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オーストラリア(Australia)

オーストラリア(Australia)

(2022年7月現在)

最新の情報については,当局ウェブサイトを御確認ください。

1 根拠法

 オーストラリア連邦の競争法は、2010年競争・消費者法(Competition and Consumer Act 2010。2021年2月改正。以下「法」という。)であり、全体の構成は以下のとおりである。
 競争制限行為に関する禁止規定等は、法第4章(制限的取引慣行)に定められている。
 

第1章

総則

第2章

オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)

第2A章

国家競争評議会(NCC)

第3章

オーストラリア競争審判所

第3AA章

オーストラリアエネルギー規制当局(AER)

第3AB章

財政法の適用

第3A章

特定サービス産業への第三者アクセス

第4章

制限的取引慣行

第4B章

産業コード

第4BA章

ニュースメディア及びデジタルプラットフォームに関する義務的交渉規約

第4C章

制裁金賦課

第4D章

消費者データの権利

第5章

炭素税の廃止に伴う価格控除義務

第6章

執行及び救済

第6A章

誤認を招く又は欺瞞的な行為に比例した責任

第6B章

人身死傷への損害賠償又は補償請求

第7章

制限的取引慣行の認可、届出と許可(企業結合行為)

第7A章

価格調査

第8章

再販売価格維持行為

第9章

ACCCの決定に対する競争審判所による審判

第10章

国際海上貨物輸送に関する規制

第11章

連邦法としての豪州消費者法の適用

第11AA章

州及び準州法としての豪州消費者法の適用

第11A章

競争コード

第11B章

電気通信産業:反競争行為及び記録保持規則

第11C章

電気通信産業におけるインフラへのアクセス制度

第11CA章

電力産業

第11D章

捜索・押収

第12章

雑則

第13章

競争に関する規定の適用及び暫定規定

付則1

第4章(制限的取引慣行)別表

付則2

豪州消費者法
第1章 導入
第2章 消費者保護一般則(欺瞞的行為、非良心的行為、不公正な契約条件)
第3章 消費者保護特別則(不公正な取引、消費者取引、商品及び商品関連サービスの安全性、商品・役務の情報基準、欠陥商品への製造者責任)
第4章 違反行為
第5章 執行と救済
第6章 適用及び暫定規程

 

2 執行機関

(1)オーストラリア競争・消費者委員会 別紙:組織図

(Australian Competition and Consumer Commission:ACCC)
 オーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)は、1995年11月6日、取引慣行委員会(1974年創設)と価格監視委員会(1983年創設)の統合により発足した、独立した行政組織である。
 ACCCの主な任務は次のとおりである。
① 法違反行為に関する審査及び連邦裁判所への民事提訴並びに違反事業者からの違反行為中止の確約の受理に係る決定
② 企業結合審査
③ 公共の利益をもたらす一定の制限的取引慣行等に関する認可及び届出に係る決定
④ 電力事業、ガス事業等への第三者アクセス促進に係る法執行
⑤ 特定の商品又は役務の価格設定の監視
 競争政策及び消費者政策は財務省の所管であり、ACCCは、財務省の所轄に属する機関とされている。
 財務大臣は、法に基づくACCCの権限の行使等に関連して指示をすることができ、ACCCは、その指示に従わなければならない。この指示は文書で行わなければならず、かつ、指示後に公報に掲載しなければならない。ただし、法第3A章(特定サービス産業への第三者アクセス)、第4章(制限的取引慣行)、第7章(認可・届出手続)、第7A章(価格調査)、第10章(国際海上貨物輸送に関する規制)、第11B章(電気通信産業:反競争行為及び記録保持規則)及び第11C章(電気通信産業におけるインフラへのアクセス制度)並びに第11章第3節(禁止事項の提案及び回収広告に関する会議)に係る個別事案については、財務大臣はACCCに指示をすることができない(法第29条)。
 

ア 委員会(Commission)の構成

 委員会は、委員長1名及び常勤委員数名(以下「常勤メンバー」という。)から構成される(法第7条第1項)。常勤メンバーの任命に先立ち、財務大臣は、①常勤メンバー候補者の産業、商業、経済、法律、行政若しくは消費者保護に関する知識又は経験が、任命に値するものであることを確認し、②当該候補者が中小企業問題に関する知識又は経験を有しているか否かを考慮し、③競争法を有する州・準州・特別地域が存在する場合、その過半数が当該候補者の任命を支持していることを確認しなければならない(同条第3項a号~c号)。また、常勤メンバーから副委員長が2名以内、連邦総督により任命される(法第10条第5項)が、少なくとも1名は、中小企業関係に関する知識又は経験を有する者でなければならない(同条第1B項)。
 委員会には、常勤メンバーのほか、特定の案件及び小委員会(後記ウ参照)において、常勤委員とみなされ、これと同様の権限を行使できる非常勤委員(associate members)がいる(法第8A条)。
 常勤メンバーは連邦総督が(法第7条第2項)、非常勤委員は財務大臣が(法第8A条第1項)、それぞれ任命する。いずれも任期は最大5年であり、再任が可能である(法第8条第1項及び第8A条第2項)。
 委員会の定足数は3人(委員長又は副委員長を含む。)であり(法第18条第6項a号)、過半数により決定することができる(同項b号)が、通常はコンセンサス方式が採られている。
 委員会は全ての公式な決定を行うことができるが、これを助けるため、委員会の下に5つの小委員会が設置されている。

