米国

FTC、AI関連の競争・消費者保護の問題を提起

2023年11月7日 米国連邦取引委員会 公表

原文

【概要】

 米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)は、米国著作権局に提出した意見書の中で、人工知能(以下「AI」という。)の開発・利活用によって生じた競争・消費者保護政策に関連する複数の問題を特定し、生成AIの影響を監視し、競争及び消費者を保護するため、必要に応じて法律を厳格に執行することがFTCの役割であると述べた。
 
 FTCは、同意見書の中で、次のように述べた。
「企業が生成AIツールやその他のAI製品を開発し、販売する方法は、消費者、労働者及び中小企業に潜在的な不利益を与える懸念を生じさせる。FTCは、消費者のプライバシーの侵害、差別や偏見の自動化、欺瞞的行為、なりすましスキーム及びその他の類型の詐欺の加速化など、AIの使用に関連するリスクを調査してきた。」
 FTCが著作権関連の問題に関心を持っているのは、権利の範囲や著作権法に基づく責任の範囲に関する問題だけではないと同意見書は説明している。例えば、クリエイターの競争する能力が不当に害される可能性があるだけでなく、著作権が消費者の期待と一致していない場合に消費者が欺かれる可能性もある。消費者は、ある作品がAIによって作られた製品であるにもかかわらず、特定のミュージシャンや他のアーティストによって作られたと思うかもしれない。
 さらに同意見書は「著作権法に違反する可能性のある行為は、特に著作権侵害が消費者を欺く場合、クリエイターの評判を悪用する場合、クリエイターの既存又は将来の作品の価値を低下させる場合、個人情報を暴露する場合、その他消費者に実質的な損害を与える場合に、不公正な競争方法又は不公正若しくは欺瞞的な慣行にも該当する可能性がある。」と続ける。加えて、特定の大手テクノロジー企業は莫大な資金力を有しているため、彼らの生成AIツールのユーザーを保護したり、著作権で保護された専有データの独占ライセンスを維持したりすることが可能であり、これら支配的事業者の市場支配力をさらに強固なものにする可能性がある。
 そのため、FTCは既存の法的権限を使ってAI関連の違法行為に対処してきており、アマゾン及びリング(訳注:アマゾン傘下のセキュリティカメラブランド)が消費者のプライバシーを侵害しながらアルゴリズムを高めるために収集した極めてプライベートなデータを使用した疑いなど、消費者を保護した取組の例を挙げている。
 同意見書は、「AI、特に生成AIは、まだ急速に進化しているが、既に多くの産業や商習慣を変革する可能性を秘めている。注目すべきは、法典上の法律のAIへの適用を除外するものは存在しないことである。したがって、FTCは、欺瞞的かつ不公正な行為から米国民を保護し、オープンで公正かつ競争力のある市場を維持するために、権限の全てを積極的に行使する。」と締め括られている。
 
 FTCは、AIシステムによって生じる著作権及び政策上の問題点に関する意見照会及び意見募集に応じて、本意見書を提出した。本意見書は、AIが急速に利活用されている経済における競争の促進及び消費者の保護に関するFTCの知見の概要を説明し、AI関連の著作権問題とFTCが重視する競争・消費者保護の懸念との相互関連性を強調し、2023年10月に開催された、プロのクリエイターの仕事へのAIの影響に関するFTCラウンドテーブルにおいて出された意見における論点を共有するものである。


FTC及びDOJ、G7執行パートナーとデジタル市場の競争について協議

2023年11月8日 米国連邦取引委員会 公表

原文

【概要】

 米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)及び司法省反トラスト局は、11月8日、G7エンフォーサーズ及びポリシーメイカーズサミットに参加し、人工知能(以下「AI」という。)などの新しい技術を含むデジタル市場において、G7各国がどのように競争上の問題に取り組んでいるかについて議論した。
  G7競争当局及びポリシーメイカーは、本サミットの終了時に、デジタル分野における競争に関する共同声明を発表し、公正な競争の原則がデジタル市場に適用されることを確保するために必要な範囲で競争法を執行し政策を発展させるという共通のコミットメントを表明した。
  本声明は、新しい技術から生じる競争上の懸念に焦点を当て、G7各国が生成AIなどの新技術に対処する際の競争上の課題をよりよく理解し、前もって検討する能力を強化する方法について述べた。また、現行の競争法がAI及びその使用に対して適用されること、そしてG7各国がAIの台頭に伴う競争へのあらゆるリスクに対処すると強調している。
 
 レベッカ・ケリー・スローターFTC委員は、次のように述べた。
「全世界の競争当局が、自由で公正かつ開かれた競争がデジタル市場全体に浸透するよう尽力している。本サミットは、世界の競争当局が主要な競争上の問題について議論し、最善のノウハウを共有する機会である。我々は皆、新しい技術における競争を促進し、競争法を効果的に執行するために取り組んでいる。」
 
 本サミットに備えて、G7各国は、デジタル市場における競争を促進するための各当局の取組に関するコンペンディウム(Compendium)の作成に貢献した。
 
 本サミットは、G7デジタル技術担当大臣会合を経て、内閣官房デジタル市場競争本部事務局及び公正取引委員会が東京で主催し、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国及び欧州委員会におけるG7当局から代表団が参加した。


