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日本国公正取引委員会と英国競争・市場庁との間の協力に関する覚書

日本国公正取引委員会と英国競争・市場庁との間の協力に関する覚書

日本国公正取引委員会と英国競争・市場庁との間の協力に関する覚書

 日本国公正取引委員会(以下「公正取引委員会」)及びグレートブリテン及び北アイルランド連合王国(以下「英国」)競争・市場庁(以下「英国競争・市場庁」)は、共同で「両競争当局」と称し、反競争的行為が国境を越えて行われることを考慮し、 各締約者の執行活動の協力及び調整がそれぞれの管轄において各締約者独自の執行活動以上に効果的に寄与することを考慮し、 適当かつ実行可能な場合には秘密情報を含む情報を共有することが共通の利益であることを考慮し、 それぞれの競争法の適用においてそれぞれの執行活動が相互の利益に及ぼす潜在的な悪影響を最小限にする必要性を考慮し、 競争に関する審査における手続の公正さが、効果的かつ効率的な執行の基礎であると国際的に認められていることを考慮し、 次のとおり協定した。

1 目的

 この覚書は、両競争当局間の競争法執行活動に関する協力、調整及び情報の伝達を促進することを目的とする。 この覚書は、刑事執行活動における使用を目的とする審査情報の伝達については、適用しない。 両競争当局は、当該協力がこの覚書に基づく協力よりも効果的であることを相互に認める場合に、この覚書の範囲外で協力することができる。
 

2 定義

(1)この覚書の適用上、 (a) 「競争法」 とは、次のものをいう。

(i) 我が国においては、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(1947年法律第54号)及びその施行規則;及び

(ii) 英国では、1998年競争法 (c.41);2002年企業法第3部 (c.40) (公益上の理由による介入又は第3部第3A章(新聞企業及び外国勢力が関与する企業結合)の対象となる企業結合審査の公益的側面に関する規定を除く。);1986年取締役欠格法第9A条から第9E条(c.46);2002年取締役欠格令 (北アイルランド) 第13A条から第13E条(2002 No.3150 (S.I. 4));及びこれらの規定に基づいて制定された下位法令、

並びにこれらの規定の改正並びに両競争当局が随時書面により本覚書の適用上 「競争法」 であることを決定するその他の法令・規則。
疑義を避けるため、「競争法」 の定義は、本覚書にのみ適用される。これは、他のいかなる文脈においても、本定義は「競争法」の定義とはみなされない。

(b) 「競争保護当局」 とは、1998年競争法第1部に基づく機能を行使する限りにおいて、1998年競争法第54条 (1) (c.41) に定義される規制当局をいう。

(c) 「執行活動」 とは、競争当局が競争法の適用に関連して行う事情聴取、審査又は手続をいう。

(d) 「審査情報」とは、一般に公開されていない情報であって、国内法に基づく権限の行使により競争当局が強制的に取得したもの又は競争当局に自発的に提供されたものであり、両競争当局が開示から保護することが義務付けられているものをいう;

(e) 「個人の情報」 とは、識別された又は識別可能な生存する個人に関する情報を意味する。

(f) 「特定可能な生存する個人」とは、特に次の項目を参照することにより、直接的又は間接的に識別可能な生存する個人を意味する。

(i) 氏名、識別番号、位置情報若しくはオンライン識別子などの識別子、又は

(ii) 個人の身体的、心理的、遺伝的、精神的、経済的、文化的若しくは社会的アイデンティティに固有の1つ若しくはそれ以上の要因;

(2)この覚書において競争法の特定の規定に言及するときは、随時改正される当該規定及び後続の規定を示すものと解釈する。

3 覚書に基づく連絡

(1)両競争当局は、この覚書に基づく連絡を促進するため、それぞれが指定した連絡先を相互に通知する。
(2)両競争当局は、利用可能な技術的手段によって連絡することができる。
 

4 通報

(1)各競争当局は、通報する競争当局が他方競争当局の重要な利益に影響を及ぼす可能性があると考える執行活動に関して、本条に定める方法で他方競争当局に通報する。
(2)他方競争当局の重要な利益に影響を及ぼす可能性があるとして通常通報可能な状況を生じさせる執行活動には、次のものが含まれる。

(a) 他方競争当局の執行活動に関連するもの;

(b) 他方競争当局が管轄権を有する地域をその全部又は一部として実施される、合併又は買収以外の反競争的行為を係るもの;