 
イ 事務総局

 委員会の下には、事務総局及び8つの地方事務所が置かれている。
 

ウ 小委員会(Division of the Commission)

 現在、Adjudication(適用除外の認可及び届出関係)、Communication、Enforcement、Mergers及びRegulated Access & Price Monitoringの5つの小委員会が設置されており(法第19条第3項)、これらの小委員会には、委員及び事務総局幹部がメンバーとして指定されている。小委員会の定足数は2名とされている(同条第6項)。
 なお、民事訴追(法的措置を請求)をする場合、企業結合の提案を承認又は拒絶する場合及び反競争行為の適用除外を認可する場合は、小委員会の議論の後、委員会(Commission)で、又は小委員会の議論に他の委員も参加した上(Full-commission)で、決定が行われる。
 

(2)財務省

 競争政策及び価格監視政策といった政策立案、改正法案作成などについては、財務省が担当する。ACCCは財務省に対して助言をするのみで、法案作成作業などは行わない。
 

(3)オーストラリア競争審判所(Australian Competition Tribunal)

 オーストラリア競争審判所(以下「競争審判所」という。)は、ACCCが行った、①適用除外の認可及び届出に係る決定(事後の取消しを含む。)、②法定手続に従った企業結合審査に関する決定、③第三者アクセスに関する決定に対する当事者(又は第三者)からの不服申立てを受理し、審理する、独立した準司法的機関である。競争審判所の決定に不服のある者は、連邦裁判所に不服申立てを行うことができる。
 競争審判所の首席審理官(Presidential Member)は連邦裁判所の判事の中から、審理官(Member)は産業、商業、経済、法律又は行政の知識又は経験を有するものの中から、連邦総督が任命する(法第31条第1項及び第2項)。審理官の人数には法令上の制約はない。任期は7年以内(法第32条)である。
 競争審判所の審判体(Division)は3名の審理官で構成され、審判長は首席審理官が務めている(法第37条)。また、審理及び最終決定は裁判所と同様の手続で行われる。
 

(4)連邦裁判所(Federal Court)

 連邦裁判所は、違反事件に関するACCCによる提訴及び競争審判所の決定に対する不服申立てについて管轄する(連邦裁判所の単独法廷(判事1名)、連邦裁判所の合議法廷(判事3名)及び高等裁判所(判事7名)の三審制)。私訴のうち、制限的取引慣行については、原則として連邦裁判所が管轄する。

 3 規制の概要

(1)カルテル行為(法第45AF条及び第45AG条(法第6AA条第2項により、刑事罰の対象となるカルテル条項)、法第45AJ条及び第45AK条)

 競合他社間で、カルテル条項(cartel provision)を含む契約、取決め又は了解(以下「取決め等」という。)を行うこと(法第45AF条及び法第45AJ条)及びカルテル条項に効果を与えること(法第45AG条及び法第45AK条)は、それぞれ禁止されている。カルテル条項とは、価格カルテル、数量カルテル、市場分割又は入札談合に関連するものをいう(法第45AD条)。
 当該カルテル条項については、実質的な競争減殺(Substantial Lessening Competition)が要件とされておらず、原則違法(Illegal per se)とされている。

 

(2)取引制限的又は反競争的取決め等(法第45条)

 競合他社間の競争を実質的に減殺する目的又は効果(蓋然性のあるものを含む。)を有する取決め等を行うこと及びこれらの取決め等に効果を与えることが、それぞれ禁止されている(法第45条第1項a号及びb号)。具体的には、直接の共同取引拒絶(いわゆるPrimary boycott)、操業時間の共同制限カルテル、価格シグナリングなど、カルテル条項以外の取決め等の共同行為が対象となる。
 また、競争を実質的に制限する協調行為(concerted practice)を禁止する規定(同項c号)もある。同条により、合意(agreement)や協定(understandings)がない場合であっても、競争を実質的に制限する目的又は効果(蓋然性があるものを含む。)があれば違反となる。
 なお、共同して、ある事業者が他の事業者と取引することを妨害すること(いわゆるSecondary boycott)については、法第45D条で禁止されているが、競争を実質的に減殺する目的又は効果(蓋然性があるものを含む。)を有することが求められる(法第45D条第1項b号)。

