米国
DOJ、ライブ・コンサート市場を独占したとしてLive Nation及びTicketmasterを提訴
2024年5月23日 米国司法省 公表【概要】1 米国司法省(以下「DOJ」という。)及び30州の司法長官は、Live Nation Entertainment Inc.(以下「Live Nation」という。)及びその完全子会社であるTicketmaster LLC (以下「Live Nation-Ticketmaster」という。)に対し、独占及びライブ・エンターテインメント業界全体の市場における競争を阻害するその他の違法行為について、民事反トラスト法訴訟を提起した。本件訴訟には構造的是正の要求も含まれており、ライブ・コンサート業界の競争を回復し、ファンに低価格でより良い選択肢を提供し、現役のミュージシャンその他のパフォーマンスアーティストに会場の扉を開くことを目指している。
2 本日(2024年5月23日)、ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所に提出された訴状において、DOJは、Live Nation-Ticketmasterがシャーマン法第2条に違反して違法に独占力を行使していると主張している。当該行為の結果、米国の音楽ファンは、他国のファンよりも高額のチケット代を支払っており、チケット販売の新しい技術を使う機会を奪われ、時代遅れの技術を使うことを余儀なくされた。同時に、Live Nation-Ticketmasterは、出演者、会場、独立したプロモーターに対して、競争を阻害するような方法で力を行使している。また、Live Nation-Ticketmasterは、競合他社の参入及び事業拡大を制限する競争障壁を課している。
3 メリック・ガーランド司法長官は、次のように述べた。「我々は、Live Nationが、ファン、アーティスト、小規模なプロモーター、会場運営者を犠牲にして、米国のライブイベント業界を独占的に支配するため、違法で反競争的な行為を行ってきたと主張している。その結果、ファンはより多くの料金を支払い、アーティストはコンサートを行う機会が少なくなり、小規模なプロモーターは締め出され、会場はチケット販売サービスの現実的な選択肢が少なくなる。Live Nation-Ticketmaster を分割する時が来た。」
4 リサ・モナコ司法副長官は、次のように述べた。「本日の発表は、事業者の不正行為と戦うためのDOJの最新の取組を反映している。事業者の不正行為に対する我々の戦いは、消費者、労働者、あらゆる種類の事業者に不利益をもたらす反競争的行為に重点を置いている。本訴状は、Live Nation-Ticketmasterが、ライブ・コンサート市場における支配を強化し、業界全体のゲートキーパーとして行動するために反競争的行為を行ったということを主張している。本件措置は、ファン、アーティスト及び彼らを支援する業界にとって、このライブ音楽の時代をより身近なものにするための一歩である。」
5 ベンジャミン・マイザー司法長官補代行は、次のように述べた。「DOJは、ライブ音楽を含む経済全体での競争に責任を持っている。我々が訴状において主張しているように、Live Nation-Ticketmasterは、全国のファン、会場、アーティストを犠牲にして、コンサートやその他のライブイベント市場を独占している。DOJは、ライブ音楽業界における競争を回復させるために本件訴訟を提起することを誇りに思う。」
6 ジョナサン・カンターDOJ反トラスト局長は、次のように述べた。「米国のライブ音楽業界が崩壊しているのは、Live Nation-Ticketmasterが違法な独占を行っているためである。我々の反トラスト法訴訟は、Live Nation-Ticketmasterの独占を解消し、ファン及びアーティストの利益のために競争を回復しようとするものである。」
7 訴状によると、Live Nation-Ticketmasterは、いくつかのコンサート・プロモーション及び最初のチケット販売市場において違法に独占を維持し、アリーナや円形劇場を含むライブ・コンサート会場に影響を及ぼすその他の排他的行為(会場と長期独占のチケット販売契約を締結するなど)を行ってきた。訴状はさらに、Live Nation-Ticketmasterの排他的行為は、同社が「フライホイール」(flywheel)と呼んでいる慣行を強化し、保護していると主張している。フライホイールとは、Live Nation-Ticketmasterの自己強化型ビジネスモデルであり、コンサートに来るファンやスポンサーから料金や収益を獲得し、その収益を利用してアーティストを独占プロモーション契約に縛り付け、同社が保有している強力なライブコンテンツを利用して会場と長期独占のチケット販売契約を締結するもので、このサイクルを繰り返すというものである。Live Nation-Ticketmasterの反競争的行為は、競合他社が能率競争を行う(compete on the merits)上で、さらに多くの障壁を生み出す。具体的には、Live Nation-Ticketmasterは、競争を排除し、市場を独占するために以下をはじめとする様々な戦術を実施した。
