2024年12月

米国

FTC、Hessコーポレーション のCEOをChevronの取締役に任命することを禁止する同意命令案を承認

2024年9月30日 米国連邦取引委員会 公表

原文

【概要】

1 米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)は、Chevronが競合事業者の石油会社Hessを買収するにあたっての反トラスト法上の懸念を解消するため、Chevronの取締役にHessコーポレーションのJohn B. Hess CEOを任命することを禁止する同意命令案を承認した。


2 FTCは、申立書において、以下のように主張している。
 Hess氏は、石油輸出国機構(OPEC)の現職及び元事務局長並びにサウジアラビア出身の政府高官と公私にわたって情報交換を行っていた。その情報交換の中で、Hess氏は、原油市場の安定と在庫管理の重要性を強調し、これらの関係者に、この問題に関して行動を起こし、様々なイベントで発言するよう促していた。
 Hess氏は、OPECの競合産油国にも生産を安定させ、在庫を減らすよう勧めた。Hess氏が公言しているように、在庫水準と原油価格には直接的な相関関係がある。原油の探査と生産が減少すると、一般的に原油価格が上昇し、ガソリン、ディーゼル、ジェット燃料などの輸送用燃料や灯油など、石油製品の価格も上昇する。
 ChevronとHessコーポレーションとの合併契約は、Hess氏を取締役に任命するために必要なあらゆる行動をとることをChevronに要求している。Hess氏がChevronの取締役に就任した場合、市場を安定させるというOPECの目標を支持する旨のメッセージをOPEC等に広めるためのより大きなプラットフォームを得ることになる。そして、Chevronは原油価格の上昇を維持するためにOPECの供給量決定に合わせて自社の生産を調整する可能性が高まる。Hess氏のこれまでの行動を考慮すると、Hess氏がChevronの取締役に任命されることで、業界における協調のリスクが有意に高まるなど、競争を阻害するおそれが大きくなる。
 
3 FTC競争局のヘンリー・リュー局長は、次のように述べた。
 「Hess氏は、世界の原油の供給量や原油市場におけるその他の競争要因に関して競合他社と情報交換を行っており、 Chevronの取締役には不適格である。FTCは、この重要な市場における競争を保護し、米国の消費者がガソリン価格の低下から利益を得られるよう、あらゆる執行手段を行使する。」

4 FTCが提案する同意命令案は、ChevronがHess氏をChevronの取締役に指名、任命することを禁止するとともに、Hess氏がChevron若しくはその取締役会の顧問、相談役又は代表に就くことを認めることを禁止している。ただし、同意命令案は、ChevronがHess氏を①ガイアナにあるHessコーポレーションの石油関連及び保健省関連の活動に関してガイアナ政府関係者との協議、②Salk研究所の「植物利用イニシアティブ」に関連した協議を担当する役割に限定した顧問、相談役、又は代表とすることを認める。

5 FTCは、3対2の賛成多数で同意命令案を承認し、訴状及び同意命令案を意見募集に付すことを決定した。リナ・M・カーン委員長は、レベッカ・ケリー・スローター委員及びアルバロ・ベドヤ委員と連名で賛成の意見書を発表した(注1)。メリッサ・ホリオーク委員(注2)及びアンドリュー・N・ファーガソン委員(注3)は、それぞれ反対の意見書を発表した。
(注1) https://www.ftc.gov/legal-library/browse/cases-proceedings/public-statements/statement-chair-lina-m-khan-joined-commissioner-rebecca-kelly-slaughter-commissioner-alvaro-bedoya-1
(注2) https://www.ftc.gov/legal-library/browse/cases-proceedings/public-statements/dissenting-statement-commissioner-melissa-holyoak-matter-chevron-corporation-hess-corporation
(注3) https://www.ftc.gov/legal-library/browse/cases-proceedings/public-statements/dissenting-statement-commissioner-andrew-n-ferguson-matter-chevron-corporation-hess-corporation

エピックゲームズ対グーグルの私訴におけるグーグル敗訴を受けての是正措置命令

2024年10月7日 カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所
原文

【概要】

1 本件経緯

(1)  2020年8月、エピックゲームズは、独自の決済システムを備えたゲームアプリ(フォートナイト)が、グーグルのPlay Storeから削除されたことが反トラスト法違反であるとして差止めを求めて、カリフォルニア州連邦地方裁判所に提訴した。