 

(3)市場力の濫用(Misuse of market power)(法第46条)

ア 禁止行為

 法第46条第1項は、商品又はサービスを供給・購入する市場における実質的な力(substantial degree of power in a market)を有する企業が、その市場力(market power)を濫用して、当該市場又は他の市場において、競争を実質的に減殺する目的又は効果(蓋然性のあるものを含む。)を有する行為を行うことを禁止している。同条項の解釈については、市場力の濫用ガイドラインが公表されている。
     

イ 市場力の有無

 ある企業が特定の市場において実質的な力を有するか否かは、事案ごとに個別に判断されることとなる。裁判所は、実質的な力の有無の認定に当たり、市場における当該企業の行為が、

① 当該市場における当該企業の競合他社(潜在的競合他社を含む。)の行為によって制約される範囲、又は
② 当該市場における当該企業の取引相手(供給者又は購入者)の行為によって制約される範囲
を考慮するものとするとされている(法第46条第3項)。また、競合他社又は潜在的な競合他社の競争の度合いや、市場における他の企業と契約、取決め又は了解を行うことによって得られる影響力等も考慮する必要がある(同条第4項)。
 なお、次の場合であっても実質的な力を有するとの認定を妨げるものではない(同条第5項)。
① 当該企業が、実質的に市場を支配(control)していない場合
② 当該企業が、市場における他の競合他社若しくは潜在的競合他社、又は当該企業との間で市場において商品又は役務を取引する個人の行為から完全に自由ではない場合

   

(4)排他条件付取引(法第47条)

 法第47条第1項は、企業が取引において、排他条件付取引行為を行うことを禁止している。次の行為は排他条件付取引に該当する。
① 自身の競合他社から直接又は間接に商品を購入しないこと等を条件として、取引の相手方に商品を供給すること(法第47条第2項)又は当該条件に同意しないことを理由に供給を拒絶すること(同条第3項)。
② 自身の競合他社に直接又は間接に商品を供給しないこと等を条件として、取引の相手方から商品を購入すること(同条第4項)又は当該条件に同意しないことを理由に購入を拒絶すること(同条第5項)。
③ 特定の第三者から商品又は役務を購入すること等を条件として、取引の相手方に自己の商品を供給すること(同条第6項)又は当該条件に同意しないことを理由に供給を拒絶すること(同条第7項)。
  上記の行為は、競争を実質的に減殺する目的又は効果(蓋然性のあるものも含む。)があれば違法となる(同条第10項)。

   

(5)再販売価格維持行為(法第48条、第96条~第100条)

 法第48条は、企業又は個人事業者が、再販売価格維持行為を行うことを禁止している。役務についても商品と同様に適用される(法第96A条)。次の行為は再販売価格維持行為に該当する。
① 最低再販売価格の維持を条件として商品を供給すること(同条第3項a号)
② 最低再販売価格の維持を勧奨すること(法第97条)
③ 最低再販売価格維持契約を締結すること(法第96条第3項c号)
④ 最低再販売価格で販売することに同意しないこと又は最低再販売価格より低い価格で販売したことを理由に商品の供給を拒絶すること(同項d号(i)及び(ii)並びに同項e号(i)及び(ii))。ただし、再販売業者が顧客誘引のために供給者から供給された商品について、コスト割れ販売(いわゆるloss leader selling)を行った場合は、当該セールで販売する目的で取得されたものではない商品の、季節ごとのセール若しくはクリアランスセール又は供給者が同意している場合を除き(法第98条第3項)、当該販売から1年以内であれば、供給を拒絶しても禁止規定は適用されない(同条第2項)。
⑤ 再販売業者が最低再販売価格として認識するような価格を提示すること
 また、上記①~⑤における再販売価格には、実際に供給する価格のみならず、広告価格、表示価格及び提示価格も含まれる(法第96条第7項)。
 

(6)企業結合(法第50条・第50A条)

ア 禁止対象

 法第50条第1項は、企業が、直接又は間接に、①他の企業の株式を取得し、又は②他の者の資産を取得する場合であって、当該取得が市場における競争を実質的に減殺する効果を有することとなる又はその蓋然性があるときには、当該株式取得を禁止している。法第50条第2項は、自然人による当該株式取得を禁止している。
 法第50条第1項及び第2項の「競争の実質的減殺効果」の有無を評価する際には、次の事項が考慮されなければならない(法第50条第3項)。
① 当該市場における実際の及び潜在的な輸入競争の程度
② 当該市場における参入障壁の高さ
③ 当該市場における集中度
④ 当該市場における対抗力の程度
⑤ 取得者が、当該取得によって、価格又は利益率を著しく、かつ、持続的に引き上げる可能性
⑥ 当該市場において代替商品又は役務の入手が可能な程度
⑦ 当該市場の動的な特徴-成長性、革新性、製品差別化等
⑧ 当該取得が、活発かつ有力な競合他社を当該市場から退出させる可能性
⑨ 当該市場における垂直統合の性質と程度