・ Oak View Groupとの関係:Live Nation-Ticketmasterは、Oak View Groupとの長年の関係を利用している。Oak View Groupは、自らを「ハンマー」であり、Live Nationの「プロテクター」であると表現してきた、潜在的な競争相手から転身したパートナーである。近年、Oak View Groupは、才能のあるアーティストの獲得に関しLive Nationと競り合うことを避け、会場に対してTicketmasterと独占契約を締結するよう働きかけてきた。例えば、Live Nationは、Oak View Groupが競争しようとしたことを何度も叱責した。ある事例では、Live Nationは、「・・・を(他のアーティスト・エージェント)に所属させるなんて、誰がそんなに愚かなことをするのか。」と尋ね、別の事例では、Live Nationは、「(あのアーティスト・エージェンシー)が我が社と戦わないようにさせよう。」と述べた。
・ 潜在的な参入者に対する報復:Live Nation-Ticketmasterは、ある事業者に対して、その子会社の1社が米国のコンサート・プロモーション市場に参入する足掛かりを得るための競争を止めない限り金銭的報復を行うと脅すことに成功した。
・ 競合他社と協力する会場に対する脅迫及び報復:Live Nation-Ticketmasterのコンサート・プロモーションにおける力とは、全てのライブ・コンサート会場が、別のプロモーター又はチケット販売業者を選択すると、Live Nation-Ticketmasterから反発を受け、コンサート、収益、ファンを失うリスクが伴うことを知っていることである。
・ 排他的な契約による競争の排除:Live Nation-Ticketmasterは、コンサート会場との長期独占契約を維持し、コンサート会場が同社と競合するチケット販売業者を検討又は選択したり、より優れた又はより費用対効果の高いチケット販売技術に切り替えたりできないようにしている。これらの契約により、Live Nation-Ticketmasterは、自社のチケット販売技術及び顧客サービスを改善するという競争圧力から逃れている。
・ 会場が複数のチケット販売業者を利用することを阻止:Live Nation-Ticketmasterの行為及び独占契約により、これまでと異なる新しいプロモーション会社、競合のチケット販売会社、ビジネスモデルの出現が阻止される。Live Nation-Ticketmasterは、会場が複数のチケット販売業者を利用できるようにすることを阻止している。チケット販売業者は、価格、料金、品質、イノベーションの最適な組合せをファンに提供することで競争する。
・ アーティストによる会場の利用を制限:Live Nation-Ticketmasterは、買収、パートナーシップ、契約を通じて、円形劇場を含む主要な会場の更なる支配権を獲得している。Live Nation-Ticketmasterは、アーティストがプロモーションサービスの利用に同意しない限り、アーティストによるこれらの会場の利用を制限している。
・ 競合他社や競争上の脅威の買収:Live Nation-Ticketmasterは、社内で脅威と特定した小規模で地域的なプロモーターを戦略的に多数買収した。これにより、競争が阻害され、アーティストの報酬に影響を与えた。
8 Live Nationは、カリフォルニア州ビバリーヒルズに本社を置くデラウェア州の事業者である。同社は自らを「世界最大のライブ・エンターテインメント企業」、「世界最大のライブ・ミュージック・コンサートのプロデューサー」、「世界をリードするライブ・エンターテインメントのチケット販売及びマーケティング企業」と称している。また、Live Nationは北米で265以上のコンサート会場を所有又は管理しており、その中には米国の円形劇場上位100のうち60以上が含まれている。コンサート事業(プロモーション、会場管理、音楽祭開催など)、チケット販売事業( Ticketmasterの事業)及びスポンサー・広告事業の3つの事業から、世界全体で年間220億ドル以上の収益を上げている。
9 Ticketmaster は、Live Nationの100%出資会社で、ビバリーヒルズに本社を置くヴァージニア州の有限責任会社であり、コンサートチケットが最初に販売される時点でファンにチケットを販売し、購入者が後にチケットを転売できるようにする転売プラットフォームを運営している。同社は、米国で群を抜いて最大のコンサートチケット販売業者であり、最も近い競合他社の数倍の規模である。