(c) 次に掲げる合併又は買収:

  – 当該取引の一以上の当事者又は  
  – 当該取引の一以上の当事者を支配する会社が、他方競争当局が管轄権を有する法律に基づいて設立され若しくは組織された会社である場合;

(d) 他方競争当局が管轄権を有する場合において、競争当局によって行為を求めたり禁止したりする是正措置の賦課又は申請を伴うもの

(3)両競争当局は、本条に基づく通知は、通常、一方競争当局が通報可能な状況があることを認識した後、合理的に実行可能な限り速やかに行われることを理解する。企業結合については、両競争当局は、届出前の段階で相互に通報することは期待されていない。
(4)各競争当局は、規制手続又は司法手続に関与又は参加するときにもまた、当該関与又は参加において対処される問題が他方競争当局の重要な利益に影響を及ぼす可能性がある場合には、他方競争当局に通報する。本項に基づく通報は、規制手続又は司法手続が公開され、かつ関与又は参加が正式な手続及び公開の下で行われた場合にのみ適用される。
(5)競争当局は、被通報競争当局が自らの重要な利益に対する執行活動の影響の初期評価を行うことができるように、十分に詳細な通知を行う。この適用において、通知には以下を含めることができる。

(a) 執行活動の対象となる企業の名称及び住所;

(b) 執行活動の対象となる行為又は取引の説明;

(c) 関係する法的規定。


5 法執行活動における調整

(1)各競争当局は、その執行活動において他方競争当局を支援することができる。
(2)両競争当局とも関連性のある執行活動の遂行について利害関係を有する場合は、両競争当局は、その執行活動を調整することが相互の利益になると決定することができる。
(3)特定の執行活動を調整すべきか否かを検討するに当たり、両競争当局は、特に次の要素を考慮する。

(a) 当該調整が両競争当局の執行活動の目的を達成する能力に及ぼす影響;

(b) 執行活動を行うために必要な情報を得るための両競争当局の相対的な能力;

(c) 関係する反競争的行為に対して各競争当局が効果的な措置を確保することができる程度;

(d) 競争当局の資源をより効率的に活用する機会;並びに

(e) 執行活動の対象となる企業又は個人に対して、相反する義務及び不必要な負担を回避できる可能性。

(4)両競争当局は、特定の事案において、執行活動の時期について合意することにより、その執行活動を調整することができる。このような調整によって、両競争当局間の合意の下、その目的を達成するために最も適した、一方又は両方の競争当局による執行活動を可能にすることができる。
(5)調整された執行活動の実施において、各競争当局は、他方競争当局の執行目的の重要性を考慮する。
(6)競争当局は、いつでも調整を制限し、又は終了し、及びその執行活動を独立して遂行することができる。それに先立ち、当該競争当局は、調整を制限し、又は終了する意図があることを事前に他方競争当局に通知する。

6 紛争の回避

(1)各競争当局は、第1条に定めるこの覚書の目的を考慮して、審査又は手続の開始、審査又は手続の範囲、及び各事案において求められる問題解消措置又は制裁の性質の決定を含む競争法執行活動のあらゆる段階を通じて、他方競争当局の重要な利益を慎重に考慮する。
(2)競争当局が他方競争当局に対し、他方競争当局による特定の執行活動が、競争法の適用における当該通知競争当局の重要な利益に悪影響を及ぼす可能性があることを通知する場合には、他方競争当局は、当該利益に関連する重要な進展について適時に通知し、かつ、提案された問題解消措置について意見を提供する機会を提供するよう努める。各競争当局は、他方競争当局の重要な利益の適切な調整を実現するよう努める。

7 情報共有及び情報提供要請

(1)両競争当局は、競争法の適用を促進し、相互の執行活動及び政策についての理解を深めるために、見解を共有し、議論し、及び情報を伝達することが共通の利益であることを理解する。
(2)両競争当局は、自国の法令により認められる限りにおいて、この覚書に規定する協力及び調整を実施するため、見解を共有し、議論し、及び自国が保有する情報について伝達することができる。
(3)競争当局は、自国の法令に従ってのみ個人情報を提供することができる。CMAは、例外的かつ特定の状況を除き、個人情報を提供しないものとする。
(4)両競争当局は、刑事免責若しくは課徴金減免の申請又は和解手続における法的責任の自認の意思表示によって取得した情報又はその意思表示を裏付ける提供書類に関し、意見を共有、議論、又は情報を伝達しない。ただし、情報提供する競争当局に対し、情報を提供した自然人又は法人が書面により明示的に意見の共有及び議論並びに情報の伝達に同意した場合は、この限りではない。
(5)競争当局は、次の事項の説明を含む情報を書面で要請することができる。