  
イ 外国における株式の支配的取得に対する規制(法第50A条第1項)

 競争審判所は、ある者が、オーストラリア国外で、企業の株式を支配的に取得し(First controlling interest。「第1の株式支配」という。)、かつ、一又は複数の(実際上はオーストラリアの)企業の株式を支配的に取得する(Second controlling interest。「第2の株式支配」という。)場合に、ACCC、財務大臣又はその他の者からの申請(原則当該取得後6か月以内:法第50A条第3項)に基づき、
① 第2の株式支配が市場における競争を実質的に減殺する効果を有することとなる又はその蓋然性があること、かつ、
② 第2の株式支配がいかなる状況においても公共に利益をもたらすものとはならないこと又はその蓋然性があることから、当該株式取得が本条の目的に照らし否定されるべきであること
が認められる場合に、同内容の宣言をすることができる(法第50A条第1項)。
 競争審判所の宣言から6か月(延長可能)の間、当該企業は、宣言の対象となった市場において事業活動を行うことができない(同条第6項)。
 なお、当該株式取得について、申請により、ACCCからの認可を受けることが可能である(後述(8)参照)。
 

ウ 企業結合の差止め

 第50条に違反するおそれのある企業結合を阻止するための差止命令を連邦裁判所に申し立てることができるのはACCCのみである(法第80条第1A項)。しかし、企業結合が行われた後は、何人も(ACCCを含む。)株式又は資産の譲渡を請求することができる(法第81条第1項)。
 また、ACCCの請求により、連邦裁判所は企業結合の無効宣告を行うことができる(同条第1A項)。ただし、いずれの請求権も企業結合が行われた時から3年で消滅する(同条第2項)。
 さらに、企業結合により損失又は損害を被った者は、損害賠償を請求することができる(法第82条第1項)。当該請求権は、訴因が生じた日から6年で消滅する(同条第2項)。
 

エ 企業結合の認可(authorisation)等

 オーストラリアにおいては、企業結合計画の事前届出義務は存在しない。ただし、任意に認可等の申請を行うことができる。現在、任意の企業結合認可等の申請について、非公式の相談及び公式の申請が存在している。

 
(ア)ACCCに対する非公式な企業結合認可の相談
 非公式な企業結合許可の相談は、簡易審査(confidential review)と詳細審査(public review)の2段階で構成されている。簡易審査は実行前の企業結合のみが対象となり、詳細審査は実行済みの企業結合及び実行前の企業結合の双方が対象となる(非公式企業結合審査手続ガイドライン2.17及び2.65)。
 なお、ACCCが非公式な企業結合許可の相談に基づき、当該企業結合に反対したとしても、法的拘束力はないため、企業結合計画を実行することは可能である。しかし、実際には、当該相談の下、簡易審査に基づく反対がされなかった又は詳細審査に基づく許可を受けたことは尊重される(同ガイドライン1.11)。
 
a  簡易審査
 非公開の企業結合の事前相談手続であり、限られた情報の中でACCCが相談内容について検討し、回答する(非公式企業結合審査手続ガイドライン2.19)。
 検討の結果、競争上の問題がなければ、「ACCCは当該企業結合に反対しない」旨の非公式な見解(informal view)を出すこととなるが、当該見解は公文書として記録されない(同ガイドライン2.22)。
 
b 詳細審査
 実際に企業結合が行われた後に相談があった場合や公開可能な事前相談があった場合などに、詳細審査が行われる(非公式企業結合審査手続ガイドライン2.23)。
 ACCCは、ウェブサイト上に情報を掲載し(同ガイドライン2.24)、必要に応じて利害関係者への公式な意見募集を実施する(同ガイドライン2.27)。検討の結果、ACCCが企業結合に反対しない旨の決定をした場合には、その旨を当事会社に伝えた上で公表する(同ガイドライン2.54、2.56、2.58及び2.59)。 問題がある場合には、論点を公表し(Statement of issues)、更なる意見募集を実施する。その上で、ACCCは、最終的な決定を行い、結果を当事会社に伝え、公表する(同ガイドライン 2.57及び2.58)。
 