(参考)上記の米国FTC以外にもG7各国の競争当局から以下のとおり、公表文が出されている。

参考 公正取引委員会

参考 イタリア競争・市場保護委員会

参考 カナダ競争局

参考 フランス競争委員会

参考 米国司法省反トラスト局

参考 英国競争・市場庁

参考 ドイツ連邦カルテル庁


DOJ、Koch Foodsが鶏肉生産者との契約において不公正かつ反競争的な契約解除違約金を課すことを禁止するために提訴し、同意判決案を提出

2023年11月9日 米国司法省反トラスト局 公表

原文

【概要】

 司法省(以下「DOJ」という。)は、2023年11月9日、米国第5位の鶏肉加工業者であるKoch Foods Incorporated(以下「Koch Foods」という。)に対し、シャーマン法及びパッカー・ストックヤード法に基づく民事訴訟を提起した。訴状によれば、Koch Foodsが養鶏業者又は鶏肉生産者に対し、Koch Foodsから競合の鶏肉加工業者へ契約先を変更する場合に契約解除違約金をKoch Foodsに支払うよう、反競争的かつ不公正に求めたとしている。DOJは、提訴と同時に、生産者が加工業者を変更する際に、Koch Foodがペナルティを課すことを禁止し、他の鶏肉加工業者と契約しようとした生産者に対し、Koch Foodsが違法に課した特定の費用、手数料及びペナルティを返還するよう求める同意判決案を提出した。
 
 DOJのマイケル・ケーディス反トラスト局次長は、次のように述べた。
「反トラスト法及び競争法は、生産者がその製品、サービス及び労働力の競争から利益を得る権利を保護している。今回の措置は、自由で公正な競争を促進し、パッカー・ストックヤード法の執行を再活性化するための米国農務省(以下「USDA」という。)との新たなパートナーシップの重要な一歩である。」
 
 USDAのアンディ・グリーン上級顧問(公正・競争市場担当)は、次のように述べた。
「パッカー・ストックヤード法は、公平性を確保するものであり、本日の措置はそれを実現するものである。生産者が競争する権利を保護する本件措置は、競争市場の開放に対するUSDAとDOJの共同の決意を示すものである。」
 
 訴状によると、アラバマ、ジョージア、ミシシッピ及びテネシーで加工施設を運営するKoch Foodsは、農家が契約を解除した場合に違約金として収入の相当分を返済するよう要求し、他の加工業者への切替えを妨げたという。訴状で主張されているように、Koch Foodsの契約解除違約金は、鶏肉生産者によって異なるが、ほとんどの場合、生産者の年間手取り収入の半分以上であり、1年分以上の手取り収入に達したケースもあった。Koch Foodsは、生産者がKoch Foodsの競合事業者に乗り換えるのを阻止するために契約解除違約金の脅威を利用して、Koch Foodsの競合事業者に乗り換えようとした十数軒の家族経営農家を実際に提訴し、又は提訴すると脅迫した。
 
 結果的に、契約解除違約金条項は、シャーマン法に違反する反競争的な事実上の競業避止条項として機能していた。また、この違約金条項は、1921年に成立した家畜・家禽生産者を保護する画期的な法律であるパッカー・ストックヤード法に違反する不公正な慣行又は手段でもある。
 同時に、反トラスト局は、競争上の懸念に対処するため、同意判決案を提出した。これが裁判所によって承認されれば、同意判決はKoch Foodsに対し、以下の要求をすることになる。
・  Koch Foodsは、今後契約解除違約金条項を適用しないことを、同条項を含む契約を締結している全ての生産者に対して通知すること。
・  生産者が契約解除違約金として支払った全ての費用や、Koch Foodsが契約解除違約金条項に従ったために生産者が負担した訴訟費用を、生産者に賠償すること。
・  今後7年間、契約解除違約金条項を生産者との契約に一切含めないこと、また、契約解除に伴う違約金を徴収するという手段を採らないこと。
・  契約解除をめぐる紛争に巻き込まれた生産者や、Koch Foodsによる契約解除違約金に係る慣行に関するDOJ又はUSDAの調査に協力した生産者に対して、報復、脅迫又は嫌がらせを行わないこと。
・  今後7年間、Koch Foodsが最終判決を遵守していることの証明を含む報告書を毎年提出すること。
 
 本日の提訴及び同意判決案は、USDAがDOJに付託した最近のパッカー・ストックヤード法に基づく訴訟としては2件目である。
 
 タニー法で義務付けられているとおり、本同意判決案は競争上の影響に関する声明とともに連邦官報に掲載される予定である。何人も60日間の意見募集期間中に、DOJ反トラスト局シビル・コンダクト・タスク・フォースの責任者宛てに同意判決案に関する意見書を提出することができる。60日間の意見募集期間が終了した時点で、イリノイ州北部地区連邦地方裁判所は、公共の利益に合致していると判断した場合、最終判決を下すことができる。

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