米国
FTC、「AI及びクリエイティブ分野のパネルディスカッション」から得られた要点に関するスタッフレポートを公表
米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)のスタッフは、2023年10月に開催された、テキスト、画像、音声等をコマンドボタン押すだけで生成できるツールである生成人工知能(以下「生成AI」という。)が、音楽、映画制作、ソフトウェア開発、その他のクリエイティブ分野における専門家ら(以下「クリエイター」という。)にどのように使用され、どのような影響を及ぼしているかを検証した公開バーチャル会議の要点について詳述したスタッフレポートを作成した。
公開バーチャル会議では、アーティスト、作家、俳優、ミュージシャン、その他のクリエイティブ分野を代表する現役のクリエイターらが、生成AIには自分たちの作業を助ける可能性があるなどの利点がある一方で、以下のような懸念があることも表明した。
・ 同意のない収集:参加者であるクリエイターは、過去の契約が拡大解釈されるなどして、彼らの同意や認識なしに過去の作品が収集され、生成AIモデルを訓練するために使用されていることを指摘した。
・ 非開示: 参加者はまた、多くの生成AI開発者が、どのような作品を学習データに使用しているかを公表していないため、自分の作品が使用されていることすら把握できていないかもしれないとの懸念を表明した。
・ 作品における生成AIとの競合: 参加者は、クリエイターが作品を競い合う場に生成AIによる生成結果が現れ始めており、消費者や将来性のあるコンテンツ提供事業者が人間の手による作品を見つけることを難しくしている可能性があると述べた。
・ スタイルの模倣:生成AIツールが独自のスタイル、ブランド、声、肖像を模倣するために使用され、見知らぬ人や元顧客が合成音声や画像を含む模倣品を製造できるようになることについて懸念を表明した参加者もいた。
・ 虚偽の推薦: 参加者によると、生成AIは、アーティストが決して推薦していない商品を販売する虚偽の描写を作成したり、クローン音声を使用して攻撃的なコンテンツを生成する荒らしに使用されたりしているという。
参加者は、アーティストが自分の作品を生成AIに使用させないオプトアウト方式を選択できるようにし始めている生成AI事業者もいるが、この方式は、急速に変化する市場における意図しない使用を監視するコストをクリエイターに強いることになる上、将来の事案にしか対応できず、生成AI開発者側の透明性の欠如を考えると、実施は難しいと指摘した。そして、オプトアウト方式ではなく、生成AI開発者に対し、アーティストの作品を使用する際に、アーティストが自分の作品を生成AIに使用させるかどうかをコントロールできるようにするオプトイン方式を採用するよう促した。
本スタッフレポートは、公開バーチャル会議で提起された懸念事項の多くはFTCの所掌範囲を超えるものであるものの、FTCが既存の権限を使って生成AI関連市場において的を絞った執行を行うことは、公正な競争を保護し、不公正又は欺瞞的な行為や慣行を防止するのに役立つと指摘している。本スタッフレポートは、FTCが引き続き生成AI業界の動向を注意深く監視し、公正な競争を促進し、消費者を保護し、この変革を続ける技術から人々が利益を得られるようにするために、いつでも法執行及び政策手段を駆使することができると述べている。
FTCは、3対0の賛成多数で議決し、本スタッフレポートを発行することを決定した。