(イ)ACCCに対する公式な企業結合認可の申請(法第88条等)
 実行前の企業結合に限り、ACCCに正式な認可を求めることができる(法第88条第1項及び第3項並びに企業結合認可ガイドライン1.3)。
 ACCCは、競争を実質的に減少させる効果(蓋然性のある場合を含む。)を有する場合又は当該企業結合計画から生じる不利益が公共の利益を上回る場合には、認可することができない(法第90条第7項a号及びb号並びに企業結合認可ガイドライン1.4)。
 なお、企業結合審査を実施するに当たり、ACCCは当事会社に対して法第155条第1項の規定に基づき、書面の通知により情報収集及び証拠収集に係る権限を行使することができ、何人も、当該通知を拒む若しくは当該通知に背く又は故意に虚偽若しくは誤解を招くような情報を提供し若しくは証拠を提出してはならず(同条第5項)、同項の規定に違反した当事会社に対しては刑事罰が適用される(同条第6A項及び企業結合認可ガイドライン4.27)。
 ACCCは、認可申請のあった日から90日以内に認可するか否かを決定しなければならず、当該期限内に決定が行われない場合、申請は却下されたものとして扱われる(法第90条第10B項)。ただし、当事会社の事前の同意がある場合及び事案が複雑である等特段の事情がある場合には、90日の期間の延長が可能である(法第90条第12項及び企業結合認可ガイドライン4.5)。
 認可を得た企業結合については、法第50条違反を理由に法的措置が提起されることがない(免責を得る)一方で、認可が拒否されたにもかかわらず、当該企業結合計画を実施した場合には、法第50条違反として提訴される(企業結合認可ガイドライン1.9及び2.1)。
 ACCCの認可に係る決定(公式な決定)に不服がある場合、当事会社のみが、決定から21日以内に、競争審判所に審査を求めることができる(法第91条第1A項並びに企業結合認可ガイドライン4.33及び10.9)。これを受けて、競争審判所は、90日内に、審査結果を決定しなければならず、決定できない場合にはACCCの決定を支持したものとして扱われる(法第102条第1項及び第1AB項並びに企業結合認可ガイドライン10.5及び10.8)。

   
オ 確約(undertaking)

 企業結合が競争上の懸念を生じさせる場合、当事会社は、法第87B条に基づく法的拘束力を有する確約(後述4(7)参照)をACCCに申し出ることにより、懸念を解消させることができる。

 

(7)一定の制限的取引行為(第4章)の認可及び届出手続(法第7章)

  ACCCは、制限的取引行為のうち、対象となる取引が低額である等の条件を満たす一定のものについて、申請に基づき、企業が行うことを認可することができる(法第88条)。認可の決定又は申請の却下は、有効な申請書を受理してから原則6か月以内に下されることとされている(行為認可ガイドライン4.2)。また、ACCCは、認可された協定を取り消し、又は変更することができる。

4 法執行手続

(1)民事手続及び刑事手続で利用可能な審査権限

ア 立入検査(自主的な同意に基づく検査)(法第154D条)

 ACCC、委員長又は副委員長が、合理的な理由により、ある場所に法違反に関連する証拠があると判断した場合、委員長から指名された検査官(ACCC職員)は、占有者の同意を得た上で、当該場所において立入検査を行うことができる(法第154D条第1項)。検査官は、相手方に前記同意を拒否する権利があることを伝えなければならない(同条第3項)。自発的に相手が同意した場合に限り(同条第4項)、書類及び電子機器を検査し、そこで発見した証拠のコピーの作成又は留置を行うことができる(法第154F条第3項)。
 

イ 令状に基づく捜索(法第154G条)

 検査官は、簡易裁判所判事(magistrate)が発行する令状に基づき、法違反に関連する証拠があると合理的な理由により判断される場所を捜索することができる。
 

ウ 情報提供要求(文書提出命令等)(法第155条)

 ACCC、委員長又は副委員長が、ある者が競争・消費者法違反又は違反のおそれがある行為に関連する情報の提出、文書の作成・提出、委員等の前に出頭した上で供述・文書作成をさせることが可能であると判断することに相当の理由がある場合、ACCCの委員は、当該者に対し、書面の通知により、次の内容を要求することができる(法第155条第1項a号~c号)。
 ① 通知により特定された期間内及び方法により、ACCCに情報を提供すること
 ② ACCC又は通知により特定された者に対して、文書を作成の上、提出すること
 ③ 通知により特定された期日及び場所において、ACCCの委員等の前に出頭し、口頭若しくは書面で証拠を提出し、又は文書を作成して提出すること
 何人も、当該通知を拒む若しくは当該通知に背く又は故意に虚偽若しくは誤解を招くような情報を提供し若しくは証拠を提出してはならず(同条第5項)、同項の規定に違反した当事会社に対しては刑事罰が適用される(同条第6A項)。また、ACCCの文書提出命令に対して事業者の防御を可能とする「合理的な範囲での調査に係る抗弁(reasonable search defence)」(同条第5項a号及び第5A項)、すなわち、ACCCの文書提出命令に対して、事業者が文書の「合理的な範囲での調査」を行ったことを、調査した範囲及び制限について説明する書面の提出をもって、回答することができる(同条第5項a号及び第5B項)。
 なお、調査の範囲が合理的であるかどうかについて、ACCCが決定するに当たり、関連する事項の性質及び複雑さ、文書の数、文書取得の費用及び容易さその他関連事項が考慮される(同条第6条及び法第155条の権限行使に関するガイドライン)。