(2)  2023年12月、カリフォルニア州連邦地方裁判所の陪審員は、全員一致でグーグルの独占を認める評決を出した。

(3) 2024年10月7日、カリフォルニア州連邦地方裁判所は、上記評決を受けて検討した結果、具体的な是正措置に関する命令を出した。

2 是正措置命令の概要
(1) 本命令は、Google LLC及びその親会社、関連会社、子会社、役員、代理人、従業員等で、本命令の送達による実際の通知を受け取った者(総称して「グーグル」という。)に適用される。 

(2) 特段の定めがない限り、本命令の効力発生日は2024年11月1日とする。

(3) 本命令の地理的範囲はアメリカ合衆国とする。

(4) 2027年11月1日までの3年間、グーグルは、Androidアプリを配信している又は配信を検討している個人又は事業者等とGoogle Play Storeから得た収益を共有してはならない。

(5) 2027年11月1日までの3年間、グーグルは、アプリ開発者がアプリを最初に又は独占的にGoogle Play Storeに配信することに同意することを、支払、収益分配又はグーグルの製品・サービスへのアクセスの条件とすることはできない。

(6) 2027年11月1日までの3年間、グーグルは、アプリ開発者がサードパーティのAndroidアプリ配信プラットフォームでアプリを配信しないこと、又はGoogle Play Storeで配信しているアプリにはない機能や異なるバージョンでのアプリを配信しないことに同意することを、支払、収益分配又はグーグルの製品・サービスへのアクセスの条件とすることはできない。

(7) 2027年11月1日までの3年間、グーグルは、OEM又は通信事業者との契約において、Android端末の特定の場所にGoogle Play Storeをプリインストールすることに同意することを、支払、収益の分配又はグーグルの製品・サービスへのアクセスの条件とすることはできない。

(8) 2027年11月1日までの3年間、グーグルは、OEM又は通信事業者との契約において、Google Play Store以外のAndroidアプリ配信プラットフォーム又はストアをプリインストールしないことに同意することを、支払、収益の分配又はグーグルの製品・サービスへのアクセスの条件とすることはできない。

(9) 2027年11月1日までの3年間、グーグルは、Google Play Storeで配信されるアプリで、Google Play Billingの使用を義務付けたり、Google Play Billing以外のアプリ内決済手段の使用を禁止したりすることはできない。グーグルはアプリ開発者がユーザーとGoogle Play Billing以外のアプリ内決済手段の利用可否について連絡を取ることを禁止することはできない。グーグルはアプリ開発者にGoogle Play Billingを利用しているかどうかに基づく値段設定を求めることはできない。

(10) 2027年11月1日までの3年間、グーグルは、アプリ開発者がユーザーに対してGoogle Play Store以外でのアプリ入手方法や価格について連絡することを禁止することはできない。また、アプリ開発者がGoogle Play Store以外でのアプリダウンロードのリンクの提供を禁止することはできない。

(11) 3年間にわたり、グーグルは、サードパーティのAndroidアプリストアがユーザーにGoogle Play Storeのアプリを提供できるようにGoogle Play Storeのアプリカタログにアクセスできるようにする。Google Play Storeでのみ入手可能なアプリについて、グーグルは、Google Play Storeで直接ダウンロードできるその他のアプリと同じ条件でユーザーがダウンロードできるようにし、グーグルはそれによる全ての収益を確保できる。グーグルはサードパーティのAndroidアプリストアが、アプリカタログに掲載することをオプトアウトすることができる仕組みを提供する。グーグルは、本条項を遵守するために必要な技術の構築と実施を本命令の日付から8か月以内に行い、その技術が完全に機能し始めてから、3年間の遵守期間を開始することとする。

(12) 3年間にわたり、グーグルは、Google Play Storeを通じてサードパーティのAndroidアプリ配信プラットフォーム又はストアの配信を禁止することはできない。グーグルは、プラットフォーム又はストア及びそれらが配信するアプリが、コンピュータシステム及びセキュリティの観点から安全であり、米国連邦法又は州法に違反する違法な商品・サービスではなく、グーグルのコンテンツ基準にも違反しないことを確保するために、審査し、適当な措置を講ずることができる。この審査により講じる措置は、グーグルがGoogle Play Storeで配信するアプリに対して現在講じている措置と同等のものでなければならない。また、措置について(サードパーティから)異議申立てがあった場合、グーグルは、その必要性等について立証責任を負う。これら審査等にかかった相当の費用は、実費ベースで、グーグルからサードパーティに請求することができる。グーグルは、本条項を遵守するために必要な技術及び手続の構築と実施を本命令の日付から8か月以内に行い、その技術及び手続が完全に機能し始めてから、3年間の期間を開始することとする。