(a) 要請に関連する執行活動の争点及び性質

(b) 関連する法的規定

(c) 求められる情報

(d) 情報を求める目的、及び

(e) 要請する競争当局が負う、合理的に予見可能な 開示義務の詳細。

(6)審査情報を要請する競争当局は、次の連絡先に対して、書面によって要請する。

(i) 公正取引委員会については

(ii) CMAについては

(7)各競争当局は、他方競争当局に情報を開示するかどうかの決定について、完全な裁量を有する。
(8)情報開示の要請を受けた競争当局は、要請した競争当局との協議において、その保有する情報のうち、どの情報が関連性を有し、他方競争当局に開示することができるかを決定する。
(9)この覚書に基づいて情報を提供する競争当局は、追加的な条件の下で情報を提供することができる。当該条件には、情報提供を行う競争当局の同意なしにさらなる情報開示をすることは認めないという条項を含めることができる。このような条件は、開示を受けた競争当局が自国の法令を遵守する必要がある場合に情報を開示することを妨げるものではない。
(10)競争当局は、この覚書に基づいて提供された情報に誤った情報が含まれていることを認識した場合には、合理的に実行可能な限り速やかに他方競争当局に通知し、当該競争当局は是正措置を講じる。

8 情報の使用

(1)競争当局は、この覚書に基づいて競争当局に提供された情報 (第7条の規定に基づく執行活動を通じて得られた審査情報を含む。) を、開示した競争当局が情報提供を行った目的のためにのみ使用することができる。
(2)第8条第1項の規定にかかわらず、競争当局は、この覚書に基づいて提供された情報 (執行活動を通じて得られた情報を含む。) を他の目的のために再び提供するよう求めることができる。

9 情報の保護

(1)競争当局は、自国の法令で認められ、かつ、自国の法令を逸脱しない範囲で最大限、以下のことを行う。

(a) この覚書に基づき、他方競争当局から当該競争当局に提供された情報 (情報開示の要請が行われ、又は要請が受理されたという事実を含む。) の秘密を保持すること、及び

(b) 第三者からの当該情報の開示要求を拒むこと。

(2)両競争当局は、他方競争当局から提供された情報を以下に規定するとおり合法的に開示することは第9条第1項によって妨げられないことを理解する。

(a) 第7条第9項に基づいて課された条件に適合し、かつ

(b) 第8条第1項に基づいて情報の使用が許可されている執行活動を促進する目的を有する場合。

(3)競争当局は、とりわけ、第9条第2項 b 号により許可される開示には、以下の開示が含まれる(ただし下記に限定されるものではない)ことを理解する。

(a) 執行活動の一部として、又は関連する執行活動に関する司法審査若しくは上訴手続の過程において、裁判所若しくは競争審判所に対して行われる場合;又は

(b) 関連する執行活動の対象となる者が、手続上の公平性と適用されるデータ保護法に基づく権利を含む被開示競争当局の自国の法令に従って法的権利を行使することができるために必要である場合。

(4)秘密保持の権利放棄に基づき、この覚書によって競争当局に提供された情報は、提供された競争当局の自国の法令で認められる最大限の範囲において、当該放棄の条件に従ってのみ開示される。
(5)競争当局が、他方競争当局から提供された情報を第9条第7項に従って第三者に開示する場合、開示を行う競争当局は、自国の法令で認められる範囲で最大限、商業上の機微情報及び個人情報の継続的保護について保証する。
(6)第9条第7項が適用される場合を除き、競争当局は、この覚書に基づいて他方競争当局から開示された情報を、当該情報を提供した競争当局の同意なしに、提供を受けた競争当局の領域外の裁判所、審判所又は公的機関に開示してはならない。
(7)競争当局が、第9条第2項の規定による場合を除き、この覚書に基づいて提供された情報の開示を、法令又は裁判所の命令により課された場合は、当該競争当局は、直ちに他方競争当局に通知する。両競争当局は、当該情報の使用又は開示から生ずる損害を最小限にするために採るべき措置について速やかに協議する。
(8)競争当局は、最善の努力にもかかわらず、情報が本覚書の条件に反する方法で使用され又は開示されたことを知った場合には、他方競争当局に直ちに通知する。両競争当局は、かかる使用又は開示から生じる損害を最小限に抑え、かかる状況の再発を防止するために採るべき措置について速やかに協議する。
(9)両競争当局は、情報が既に前条又は本条に従って公に開示された場合には、本章のいかなる規定も情報の開示を妨げるものではないことを了解する。