 

(2)刑事手続(刑法上の規定に基づく令状)のみで利用可能な審査権限

 カルテルに係る審査において、刑法上の規定に基づき裁判所が令状を発行した場合に、通信を傍受することができる(電気通信法)。

   

(3)民事訴追(法第6章)

 カルテル行為等の法第4章違反行為について、ACCCは、次の命令を下すことを求めて、裁判所に民事訴追することができる。
① 違反行為の差止め(法第80条第1項及び第80AC条)及び仮差止め(法第80条第2項)
② 制裁金の賦課(法第76条及び第77条)
 カルテル条項の制裁金の法定上限額は、企業の場合、1000万豪ドル又はカルテルにより得た利益の3倍額(当該利益が確定できない場合は、企業全体の過去12か月間の売上高の10%)のうち、いずれか高い方であり、個人の場合、50万豪ドルである(法第76条第1A項及び第1B項)。
③ 法第50条違反(企業結合)に関する株式又は資産の処分命令等(法第81条第1項)
④ 個人の企業役員資格の剥奪命令(法第86E条第1項)
 違反行為を行った個人が、当該企業経営に一定期間、関わることを禁止する(経営者の資格を剥奪する)命令
⑤ その他の命令(法第87条)
 違反行為の被害者が被った損害の補償命令(すなわち代理訴訟。法第87条第1項。ただし、当該被害者の文書による同意が必要(同条第1B項b号。付随的な命令(契約の無効宣言(同条第2項a号)、契約の変更命令(同項b号)、契約条項の履行の差止め(同項ba号)等)を発出することができる。)
 

(4)刑事訴追(法第79条及び法第45AF条又は法第45AG条)

 カルテル行為を行った者は、刑事訴追され得る(法第79条)。
 ACCCは、法第45AF条又は法第45AG条に違反する重大なカルテル行為について、連邦検察局長官(以下「CDPP」という。)に刑事告発することができる。当該告発を受け、CDPPは、刑事訴追を行うことができる。
 企業に対する罰金の法定上限額は、1000万豪ドル又はカルテルにより得た利益の3倍額(当該利益が確定できない場合は、企業全体の過去12か月間の売上高の10%)のうち、いずれか高い方であり、個人の場合、10年以下の禁錮若しくは罰金2,000ペナルティユニット(約244万豪ドル)以下又はこれらが併科される。

 

(5)刑事手続(罰金)と民事手続(制裁金)の関係

 刑事手続(罰金)と民事手続(制裁金)の関係は、次のとおりである。  
① 同一の者に対して、刑事手続及び民事手続の両方を開始することが可能である。
② 刑事手続が開始された場合には、民事上の制裁金賦課手続は停止する(法第76B条第3項)。
③ 刑事事件で有罪が確定すると、重ねて民事上の制裁金が課されることはない(同条第2項)。
④ 刑事手続において有罪にならなかった場合には、民事手続上で制裁金賦課の手続を再開することができる(同条第3項)。
⑤ 民事手続で制裁金支払命令が下されている事案に対して、刑事手続を開始することができる(同条第4項)。
⑥ 個人が民事手続で提出した証拠を、当該個人の同一行為に係る刑事手続における証拠として利用することはできない(同条第5項)。

 

(6)リニエンシー制度

 企業及び個人のそれぞれに対する民事手続における免責の要件については、「カルテル行為に対するACCCの免責・協力方針」に、また、刑事手続における免責については、連邦訴追方針の付属文書B「重大カルテル違反行為の訴追免除」に、それぞれ規定されている。

 
ア カルテル行為に対する免責方針

(ア)企業に対する民事手続における免責の要件
 ACCCが民事訴追するために十分な証拠を有していない時点で、次の8要件を満たす企業には、ACCCの条件付免責が認められる。また、企業が条件付免責を得た場合、当該企業の報告の一部として自らのカルテルへの関与を告白した当該企業の役員及び従業員も、企業と同様に条件付免責を得ることができる(「カルテル行為に対するACCCの免責・協力方針」23)。
① 被疑カルテルの現在又は過去の当事者自身又は補助的な立場からの関与者であり、その行為が法に違反する可能性があることを認めること
② 本方針の下で、カルテルに関する免責を申請する、最初の企業であること
③ 他の企業に対しカルテルへの参加を強要したことがないこと
④ ACCCに対して、被疑カルテルへの関与を取り止めているか、又は、取り止める旨を確約したこと
⑤ 企業による自白が、(個人の代表者の個別の告白ではなく)真に企業の行為であること
⑥ 全面的、率直かつ誠実な事実の開示を行い、申請中は、証人の支援と協力を得るためのあらゆる合理的な措置を講じる、自白を立証するための十分な証拠を提供するなど完全かつ迅速に協力し、ACCCの調査及びその後の裁判手続を通じて、積極的にこれを継続することに同意すること。
⑦ 協力を行うことを確約すること
⑧ 免除申請者としての地位、調査の詳細及びその後の民事上又は刑事上の手続に関して、法律で要求されない限り又はACCCの書面による同意がない限り、機密を保持し、また保持し続けることに同意すること。