(13)  (12)記載の サードパーティからの異議については、以下に規定する技術委員会がまず判断し、必要に応じて裁判所が最終決定する。本命令の日付から30日以内に、当事者は裁判所に対して、3名で構成される技術委員を推薦する。エピックゲームズ及びグーグルはそれぞれ1名を選出し、この2名が3人目の委員を選出する。技術委員会が紛争を処理・解決できない場合には、当事者は裁判所に解決を求めることができる。技術委員会は本命令に定めた期限を延長することはできないが、裁判所に延長の受入れ又は否定を提案することはできる。3人目の委員の報酬は、当事者が均等に負担する。

(14) グーグル又はエピックゲームズは、正当な理由がある場合、本命令の変更を要求することができる。

3 グーグルの対応
 グーグルは、上記第8項を除き本件是正措置の実施を一時停止するよう裁判所に申し立て、同申立ては認められた(注1)(注2)。グーグルは2023年12月、州との裁判で和解した際に第8項について合意している。
(注1)https://fingfx.thomsonreuters.com/gfx/legaldocs/zjpqnjdlovx/Donato-order-Epic-Google-20241018.pdf
(注2)https://www.documentcloud.org/documents/25224867-google-stay-appeals-epic-case

司法省など、グーグルにChromeの譲渡を求めることを含む是正措置案を提出

2024年11月20日 司法省等によるコロンビア特別区連邦地方裁判所への提出文書
原文
原文

【概要】

1 本件経緯等

 2020年、司法省及び各州の司法長官(以下「原告」という。)が、グーグルの反トラスト法違反を訴えた訴訟に関して、コロンビア特別区連邦地方裁判所は2024年8月5日に、グーグルが総合検索サービス市場及び検索テキスト広告市場において独占力を有しており、それを違法に維持・強化した旨を認める判決を出した(注1)。同判決を踏まえ、2024年11月20日、原告はグーグルが高いシェアを持つブラウザ(Chrome)の第三者への譲渡(構造的措置)を含む是正措置案に関する最終判決案(Proposed Final Judgment、以下「PFJ」という。)を裁判所に提出した。原告は、今後の検索市場において、AIが重要な機能となるであろうことから、競合のAI製品の会社への投資を禁止する措置も含むなど、現在及び過去だけでなく、AI製品分野の競争も意識した将来を見据えた是正措置の重要性を強調している。なお、グーグルの独占が総合検索市場で10年以上も続いたことに対処するため、是正措置案の有効期間は原則として10年間としている。
 グーグルは、独自の是正案を2024年12月に提出する方針としており、2025年夏頃に判決が下される予定である。
(注1)https://www.jftc.go.jp/kokusai/kaigaiugoki/usa/2024usa/202410us.html

2 PFJにおける各是正措置案の概要
(1) 第三者との排他的な契約の停止及び防止
① 効果的な是正措置は、グーグルと競合する総合検索エンジンや潜在的な新規参入者に対して、コストの増加、流通の妨害、競争上重要な情報へのアクセスの阻害を防ぐものでなければならない。そのため、PFJでは、グーグルが、グーグルをデフォルトの総合検索エンジンとするため、又は第三者が競合する検索製品を提供するのを妨害するために、第三者に対して金銭供与を含む利益提供を禁止する。
② PFJでは、グーグルがコンテンツパブリッシャー等と排他的契約(グーグルがコンテンツパブリッシャーに対しAI製品製造者等へのデータの提供を制限することを含む。)を結ぶこと、グーグルの総合検索エンジンを他のグーグル製品とバンドル・抱き合わせすること、総合検索サービスの配信に関する収益分配契約を締結すること、米国当局の事前承認を得ることなく総合検索サービス市場及び検索テキスト広告やAI製品分野における競合他社に投資したり、競合他社との提携や買収を行うことを禁止する。これらの是正措置は、グーグルの違法な行為を終了させ、競合他社や新規参入者に対して市場を開放することを狙いとしている。