10 対話(二国間協議)

(1)両競争当局は、この覚書から生ずるいかなる問題 (この覚書の解釈又は適用に関する問題を含む。) についても議論することができ、また、状況が許す限り適時にかつ実行可能な方法でこれらの問題に対処する。
(2)両競争当局は、適用される競争法の重要な改正並びにこの覚書の運用に影響を及ぼす可能性のある当局の他の法令又は執行慣行の改正について、できる限り速やかに相互に通知する。
(3)両競争当局は定期的に会合を持ち、競争法の観点から相互に関心のある問題について議論することができる。

11 競争保護当局(英国)

(1)両競争当局は、第4、5、6及び7条の規定に基づき、この覚書が予定する協力に競争保護当局を参加させることができる。
(2)CMAは、公正取引委員会及び競争保護当局が関与する協力に関連する場合であって、競争保護当局が第8及び9条の規定を遵守するとCMAと公正取引委員会の両競争当局が認める場合には、公正取引委員会から提供された情報を、当該競争保護当局に共有することができる。これには、CMAが本覚書に基づき公正取引委員会から受領する通報も含まれる。CMAがそのような情報を競争保護当局と共有する場合、CMAは都度公正取引委員会に通知する。
(3)第4条の通報を除き、公正取引委員会は、次の場合に限り、この覚書の第5、6及び7条の規定に基づく協力を実施するために競争保護当局と直接連絡を取る。

(a) 公正取引委員会が、競争保護当局との連絡についてCMAに通知する;

(b) 公正取引委員会が、第5、6、7、8及び9条の条件を遵守する;

(c) 公正取引委員会が、競争保護当局が第8及び9条の条件を遵守することを認める場合;及び

(d) 公正取引委員会と競争保護当局が5、6及び7条の規定に従って協力しようとする場合で、当該競争保護当局がこれらの規定を遵守すると公正取引委員会が認める場合。


12 協力の限界

(1)この覚書に基づいて行われる両競争当局のいかなる協力も、各競争当局の自国の法令及び政策に従う。 (2)競争当局は、次の事情があると認める場合には、この覚書に基づく他方競争当局との協力を行うことを要しない。

(a) 協力の要請がこの覚書に従って行われていない場合;

(b) 協力が合理的に利用可能な資源を超え得る場合;

(c) 協力が自国の法令その他の重大な利益に反し得る場合;

(d) 他方競争当局が、秘密保持若しくは情報の使用目的について確証を与えることができない場合;又は

(e) 他方競争当局が、情報開示競争当局が開示及びその情報の使用において適用すべきとした条件をこれまで遵守していないか、若しくは現に遵守していない場合。

(3)競争当局は、かかる協力を拒否又は延期する前に、条件に従った協力ができるかどうかを決定するために、他方競争当局と協議する。競争当局が協力を拒否又は延期する場合、当該競争当局は、他方競争当局に拒否又は延期の理由を説明する。 (4)競争当局は、条件付きで協力を受け入れる場合、当該条件を遵守する。

 

13 最終事項(雑則)

本覚書は法的拘束力を有しない。

14 最終事項(雑則)

(1)本覚書は、最終署名日に効力を生ずる。
(2)競争当局は、他方競争当局に対し、60日前に書面で通知することにより、本覚書を終了することができる。
(3)両競争当局は、相互の書面による同意に基づき、本覚書を修正することができる。
(4)終了されない限り、本覚書は、いずれの競争当局の承継機関に適用される。

下記の場所と日付で、英語で2部署名された。
公正取引委員会を代表して 英国競争・市場庁を代表して
茶谷栄治 プリヴェット・クリス
委員長 ジェネラル・カウンセル
場所:在カナダ日本国大使館 場所:在カナダ日本国大使館
日付: 2025年9月30日 日付: 2025年9月30日

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