 

(イ)個人に対する民事手続における免責の要件

 ACCCが、民事訴追するために十分な証拠を有していない時点で、次の7要件を満たす個人には、ACCCの条件付き免責が認められる。
① 被疑カルテルに関与した(している)企業の、現在又は当該カルテル行為期間中の役員又は従業員であること
②~⑦(上記、企業に対する要件②~④、⑦及び⑧と同じ。)

  

(ウ)刑事手続における免責

 ACCCは、申請者が免責方針における免責条件を満たしていると判断する場合、CDPPに対して、同申請者に免責を付与するよう勧告(recommendation)を行う。CDPPは、独自の裁量により判断を行うが、申請者がACCCの免責方針における条件を満たしている場合には、免責を与えることとしている(連邦訴追方針の付属文書B3.4)。

 
イ 法執行に係る協力方針

 免責方針が適用されない者(「最初の申請者」以外の者)も、ACCCへの協力の度合いに応じて民事訴追免除、制裁金減免の措置が採られることとなる(「エンフォースメントに関するACCC協力方針」)。
 カルテル行為のような重大な事案については、原則としては基本制裁金額からの減額であるが、協力の時期及び度合いにより異なる減額の率が適用される。減額の率については、申請順位のみでなく、実質的な協力度合いが考慮される。
 

(7)確約(法第87B条)

 ACCCは、事業者から提出された書面による確約(undertaking)の内容が十分なものである場合には、これを受理し、事業者に確約どおり実行させることによって事案を解決することもできる(法第87B条第1項)。事業者は、ACCCの同意が得られれば、いかなるときにも確約を撤回又は変更することができる(同条第2項)。
 ACCCは、事業者が確約の内容に違反していると判断した場合には、裁判所に対し、確約違反を理由に提訴することができ(同条第3項)、裁判所は、確約違反が認められる場合には、①確約内容の遵守命令、②確約違反によって得た額を超えない額を連邦に納付させる命令、③確約違反によって他の者に与えた損害を補償させる命令及び④その他裁判所が適当と認める命令を行うことができる(同条第4項)。
 

5 損害賠償

 私人は、法第4章(制限的取引慣行)等の違反行為について、裁判所に対し、①違反行為の差止め(企業結合を除く。)(法第80条第1項)、②資産又は株式処分命令(企業結合の場合)(法第81条第1項)、③損害賠償(法第82条第1項)及び④その他の命令(法第87条第1項)を求めることができる。
なお、③の損害賠償の訴訟提起期限は、違反行為の発生から6年以内とされている(法第82条第2項)。

 

6 産業行動規約(法第4B章)

(1)概要

 産業行動規約(Industry Codes of Conduct)は、義務的又は自主的な行動規約として連邦大臣が定めることができる。義務的な行動規約は、産業全体の参加者を拘束し、自主的な行動規約は、当該規約に正式に加入する事業者のみを拘束する。
 事業者は定められた規約に違反してはならず(法第51ACB条)、当該規約の違反行為があれば、違反行為の被害者は、損害賠償(法第82条第1項)、補償命令(法第87条第1項)及び差止め命令(法第80条第1項)を裁判所に求めることができる。また、ACCCは、規約違反に関して警告公表告知(法第51ADA条第1項)を行うことができ、さらに、審査手続に関与していない者(Non-party)のための損害賠償等の命令(法第51ADB条第1項)を裁判所に求めることができる。
 現在、義務的な行動規約として、乳製品行動規約(Dairy Code of Conduct)、電力小売規約(Electricity Retail Code)、フランチャイズ行動規約(Franchising Code of Conduct)、園芸行動規約(Horticulture Code of Conduct)、食料品行動規約(Food and Grocery Code of Conduct)、港湾ターミナルアクセス(バルク小麦)行動規約(Port Terminal Access (Bulk Wheat) Code of Conduct)、石油行動規約(Oil Code of Conduct)、単位価格表示規約(Unit Pricing Code)及びニュースメディアとデジタル・プラットフォームに関する義務的交渉規約(News Media and Digital Platforms Mandatory Bargaining Code)がある。
 なお、ACCCに自主的な行動規約を策定する役割はないが、各業界による自主的な行動規約策定のためのガイドラインを公表している。