(2) 自己優遇を可能にする所有及び支配の禁止
 ① 自己優遇等を通じて競合他社や潜在的な新規参入者の排除のおそれを防ぐため、PFJはグーグルにChromeの第三者への譲渡を要求する。裁判所が認めたように、「グーグルが最も効率的な検索配信手段をほぼ完全に支配していることは、参入障壁の大きな要因である」ため、Chromeをデフォルトに設定することは、「他に利用可能な検索配信手段を大幅に狭めるという市場の現実を招き、新たな競争の出現を阻害する」ものである。PFJはこの「支配の現実」に対処しており、競合他社や潜在的な新規参入者が競争を行うインセンティブを回復するものである。PFJは、グーグルがブラウザを所有することを禁止する(Chromeの譲渡後、グーグルは5年間ブラウザ市場に再参入できない)。
② グーグルが現在又は将来の競合他社と財務的に関わり合うことは、是正措置を無意味なものにするため、検索及び検索テキスト広告の競合他社、クエリを基礎としたAI製品や広告技術等の競合他社への投資・買収も禁止する。潜在的な競合他社への投資や買収は、今後出てくる可能性のある競争を阻害し、それらの競合他社がグーグルと競争するインセンティブを阻害し、今後何十年かで検索及び検索テキスト広告市場がイノベーティブに変化していくことを促進するというPFJの目的を害する。グーグルは、上記のような投資を行っていればそれを開示し、即座にそれによる利益を競合製品の排除に利用することを止め、6か月以内に譲渡しなければならない。
③ これらの是正措置が、グーグルがAndroidエコシステムを自己に優位となるように不当に活用することを防止する上で効果的ではない又はグーグルが是正措置を回避しようとした場合には、更なる構造的な是正措置としてAndroidを第三者へ譲渡する要求を想定している。

(3) 自己優遇を防止する行動的是正措置
① 是正措置を効果的なものにするためには、グーグルが、自社の検索製品に、自社が所有・管理する製品・サービス(モバイルOS(Android)、アプリ(YouTube)、AI製品(Gemini)、関連するデータなど)に優先アクセス権を付与することによる是正措置の回避を防止する必要がある。グーグルが、自社の所有・管理する製品・サービスを、自社の総合検索エンジン又は検索テキスト広告製品を優遇するために利用することを禁止する。
② PFJは、グーグルが、総合検索サービスや検索テキスト広告市場において、ユーザーが競合する総合検索エンジンを発見する能力を損なったり、妨害したり、何らかの形で弱めたり、競争者の競争力を制限したり、その他の方法で グーグルにとって競争上の脅威となる商品やサービスをユーザーが発見することを妨げる行為を行うことを禁止する。

(4) シンジケーション(注2)とデータアクセスを通じた競争の回復
① 競争力のある総合検索エンジンの「構築、改善、維持」のために、膨大な量のデータは「不可欠な原材料」である。グーグルは違法行為により競合他社を犠牲にして長年にわたり膨大な量のデータを蓄積してきた。このPFJは、反競争的な方法で得られた優位性を是正することを目的としている。そこで、PFJは、とりわけ競合他社及び潜在的な新規参入者に対して、限界費用で、かつ継続的に検索インデックス(注3)を提供すること、10年間にわたり、ユーザーデータ及び広告データを無償、非差別的かつ適切なプライバシー保護措置を講じた上で、競合他社のAI製品においても使用制限などを設けず、提供することをグーグルに義務付ける。
(注2)一般的には「再配信」や「転載」などの意味で使われる言葉。
(注3)ウェブサイトをクロールして集積したデータベース。
② PFJは、グーグルがパブリッシャー、ウェブサイト、コンテンツクリエーターに対して、データクローリングの権利(検索インデックスの作成や大規模言語モデルの訓練などのためにコンテンツを取得されたり、AIが生成したコンテンツとして表示されることを拒否(オプトアウト)する権利)を提供することを求めている。
③ 参入障壁を取り除き、グーグルが違法に得た規模の優位性を解消するため、グーグルに対して、検索結果、ランキングシグナル、クエリに関する情報を10年間、また、グーグルの検索テキスト広告を1年間、一定の制限付きで開示することを義務付ける。