2024年5月23日 米国司法省 公表【概要】
1 米国司法省(以下「DOJ」という。)及び30州の司法長官は、Live Nation Entertainment Inc.(以下「Live Nation」という。)及びその完全子会社であるTicketmaster LLC (以下「Live Nation-Ticketmaster」という。)に対し、独占及びライブ・エンターテインメント業界全体の市場における競争を阻害するその他の違法行為について、民事反トラスト法訴訟を提起した。本件訴訟には構造的是正の要求も含まれており、ライブ・コンサート業界の競争を回復し、ファンに低価格でより良い選択肢を提供し、現役のミュージシャンその他のパフォーマンスアーティストに会場の扉を開くことを目指している。
2 本日(2024年5月23日)、ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所に提出された訴状において、DOJは、Live Nation-Ticketmasterがシャーマン法第2条に違反して違法に独占力を行使していると主張している。当該行為の結果、米国の音楽ファンは、他国のファンよりも高額のチケット代を支払っており、チケット販売の新しい技術を使う機会を奪われ、時代遅れの技術を使うことを余儀なくされた。同時に、Live Nation-Ticketmasterは、出演者、会場、独立したプロモーターに対して、競争を阻害するような方法で力を行使している。また、Live Nation-Ticketmasterは、競合他社の参入及び事業拡大を制限する競争障壁を課している。
3 メリック・ガーランド司法長官は、次のように述べた。
「我々は、Live Nationが、ファン、アーティスト、小規模なプロモーター、会場運営者を犠牲にして、米国のライブイベント業界を独占的に支配するため、違法で反競争的な行為を行ってきたと主張している。その結果、ファンはより多くの料金を支払い、アーティストはコンサートを行う機会が少なくなり、小規模なプロモーターは締め出され、会場はチケット販売サービスの現実的な選択肢が少なくなる。Live Nation-Ticketmaster を分割する時が来た。」
4 リサ・モナコ司法副長官は、次のように述べた。
「本日の発表は、事業者の不正行為と戦うためのDOJの最新の取組を反映している。事業者の不正行為に対する我々の戦いは、消費者、労働者、あらゆる種類の事業者に不利益をもたらす反競争的行為に重点を置いている。本訴状は、Live Nation-Ticketmasterが、ライブ・コンサート市場における支配を強化し、業界全体のゲートキーパーとして行動するために反競争的行為を行ったということを主張している。本件措置は、ファン、アーティスト及び彼らを支援する業界にとって、このライブ音楽の時代をより身近なものにするための一歩である。」
5 ベンジャミン・マイザー司法長官補代行は、次のように述べた。
「DOJは、ライブ音楽を含む経済全体での競争に責任を持っている。我々が訴状において主張しているように、Live Nation-Ticketmasterは、全国のファン、会場、アーティストを犠牲にして、コンサートやその他のライブイベント市場を独占している。DOJは、ライブ音楽業界における競争を回復させるために本件訴訟を提起することを誇りに思う。」
6 ジョナサン・カンターDOJ反トラスト局長は、次のように述べた。
「米国のライブ音楽業界が崩壊しているのは、Live Nation-Ticketmasterが違法な独占を行っているためである。我々の反トラスト法訴訟は、Live Nation-Ticketmasterの独占を解消し、ファン及びアーティストの利益のために競争を回復しようとするものである。」
7 訴状によると、Live Nation-Ticketmasterは、いくつかのコンサート・プロモーション及び最初のチケット販売市場において違法に独占を維持し、アリーナや円形劇場を含むライブ・コンサート会場に影響を及ぼすその他の排他的行為(会場と長期独占のチケット販売契約を締結するなど)を行ってきた。訴状はさらに、Live Nation-Ticketmasterの排他的行為は、同社が「フライホイール」(flywheel)と呼んでいる慣行を強化し、保護していると主張している。フライホイールとは、Live Nation-Ticketmasterの自己強化型ビジネスモデルであり、コンサートに来るファンやスポンサーから料金や収益を獲得し、その収益を利用してアーティストを独占プロモーション契約に縛り付け、同社が保有している強力なライブコンテンツを利用して会場と長期独占のチケット販売契約を締結するもので、このサイクルを繰り返すというものである。Live Nation-Ticketmasterの反競争的行為は、競合他社が能率競争を行う(compete on the merits)上で、さらに多くの障壁を生み出す。具体的には、Live Nation-Ticketmasterは、競争を排除し、市場を独占するために以下をはじめとする様々な戦術を実施した。