 

(2)ニュースメディアとデジタル・プラットフォームに関する義務的交渉規約(法第4BA章)

 デジタル・プラットフォーム事業者及びオーストラリアのニュースメディア事業者間の交渉力の不均衡に対処するため、デジタル・プラットフォーム事業者がニュースメディア事業者に対して支払うべき公正な対価を保証するための枠組みを強化する規約(以下「本規約」という。)が制定された。本規約の概要は以下のとおりである。

 
ア 特定デジタル・プラットフォームサービス等の指定

 財務大臣は、特定デジタル・プラットフォームサービス及び特定デジタル・プラットフォーム事業者を指定する(法第52E条第1項)。財務大臣は、これらの指定に当たり、オーストラリアのニュースメディア事業者とデジタル・プラットフォーム事業者間の交渉力の不均衡が存在するかどうか(同条第3項a号)及びニュースメディア事業者との契約がオーストラリアのニュース産業の持続可能性に大いに貢献するものであるかどうか(同項b号)を考慮しなければならない。また、デジタル・プラットフォーム事業者は、当該指定を受ける旨の決定前に、財務大臣から書面による通知を受ける(同条第5項)。当該指定の最終的な決定は、前記通知の日から少なくとも30日を経てから行われる(法同条第6項)。

 
イ 登録ニュースメディア事業者等の決定

 ニュースメディア事業者は、通信メディア庁(Communications and Media Authority: ACMA)に申請し、登録ニュースメディア事業者又は登録ニュースメディア会社として登録を受ける(法第57F条)。通信メディア庁は、ニュースメディア事業者を登録ニュースメディア事業者又は登録ニュースメディア会社として登録することを決定するに当たり、登録を申請したニュースメディア事業者が以下の要件を満たすか否かを確認する必要がある。
・ 提供するオンラインニュースコンテンツの内容に公共性があること(法第52G条第2項c号(i)及び法第52N条第1項)
・ オーストラリア人の読者に供することを主な目的としてオーストラリアにおいて運営されていること(法52G条第2項c号(ii)及び法第52O条第1項)
・ 編集権の独立性があること(法第52G条第2項c号(iii)及び法第52P条第1項)
・ 年間15万豪ドル以上の収入があること(法第52G条d号及び法第52M条第1項)

 
ウ 責任デジタル・プラットフォーム事業者の義務

 本規約では、責任デジタル・プラットフォーム事業者は、例えば、以下の義務が課される。
・ 責任デジタル・プラットフォーム事業者は、登録ニュースメディア事業者に対し、特定デジタル・プラットフォームサービスの提供するニュースコンテンツを閲覧した利用者による相互作用に関する情報を毎年提供することを確保すること
・ 責任デジタル・プラットフォーム事業者は、ニュースへの参照元経由で流入した通知ンデータ量(referral traffic)に直接重要な影響を与える可能性のある特定デジタル・プラットフォームサービスに係るアルゴリズムの重要な変更等を行う場合には、それが当該サービスによるニュースコンテンツの提供方法を  変更させるものであれば、当該変更が実施される日の14日以前に登録ニュースメディア事業者に対し通知することを確保すること(法第52S条第1項及び第2項)
・ 責任デジタル・プラットフォーム事業者は、交渉の要求の有無等を理由として、登録ニュースメディア事業者に対して差別的取扱いをしないことを確保すること(法第52ZC条第2項)
・ 責任デジタル・プラットフォーム事業者は、登録ニュースメディア事業者から、支払等のニュースコンテンツの利用に関する事項について、交渉の申出があった場合には、信義誠実に交渉しなければならないこと(法第52ZE条及び第52ZH条)
 

エ 義務的な仲裁制度の創設

 両者の誠実な交渉によっても合意に至らなかった場合、調停官による調停が実施される。調停によっても合意に至らなかった場合、独立した仲裁機関が設置される(法第52ZM条第2項)。仲裁機関は、両者の金銭的その他の利害を考慮に入れ、35営業日以内に裁定を示さなければならない(法第52ZZA条第1項)。ACCCは、必要に応じて、事実に係る情報の提供を中心とした役割を果たす(法第52ZZC条第1項及び第1A項)。裁定には、責任デジタル・プラットフォーム事業者及び登録ニュースメディア事業者双方に対する法的拘束力がある(第52ZZE条)。
 

オ 規約違反に対する執行

 ACCCは、本規約に違反した者に対して違反通知を発することができる(法第52ZZG条第1項及び法第4B章第2節)。同通知を受けた者は、600ペナルティユニット(約13万豪ドル)の過料を支払わなければならない(法第52ZZG条第2項)。

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