(5) 透明性の向上及びスイッチング・コストの削減による競争の回復
① グーグルによる検索テキスト広告の独占を維持するための違法行為は、広告主による検索プロバイダーの選択を妨げるとともに、競合他社が検索広告によってマネタイズする能力を妨げるものであり、「グーグルが検索テキスト広告において超競争的な価格(supracompetitive price)で利益を得ることを可能」にし、「テキスト広告の質を低下」させ、関連サービス等の質も低下させていた(広告主が検索クエリレポートで受け取る情報がより少なくなっている。)。
② PFJは、広告主がグーグル及び(グーグルの)競合他社のサービスを利用して自社の広告を最適化するために必要な、グーグルテキスト広告のコストやパフォーマンスに関する情報、選択肢、可視性を得られるようにすることで、これらの損害を是正する。特に、グーグルに対して、広告主への検索クエリレポートの中に、広告パフォーマンス及びコストに関する必要十分なリアルタイムの情報を含めること等を義務付ける。
③ 広告主が広告オークションで入力したテキスト広告のデータや情報をエキスポートする能力をグーグルが制限することを禁止する。そして、グーグルが、テキスト広告のオークションや開示情報の変更について月次のレポートを技術委員会(後述(7)参照。)及び原告に提出することを求める。

(6) 競争を回復するための検索配信契約及びユーザー通知に関する制限
① 本件における包括的な問題解消として、グーグルの検索配信契約から生じた影響を元に戻す必要がある(米国のほとんどのデバイスでグーグル検索がプリインストールされる契約。これらの契約により、グーグルの競合他社がユーザーに他の方法でリーチせざるを得なかった。)。そのため、PFJはグーグルに対してChromeを分割・譲渡することを義務付けている。これにより、グーグルがChromeという重要な検索アクセスポイントを支配することが恒久的に阻止され、競合する検索エンジンは、多くのユーザーがインターネットへの入り口としているブラウザにアクセスする能力を得ることができる。
② PFJは、グーグルがサードパーティ-デバイスや検索アクセスポイント(例:Samsungのデバイス、Safari、Firefox等)と契約を結ぶこと、及び、グーグル自身のデバイス(Pixelなど)を通じて総合検索サービスを配信することを制限するための複数の規定を盛り込んでいる。これにより、総合検索サービス及び検索テキスト広告の両市場における競争が促進される。これらの規定は、グーグルの違法な配信契約を終了させ、また違法な契約がアップデートされないようにし、アップルを含むディストリビューターへの反競争的な金銭の支払を排除するようにデザインされている。アップルは強力な潜在的競争者であるが、グーグルから多額の収益分配金受け取っているため、グーグルに対抗してこなかった。したがって、PFJは、グーグルがアップルに対して、総合検索又は検索アクセスポイントに関連するデフォルト、プリインストール等を得る見返りとして、いかなる方法の利益を提供することも禁止している。
③ アップル以外のディストリビューターやサードパーティ-デバイスに対しても同様に、限定的な例外を除いて、グーグルが総合検索又は検索アクセスポイントに関連するデフォルト、プリインストール等を得る見返りとして、いかなる方法の利益を提供することも禁止している。
④ PFJは、グーグルが今後提供する自社デバイスに検索アクセスポイントをプリインストールすることを禁止するとともに、ユーザーが以前にグーグルのブラウザにおけるデフォルトの総合検索エンジンを自発的に選択していなかった場合には、グーグルブラウザの新規及び既存の画面でそれを選択する画面を示すことを求めている。この選択画面は、グーグルを優遇せず、消費者行動の経験的証拠に基づいて、使いやすく、選択の複雑性などを最小化するように設計されなければならない。

(7) 是正措置の実効性確保及び迂回や報復の防止
 独占状態の維持を防止・抑制する是正措置としては、是正措置の実効性確保及び独占状態を維持するための新たな方法などを通じた是正措置の迂回や報復への防止策が求められる。PFJは、グーグルが社内にコンプライアンス担当責任者を任命すること、並びに、原告及び裁判所がグーグルの遵守状況を監視するサポートを行う技術委員会(委員は裁判所が任命。)を設立することを義務付ける。この措置によって、原告はグーグルの遵守状況に関する申告を調査するためのツールを手にすることができ、かつ、グーグルが迂回や報復をすることを禁止することができる。

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