米国
FTC、DOJ及び保健福祉省、医療分野における企業支配の拡大の影響に関する政府横断的調査を開始
1 米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)、米国DOJ反トラスト局及び米国保健福祉省(以下「HHS」という。)の3当局は共同で、プライベート・エクイティ・ファンドやその他の企業による医療分野への支配の拡大傾向について、政府横断的な公開調査を開始した。
2 プライベート・エクイティ・ファンド及びその他の企業経営者は、医療ビジネスを対象とした買収に関与することが増えており、時として、それらの買収は、医療の質を犠牲にして利益を最大化することにつながる可能性がある。今回の政府横断的な調査は、このような医療市場における買収が、患者の健康、労働者の安全、医療の質、患者及び納税者のための安価な医療を脅かしながら、どのように医療分野の統合を加速させ、企業に利益をもたらすのかを解明しようとするものである。
3 3当局は、医療系の事業者、民間健康保険会社、プライベート・エクイティ・ファンド、その他の資産運用会社による医療機関、医療設備、その付属品・サービス等の買収について、一般に意見を求める情報提供依頼書(Request
for
Information、以下「RFI」という。)を発出した。このRFIはハート・スコット・ロディノ反トラスト改善法に基づくDOJやFTCへの届出義務のない買収に関する情報も求めている。
4 リナ・カーンFTC委員長は、「プライベート・エクイティ・ファンドによる医療機関の買収が人員削減や質を切り捨てるためだけに行われるなら、患者にとって有害である。FTCは、本調査を通じて、プライベート・エクイティ・ファンドによるロールアップ戦術(訳注:同じ業界で多数の事業を相次ぎ買収すること)、ストリップ・アンド・フリップ戦術(訳注:割安な企業を購入し、そこから価値を引き出し、その後すぐに新規株式公開で売却する戦略)、その他、経営陣を富ませるが、米国民に悪影響を与え得る戦術を引き続き精査していく。」と述べた。
5 ジョナサン・カンターDOJ反トラスト局長は、「医療サービス等の市場における競争の維持は、米国民の健康及び福祉に重要な影響を与えるものなので、DOJの優先政策事項である。本RFIによって、現代の医療業界の市場実態を正確に理解し、違法な買収に対して強制力をもって法律を執行することにつなげることができる。患者、労働者、市場参加者の意見を聞くことは、医療分野の統合に関する今後の法執行及び政策努力を展開する上で極めて重要である。」と述べた。
6 ザビエル・ベセラHHS長官は、「医療サービス等の市場における競争の活性化は、人々により多くの選択肢を与える。つまり、競争により、患者が高品質で低コストの医療を受けられるようになり、医療従事者がより高い報酬を得て、より良い条件の下で働けるようになることにも納税者の税金を守ることにもつながる。我々は、政策立案、規制の策定、法執行に当たり、プライベート・エクイティ・ファンド及び企業による医療分野での買収がもたらす影響をもっと理解するために努力する必要がある。バイデン-ハリス政権は、引き続き、医療分野における透明性及び競争の改善に取り組んでいく。」と述べた。
7 医療機関及び医療保険市場における競争は、より質の高い、より低コストの医療を促進し、医療へのアクセスを拡大し、イノベーションを促進し、医療従事者の報酬及び福利厚生を高めることが研究で示されている。このRFIに対して提出された意見は、医療サービス等の市場における競争を促進・保護し、良質で安価な医療製品・サービスへの適切なアクセスを確保することを目的とした規制の検討を含めて、3当局による法執行の優先順位や将来の取組に反映される。
8 今回の3当局によるRFIは、メディケア及びメディケイドサービスセンターが最近発表したメディケア・アドバンテージに関するRFI(2024年1月30日)並びに、FTC及びHHSが発表した、医薬品の中間業者グループはどのようにして医薬品不足を引き起こす可能性があるのかに関するRFI(2024年2月14日)に基づいている。本日発表されたRFIは、2023年12月にDOJ、FTC及びHHSが発表した、患者及び医療従事者に利益をもたらす競争を促進しつつ、医療費及び薬剤費を削減するための取組に由来するものである。
9 3当局はRFIの発表のほか、本日開催される医療分野におけるプライベート・エクイティ・ファンドの影響を探るバーチャルな公開ワークショップにも参加し、有害な影響に対処するために連邦政府が行っている取組について議論する予定である。
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患者、消費者保護団体、医師、看護師、医療機関又は医療管理者、雇用者、保険会社などの全ての市場参加者は、RFIに対する意見を共有することが期待されている。3当局は、透析クリニック、老人ホーム、ホスピス提供者、プライマリーケア提供者(訳注:かかりつけ医)、病院、在宅医療機関、地域密着型サービス提供者、行動医療提供者、請求・回収代行業などに係る様々な買収に関する意見を求めている。