・ Oak View Groupとの関係:Live Nation-Ticketmasterは、Oak View Groupとの長年の関係を利用している。Oak View Groupは、自らを「ハンマー」であり、Live Nationの「プロテクター」であると表現してきた、潜在的な競争相手から転身したパートナーである。近年、Oak View Groupは、才能のあるアーティストの獲得に関しLive Nationと競り合うことを避け、会場に対してTicketmasterと独占契約を締結するよう働きかけてきた。例えば、Live Nationは、Oak View Groupが競争しようとしたことを何度も叱責した。ある事例では、Live Nationは、「・・・を(他のアーティスト・エージェント)に所属させるなんて、誰がそんなに愚かなことをするのか。」と尋ね、別の事例では、Live Nationは、「(あのアーティスト・エージェンシー)が我が社と戦わないようにさせよう。」と述べた。
・ 潜在的な参入者に対する報復:Live Nation-Ticketmasterは、ある事業者に対して、その子会社の1社が米国のコンサート・プロモーション市場に参入する足掛かりを得るための競争を止めない限り金銭的報復を行うと脅すことに成功した。
・ 競合他社と協力する会場に対する脅迫及び報復:Live Nation-Ticketmasterのコンサート・プロモーションにおける力とは、全てのライブ・コンサート会場が、別のプロモーター又はチケット販売業者を選択すると、Live Nation-Ticketmasterから反発を受け、コンサート、収益、ファンを失うリスクが伴うことを知っていることである。
・ 排他的な契約による競争の排除:Live Nation-Ticketmasterは、コンサート会場との長期独占契約を維持し、コンサート会場が同社と競合するチケット販売業者を検討又は選択したり、より優れた又はより費用対効果の高いチケット販売技術に切り替えたりできないようにしている。これらの契約により、Live Nation-Ticketmasterは、自社のチケット販売技術及び顧客サービスを改善するという競争圧力から逃れている。
・ 会場が複数のチケット販売業者を利用することを阻止:Live Nation-Ticketmasterの行為及び独占契約により、これまでと異なる新しいプロモーション会社、競合のチケット販売会社、ビジネスモデルの出現が阻止される。Live Nation-Ticketmasterは、会場が複数のチケット販売業者を利用できるようにすることを阻止している。チケット販売業者は、価格、料金、品質、イノベーションの最適な組合せをファンに提供することで競争する。
・ アーティストによる会場の利用を制限:Live Nation-Ticketmasterは、買収、パートナーシップ、契約を通じて、円形劇場を含む主要な会場の更なる支配権を獲得している。Live Nation-Ticketmasterは、アーティストがプロモーションサービスの利用に同意しない限り、アーティストによるこれらの会場の利用を制限している。
・ 競合他社や競争上の脅威の買収:Live Nation-Ticketmasterは、社内で脅威と特定した小規模で地域的なプロモーターを戦略的に多数買収した。これにより、競争が阻害され、アーティストの報酬に影響を与えた。
8 Live Nationは、カリフォルニア州ビバリーヒルズに本社を置くデラウェア州の事業者である。同社は自らを「世界最大のライブ・エンターテインメント企業」、「世界最大のライブ・ミュージック・コンサートのプロデューサー」、「世界をリードするライブ・エンターテインメントのチケット販売及びマーケティング企業」と称している。また、Live Nationは北米で265以上のコンサート会場を所有又は管理しており、その中には米国の円形劇場上位100のうち60以上が含まれている。コンサート事業(プロモーション、会場管理、音楽祭開催など)、チケット販売事業( Ticketmasterの事業)及びスポンサー・広告事業の3つの事業から、世界全体で年間220億ドル以上の収益を上げている。
9 Ticketmaster は、Live Nationの100%出資会社で、ビバリーヒルズに本社を置くヴァージニア州の有限責任会社であり、コンサートチケットが最初に販売される時点でファンにチケットを販売し、購入者が後にチケットを転売できるようにする転売プラットフォームを運営している。同社は、米国で群を抜いて最大のコンサートチケット販売業者であり、最も近い競合他社の数倍の規模である。