中度の高い市場においては、合併が(a)潜在的な参入者を排除するかどうか、(b)潜在的な参入者により現在の競争圧力が排除されるかどうかを審査。
 
⑤ 競争事業者が使用する可能性のある製品・サービスを支配する事業者を形成することによって競争を実質的に減退させるべきでない。
・ 合併が、ライバル事業者が使用する製品・サービスに関連する場合、合併事業者が製品・サービスへのアクセスを支配し、競争を実質的に減退させることができるかどうかや、そのようなことを行うインセンティブがあるかどうかを審査。
 
⑥ 垂直統合により競争を阻害する市場構造を形成すべきではない。
・ 合併がどのように供給網や流通網を再構築するか審査。
・ シェアが50%又はそれに近い場合、市場構造自体が、合併が競争を実質的に減退させる可能性があることを示す。
・ シェアが当該レベルを下回る場合、合併が、「競争を阻害し・・・ライバルの公正な競争の機会を奪う」かどうかを審査。
 
⑦ 合併は支配的地位を強固にしたり拡大したりすべきではない。
・ 合併当事者のいずれかが支配的地位を既に有しているか、合併が支配的地位を拡大するか、又は別の市場で独占を生み出す傾向があるかどうかを審査。
 
⑧ 合併は集中の傾向を助長すべきではない。
・ 合併が、市場が集中する傾向にある中で行われたものである場合、さらなる集中が競争を実質的に減退させる可能性があるか、独占状態を生じさせる傾向があるかを審査。
 
⑨ 一つの合併が複数の買収からなる一連の買収の一部である場合には、当局は当該買収全体を審査する。
・ 特定の合併が、事業者による複数の買収に係る傾向又は戦略の一部である場合には、それら一連の合併がもたらす累積的効果を考慮。
 
⑩ 合併が多面的プラットフォームに関連する場合、当局はプラットフォーム事業者間の競争やプラットフォーム上の競争、プラットフォームを置換させる競争について審査する。
・ 多面的プラットフォームには、競争上の問題を悪化・進行させ得るという特徴があるため、そのような特徴的な特性を慎重に考慮。
 
⑪ 合併が、競合する買い手事業者間で行われる場合、労働者や他の販売事業者のための競争を実質的に減退させるかどうかを審査する。
・ クレイトン法第7条は、買い手事業者間の競争を守るとともに、関連市場における競争を実質的に減退させる可能性のある合併を禁止。
・ 使用者を含む買い手事業者間の合併が競争を実質的に減退させるかどうか又は独占を形成する傾向があるかを判断するため、本ガイドラインを適用。
 
⑫ 買収が部分的支配権や少数株主利益に関連する場合、それらの競争への影響を審査する。
・ 部分的支配権や共同所有権の取得は、状況によっては競争を実質的に減退させる可能性がある。
 
⑬ 合併が、競争を実質的に減退させたり、独占を形成する傾向があってはならない。
・ 本ガイドラインは、競争を実質的に減退させたり、独占を形成する傾向がある合併の方法を全て網羅しているわけではない。
 
 2022年1月に合併ガイドラインの改正に向けた意見公募手続を行ったところ、消費者、労働者、州司法長官、学識経験者、事業者、事業者団体、専門家、起業家を含む5,000名以上から意見が寄せられた。また、両当局は食品、農業、ヘルスケアに至るまで様々な産業について4回にわたり公聴会を実施した。
 
 本改正において、両当局は以下の3つの点に焦点を当てた。
①     ガイドラインは、議会が制定した法令及び最高裁判所が示した当該法令の解釈を反映すべきであるとともに、ガイドライン自体が実質的に法律になったり、新たな権利や義務を創設するものではないと明らかにすること
② ガイドラインは、アクセスしやすく透明性等を高めるべきであること
③ ガイドラインは、現代経済の実態や最良の現代経済学・分析ツールを反映した枠組みを提供すべきこと
 
 意見募集期間は2023年9月18日までの60日間であり、両当局は提出された意見を踏まえてガイドライン成案を取りまとめる。

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