11 一般市民はRegulations.govにおいて、60日以内、2024年5月6日まで意見を提出できる。提出された意見はRegulations.govに掲載される。
DOJ及び16州の司法長官、スマートフォン市場を独占したとしてアップルを提訴
【概要】
1 米国司法省(以下「DOJ」という。)及び16州の司法長官は、シャーマン法2条に違反して、スマートフォン市場を独占した又は独占を企てたとして、アップルに対して反トラスト法民事訴訟を提起した。
2 ニュージャージー州連邦地方裁判所に提出された訴状によると、アップルは、契約上の制限をディベロッパーに選択的に課し、重要なアクセスポイントからディベロッパーを締め出すことにより、スマートフォンの独占を違法に維持しているとされる。アップルは、ユーザーをiPhoneに依存させないで相互運用性を促進し、消費者とディベロッパーのコストを下げるようなアプリ、製品、サービスを妨害している。アップルはその独占力を行使し、消費者、ディベロッパー、コンテンツ制作者、アーティスト、出版社、中小企業、商業者などからより多くの金銭を搾取している。この訴訟を通じて、DOJと各州司法長官は、米国民を代表して、これらの重要な市場における競争を回復することを求めている。
3 メリック・ガーランド司法長官は、「企業が反トラスト法に違反しているために、消費者がより高い価格を支払わされるべきではない。
4 リサ・モナコ司法副長官は、「いかに強力であろうと、いかに普及していようと、いかに人気のある企業であろうと、法の下にある(no company is above the law)。この訴訟を通じて、我々はこの原則に徹底してコミットしてゆく。」と述べた。
5 ベンジャミン・マイザー司法長官補代行は、「企業が反競争的な行為を行えば、米国民や我々の経済が被害を受ける。今回のアップルに対する提訴は、競合他者を排除し、イノベーションの阻害を企てる者に対して強いシグナルを送るものである。DOJは、反競争的行為がどこで起きようと、これを根絶させ、経済的正義を前進させるために、利用可能なあらゆる手段を用いることを約束する。」と述べた。
6 ジョナサン・カンターDOJ反トラスト局長は、「アップルは長年にわたり、もぐらたたき(Whac-A-Mole)的な契約規則や制限を課すことにより、競争上の脅威に対応してきた。その結果、アップルは消費者やディベロッパー、クリエーターに対してより高い価格を課し、ライバルとなる技術による競争的な代替手段を制限することを可能にしてきた。この訴訟は、こうしたアップルの責任を追求し、他の重要な市場で同様の違反行為を行えなくさせるものである。」と述べた。
7 訴状では、アップルはスマートフォン市場及び高性能スマートフォン市場(performance smartphones markets)において独占力を有しており、それを利用して広範かつ持続的な違反行為を行っているとしている。このような反競争的行為は、アップルがその独占力を維持しつつ、可能な限り多くの収益を引き出すことを目的としているとしている。訴状では、アップルが以下の行為を含む、いくつかの反競争的行為を行っており、それは現在も継続しているとしている。
・革新的なスーパーアプリの締め出し(Blocking Innovative Super Apps):消費者が競合するスマートフォンプラットフォーム間の乗換えを容易にするような幅広い機能を持つアプリの成長を阻害してきた。
・モバイル・クラウド・ストリーミングサービスの妨害(Suppressing Mobile Cloud Streaming Services):消費者が高額なスマートフォンのハードウェアを購入することなく、高品質のゲームやその他のクラウド・ベースのアプリを楽しめるようにするクラウド・ストリーミングアプリやサービスの開発を妨害してきた。
・異なるOS間でのメッセージアプリの排除(Excluding Cross-Platform Messaging Apps):消費者がiPhoneを購入し続けなければならなくするため、異なるOS間でのメッセージングの質を低下させ、イノベーションを阻害し、ユーザーにとっての安全性を低下させてきた。
・アップル製以外のスマートウォッチの機能低下(Diminishing the Functionality of Non-Apple Smartwatches):サードパーティのスマートウォッチの機能を制限している。そのため、Apple Watchを購入した消費者は、iPhoneを買い続けなければ多額の自己負担を強いられることになる。
・サードパーティのデジタル・ウォレットの制限(Limiting Third Party Digital Wallets):サードパーティによるアプリがtap-to-pay機能(訳注:クレジットカードのリーダー機能を搭載したスマートフォン端末を用いた決済) を提供することを妨げており、プラットフォーム横断的に使用できるサードパーティ製のデジタル・ウォレットの開発を制限している。